及川恒平札幌ライブProject・進行日誌/2004.12.13
及川恒平札幌ライブProject・企画書/2004.6.8
及川恒平ホームページ
歌手であり、詩人でもある及川恒平氏のことを語ると長くなる。恒平さん(以下、親しみをこめてこう呼ぶ)のことについては、一度だけエッセイ「徒然雑記」の中でふれたことがある。
妻と出会った頃、恒平さんの最初のソロアルバムを見つけ、迷わず買った。「初めの頃」のような恋をし、「秋の日暮れに限っては」のように傷つき、「何もしてあげられないよ」と自分の非力を嘆き、やがてようやく「おやすみなさい」の歌詞のような安息にたどりついた。私の青春はまるで恒平さんの歌のようだった。
そんな恒平さんが、音楽界から突然消えた。レコード店でいくら調べてもらっても、新作が出ない。思い余って、当時関わっていたFM放送の番組ディレクターにも調べてもらった。だが、ここでも恒平さんの行方はようとして知れなかった。1995年にインターネットを始めた。
(恒平さんがホームページを開いているかもしれない…)と思った。だが、検索エンジンに恒平さんはなかなかヒットしない。当時はまだインターネット黎明期で、いまをときめくYahoo!の登録サイトさえ、数百という状態だったから、無理もない。あきらめずに続けるうち、あるとき突然モニタに恒平さんのページが広がった。恒平さんが長い沈黙のあとに音楽活動を再開したことを初めて私は知った。
恒平さんのサイトは定期的にチェックしていたが、ただ読むだけだった。久し振りにサイトを訪れたある日、北海道ネタで掲示板が賑わっていた。前年出ていた北海道でのフォークジャンボリーに、今年は恒平さんが出ないのだという。(通い慣れた古い石造りの喫茶店で、恒平さんの歌をひっそりと聴いてみたい…)
かねてから暖めていたそんな思いを、そっと掲示板に残した。
(以下、及川恒平さんの掲示板から一部を引用)「私は資金は何もありませんが、実現にむけて身体を動かし、知恵を絞ることは出来ます。やる気になれば、何とかなりそうな気もします。恒平さん、厚かましいお願いかもしれませんが、どんな形を整えれば札幌に来ていただけますか?」
すぐに恒平さんから反応があった。
「僕の子供のころは、誰でもひきだしに磁石をひとつは入れていたはず。そんな磁石でも何かがひっついてくれました。フォークを歌いだしたころを思い出させてくれるお申し出です。ありがとうございます。TOMすけさん自身に楽しんでいただけるのなら、喜んで参上します」
以降メールのやり取りを中心に、実現にむけて急ピッチで話が動きだした。怖いもの知らずの素人企画を持ち出したのはこの私で、思いがけずそれに乗ってくださったのは、他ならぬ恒平さんである。ネットの無限の可能性、そして人と人との不思議な縁(えにし)を改めて感じた。
ここではこうしたいきさつから企画され、2004.10.31に札幌時計台ホールにて実施された「及川恒平時計台コンサート」に関する一切を、ドキュメントタッチで紹介します。