縄文の日々をめざして


 
木製セロテープ台.... 2010/冬



 仕事部屋にある事務机を改造し、袖机を新しく作った。ついでに周辺を整理整頓して机上はすっきり片づいたが、これまで違和感なく収まっていたプラスチック製のセロテープ台が、デザイン的に非常にアンバランスなことが気になり始めた。
 独立開業直後に買ったので、30年近くは経つ。仕事場がマンションだった頃は、立方体に近い近未来的デザインが場所によく似合っていた。しかし、新居は自然素材が中心なので、石油系素材ではいかにも浮いている。そこで思い切って部品の一部だけを使い、自然素材系の材料だけでゼロから作り直すことにした。

 いつものように、まずは閃いたアイデアを鉛筆でスケッチし、その案に沿った材料を見繕う。材料を見ながら推考を重ね、でザインの修正を繰り返す。いつもなら数回ででザインは決まるが、今回は確定するまで、かなり変更があった。

 基本はオモリとなる薄いレンガタイルを囲む形で木材の台を作ることで、ここだけは不動。オモリがないとセロテープを切るときに、台がぐらつく。
 セロテープ本体をはめる丸い枠は既存品のプラスチック部品を転用するつもりでいたが、こちらも木材を丸く切って作ることを思い立つ。試行錯誤するうち、丸く切らずとも、棒だけでも機能は果たせることに気づいた。

 その後、全体をカタツムリを模した形にすることを思いつく。作りながらここまでデザインを変更することはあまりないが、閃きこそが何より大事だ。
 かなり長い時間をかけ、写真のような「カタツムリ型木製セロテープ台」が完成した。


使った材料
・18×45無垢材(胴縁材):L=110×2本
・18×27無垢材:L=95、L=80、L=76各1本
・t19×95×95レンガタイル  ・L=35木用ビス7本
・セロテープ切断用金属パーツ(既存品を転用)

 作り方を簡単に記すと、以下の手順。

1)レンガタイルを挟むような形で、18×45無垢材L=1102本と18×27無垢材L=951本を木用ビスで固定する。今回はノコとノミを使い、一部に切り込みをいれて寸法を調整した。
 この加工で重要なことは、レンガタイルを完全に固定するため、木枠をわずかに小さめに作ること。その後ビスで固く締めつけると、びくともしなくなる。(締めつけるのは、全ての加工が終わったあと)

2)18×27無垢材L=80を木枠の中央やや後ろに木用ビスで固定。こちらも切り込み加工で中心軸を合わせた。

3)18×27無垢材L=76の中心にビスよりやや大きい穴をあけ、立ち上がった18×27無垢材L=80に固定する。この部材がセロテープ本体をはめる枠となるので、現物を合わせながら、寸法や角の丸みを調整する。
 部材はやや長めに切り、紙ヤスリで少しずつ削るとよい。

4)木枠正面のビスを最後に締め、全体を固定する。

5)正面部材の上端にノコで縦に切り込みを入れ、セロテープ切断用金属パーツを金槌で軽く叩き込む。

 完成後、さっそく試してみると、片手で簡単にカットでき、充分実用に耐える。テープの交換も簡単で、周囲のインテリアにもぴったりなじんでいる。
 動物を模したデザインが愛らしく、かなり気に入っている。セロテープがカタツムリの殻に相当し、切る部分がツノである。その下の部分は首で、土台が足というわけだ。
 もしかするとデザイン登録をして売り込む手段もあるかもしれないが、あくまで楽しみとして考えるのが身のためであろう。欲は人生をツマラなくしますから。



 
表札付郵便ポスト.... 2010/夏



 家を新築した10年前に作った表札付郵便ポストを作り直すことにした。前回のデザインは自宅を模したもので、気に入っていたが、経年変化で傷みが激しい。サイズもやや大きく、車庫に車をぎりぎりに入れると、出入りの際に邪魔になる。はめ込んだ表札にも、すでに家を出た3人の子の名前が入っていたりした。
「10年一昔」というが、10年という月日はいろいろな意味で、生活の見直しをすべき大きな節目なのであろう。

 思い立ったときにスケッチは描いてあり、それに沿って材料を見繕った。今回はデザインをがらりと変え、スリム型の方流れ屋根形状にしようと思った。(これまでのデザインは、自宅と同じ切妻型屋根)蝶番の一部をのぞき、ほぼ手持ちの材料でやりくり出来た。


使った材料
・t19シナランバー合板:前板をのぞく本体に使用
・t5ハードボード:前板と側板化粧、表札に使用
・t9松羽目板:前板化粧に使用
・t18×45×280松胴縁:表札吊り下げ部に使用
・t0.35カラー鉄板:屋根に使用
・その他取手用木片など
・W=25蝶番×6個  ・各種ビス  ・木用塗料

 作り方を簡単に記すと、以下の手順。

1)内寸法W240×D90×H300〜390で本体を作る。A4サイズの郵便物や新聞を縦に入れたいので、斜めにカットした部分の手前の最小寸法を300とした。
 底の部分は固定せず、内側にはめこむようにし、片側に蝶番2個で止め、下側から郵便物を取り出したり、内部の清掃ができるようにする。(下の写真参照)

2)ハードボードとt18胴縁で前板部分を作る。ハードボードの入手が難しい場合、同等厚のベニヤ板などを使う。

3)表札吊り下げ部の胴縁をいったん取り外し、裏側から表札を蝶番でつける。表札寸法は240×60とし、表札はパソコンのプリンタで印刷。ボンドで固定したあと、デザイン用透明ビニールシートをかぶせた。

4)前板と側板に化粧板を取付ける。

5)屋根を合板で加工し、全体を鉄板でくるんで短い釘で止める。

6)屋根を蝶番で本体に固定し、取手を裏からビス止めする。

7)全体に屋外用木用塗料を塗り、壁に止める。


 新聞と大型郵便物は屋根を上に開けていれ、小型の郵便物は表札部分を直接押し込んで入れる。これまではすべて表札部分から入れるやり方だったが、それが本体を大きくしてしまった最大要因で、それでも入りきらない大型郵便物の入れ方に関し、必ずしも配達する人の立場に立ったものではなかった。
 今回、表札部分の上部には赤文字で「新聞と大型郵便物は上から入れてください」と注釈を書いた。最初の新聞配達にやや不安があったが、ちゃんと写真のように入れてくれた。まずは安心である。

 試してみたが、ドアをわずかに開けただけで、中の新聞や郵便物が簡単に取り出せた。これならパジャマ姿のままでもOKだ。半開放車庫の中にあるので、雨や雪に対する構造的な備えも必要である。万全を期したつもりだが、今後少し様子をみたい。
(設置後半年以上が経過したが、雨水や雪の侵入はない)

 このポスト、上から入れても表札部分から入れても、反動で「カタン」と板のぶつかった音がする。つまり、家の中にいて、何らかの配達があったことが分かる仕掛け。単なる投げ込みチラシだったりもするが、(何かが配達された…)という感覚は、なぜか幼き頃からとても好きだった。
 たとえそれが些細なチラシであっても、「外の世界からの届け物」という感覚は、いくつになっても楽しいもの。そのシアワセ感を音で知らせるポストでもあるのだ。



 
DIY太陽集熱器.... 2011/冬



 DIYで太陽集熱器を作り、暖房費を節約している人の記事が地元紙に載っていた。500mlのビール缶48個を黒く塗り、つないで縦長の箱に入れ、窓辺に置く。吸入口は下で、上の吹出し口から暖められた空気が出てくる仕掛けだ。ごく簡単な理屈だったが、これだけで毎月4〜5千円の暖房費節約になるという。(作者の弁)
 オール電化のお宅だったが、毎月4〜5千円の電気代節約は信じがたい数値だった。しかし、記事と1枚の写真でおよそのことは分かったので、似たタイプの太陽集熱器を自分でも作り、データの裏付けをとろうと思った。

 ビール缶の収集は時間がかかり、そもそも500ml缶は飲んでいない。記事に基づいて全容量を計算すると24Lである。理屈では同等以上の容量を持つ閉鎖空間を何らかの形で作り、黒く塗って窓辺に置いてやればよいと考えた。
 最初は径75ミリ(内径83ミリ)の塩ビ管を使おうと思った。4.8メートルで容量が24Lになるし、接続や加工も易しい。しかし価格が5,000円ほどして、なるべくお金はかけたくないのが本音。1.5Lのペットボトル16本でちょうど24Lになるが、こちらはタダでも収集にやはり時間がかかり、折返し部の接続加工も難しそうだった。

 迷ったすえ、結局は得意の木材加工でやることにした。ウッドデッキの床板交換でとってあった幅10センチほどのヌキ板が、物置にかなりあった。腐食部分は捨てたが、まだまだ使える部分が残っている。
 この端材を黒く塗って外から見えない部分に使うことにし、目立つ外側部分はワンバイフォー材を買うことにした。背板は使っていないベニヤ板でやり繰りし、太陽側に使う透明板は新たに買うことにする。

 外寸法をどうすべきかこれらの条件で試算してみたら、600×900の場合で有効容量38Lである。この寸法だと縦に置いて腰高窓の内側にちょうど収まり、透明板もぴったり寸法の品があって無駄がない。有効容量も充分だ。木材の基準寸法とも合致するので、この大きさに従って各種材料を調達した。


使った材料(価格は2010.11札幌調べ)
・t18×455 松ヌキ板×6本:内部仕切りに使用
・ワンバイフォー材 L=1820×2本:外部側板に使用/¥296
・t3ラワンベニヤ 600×900:背板に使用
・t1透明塩ビ板 600×900:太陽面側に使用/¥696
・φ3.3×25 スリムビス、60本くらい/¥90
・墨汁  ・黒ビニルテープ

1)松ヌキ板を幅89に加工。端材を活用するため、側板に使うワンバイフォー材の幅に合わせるための処理。作業難易度は高いので、両方の幅を最初から合わせた材料を調達するほうが無難。
(仮にすべてをワンバイフォー材でやっても、300円増で済む)

2)ワンバイフォー材で外寸法が600×900となる枠を作る。

3)墨汁で内部仕切り用のヌキ板の両面、外部側板と背板の内側に相当する部分を塗る。黒ペンキでもよいが、墨汁が安価で塗りやすい。

4)外部側板に背板をビス止めする。次に内部仕切り板を写真のように交互に空隙を作りながら止めてゆく。空隙の寸法は10センチ程度で、ビス間隔は10センチ程度。

5)背板の上下に通気穴を空ける。穴は写真のように通気経路が最も長くなる位置にすること。

6)太陽に当たる面に透明塩ビ板をビス止めする。薄い塩ビ板は安価だが、太陽熱でゆがむので、固定間隔は5センチ程度にする。
 試してないが、透明板にアクリルを使うなり、2ミリ以上の厚い板を使えば、ゆがみは少ないかもしれない。

7)気密処理として、外部側板と透明塩ビ板の周囲を黒ビニルテープで止める。
(その後経年でたるみが出てきたので、2012年に黒ガムテームに交換)


 上記仕様で全重量は約5キロで、移動や設置は容易である。2010.11.24に最初の試運転をしたが、下部吸込み口と上部吹き出し口の温度差は24.0度にもなり、かなりの威力を確認した。
 ただ、あまりの熱で透明塩ビ板がゆがんでしまい、部分的に隙間ができてしまった。固定ビスの間隔を増やし、外周部には黒ビニルテープを巻いて処理したが、通気経路の滞留時間はなるべく長いほうが効率的と思われるので、隙間対策は重要だ。ビール缶やペットボトルのほうが処理はしやすいかもしれない。

 設置後、およそ3ヶ月が過ぎ、真冬を通しての実績データが出たので、「真冬期間の日平均灯油消費量」(おおむね1月上旬から2月中旬までの灯油消費量を実日数で割ったもの)という形で、過去7年分を比較しつつ紹介したい。
 DIY太陽集熱器の設置場所は2階で、太陽の動きに合わせ、概ね午後1時までは南東の窓、以降は南西の窓に移動させた。
(カッコ内はその年の札幌における1月平均気温で、寒さの目安となる)

・2004年…6.73L/日(-2.5)
・2005年…7.56L/日(-3.5)
・2006年…7.86L/日(-4.2)
・2007年…7.18L/日(-1.8)
・2008年…6.54L/日(-4.3)
・2009年…6.62L/日(-1.3)
・2010年…6.74L/日(-2.0)
  ※2004〜2010年、設置前平均値…7.03L/日

・2011年…5.91L/日(-3.8) 〜DIY太陽集熱器を設置した冬の数値
・2012年…6.22L/日(-4.5)
・2013年…6.23L/日(-4.7)
・2014年…7.45L/日(-4.1)
・2015年…5.80L/日(-1.5)
  ※2011〜2015年、設置後平均値…6.32L/日(設置前より10.1%減)

 灯油消費量の評価で、「だいたい毎月…くらい」といったドンブリ勘定は意味がなく、決まった期間による日平均消費量と、同時期の気温との突き合わせが重要になってくる。
 年毎に微妙にバラつくのは、寒さにバラつきがあるせいだが、過去7年と比較して今年は上から3番目の寒さだったにも関わらず、日平均灯油消費量は過去最低値。平均値の84%に過ぎない。そもそも数値が6.0を切ったのが今回初めてなのだ。


 仮に冬期を通して16%の灯油削減効果があるとして、我が家の年間暖房灯油消費量700L(給湯分を除いた実績値)で試算すると、灯油単価78円(今回価格)では9,000円近くもの節約となる。これは大きい。
(その後5年間の平均値で、灯油削減効果は10%程度と判明)
 この冬にはやはりDIYで、2階傾斜天井の気密補修も同時に施工した。気密の性能を上げると無用な自然換気量が減るから、当然灯油消費量に影響する。上記削減効果がすべてDIY太陽集熱器によるものとは断言できないが、相当の効果があることは確実である。

 かかった費用は手持ちの材料をやり繰りした関係もあって、1,000円ほど。すでに元はとっただろう。
 今後の構想として、1.5Lペットボトルを黒く塗って迂回させつつつなぎ、外枠や背板、表板など一切なしで、同様の太陽集熱器が作れないかと考えている。相互接続はコーキング材をうまく使えばやれそうだが、同じサイズを16本そろえるのが実は一番大変そうだ。