子育てサッカー相談室 ROOM3

 
どおしてこんなになっちゃった

 小学校3年生の長男は、地域大会で優勝するチームに所属して約2年。運動音痴で芸術家肌の夫と、そこそこの運動神経をもつテニスおばさんの間に生まれた息子は、「サッカーやりたい」と突然言い出し、練習も試合も皆勤賞。決してスーパースターではありません。
 技術はある(ドリブル、トラップ上手、PK得意、足もそこそこ)が、当たりやメンタル弱くアピール下手。それでも楽しそうにボールを追いかける我が子に、親ばかぶりを大いに発揮し、毎週末の練習や試合を下の子を連れて見にいったものでした。
 あまりの熱心さと人数不足から、指導者としてと監督より打診があり、チームのお役に立てればなどと殊勝な考えから、動きがましな母親の方が「コーチ」と呼ばれるようになり、約1年半。チーム初のかあちゃんコーチ。失敗など数知れず。審判試験もまだ受けず、練習試合のときに副審練習する程度。それでも「激励型」でチームのために、かわいい子供たちのためにと思ってやってきました。
 しかし!2002年のワールドカップ影響か、チームメイトは23人。監督、首脳陣コーチ3名(お子様たちは当然スタメン選手)プラス私。サッカー経験のない私の存在価値は便利屋。それでもいい、息子の所属するチームのため、とやってきました。

 けれど、人数が多ければ当然スタメン争い。息子まで便利屋になってきてしまいました。去年の大会準決勝、決勝戦では一度も出場できずに涙し、立ち上がれなかったことも。あとから入団した子にどんどん抜かれ、私から見るとどうみても違うだろというような子までが(技術はなくてもアピール上手、トラップ下手だが足が速い、無意味なところで声を出しまくるムードメーカー等)スタメン。
 それを「うちの息子のほうがいいでしょう」「スタメンを時々シャッフルしないとどんどん力の差がでてきちゃうでしょう」「チャンスは平等に」などとは首脳陣たちに言えない私。
「メンタルが弱いからBチームで自信をつけてもらいたい」などと言われ、納得するしかない私。毎日少しでも時間のあるときは、息子に「一緒にやろ」と言われてやっちゃう私。「努力する大切さ、絶対にうまくなるんだ」と馬鹿みたいな信念を持っている私。ナイスシュートやナイスプレイをしてもAチームにあがれない、どんどん自信をなくす息子。もちろん「昨日の君より今日の君」で誉めまくる私。
 けれど、夫からも「ろくな指導もできないで(特に試合中のサイドコーチングが最悪だそう)コーチやめろ」といわれる始末。私がコーチを退任してもチームは強いだろうし、息子もサッカーが好きだから、プロになりたいと本気で思っているようだから、やり続けていくと思います。こんなに頑張っている息子なのに、という虚無感。くぅっ!チーム内の実力の差って何なのでしょう。底上げ練習はレベル別にするべきなのでしょうか?泣かずにけなげに練習している息子を見ていると自分が情けなく、私がここまでひどい状態にしてしまったのかと悔やみきれないです。
 子供は敏感に私の顔色を伺っているのでしょう。悟られまいと毅然としているのが大人なのに、このもやもやした不公平感が家庭内にも漂って、夫婦仲まで険悪です。

 チームなんだから、監督の指示に従うべきなのはわかっています。息子の自立のためにも私は少し現場を離れ、ただの応援おばさんに戻ったほうがいいのでしょうか。エゴは捨て、無欲で時の流れに身を任せ、便利屋の状態が息子にとっていいのでしょうか。それとも…、スパルタで今以上にいいとこ伸ばし&アピール方法を特訓したほうがいいのでしょうか。はっきり首脳陣に意見したほうがいいのでしょうか?努力は才能に勝てないのでしょうか。
 くっだらねえ質問でごめんなさい。母親は馬鹿親、サッカー素人、努力家の息子。泣きながらこのホームページにたどり着きました。メールを読んでいただいたことに感謝します。宜しくお願いいたします。
('03.9 /かあちゃんコーチ)

 一部整形しましたが、全文段落なし、読点なしのベタ打ち長文メールに、正直閉口しました。相談内容とメールの体裁は本来無関係なのですが、今回の場合、文体なども含めて、思い込みの激しい相談者の気質がそのままメールに表れている気がします。

 結論から申しますと、あなたはコーチを辞めたほうがいいと私は思います。理由はいくつかありますが、最も問題なのは、指導陣に加わることにより、我が子のチーム内での扱いに対し、何らかの見返りを求めているからです。
 別コーナーにある「手探りベンチワーク」にも書いてありますが、コーチとしての唯一無二の条件は、「サッカーが好きで好きでたまらないこと」だと私は思っています。あなたの場合、「チームのために」「子供達のために」という大義名分ばかりが目立ち、肝心のその部分がまずクリアされていないような印象がします。
(チームのためにこんなに尽くしているのに、我が子が不平等な扱いを受けている…)と心情的に感じてしまうのも、結局はサッカーが好きでコーチをやっていないからでしょう。サッカーが大好きで、「自分のために」という動機づけからコーチをやっていれば、こういう要求は出てきません。
 私は我が子が3人ともサッカーをしていましたが、長男以外はレギュラーではありませんでした。それでも指導を嫌だと感じたことはありません。二男はレギュラーと控えの当落スレスレでしたが、精神的なもろさがあったので、あえてレギュラーにはしませんでした。
「メンタルが弱いからBチーム」という監督の判断は、おそらく正しいのだと思います。プロでも子供でも、それくらいメンタル面は大切です。それほど大きな差のない当落線上の選手を選り分ける最後の基準は、メンタル面になるはずです。私も監督のときはそうしてきました。
「アピール上手」「声を出しまくる」といったことをあなたは重要視していないようですが、これらはメンタル面で自分やチームメイトを鼓舞する大切な要素です。大きな技術の差がなければ、親のチームへの貢献度などではなく、選手そのものが持つこうした資質を大事にするでしょう。それは監督として当然の選択だと思います。

 次に問題なのは、あなたのコーチとしてのジレンマが、ご主人との関係にまで悪影響を与えていることです。これまた「手探りベンチワーク」に書きましたが、家庭不和と刺し違えるほどの意味や重さはコーチにはありません。この一点に限っても、コーチを辞める充分な理由になります。
 さらに気になるのは、あなたがもやもやした気分でコーチを続けていることで、息子さんのサッカーまでもが、悪い方向に進みつつあることです。いまのままですと、息子さんはますます伸び悩むかもしれません。
 技術の進歩はともかく、あなたがこのまま中途半端にチームに関わっている限り、最も重要なメンタル面での向上は極めて難しいと思います。すっぱりコーチを辞めることで、「お母さんはチームと関係ないのだから、もうあてには出来ない」という心理的に厳しい状況をまず息子さんに作ってやり、心情的な甘えを取り払ってやる必要があります。

 指導陣の一角を担っているとはいえ、選手の起用法に関して全く意見を言えないような現状では、コーチとしては実質的に機能していないといっていいでしょう。チーム全体からみてもプラスになるとは思えません。あなたがコーチを辞め、元の「私設応援団長」に戻ってしまえば、あなたの心中の不公平感も解消され、家庭にもやがて平和が戻ってくることと思います。
 チーム結成時の指導者不足を補うという意味で、あなたは充分役目を果たしました。一生懸命サッカーを勉強して我が子の「私設コーチ」に徹し、少しでも息子さんの技術向上の役にたち、外からそっと見守りつつ励ましてやる。そんな普通の「サッカー大好きお母さん」に早く戻ってください。

 お忙しい中、早速のお返事をいただき感謝しております。平常心を失った錯乱状態の内容に、一つ一つまるでカウンセラーのようにお答えいただき、本当にありがとうございました。
 すっぱり指導者をやめ、以前のように公園で子供たちとワーワーキャーキャー言いながら、楽しんで生きていこうと思います。



 
サッカーを知らないって何?

 こんにちは、初めてメールします。私の息子は東京都のとある市の少年サッカーチーム(ボランティアスタッフ)の5年生です。2年生から入っているのですが、最近コーチから通信簿みたいなのを渡されてショックを受けています。コーチはここに書かれていることを保護者からお子さんに伝えてほしいというのです。
 息子については、良いところは、足が速く、ヘディングが強く、試合中声が出る。悪いところは、回りを見ないパスが多い、視野が狭い、サッカーを知らない。
 このサッカーを知らないというのは、息子にどう伝えたら良いのでしょうか。サッカーを知らないおばさんの私からすれば、今まで3年間コーチ陣はサッカーとは何ぞやすらも教えられなかったのか!なんて思ってしまいます。息子にサッカーを知らしめるために、親として何をしてあげられるのでしょうか?あと小学5年生の子供に対して「サッカーを知らない」とは適切なアドバイスなのでしょうか?
('03.9 /悩める母)

 またまた難問ですが、単純に「お前はサッカーを知っているか?」と私が問われた場合、「そうですねぇ、多少分かっていたつもりでも、『こうなったらこう』という答えが何通りもあって、なかなか奥が深いです」とおそらく答えるでしょう。
 小5の子供に、「サッカーが分かってない」と非難するコーチは、おそらく自分は経験も豊かで、サッカーを知っているつもりなのでしょうが、そういう自信満々のコーチは私も過去に数人知っていますが、あまり好きなタイプではありません。指摘されても子供は何のことだか全く理解出来ず、ただ不安になるだけでしょう。

 コーチが要求しているのは技術面ではなく、おそらくサッカーの戦術面のことだと思います。小5レベルの子供に教えるべき戦術面の基本は、「蹴ったら走れ」「回りを見てパス」「動いてパスをもらえ」くらいでしょうか。「攻めは外から中へ」「守りは中から外へ」もこのレベルですと教えるべきかもしれません。
 ただ、そんな基本を果たして保護者経由で指導させるべきものなのでしょうか。私がコーチのときには、そうした基本は練習やミーティングの中で直接選手に理解させるように努めました。個人差はありますが、くり返しくり返し辛抱強くやれば、練習方法を間違えていない限り、数年でどの子も出来るようになります。何年もかかってある日突然出来るようになる子もいて、コーチを喜ばせます。
 つまり、本人が「サッカーを理解した」つもりはなくても、コーチから見ていい動きが自然に出来るようになるものです。サッカーとは、そういうものだと思います。それを導くのは、あくまでコーチの仕事です。そして、「サッカーを知らない」などと自己陶酔的な指摘ではなく、きちんと言葉や練習で子供にそれを示すべきでしょう。

 息子さんは技術面や身体能力でたくさんの良い部分を持っているのですから、いい指導者に巡り会えば、もっと伸びるはずです。コーチの啓蒙が期待出来ないのなら、親がやるしかないのですが、そのためには親がまずサッカーを理解することから始めなくてはなりません。親にもいろいろ事情があるので、簡単にいかないケースもあるでしょう。
 息子さんに欠けていると思われる、「蹴ったら走れ」「回りを見てパス」「動いてパスをもらえ」の3つは、私のサッカーコーチ講座にも練習方法がいくつか書いてあります。お母さんと二人で練習可能なものもあります。チームを変わる選択肢もありますが、この時期にチームを変わるのは難しい気もしますので、親が勉強しつつ、塾形式のサッカースクールに週1回くらい通うことも考えてみてください。

 ありがとうございました。ここ2、3日の秋晴れのようなスカッとした気分になれました。これからも前向きに息子をサポートして行きたいと思います。一応クラブの5年生全員の目標が全日本出場なので、卒業までがんばるつもりです。塾形式のサッカースクールを探してみます。そして親も少し勉強しようと思います。 /悩める母改め秋晴れ母より



 
中学校サッカーのあるべき姿

 はじめまして、小学6年の息子の今後についてご相談申し上げます。
 我が家の息子は小学校1年生の時からサッカーを始め、6年間、少しでもうまくなりたいと自分のできる範囲で努力をしていました。母親はスポーツが嫌いなもので、何のアドバイスもせず見守っているだけですが…。
 今は小学校学区の子ども達を集めたクラブで週1回、また、近所の別なチームでも月3回ほどの練習及び試合をこなしています。どちらのチームものんびり朗らかなチームで、かつ勝利の楽しみもそこそこに味わえる環境です。正直なところ、息子の力は今のチームだから認めてもらえるのだと思っております。技術・センス・体力・その他の要素全て、素人が見ても「今まで努力でよく付いていった」のが現実です。

 そんな息子が進学する中学のサッカー部は、部活自体がクラブチームとして登録しています。チームはかなりなレベルで、監督である先生の方針も学校のクラブ活動を超えています。全てを置いても、クラブ活動を優先させていくようです。そのクラブでサッカーを極めて行くお子さん達は良いのでしょうが、普通の中学生が楽しむサッカーとは少し違うのかもしれません。
 本来ならば、学区の中学のクラブに入る息子を応援したいと思います。仲間を作りながら身体を鍛えて行って欲しいと願うはずです。しかし、今我が家では他の道はないものかと親子で考え始めています。学校では物足りなく、レベルの高いチームを求めてクラブチームを探す、そんな皆様も多い中、なんと後向きの相談だと思われるでしょうが、中学時代に無理の無いサッカー活動をし、サッカーを愛する気持ちを維持し続ける道を本気で探しています。小学生とはいえ、地味でもサッカーを続けたいとの希望が息子にはあります。
 こんな逆行した考え方は許されないのでしょうか?学校外でレベルにあったチームを探すのは無理な話でしょうか?
('03.10 /サッカー激戦区の母)

 自分のレベルにあった無理のないサッカーを楽しみたい、という気持ちは痛いほど分かります。チーム方針にもよりますが、小学校までなら、そういったチームを探すのはそう難しくないでしょう。ですが、勉学と同じように、いまの日本では中学校に入った途端、急に現実的な考えが台頭してきます。
 勉学の場合、偏差値に基づいた子供の評価が絶対的なものとなり始め、努力だとか生徒一人一人の個性などは、とかく黙殺されがちです。それでも私の子供たちが部活動をしていた頃は、まだスポーツでは「無理なく楽しむ」という姿勢の子も受け入れられる土壌があったように思います。
 ところが今回のご相談のように、明らかに「勝つこと、より上を目指すこと」をチーム方針とした部活動が台頭してくるとなると、こちらの世界も勉学と同じような評価が幅をきかせることとなり、「無理なく楽しむ」という姿勢の子供たちの居場所は、おそらくないものと思われます。

 ところで、この私自身も「サッカーを無理なく楽しみたい」というタイプでした。40才前後にそんな私でも受け入れてくれそうなチームを見つけ、加入させてもらいましたが、種々の事情で4年でやめました。「無理なく楽しむ」がチーム方針のはずでも、中にはやはり勝つことを第一に考えるメンバーがいて、私のような下手な選手は、とかくないがしろにされがちだったからです。そんな中で活動を続けるのは、辛いものがありました。
「強いものが幅をきかせ、弱いものは排除される」これは世の宿命なのかもしれません。その意味で、自分の実力にあったチームを探し当てるのは、至難の技です。40代チームでさえそうなのですから、中学校レベルのサッカークラブでも、それは例外ではないでしょう。
 これは私の提案ですが、似た価値観の仲間を集め、独自で趣味のサッカーチームを作られてはいかがでしょう。5人集めればひとまずフットサルチームが出来、登録すれば市民大会などにも参加出来ます。大人の責任者が必要な場合、父母のどなたかがやってあげればいいでしょう。
 全国にはこうした趣味のチームがたくさんあり、それぞれ楽しく活動しています。家族でメンバーを構成しているチームさえあります。高校に入れば、こうした「無理なくサッカーを楽しみたい」という仲間は、さらに増えることは確実です。仲間が増えれば、11人のサッカーチームを構成するのも難しくありません。そのままその仲間を育ててゆけば、生涯サッカーを楽しむことも夢ではないでしょう。
 文面から察しますと、学区内中学校のクラブが、息子さんとご家族にとってふさわしいものとは、私には思えません。ご家族でいろいろな道を探してみてください。



 
部活の方針に疑問

 息子の中学のサッカー部は 現在サッカー経験の無い先生が顧問で、練習にもあまり現れる事もなく、ほとんど子供達だけでの練習が毎日続いているようです。上級生からの指導や、自分達で注意しあったり、練習試合の時などは自分達で作戦を考えたりと、どうにかやってきたようですが、専門的な指導はここ半年受けていないようです。
 それでも中学の部活だし、自分達で考えるサッカーをすることは、今後いつか役に立つ事もあるんじゃないかと思ってきました。

 しかし、秋になり3年の先輩達が引退すると、何を考えたのか顧問の先生が、同じ中学の中で他のクラブチームに所属している子供達を、部活に参加させ始めたのです。理由は指導者がいないから、クラブチームの子供達と一緒に練習すれば刺激を受けるし技術面でも習うところがたくさんある、県大会レベルでなければ試合にも出てもらって勝てるチームができるというのです。(登録はクラブチームらしいです)
 しかし、クラブチームの子たちは当然部活よりも、クラブ優先なわけで、平日、土日と来たり来なかったりと、中途半端な関わり方です。今まで弱いながらも一緒に一生懸命やってきたチームメイトより、上手いクラブの子達を優先させようとする先生の考えに、子供達も納得いかないようです。
 クラブ所属の子達も先生のそういった思惑が分かっているのか 部活にでてきても部活の練習を笑ったり、クラブの子達だけでボールを回したりといった具合で 到底お互い高めあうといった様子ではないようです。保護者同士でも色々と話題には上がりますが、中学の部活の事なので親がシャシャリでるわけにもいかず、どうしたらよいものか…?です。
('03.10 /心配な親)

 顧問の先生は、サッカー経験のないことを指導出来ない理由にしているようですが、要するにサッカーが好きではないからでしょう。経験の有無が指導とは無関係であることは、私自身がよい例だと思います。
 この先生に欠けているのはサッカーに対する情熱で、それは子供の指導全般に対する情熱のなさと、決して無縁ではないと思います。
 この年令の子供達に練習を任せるのは、当然無理があるでしょう。練習はおろか、試合の作戦まで自分達でたてなくてはならない子供達が、本当に可哀想です。私の本にも息子が中学校の部活に在籍していたとき、似たような境遇に置かれて困った記述があります。
 今回のケースでは、クラブ在籍の子と部活在籍の子という対立関係のおまけまでついています。指導を放棄した教師と、それを忌々しく思いつつも、どうにも出来ない保護者。その狭間で、さまよう子供達…。悪しき日本の一縮図を見る思いです。

 実は今回のご相談は、「私の手におえない」問題です。私の息子のときにもいろいろ悩まされましたが、結局どうにも出来ませんでした。「部活を辞めるも地獄、残るも地獄、ネコが恐くて誰も鈴をつけられない」という八方ふさがりの状態です。
 自分の手に余る問題は、普通はここに掲載しません。それでもあえて載せたのは、本来なら心身の健やかな成長期にあるべき子供達を取り巻く状況が、現実にはいかに悲惨であるかを、広く知っていただきたかったからです。相談者の方にはただ載せるだけで何の解決策も示さないことを大変申し訳なく思いますが、このコーナーは大変多くの方々に読まれていることが最近分かってきましたので、ただ載せることにも、今回は充分意味があると判断しました。



 
親とコーチとの距離

 はじめまして!息子は地域のクラブチームに所属する小6です。サッカーが大好きで、中学になっても、今所属しているチームのユースに行くんだとはりきっています。今日は、親とコーチとの距離について質問させていただきたいのです。
 私はどちらかというと人付き合いが上手なほうではなく、チームのお母さんたちとはよく話をするのですが、コーチたちとは挨拶程度で世間話をしたこともありません。試合や遠征の細かな情報もお母さんたちから耳に入ってしまうので、改めてコーチに聞くこともありません。でも見ていると、練習の始まる前や後などにコーチたちと上手くコミニケーションをしている人も少なくなく、中には常にコーチたちのそばにいる人もいます。
 親のこういう姿勢って、やはり子供には必要なのでしょうか?練習や試合の応援だけではダメなのでしょうか?こういうことが子供を伸びなくしているってこともあるんでしょうか?つまらない質問ですがちょっと考えてしまいます。
('03.12 /控えめママ)

 親とコーチとの距離に関しては、かって私がその両方の立場だったこともあり、いろいろと悩まされました。結論から申しますと、「ほどほどの距離」が最も望ましい関係ではないかと私は考えます。
 別コーナーにある
「手探りベンチワーク」にも詳しく書いてありますが、親とコーチとがあまり深い関係に陥ってしまうと、チームにとってしばしばよくない結果をもたらします。チームへ協力を見返りに、我が子を偏重することを暗に要求してくる親さえいます。お互い人間ですから、過度な期待を知らず知らず相手にしてしまうのでしょう。
 しかし、すべて任せきりで、試合の応援にすらこない、という態度も親としてはどうかと思います。親とコーチとの関係で望ましいのは、互いに過度な期待はせず、適当な距離をおきつつも、チーム運営での最低限の協力をすることではないでしょうか。

 緊密な関係をコーチと結ぶことと、子供のサッカーが伸びる伸びないとは、無関係であると私は思います。少なくとも、まともな指導者であれば、親しい親の子を試合で偏重するようなことはしません。ただ、親が練習や試合をたまに見にくるのは、大切なことです。
 グランドには、出来るだけ顔を見せてください。それは指導者の心の張りにもなります。このとき、コーチとは目があったら会釈する程度でいいと思います。誰がグランドに来ているか、指導者は見てないようで、ちゃんと見ています。特に目立たずとも、時折顔を見せる親であれば、(家庭でサッカー活動を大事に考えてくれているのだな…)と、指導者は好意的に感じるはずです。
 私の経験では、子供のサッカー活動に全く関心を示さない親の子は伸びません。サッカーや子供に限らず、人間の社会活動すべてに言えることだと思いますが、自分の打ち込んでいる事柄に愛する家族が関心を示し、理解してくれることはとてもうれしいことで、それは生きる張りにもなり、打ち込んでいる活動そのものにも、必ずやよい影響を与えるはずです。



 
自主トレの具体的な方法

 今僕は中学3年です。高校は推薦でほぼ決まりました。入部予定のサッカー部で練習をやりたいんですが、まだやらしてもらえません。3月ぐらいからやってもいいと言われております。3月までの3ヶ月間で出来る自主練習の良い練習メニューはないでしょうか。場所はあまり車が通らない道路くらいしかないのですが…。
('04.1 /VOD)

 ご質問の件ですが、「練習場所があまり広くない」「一緒にやれる仲間がいない(たぶん)」という条件となると、練習方法はかなり限られてくると思います。住んでいる地域がよく分かりませんが、雪や氷の条件が特に厳しくなければ、平凡ですが、まずは心肺機能を鍛える意味での毎日のランニングが基本となるのではないでしょうか。
 ただ漫然と走るより、距離を少しずつ延ばしていったり、日によってコースを変えたり、ダッシュとスローランニングをくり返す走法が、より実践的で飽きがきません。まず最初は普通のランニングから始め、徐々に実践的なものに変えていってはいかがでしょう。
 実際にやってみれば分かりますが、真冬の雪国であっても、その気になればほとんど毎日外でのランニングが可能です。

 次に考えられるのが、筋力のキープ(あるいはアップ)です。実践練習の中で鍛えるのが難しい感じですので、たとえば家の中の柱か机の脚に自転車のチューブを二つ割にしたものを結び、もう一方を左右の脚に入れて引っ張りながら鍛えます。中3なら身体は完成に近づいているはずなので、かなりいじめてもいいでしょう。(自転車チューブがもしなければ、古いものを自転車屋さんでタダ同然で分けてもらえます)
 この自転車チューブによる「シャドウキック」は、私や息子がオフシーズンに試しましたが、結構効果的でした。同じ脚ばかりでなく、左右同じ回数均等にやること、また、インステップだけでなく、インサイドもきちんと形を作ってやることがポイントです。

 このほか、ボールを使ったリフティングもボール感覚を保つうえで大切です。外で出来ないときは、ビーチボールやテニスボールなどで代用しましょう。本当にやる気なら、紙屑を丸めたものでも構わないと思います。
 これなら家の中で、いつでも出来ます。私は40代チームに入れてもらう前、冬は毎日ビーチボールで のリフティングを欠かしませんでした。相当の効果があったと思っています。

 以上は具体的ないくつかの練習方法ですが、この時期で一番大切なのは、「毎日目的意識をもって練習に励んだ」という事実そのものです。目に見える効果がすぐに出なくとも、この事実を自分の中でしっかりおさえておけば、いつか必ず何らかの形でそれは花開きます。それを信じて、練習に励んでください。

 ありがとうございます。教えて頂いた具体的な内容を主に実行し、自分でも新に良い練習方法を見つけていきたいと思います。それとかさねて質問なんですけど、ある期間活動して身についた体力は一度活動しない期間があると衰えてしまうのですか?

 さらなる質問、「ある期間活動して身についた体力は、一度活動しない期間があると衰えてしまうのか?」の件ですが、残念ながらスポーツ医学には詳しくありません。成長期にある人間と、私のように中年から老年に至る途中の人間とでも条件は違うでしょう。
 新聞で読んだのですが、(スポーツ医学の専門家の話)暑さ寒さに慣れるのは、普通の人間でおよそ3ヶ月だそうです。つまり、九州で生まれ育った人が、コンサドーレ札幌などの北国のサッカーチームに来て身体が慣れるには、3ヶ月かかるそうです。
 反対に、いったん慣れてしまうと、たとえ九州の人間でも暑さにはまるで弱くなってしまうとか。これはあくまで運動生理学の話だと思いますが、もしこの論理が運動機能にもあてはまるとすると、運動をやめて3ヶ月すると、元の状態に戻る、という論理になります。これをもう一度元に戻すには、同じトレーニングメニューでも3ヶ月かかることになります。この間、休まずトレーニングしてきた人は、さらに3ヶ月分前進していることになりますから、追いつくには相当の期間がかかることになります。

 HP内連載に詳しく書いてありますが、私の息子が中3〜高1に進む折、3ヶ月以上何もトレーニングをしない時期がありました。(合格で気持ちがゆるんだ)このため、休みなくトレーニングをしていた選手に大きく遅れをとったことがあります。この遅れが、その後の息子の高校サッカーに、大きな影響を与えたかもしれません。
 ですから、将来に対して何らかの目的意識があるなら、他人はどうあれ、自分で決めた練習メニューを粛々とこなすべきです。ニュースとしてのとりあげは小さいですが、サッカーに限らず、秀でた選手は必ず地道なこうしたトレーニングを怠りません。

 わかりました。目的意識をしっかり持ち、日々地道にトレーニングしていきます。ありがとうございました。



 
フリーキックの上達法

 ぼくの名前はタケルです。小学6年生です。サッカーのフリーキックを教えてください。
('04.1 /タケル)

「サッカーのフリーキックを教えてください!」とメールにあるけど、フリーキックの何を教えて欲しいのかがよく分かりません。でも、おそらく「ゴール前で直接ゴールを決めるフリーキックの上達法を教えて」ということだと思います。
 とりあえずその練習法を書くけど、私はプロの選手でもないし、プロのコーチでもありません。自分がやってみてうまくいった方法を書くだけです。もっといい方法があるかもしれません。そのつもりで読んでください。

 まず、20メートルくらい(君の年なら、大またであるいて歩いて30歩くらい)の距離で、ねらった場所に正確にボールを当てる練習をします。コーチ時代に私が自分や子供にやらせた場所は、失敗してもボールがすぐに戻ってくる高いネットのある場所です。練習をやっていない日の野球場のネットがいいと思います。
 高さ2メートルくらいの場所にしるしになる布切れなどを引っ掛けます。なるべく目立つ色で、大きさは50センチ四方くらい。着ているジャンパーや古いビブスなどがいいでしょう。ここをねらって地面に置いたボールを蹴ってぶつける練習をします。
 キックはインステップかインフロントです。将来カーブをかけてぶつけることを考えるなら、最初はインステップでも、少しずつインフロントに変えていきましょう。10回やってまず最初は半分くらい、次は7回くらいはぶつけられるように練習します。友達や家の人と一緒に、「何回当てられるか?」と競走すると楽しくできます。
 10回やって10回ぶつけられるようになったら、試合でもほとんどねらった場所に決められるはず。ゴールの右上か左上に(ここにしるしがある…)と想像して蹴れば必ず入ります。

 上達するには、まず足首をかたく固定すること。足首がぐらぐらしていては、どんなキックもうまくいきません。次に、ボールの中心を正確に蹴ること。そのためには、インステップでのリフティングを連続100回くらい出来るように練習しましょう。
 カーブをかけるには、インフロントキックでボールを包むようにして、少しだけボールの蹴る位置をずらすんだけど、これはまず「中心を正確に蹴る」という基本が出来てからやる練習です。
 あと、大切なのは、蹴る前に自分の頭の中で、地面から目標までのボールのコースを強く想像(イメージ)することです。想像したボールの線にそってボールをのせるような感じです。ねらった通りのコースにボールがのれば、必ず目標に当たります。

 フリーキックの練習は、チーム練習のない日や、早く終った日にやりましょう。チーム練習の時間は、コーチや監督のたてた練習メニューをやらなくてはいけません。一日にあまりたくさん練習すると、君の年だと足に負担がかかりすぎるので、たとえば一日50回くらいまでと決めて練習しましょう。
 このほかにももっといい練習法があると思うので、チームのコーチに相談したり、本を読んだり、インターネットで調べたりしてみてください。
 フリーキックに限らず、サッカーの練習で「こうしたら明日からすぐにうまくなる」という便利な方法はありません。正しい練習を少しずつ続けいくのが一番大切なことです。タケル君のサッカーの上達を祈っています。



 
子供にとって一番良いチーム

 はじめまして、近畿地区に住む小学2年生の子供を持つ父親です。最近、息子のサッカーのことで結構真剣に悩んでいることがあります。
 息子は小学校に入学すると同時に、「サッカーがやりたいと」言い始め、地域のサッカー少年団に入団しました。私は元々サッカー好きではあったのですが、最初の1〜2ヶ月はそれほど熱中することはありませんでした。しかし今では立派な親馬鹿です。熱中し始めてからは、時間さえあれば一緒に練習をし、時には度を越して子供が泣いたりすることもありましたが、息子本人も上手くなりたい気持ちからか、嫌がることなく練習しているように思えます。
 入団から半年が過ぎた頃、地域のJリーグのJrチームの試合を観戦しました。あこがれのユニフォームを着たお兄ちゃん達の姿を見て、「僕も入りたい」と息子が言い、私も子供にあのユニフォームを着せたいと思うようになり、二人の目標は、3年生の終わりに実施される「セレクション合格」に決まりました。
 それ以来、週末にある少年団の練習以外にも、平日に2日間スクールに通っています。その成果あって、2年生になった時からずっと、1学年上(3年生)の試合でも常にレギュラー(フォワード)として試合に出ています。

 今の少年団チームの紹介をすると、はっきり言ってあまり強くはなく、どの学年も試合では2回戦どまり。団の盛り上がりもあまりなく、託児所と勘違いしている親御さん達も少なくありません。
 ただ息子の学年だけは、私と同様な馬鹿な親が数名いて、他の学年より盛り上がっていますし、殆どの子供が保育園時代からの付き合いなので、気兼ねなく楽しくやっています。それでも4〜5人以外の子供は、「本当にサッカーがやりたいのか?」と疑問を感じるくらいで、息子も私もその点は「歯がゆく」思っています。
 セレクションを1年後に控えた最近、状況が大きく変わりました。目標だったJrチームは、今年から新4年生の募集は行わないことになったのです。ある意味、目標を失いましたが、「このまま今のチームでがんばるか、他のチームに移るか」を考えるようになりました。どちらを選ぶにしろ、「経験」という意味で幾つかのクラブチームに問合せをし、何度か体験入部を行いましたが、私と息子とでは感じ方が変わって来ました。

【息子の考え】
・地元JリーグJrチームに入れないなら、他の強いチームに移りたい。
・今より強いチームに移り、上手い友達と練習することで、自分も上手くなりたい。
・新しいチームに移っても、友達はずぐ出来ると思う。
・今のチームの友達とは学校で遊べるし、別れても平気。
・3年生になるまでに移りたい。

【私の考え】
・地元JリーグJrチームに入れないなら他のチームに移ってもいいが、今のチームを盛上げて強くする選択もある。
・今のチームなら多分、常に上の学年の試合にも借り出されるので、息子にとってはプラスに思える。
・他のクラブチームに体験入部した感触では、同学年ならどのチームでもそこそこやれるとは思うが、上の学年では難しいかもしれない。
・全く知らない親御さん達と、一から関係を築くことが少し億劫に思える。(妻も同感)
・見学したクラブチームの練習内容は、3年生までは大差が無く思え、移るのは、練習量が増す4年からでも遅くないのでは、と思う。また土曜日は練習が無いことを考えると、3年生まではむしろ今のチームの方が良いのではと感じる。
・しかし高学年(4年以上)で今のチームとクラブチームとを比べた場合、力の差は歴然である事実を考えると、早くから移った方が良いのでは、とも思える。

 他の方の相談に対するTOMさんの回答に、「技術ではなく自立した精神」が大切であると書かれていました。息子はまだまだ「自立した精神」は養われておらず、「サッカーは私にやらされている」感さえ、たまにあります。息子の気質・性格を考えると、確かにどこに行っても直ぐ仲間になれると思います。ただ、「お調子者で新しいもの好き」なだけに、「今の息子の考えだけを尊重して結論を出してよいものか」、「器用ではあるが逆境に強いとは思えない」、などと考えていると、何を基準に決めればよいのか分りません。
 クラブチームに移ると、「お金や時間が掛かる」、とよく言われますが、そういった外的要因で判断するのではなく、「息子にとって何が一番か」を考えて決めたいです。
 長々と支離滅裂な文章を書きましたが、悩んでいるのは確かです。良いアドバイスを頂ければ幸いです。
('04.1 /迷う父)

 いただいたメールの内容に関して、ずっと考えていました。とても難しい問題で、本来なら家庭内で十分話し合って決めるべき問題とは思いますが、もし私から何らかの助言をするとするなら、ずばり「ひとまずより強いチームに移るべき」かと考えます。
 息子さんは基本的に強いチーム指向、しかしご両親はサッカー以外のもろもろの問題を考え、いまひとつ踏み切れない、そんなところだと推測いたします。
 ただ、仮にここで「いまのままチームに踏み止まる」という選択をしたと仮定してください。厳しい見方をしますと、「現在のチームを盛りあげて強くする」のは、至難の技のような気がします。何年たっても2回戦どまりという状態が続くというのは、おそらくそれがコーチや監督の指導方針に起因しているからだと思います。
 かっての私の指導方針とは多少異なりますが、チーム方針としてそれが悪いとは決して思いません。強く勝ちを意識せず、楽しくサッカーを続けるというのも、立派な指導方針のはずで、「託児所と勘違いしている親がいる」というのも、そんなチームの居心地がいいからに他なりません。

 しかし、そんなチームは、上昇指向の強い子供や親にとっては、不満がたまることでしょう。もしチームを移らず、このまま卒業まで今のチームでサッカーを続けたとします。その結果が満足出来ないものだった場合、おそらく(あの時点で強いチームに移る選択をしていれば…)と、親子で後悔するのではないでしょうか。
 ですから、迷っているいまこそ、出来るだけ強いチームに移り、子供さんがそこでどんなサッカーをみせるか、1〜2年は様子を見てみるべきだと思います。親同士の人間関係や、サッカーとは直接関係のない煩わしさなどを理由に子供の上昇指向に蓋をしてしまうと、息子さんが成長したときに、何らかの形でしっぺ返しがくるかもしれません。
 数年たって、もし親も子もそのチームでの居心地が悪くなった場合、その時点でもう一度考え直しても、まだ決して遅くはありません。仮に息子さんの動機が単純な「ヒーロー願望」に過ぎないものだったとしても、自分で何かをしたいと言い出しているいま、まずは親が手を貸してやるべきではないでしょうか。

 ご丁寧な返信、そしてアドバイス、大変感謝しております。メールを拝見し、「クラブチームに移ろう」と、決心がつきそうです。また、私は息子がクラブチームに移ることを、誰かに賛同して欲しかっただけなのかもしれません。
 実は昨日、目当てのチームに、2度目の体験入部に行きました。1回目は、友達もいない環境での練習に息子も緊張していたらしく、いつもの調子ではありませんでした。先日のご相談はその直後で、チームを替わることに私自身も少し弱気になっていました。
 息子自身も、「前回はいつものようにできなかったけど、今日は頑張る」と言った通り、昨日は全く問題なく、むしろ緊張感をもって練習したことで、普段より良くみえました。初対面のコーチにも、「キレてるねー」と言われ、息子も満足し、私もこのチームでも十分やれることを確信しました。
 何より私が満足したのは、練習が終わった後、息子が一人で(まだ友達はいない)リフティングやキックの練習を延々続けていたことです。他にも何人かの子供が残って自主的に練習をしていたのですが、今のチームでは考えられない光景です。
 私はほぼ決心がつきましたが、息子はまだ見学したいチームがあるらしく、それを見て決めることにします。ただ私には、今のチームへ「辞める」ことを伝える仕事が残っています。現在のチームを盛り上げようと団長には色々と意見してきたため、ちょっと言いにくいのは確かですが、これは息子には関係ないことです。

「菊地さんのHPに出会えたこと」、「今回のご相談のこと」、「私と同じ(いやそれ以上)ような親御さんがたくさんいること」、どれも私にとって、大変有意義でした。また、ご相談させて頂くことがあるかもしれません。宜しくお願いします。



 
親子で楽しいサッカーをするには

 はじめまして!4年と2年のサッカー小僧を持つ母です。今の6年生が卒業すると4年生6人、以下3年から1年まで6人の合計12人になります。それで、合併の話を保護者の方から指導者に出しても、なかなか話を進めてくれません。監督は今のチームをつぶしたくないようで、子供が一人でもいたらこのままやりたいようです。
 合併先は、以前監督をして下さっていた方のチームです。以前の監督は学校の教師で転勤されました。今の監督はお父さん監督です。新5〜2年で試合をしていくのも、下の学年にとってはかなり負担になります。子供は同じ学年同士の練習もしたいと言ってます。どう思われますか?

 もう一つ、新5年で保護者の代表を決めるのですが、うちの子がキャプテンに選ばれたので、親も代表と決められそうなのです。二年前の夏に入部したばかりだし、下に3歳の妹もいます。他の方は4年の子が一番下の方ばかりで、サッカーの保護者歴も6〜8年ある方ばかりです。仕事も皆で分担するので代表という名前だけでいいからと言われますが、名前が重すぎて…。だだをこねて代表からははずしてもらい、会計をすることになりました。ちょっと大人げないですが、どうしても嫌だったので断りました。
 でも新5年の保護者の中ではすごく気まずくなって、この先2年間もこのメンバーでやっていく自信を無くしました。私の気持ちを理解して代表を代わってくれたのではないようです。いっそ、親の当番や役のないクラブチームに移ろうかとも考えましたが、子供のために親は我慢しなくてはいけないのですね。親の都合だけで子供を移籍するのは良くないですよね。
 下の子はチームを変わって同年代の子とサッカーをしたいと言いますが、上は変わりたくないようです。近くで練習しているクラブチームは、今より弱いチームです。練習回数も試合もかなり減りますが、基本的なことはしっかり教えてくれそうです。
 応援するのは大好きで、子供が試合をしてるとなれば、どんなに遠くても時間の許す限り見に行っていました。親子共に楽しいサッカー生活をするためにどうすればよいのか悩んでいます。情けない親の質問ですが、お返事お待ちしております。
('04.2 /情けない親)

 ふたつのご相談が含まれていますが、まず最初のチーム合併の話は、基本的に指導者の意向に沿うべきだと私は考えます。コーチの仕事には喜びもありますが、端で見ているほど楽なものではありません。「保護者が合併話を出しても、進めてくれない」「子供が一人でもいたらこのままやりたい」という意思表示を指導者がしているということは、おそらくそれなりのビジョンがあるからでしょう。近隣のクラブチームよりも強い、ということからもそれは推測出来ます。
 6年生がいなくても、メンバーが12人いてチームは成立しています。ここ1年は苦しくても、やがてはよいチームに仕上がっていく可能性を感じます。子供は上級生に混じってやるサッカーは辛くて最初はいやがるかもしれませんが、ぬるま湯的な環境よりはましと前向きにとらえるべきでしょう。
 私も過去に女子チームで6年生が一人もいない時期を2度経験しましたが、1年辛抱してよい結果に結びつけたことがあります。長い目で見るべきだと思います。

 次に新5年の代表問題ですが、ずばりあなたは代表を引き受けるべきだと思います。息子さんが新キャプテンに選ばれたということは、おそらく新チームではナンバーワンの実力があるからでしょう。そしてあなたはそのお子さんの親です。まだ5年生なのに、選手の代表としてチームを引っ張っていかなくてはならない息子さんを、親として出来る限り支えてやるべきではないでしょうか。
 保護者はあくまでサッカーでは脇役ですが、キャプテンの親が務めるのが最も波風がたたず、チームはまとまります。私は過去にそうした例をいくつも見てきました。
 私がコーチをしていた時期は、まずキャプテンを指名し、その親が保護者代表になるよう働きかけました。この根回しが何らかの理由でうまくいかなかった場合、その年のチームの成績は、決まって低迷しました。キャプテンとか代表というものは、そういうものだと思います。新5年の保護者の方々は、そのことを敏感に察知し、あなたに代表を頼んできたのです。その選択は正しいと私は思います。
 あなたは下に小さい子がいるとか、入ってまだまもないとかを理由にして辞退したようですが、それはたいした理由にはなりません。いまからでも遅くありません。チーム内の事情を知るしかるべき人(現代表か監督)に間に入ってもらうなどして、ぜひもう一度代表を引き受けてください。新5年なので、1年の期限つきでまず受け、来年になったらどうするか、またその時に考えればいいことです。6年生がひとりもいないので、仮に代表を受けて成績が低迷したとしても、誰もあなたを責めはしないでしょう。失うものは何もありません。
 逆に代表を進んで受けたことで、息子さんのサッカーは間違いなくよい方向に進むはずです。子供は大人が考えているよりもはるかに敏感ですから、(お母さんが代表を逃げた)という既成事実を作ってしまうと、息子さんのサッカーには悪い影響を与えると思います。

 私は過去に代表も会計も指導者も経験していますが、親が進んでこうしたチームの役職を引き受けると、子供は確実に成長しました。ホームページ内にある手記にも書いてありますが、私がコーチを引き受けた年のチームの躍進は、当時キャプテンだった息子の目のさめるような働きなしには考えられず、それは私が責任ある立場を自ら引き受けたことと、密接につながっています。私の本のタイトルにもありますが、私は息子に目にはみえない確かなものを、「残した(伝えた)」と確信しています。
(子供のために親は我慢しなくてはいけないのですね…)と、あなたは相談メールの中で自ら語っています。代表を逃げたことを悔やみ、できればやり直したいと考えているのは、あなた自身のはず。ここは勇気をふるってください。息子さんと一緒になって悩み、喜び、チームをまとめていってください。その決断は子供さんを成長させ、あなた自身の将来にもきっとプラスに働くはずです。