無垢材の家具/万能ストール ... 2001.12




 前回、学習机の作り方を伝授した三児のママさんから、再びメールがきた。いわく、

「机に引き続き、椅子の作り方も是非教えて下さい。難しいのは承知でチャレンジしてみようかなぁ〜、と。 失敗したら、キャンプ用のものにでもお花の台にでもするつもりで…」

 実は椅子は机やテーブルよりもはるかに難しいのである。人間の体重がもろにかかるからで、生半可な作り方をしてしまうと、座ったとたんに壊れて大怪我、という事態にもなりかねない。
 過去にラワン合板やランバー合板で何度か椅子を作ったことがあるが、ぐらつかないようにするのに苦労させられた。今回はすでに環境に優しいツーバィ材で机を完成させた方からの話なので、椅子も当然同じツーバィ材で作るのが利にかなっている。新居での家具作りのなかで、ツーバィ材を使った椅子はいろいろと試行錯誤し、作っては壊し、また改造しを繰り返している。やはり安定した構造の椅子を素人が作るのは至難の技なのだった。

 迷ったが、初心者でも比較的作りやすそうな椅子、しかもデザインがシンプルで多目的に使えそうな椅子をひとつだけピックアップし、作り方をまたまた伝授することにした。



 机と同じように、椅子に関する私なりの基本がまたまたある。

・素人が作る場合、背もたれやひじ掛けなどはつけないほうが無難。

・座板の幅は30センチ前後。

・椅子の高さは子供の背丈によって変える。一般的に作業用はやや高め、くつろぎ用はやや低めがよい。

 椅子座板高さ=その子のひざ下寸法−1センチ
  ・その子のひざ下寸法は直角に曲げたときの寸法で、概算値は身長÷4
  ・計算値は、小学生なら250〜350ミリ、大人なら380〜400ミリくらいになるはず。

・脚は2〜4本。体重を点で受けるより、面で受けるような構造が丈夫。全体を箱型にする手法もある。



 このページの別連載「本音で暮らす手作りハウス」ですでに発表ずみの椅子の完成写真をまず下に示す。
 38×89と38×190の2種類のツーバィ材を使い、10本の木工ビスで止めただけの単純構造である。パーツはわずか5本だが、床の部分が長い部材の「面」で受けており、XY両方向の荷重に耐えられるようになっているので、とても丈夫である。
 この形にたどりつくまで、20枚以上のスケッチを重ねた。私の場合、紙と鉛筆を使って考えることが多いが、半端な木材を目の前に並べ、ああだこうだ重ね合わせているうちにいい方法を見つけだすこともある。この種の小物は後者のほうが多い。


・まず、ツーバィ材38×89を必要な長さで4枚用意する。長さ1800ミリのものを買えば、大人用の椅子でも充分足りる。材料は極力直角に切る。(電動ノコを使う方法を後述)

・別に38×190のツーバィ材を長さ300ミリで1本用意。DIYの店によっては900ミリ単位で売っているので、1本買えば椅子3脚分ある。ツーバィ材38×89を2本横につないで代用する方法もあるが、技術的にはかなり高度になる。

・脚と座板を寸法通りに切り、まず脚と座板を止める。2本の脚がずれないよう、座板に直角に止める。普通75ミリの木工ビスを使うが、ビスの頭を隠すために下穴を10ミリ以上開ける場合は、65ミリでも足りる。固定は電動ドライバーがお勧め。

・次に脚の補強板をツーバィ材38×89でつける。座板の長さを300ミリとした場合、補強板の長さは376ミリとなる。(300ミリ+ツーバィ材厚さ38ミリ×2)座板の長さを変える場合はこの寸法も変化する。
 組み上がったあとの補強板2本と脚2本が、床に置いたときに完全に平坦になっていないとぐらつくので、ビス止めは確認しながら慎重に行う。真横から見たときの脚と補強板の直角が出ていることも大事である。
 組み立ては同様に65〜75ミリの木工ビスだが、片側が2本で片側が1本なのは、長いビスが互いに奥でぶつかりあわない配慮から。この心配がなければ、両方2本で止めてもよい。

・脚の寸法は子供の身体の大きさで作り、成長にあわせて作り直す方法が無難だが、あらかじめ長めに脚を切り、座板から突き出して脚を組立て、その間にお尻を入れて座る方法もある。

・座板は中心に組み立てるのが普通だが、下の補強板の出っ張り寸法(38ミリ)に合わせ、あえて非対称にする手法もある。

・塗装はしないほうが味がでる。怪我防止のため、角はていねいにサンドペーパーをかけよう。写真では座板の四隅をごくわずかノコで切り落とした。(いわゆる面取り)

・材料費は1脚1000円程度。2〜3脚同時に作ると座板の材料が無駄にならず、安上がりになる。そのほか全般的な注意は前回掲載の「多目的テーブル」を参照のこと。



 椅子のように材料の切断に関して厳密な直角が要求される場合、厚めの板をガイドがわりにあて、手ノコでまっすぐに切り落とすのが最も手軽で安価な方法だが、それでも狂いはでる。DIYショップで機械で切断してもらう方法もあるが、細かい材料だと断られることもあるし、ワンカット50円程度の費用もかかる。
 電動ドライバーを手に入れたら、次はぜひ電動ノコを買いそろえて欲しい。バーゲン品をねらえば、3000円くらいからある。プロではないから、刃の直径が140ミリの小型のもので充分だ。こうやって少しずつ道具をそろえていくのもDIYの楽しみのひとつだし、椅子を買ったと思えば一回で充分元はとれる。

 電動ノコを使って材料を切る場合、新居を建てる折に担当の大工さんとすっかり仲良しになり、素人むきの大変便利なガイド板の作り方を教えていただいた。

 電動ノコの場合、刃の位置は構造上左端からかなり離れた位置についている。(図のX寸法)製品には部品としてガイドバーが付属しているが、ほとんど点で受けているような構造になっていて、これを使って完全な直角と平行を出すのはかなり難しい。
 あり合わせの材料で図のような木製のガイド板を作れば、素人でも簡単に材料を直角かつ平行にカット出来る。
 まず対象の材料の切りたい部分に鉛筆で一箇所しるしをつける。得たい材料の寸法が右側にくる場合、刃の厚み2ミリを加算することを忘れずに。次に材料にガイド板をぴったりあて、右端をしるしにあわせる。ガイド板の一段高い部分(図のベージュ色の板)に電動ノコの左端をあて、なぞりながら一気に切り落とすだけだ。

 ガイド板は短い木ネジで組み立てるが、縦の板と横の板の直角は厳密に出す必要がある。ここが狂ってしまうと、切り落とす材料の直角が出ない。
 図の材料や寸法は普段私が使っているものなので、それほど厳密なものではない。3ミリベニヤの部分はもっと厚い材料でも構わないが、厚ければ厚いほど切り落とす材料の厚みが制限されてしまう。試してみると、140ミリ刃の電動ノコの場合、3ミリベニヤでツーバィ材厚さ38ミリがぎりぎりカット出来る。
 肝心なのは図のX寸法で、この寸法が左端からの電動ノコの刃の位置になる。製品によって異なる寸法だが、私の使っている電動ノコ(リョービ製140ミリ刃)の場合は107ミリである。製品の寸法を測ってもいいが、おおよその寸法で大きめに材料を切っておき、電動ノコでぴったり合わせて切り落とすのが最も正確である。



 新居では端材を使って同じ椅子を2脚作った。用途は以下のように雑多である。

・来客用椅子(非常用):ときに外テラスでの食事にも使う。
・靴はき台:玄関に1脚置いてあるのがこれ。たまに宅配便のハンコ押し台としても使う。
・踏み台:特に妻が重宝している。?キロがもろに乗っても、壊れない。
・床屋用椅子:妻の髪カットは私の担当だが、小さくて邪魔にならないこの椅子でやる。
・日曜大工の作業台:
 外テラスが使えない冬はこれを使って作業をする。2脚並べると長い材料でも切れる。
・その他、植木台、花台など:木の肌合いがグリーンによく似合う。

 我が家では玄関と2階仕事コーナーの隅とに置いているが、来客でこの椅子に目をとめ、「素敵な椅子ですね」と声をかけてくださる方が多数いて、私を喜ばせる。どこかで売っていそうで、売っていない、シンプルだが味があり、小回りの利く可愛い奴なのである。

◎文中の価格は2001.11札幌での調査