縄文の日々をめざして


 
マイクスタンド用譜面台ホルダ.... 2010/秋



 長崎在住の音楽仲間、いちろうさんが「譜面台に小型マイクをつけて歌う」というユニークな試みをしていて、その顛末がブログに詳しく掲載されていた。小型マイクの指向性に問題がある、という結論だったが、「なるべくシンプルな機材で、身軽なライブをやる」という一点では共感できた。
 実は以前から私も「マイクスタンドと譜面台とを一体化できないか?」と画策していた。ブログを読んで閃くものがあり、さっそく試してみた。

 私がかねてから考えていたのは、「マイクスタンドに譜面台の上部分だけを固定する」というもの。小型マイクは持ってなく、以前に使ったときにやはり指向性に不満を感じた。
 ライブでマイクスタンドと譜面台が2本並んで立っているのが問題で、マイクスタンド1本で済むなら、まあ許せる。外観がすっきり落ち着くし、搬入機材も減る。組立て調整時間も短縮するはずだ。以前にマイクスタンドを利用して照明を取付けたり、スピーカーを取付けたりしたことがあり、その強度はお墨付き。
 似た用途の市販品もあるが、図体が大きく、外観が野暮ったく、しかも高価で、買う気になれない。スピーカーを固定する際に作った木製ユニットを参考に、専用の譜面台ホルダを自作した。

 最初に作ったのは、あり合わせの木材を使った箱形の手製ホルダ。マイクスタンドの中間パイプをボルトで挟みつける形で、反対側には譜面台の上半分だけを差し込む穴を開けた。
 実戦で二度試したが、なかなか使い勝手がよい。事前に組立てておけば、調整なしですぐに歌い始めることができる。撤収も簡単で、そのフットワークのよさがすっかり気に入った。

 しかし、使っているうちに見栄えが気になり始めた。木製箱形の外観が、メタリックなマイクスタンドや譜面台とは不釣り合いで、妙に浮いて見える。せっかく外観を整えたのだから、ホルダの見栄えもすっきりさせたくなった。
 要は径の異なるパイプを2本抱き合わせ、一方をマイクスタンドの中心軸に通し、もう片方に譜面台の上端部を差し込んでやれば用は足りるはずだ。道具箱や物置をひっくり返し、ぴったりくる部品を発見。さらなる改良を試みた。


使った材料(写真1)
・内径11ミリ紙管(1/2感熱FAX用紙の芯)11cm
・内径17ミリ紙管(アルミホイルの芯)11cm
・不要になった靴ひも(黒)40cmくらい
・黒ビニルテープ、木栓(端材利用)、木工用ボンド

(各内径はマイクスタンド中間パイプ外径15ミリ、譜面台軸外径10ミリの場合の数値)

1)木材を削って内径11ミリ紙管の端部に栓をし、木工ボンドで固定。同時に、2本の紙管相互を木工ボンドで固定。(写真2)

2)紙管が乾燥したら木栓をノコで切り捨て、黒の靴ひもに木工ボンドを塗りながら、ラセン状に巻き付けてゆく。色は好みで変えてもよいが、「遠くから見て目立たなくする」という観点から、今回は黒を選択した。(写真3)

3)実際に組立てたところが、写真4。譜面台の軸がやや緩かったので、紙管端部内側に黒ビニルテープを巻き込み、調整した。

 一体化の弊害として譜面交換時にノイズを拾ってしまうので、譜面台内側下端に5ミリ厚のスポンジを両面テープで貼った。写真を見ると分かるが、見栄えを軽くするため、パイプのブーム部分を50センチまで切り詰め、端部についていた樹脂製握りも取り外した。
 つけたままで移動可能なので、キビキビと使える。DIY難度はそう高くなく、5段階中の2程度か。紙管の長さは、歌い手の身長と使うマイクスタンド、譜面台によって変化するが、調節なしでそのまますぐに使える長さにしておくべきだろう。

 紙管はすべて不要品のリサイクルでまかなったが、入手不可能であれば、マイクスタンドと譜面台軸の外径より一回り大きい内径を持つ、他のパイプ等を手に入れるしかない。塩ビパイプ、ステンレス管などで、適当な内径のものが市販されているが、この場合の接着剤は金属用ボンド等になることは言うまでもない。



 
ギターブリッジの交換.... 2010/秋



 2009年夏にブリッジがまっぷたつに割れて使用不能になったS.yairiのエレアコがある。2万円という廉価品の割に音はそれなりに良かったが、ブリッジの交換修理を外注に出すと、軽く2万円はかかることを知った。
 修理費が購入価格と同等ということで、骨董的品や強い思い出のある品でもない限り、修理する意味がない。しかし捨てるにも忍びないので、木製のハンガーを手作りし、長く2階スタジオの壁に装飾品として吊るしてあった。

 ある日ふと、(自分でブリッジを交換してみようか…)と思い立った。音自体は悪くないので、もし自分で直せるとしたら、まだまだ実戦で使えるでは?と考えた。使えるギターは2台持っているが、常用するエレアコはオベーションだけなので、予備があっても悪くはない。
 部品の調達と具体的な修理方法を調べてみると、ブリッジそのものは送料込みでわずか960円で買えることが分かった。問題は修理方法だが、こちらも多くの方が写真つきで懇切丁寧にその方法を掲載してくれている。すべてがプロの方だったが、何とか自分でやれそうな気もしたので、さっそく行動を開始した。(修理前写真1)


使った材料と工具(写真2)
・ブリッジ:「アコースティックギターパーツ」で購入。送料込みで960円。
・タイトボンド:ギター接着に適した木工ボンド。60ml入を350円で購入。
・5ミリのボルトナット×3:ブリッジ固定に使用。自転車部品を転用。
・スクレイパー:古いブリッジをはがす工具。100円ショップダイソーに各種あり。
・電動ドリル、ドライバー

1)まずは割れたブリッジをきれいにはがす。ブリッジを固定してある接着剤は水分と熱を与えるとはがれやすくなるのだそうで、濡れたティッシュで2日間覆い、充分に水分を与える。ティッシュを常に濡らしておくために、日に何度かスポイドで水分を補う。(写真3)

2)魔法瓶に熱湯を入れ、幅25ミリのスクレイパーを随時暖めながら、割れたブリッジと本体の隙間に少しずつ差し込んでいく。割と簡単にやれたのでつい油断してしまい、最後のほうで塗装の一部をはがしてしまった。全周囲からじわじわ攻めるのが良さそうだ。この工程が最も難しい。(写真4-5)

3)新しいブリッジの穴を5ミリのドリルで開け直す。さらにピックアップ用ケーブル穴を3ミリのドリルで開ける。(写真6)

4)タイトボンドと5ミリボルトを併用し、新しいブリッジを固定。固定用の穴を開ける際に本体の穴とブリッジの穴がずれないよう、ピンを差し込んで仮固定しながらやる。(写真7-8)

 1週間ほどおいて接着剤が充分に乾いてから弦を張ったが、弦を止めるピンを穴に差しこんでみると、小さすぎて半分しか刺さらない。そこで直径4.5ミリのドリルで穴を広げてみたが、それでもまだきつい。以前から穴は小さめだったが、思い切って5ミリのドリルにしてみたら、今度は少し大きすぎた。
 最終的にはビニールテープを半周だけピンに巻いて対処したが、少し小さめの状態から、テーパー状のキリなどで、じょじょに広げるほうが無難。


 いざやってみるとほかにも問題があって、弦の響きを本体に伝える「サドル」と呼ばれる大事な部品が、新しいブリッジに合わない。幅はOKだが、厚みと高さが全く違うのだ。
 交換したブリッジはマーチン型で、サドル幅は2.5ミリ。本体もかなり厚くて頑丈で、溝の深さも浅い。ところが既存のS.yairiのブリッジは、幅が3ミリで本体も薄く、サドル用の溝も深い。相対的にブリッジが脆弱になり、数年で割れてしまった理由は、そこにあった感じがする。

 既存のサドルは幅も高さも相当削らないと新しいブリッジには合わないが、以前に交換したモーリスのサドルが保存してあったことを思い出し、合わせてみたら計ったようにピッタリ合う。
 仮固定して本体からサドル先端までの高さを測ってみたら、従来とほぼ同じ。何でも捨てずにとっておくものだ。

 全部張り終えてチューニングし、12フレットでの高さを測ってみると、1弦で約2.7ミリ、6弦で約3.7ミリといったところで、手持ちのオベーションとほぼ同じ数値。サドルを削ればもう少し下げられるかもしれないが、別の弊害が怖く、ひとまずこれでよしとした。
 アンプにつないで10曲ほど弾き語ってみたが、現時点では問題なく弾ける。1年3ヶ月ぶりなので記憶は薄れていたが、音もほぼ同じ印象である。もう少し様子を見る必要はあるが、現時点では「修理成功」と位置づけてよいのではないか。
 生音もアンプにつないだ音も7万円のオベーションにはかなわないが、S.yairiの良さはカポをしてもほとんどチューニングが狂わないこと。今後実戦で使う機会があるかどうかは分からないが、非常時の予備としての役割は果たせる。
 何よりも「最小限の費用で自力でブリッジを交換した」というチャレンジスピリッツにこそ、今回の作業の大きな意味があるのだ。



 
フットタンバリン.... 2010/冬



「足で叩くタンバリン を作ってみよう」と、不意に思った。この種の思いつきは他の創作活動とも意識下でつながっていて、ある日突然のようでいて、実はごく自然な流れだったりもする。
 きっかけはギター弾き語りに取り入れようと練習し始めたブルースハープ(ハーモニカ)から。
(ギターを弾きながらハーモニカが吹けるなら、タンバリンも同時に叩けるのでは…?)と思い立った。以前に、何種類もの楽器を一人で同時に演奏する不思議な大道芸を目撃したことがある。
 とはいえ、両手はギターでふさがっているし、口はハーモニカかボーカルで忙しい。残っているのは足くらいだが、この足で何とかタンバリンを叩けないだろうか?というのだ。

 実は5年前に買ったまま、冬眠状態に陥っていたタンバリンが手元にある。そもそもこのタンバリン、「フォーク土俵祭り」というイベントに出演した際に事務局からいただいた音楽ギフト券で買ったもの。タイ製の木製で、数種類試した中では音が非常に良かった。ギフト券をめいっぱいに使い、価格は2,000円ほど。
 ギター関連グッズではなく、あえてタンバリンにした訳は、当時大半のライブにつきあってくれた妻が、「私もタンバリンでも叩こうかしら…」と血迷ったから。気が変わらぬうちにとさっそく調達したが、いざとなると妻は尻込みし、単なる聴き手と写真撮影要員に目下専念している。
「互いの生き方、暮らし方に無理強いはしない」が、最近の夫婦間の暗黙了解事項であるので、その後タンバリンは静かな眠りについた。

 調べてみたが、足で叩くタンバリンの情報は少ない。以前にフットシンバルの支持台にタンバリンを装着して叩くのを見たことがあるが、これ以上大きな機材は増やしたくない。
「軽くてかさばらず」「端材で簡単に作れ」「つま先でも踵でも自在に叩ける」こんな難しい条件だが、最近の演奏スタイルでは、立っても座っても左足の踵でリズムを刻むことが多いので、ここで叩くのが狙いだ。

 いつものように、閃いたイメージを傍らのアイデアノートに鉛筆で記す。この種のアイデア推敲にはデジタル的なパソコンではなく、アナログ的なノートと鉛筆がよろしい。
 アイデアは割と簡単に形になったが、さっそく作った試作品は、木枠を組んでタンバリンを止め、ビスで緩く固定した棒を足で踏んで叩く構造だった。しかし、いざやってみると細い棒が踏みにくく、音もがいまひとつで、あえなくボツ。
 試行錯誤しつつ改良を重ねるうち、棒で叩くのではなく、広い板にタンバリンを固定し、下に小さな突起をつけて全体の「ガタつき」を利用して揺さぶってやれば音は出ることに気づく。

 夜半までかかって作業にふけり、ひとまず完成。構造は非常に単純だが、この種の仕掛けは単純であるほど壊れにくく、使いやすいものである。
 私の大学での専攻は建築でもデザインでもなく、堅いイメージの機械だが、もしかするとこうした機械屋のシンプル発想は、人生の随所で活きているかもしれない。あちこち回り道をしていまここにいるが、人生、無駄なものなどない。


使った材料
・タンバリン(タイ製TOCA、直径23cm×5.3cm厚)
・9ミリOSB合板、75×370
・ワンバィフォー材、75×43
・角材、10×18×75
・フェルト、ゴムラバー、ゴム管、ビス

1)タンバリンの径にあわせ、ワンバィフォー材の木片を端部から23センチの位置に直角にビス止めする。

2)タンバリンの持ち手の部分中央にドリルで3ミリの穴を開け、1)のパーツに内側から木用ビスで固定。(固定は1カ所だけで、他はあえて遊ばせておく)

3)10×18の角材を面取りし、1)のパーツの端部から20センチの位置に裏からビスで固定。この部分はフットタンバリンの支点となる心臓部で、角材の寸法と固定位置は、ガムテープで仮固定しながら実際に踏んでみて最適値を探った。

4)足で踏む部分に滑り止め用のフェルトをボンドで固定。

5)3)の角材に滑り止め用のゴムラバーをボンドで固定。自転車の古チューブを再利用した。

6)足から最も遠い部分に、直径12ミリのゴム管をビス止めする。これは踏むためのポジション(高さ)を低くし、なおかつ踏み終えたあとに反動で床に当たるノイズを低減させる役目も果たす。
 石油用の配管チューブを転用したが、ガスのゴム管なども使えそうだ。

 自宅でテスト演奏し、音に関しては妻からもお墨付きをもらったので、さっそく実戦で試してみたが、ほぼ問題なく演奏できる。
 座っても立っても使えるが、座った場合は左足踵で、立った場合は左足つま先での演奏が最もやりやすく、振幅も大きくなって音もいい。やっていると実に面白くて楽しく、久しぶりの高揚感に包まれている。

「真室川音頭」「お富さん」などの手拍子系の曲にはバッチリ合う。「カレンダー・ガール」「カントリーロード」などのリズミカルな明るいノリの曲にも、当然ながら合う。
「カレンダー・ガール」では、ブルースハープを加えたマルチ演奏も試みたが、まずまずの出来。(実際の演奏は下のYouTube動画をご覧ください)


 タンバリンと踏み板は一体化したので持ち運びに不便はなく、今後介護施設系のライブでも積極的に使いたい。あまりやっている人はないと思われる足踏み式タンバリン、名づけて「フットタンバリン」としよう。



 
可搬式ギタースタンド.... 2011/春



 可搬式ギタースタンドがあれば便利かなと、かなり前から思っていたが、価格と必要性を考えつつ、ずっと購入を先送りしてきた。
 最近になって再度ネットでチェックしてみたら、最も安い物で価格は送料こみ1,200円前後といったところ。かなり迷ったが、あれこれ調べるうち、何とか自分で作れるのでは?と思い立った。

 安く作るなら、やはり得意の木材加工に限る。簡単なスケッチを描き、しばらくアイデアの発酵を待ったが、いよいよそれを実行に移す時期がきた。


 可搬式ギタースタンドの条件は、軽くてかさばらないこと。小さく折り畳めること。それでいて、ある程度の強度も必要だ。当初のスケッチに従って材料を見繕ったが、手頃な寸法の9ミリ厚OSB合板の端材が見つかり、重さや強度の条件にも叶っているので、これを使うことにした。

使った材料
・9ミリOSB合板、240×290
・5ミリ厚角材、16×90×2本
・W30蝶番(真鍮製の薄いもの)1個
・蝶番用木ネジ、真鍮釘4本、ひも40cm×2本

1)OSB合板をノコでL字形×2本に加工。全体寸法は縦290×横200、部材の幅は約40。ギターの背があたる部分、長辺の内側を斜めにカット。(下の写真参照)

2)ギターの滑り止めとして、L字部材の短い方の端部小口に5ミリ厚角材を釘止め。木工用ボンドを併用する。

3)L字部材の長い方の頂点を突き合わせ、床に完全に広げた状態で蝶番を木ネジで止める。

4)L字の短い方の下部に5ミリの穴をそれぞれ2カ所開け、ひもを通して端部をしばる。

 最初のスケッチから微修正を加え、だいたいイメージ通りに完成。最初はビスや金具を一切使わず、L字部材2枚をひもだけで結ぼうと考えていたが、実際にやってみると頂点がぐらついてバランスが悪い。そこで頂点の部分だけに金属の蝶番を使い、ひもは下部に2本使うことにした。

 修正したスタンドに再度ギターをたてかけてみると、傾きが足りず、まだバランスが悪い。縦の寸法を290まで切り詰め、ギターの背があたる部分を斜めにカットすると、うまく収まった。写真にはないが、他の違うタイプのギター2台でも、それぞれ問題なく使えた。


 ひもは実寸400で、端部を結んで約300に調整。AUの携帯が入っていた紙袋の取手を転用した。蝶番も合板も余り物利用なので、コストはゼロである。

 重量を量ってみたら、約260g。大きさもA4版弱で、市販品よりもはるかに軽くてかさばらない。ギターのソフトケース外ポケットにちょうど収まり、使用テストもすでに済ませた。施設訪問ライブ用の段ボール箱にも入るので、今後出番が増えそうだ。

・今回のDIYは、こちらの市販品を参考にしました。