無垢材の家具/多機能テーブル ... 2005.9




 ふと思い立って、居間の多機能テーブルを6年ぶりに作り替えることにした。

 これまで使ってきた台形の大型テーブルは、家族や来客等のさまざまな変化にも柔軟に対応でき、とても重宝していた。だが、この春から夫婦二人だけとなったシンプルな暮しには、いかにも大き過ぎる。数年前から床下点検口を開放し、掘りこたつのように足を入れて利用している開口の大きさにもやや合わない。壁際に妻専用の事務収納棚を作りたいのだが、これもテーブルが大きすぎて出し入れに邪魔になる…。
 あれやこれやの事情で、暇が出来たらいつか作り直そうと考えていた。自分を取り巻くすべてのもの、つまりは森羅万象と同じで、どんなに固い絆で結ばれていたとしても、家族は常に「動き」そして「流れて」ゆくものだ。その動きに対し、柔軟に対応出来るのが手作り全般の大きな利点だろう。

 無垢材を使うのはこれまで通りだが、形状は床下開口と同じ長方形に変更する。重量を少し軽くして板のつなぎも簡単になるよう、下地に無垢材と同等程度に安全な材料のOSB合板を使うことにする。
 今回の計画では、全体寸法を幅966×長1312×高370とした。ちなみに、無垢材のテーブルの難易度はかなり高く、実感ではAクラスか。



 使用材料と価格(2005.8 札幌ジョイフルAK調べ)

・OSB合板:t12×910×1820、1枚(天板下地用)\880
・KD材:t18×105×3640、3本(天板用)\520×3=\1,560
・加工ツーバィ材:t28×70×1200、3本(天板枠短辺用)\300×3=\900
・加工ツーバィ材:t28×70×3000、1本(天板枠長辺用)\900
・加工ツーバィ材:t28×70×2100、1本(脚用)\600
・L=25、L=40スリムビス、L=65木用ビス(コースレッド等)

 合計コストは、約5,000円となった。



 まず最初に天板の枠を作る。長さ1256が2本、長さ910が3本必要。各材料を電動ノコで切断する。切断には写真のような手製のガイド板を使う。
(ガイド板に関する詳細は、「万能ストール」の項を参照のこと)


 28×70の加工ツーバィ材をL=65木用ビス、あるいはスリムビスで組み立てる。1ケ所につき、2ケ所のビスを使う。写真のようにあらかじめキリで印をつけ、8ミリのドリルで深さ5ミリ程の下穴を開ける。このあと、3ミリのドリルでビス用の貫通穴を開ける。
(この順番を逆にすると、木材表面が傷みやすくなるので注意)




 下の写真のように、短辺中央の枠だけは横に使い、取付け位置は外周よりも30下げる。(天板の仕上がり寸法30に合わせるため)外周の枠の内側、同じく30下げた位置に18×24程度の材料を、額縁のように40ミリのビスで止める。この材料は天板の材料を縦に切断(後述)した余りなどを使う。
 枠はすべてを組立てず、天板の隙間調整用に短辺のひとつだけを残しておく。



 天板の材料を切る。まず、天板の下地となるOSB合板を910×1210の寸法で切る。同じく18×105のKD材を長さ1210に切る。(合計9本)
 これを天板の上に並べると、短辺方向の全体寸法がかなり大きくなるので、KD材の幅を2本だけ狭くし、これを両端部に使用する。下の写真のように、長いガイド板を使って(私の場合は1200)板を縦に切り裂く。この技術はかなり高度。板1枚だと切りにくいので、2枚を並べてガムテープで仮止めすると切りやすい。
 このとき余った材料が、前述の額縁用材料となる。



 天板下地のOSB合板に、18×105のKD材を順にL=25のビスで止める。止める前にいったん並べ、順番と方向を鉛筆でメモしてから止めると、間違いがない。
 KD材は比較的ゆがみの少ない材料だが、もしこの時点で隙間があったら、カンナなどで微調整する。
 外周部分のビス(下の写真の左右の部分)は、あとで枠の額縁部分にL=40のビスに止め替えるため、縁から15ミリ程度離した位置で止める。



 天板を枠に載せ、まず短辺方向の寸法(下の写真の上下の部分)をカンナなどで微調整する。長辺方向の寸法は、仕上がりより10ミリ前後長くなっているはず。これは並べたKD材の切断誤差をカンナではなく、電動ノコで切ることによって、より美しい仕上がりで調整するためである。枠の内側実寸(1200程度のはず)に合わせ、長いガイド板をあててまっすぐに切り落とす。
 理論的には、左右をそれぞれ5ミリ程度切断すれば、枠内に天板がぴったり収まるはず。天板の調整が終わったら、枠の最後のひとつをはめ、ビスで取りつける。



 最後に脚の材料を長さ370に切断する。(合計4本)取付け位置は写真のように短辺側。要領は枠の切断と同じだが、止めるビスは頭が大きくて強度のあるL=65木用ビス(コースレッド等)を使う。天板枠に止めるとき、ガイド板などを利用し、直角を厳密に出す。
 天板枠に止めた2本のビスとこの脚用のビスがぶつかると、機能しなくなる。位置が重ならないよう、穴の開ける位置を事前に充分吟味する。

 もし天板枠の水平に狂いがあった場合、脚を普通に天板に合わせてつけてしまうと、置いたときにガタが出る。これを避けるには、まず脚を3本だけ止め、この状態でいったん水平な場所に置いてから最後の脚の位置や長さを微調整するとよい。
 その意味では、脚のうちの1本だけはやや長め(380程度)に切っておき、調整後に最終寸法を決めたほうが、よりきれいに仕上がる。



 すべてが組み終わったら、天板を止めていたL=25のビスを、ひとつおきくらいにL=40のビスに止め替え、天板枠に天板を完全に固定する。(すべて止め替えてもよい)

 最後に自然系の塗料を天板や脚に均一に塗る。今回はプラネットカラーのハードクリアオイルを、3回塗った。

 これまでの大型テーブルと入れ替えてみると、床下開口よりもちょうどひと回り大きい感じで、三方からの足が入りやすい。写真左が妻のスペースだが、ベンチ下が広々として、収納としてとても使いやすくなった。
 無垢材テーブルの宿命だが、どんなに塗料を重ねても、どんなに手入れをしても、やがては木材に傷みがくる。これまでは天板と枠を兼ねた構造にしていたため、交換は難しかったが、今回は天板と枠を完全に分けた構造にしたため、材料の交換はより手軽に、しかも安く可能となる。

 このテーブル、現在の配置では5名までしか座れないが、位置を直角に変え、開口の一部に着脱式の板を載せてやると、6人が座れるようになる。
 これまでの大型テーブルでも6人以上が座ったことは一度もなく、ほぼこの大きさで足りるはずだが、もしも将来大人数でのオープンライブをこの部屋でやることになった場合、後方に一部見えているベンチをまず使い、さらに2階にある録音用のベンチを下に降ろしてきて、対応しようかと考えている。
 家族も常に「動く」存在だが、生き方暮し方、いや人生そのものが紛れもなく「動き」、そして絶え間なく「流れる」存在なのだ。