縄文の日々をめざして


 
移植と挿し木.... 2005/春



 思い立って庭に木イチゴ(ラズベリー)の苗木を植えた。ブルーベリーにしようかラズベリーにしようかと迷ったが、園芸店に行くとラズベリーは一株680円、対してブルーベリーは3000円近くもする。しょせんは趣味、道楽の世界であるし、眼や老化予防等の効果にはどちらの実も大差ない。幼少時に近くの小川のほとりにあった赤い木イチゴの味が未だに忘れられないこともあって、結局ラズベリーを買った。
 我が家の庭に実のなる木はすでにブドウがあり、毎年秋には食べきれないほどの実を結んでくれる。去年はご近所におすそ分けしたり、それでも余ってブドウジュースにして飲んだりもした。
 買ってくればどうということもないが、「自分の庭からもいで食べる」という行為自体に大きな意味がある。この喜びを実感出来ないのなら、家庭菜園や家庭果樹園など、ただ面倒なだけということになるから、最初からやめておいたほうがいい。

 ブドウは成長に合わせて棚を作ってやり、春に根の周りにケイフンをまいてやるくらいで、ほとんど手がかからない。同じように木イチゴもあまり手がかからないという。問題は枯らさずにうまく根づくかだが、案外これが一番難しいかもしれない。
 以前、サクラの幼木をもらって風対策が悪く、枯らしてしまったことがある。時期を間違えてオンコ(イチイ)の移植にも失敗した。ツツジも植えた場所が悪く、雪で折れて瀕死の状態だ。植える場所の選択と、根づくまでの風や水対策が肝心なのだ。

まず、植える場所の吟味。落雪の危険がなく、ある程度陽当たりと水はけの良い場所であることは、多くの植物の共通点。移植の時期は苗木が園芸店に出回る春から夏、時間は陽射しの弱まった夕方がよい。

場所が決まったら深めの穴を掘り、一番底にケイフンなどの肥料を適宜入れ、5センチくらい土をかぶせる。

苗木を入れ、あまり深くならないように土で調整する。根と肥料がふれてはいけない。

雨を溜りやすくするため、根の周囲の土をドーナツ状に低くする。(写真1)

根の周囲を枯れ草で厚めにおおう。これは根の周囲の土の乾燥を防ぐためで、最も重要。(写真2)

バケツでたっぷり水をやっておしまい。毎年春には、根の周囲にケイフン等の有機肥料を適宜まくこと。順調なら、来夏には木イチゴの実が食卓を賑わすかもしれない。

 枝が細い場合は風対策として支え木をするのもよいが、あまりきつくしばるとそれが元で枯れてしまうことがある。(サクラはこれで枯らした)心配なら、フェルトのような添え物をしてしばるか、幅広の材料で巻くこと。
 ちなみに、ほぼ同様の方法でほとんどの草木が挿し木(挿し芽)で増やせる。ここ数年はバラやレンギョウ、ハマナス、アジサイやツタなど、100%の確率で挿し木に成功した。挿し木の場合は、若い枝を使うこと、時期は成長の早い春から初夏、そして発根の負担を減らすため、葉を先端の1〜2枚だけ残して切ってしまうのがコツである。

 移植でも挿し木でも、あまり神経質に水をやる必要はない。私の場合はいつも最初の数回しかやらないが、それで充分だった。
 植物には本来、自然の恵みである雨や朝露だけで充分育つ力がある。水が足りないときは根を深く伸ばして自分で探そうとし、水やりを頻繁にしてあまり甘やかすと、根が人の手をあてにして地中深く育とうとしないという。
 このあたりは人間の子育てと実によく似ていて、とても興味深い。逞しく自立した木に育てるためには、周囲のオトナはその環境を整えてやるだけでよいのだ。



 
フキの佃煮.... 2005/春



 5月になると自宅周辺の空地や土手では、あちこちにフキが顔を出す。ある程度太くなってから採り、煮物等にして食べるのが普通のやり方だが、私の場合は芽が出たばかりの細いフキの茎と葉の両方を使い、フキの佃煮を定期的に作っている。
 風味豊かで、酒の肴、ごはんのおかずの両方いける。我が家の料理に要求される条件にもぴたりはまり、しかも材料はタダでいくらでも手に入る。

太さ5ミリくらいで、葉が15センチ程度の若いフキを中心に採る。これ以上大きくなると葉が固くなり、お勧めできない。茎と葉はハサミで切って分ける。(写真1)

大鍋に水を張り、フキをゆでる。煮立ってから5分くらいで火を止める。ゆで過ぎると葉も茎も崩れてしまうので、注意。(写真2)
 火を止めてそのまましばらくさます。お湯はアクで真っ赤に濁る。

お湯を捨て、茎と葉の裏のスジをとる。
 ボールに入れて水を張り、6〜8時間放置する。(写真3)

水を絞って茎も葉も5ミリ幅くらいに切る。(写真4)

中鍋に茎と葉を入れ、日本酒を加えてカラいりし、水分を徐々に飛ばす。日本酒は多めのほうが風味がよく出る。(写真5)
 焦げつかないよう、火は強めたり弱めたりして微調節する。

醤油を適宜加え、微量の上白糖と白ゴマを入れてさらに煮詰める。醤油の量は好みで。

最後に蓋をして微少の火で5分くらいおき、さらに水分を飛ばす。冷蔵庫にしまうのは、あら熱をとってから。塩分が強く、水分が少ないのでかなり保存は効く。(写真6)

 以前は葉だけ使っていたが、茎もあったほうがよいことに気づき、修正した。白ゴマを加えるようになったのも最近である。また、以前はゆでたあと一晩置いていたが、アクが抜けすぎて風味が損なわれることに気づき、その日のうちに処理している。

 この料理に必要なのは、ずばり「アソビ心」である。材料はタダだが、ご覧のように大変手間がかかる。煮炊きに使うエネルギー消費量も馬鹿にならない。
 我が家ではフキ採りから盛りつけまで、一切妻の手はわずらわせない。「採って、茹でて、さらし、刻んで、煮詰めてそして盛りつける」そのプロセスそのものを楽しむのだ。ビン詰めの似たような佃煮を買ってしまえばそれだけのことだが、そんな市販品では絶対得られない風流な味と、丹精して作った満足感に酔いしれるだろう。

 日陰などに出る細いフキを探し求め、盛夏となる7月くらいまで延々と食卓の上を賑わす。我が家の大事な風物詩なのである。



 
畑を耕す.... 2005/春



「カッコウが鳴いたら種をまけ」と、札幌地区では古くから言われている。おそらく気温との因果関係なのだと思うが、この種の言い伝えには何らかの根拠のあるものが多いから、まず信用していいと思う。
 種や苗を植える以前に、畑を掘り起こしてその準備をしてやらなくてはならない。札幌地区の場合、その時期はおよそゴールデンウィーク直後あたり。今年のように春の訪れが遅い場合は、もっと遅らせる。私の場合は、近隣の桜の開花時期にだいたい合わせる。

掘り起こす前の畑に、石灰とケイフンなどの有機肥料をまんべんなくまく。まく量は適当だが、均一にざっとまくのがコツだろうか。石灰は土の酸性化を防ぐため、毎年必ずまいたほうがいいようだ。

剣先スコップなどで畑をなるべく深く掘り起こす。手製のたい肥等がもしあったら、同時にすきこむ。以上の作業を今年は5/14に実施。(写真1)

前年のままだったトマト用の支柱の場所を今年の場所に移設。手製の簡単なものだが、長もちさせるため、土に入る部分に金属のポールを差し込んである。
 上端に十字形の支えをビスで止め、トマトが成長してきたらここで4つ分のトマトの支柱を、まとめてがっちり支える。(写真2)

このまま放置し、石灰と有機肥料を土になじませる。カッコウの鳴く時期を見計らい、苗や種を植える。今年は5/23に実施。

トマトは同じ場所に続けて作ると、出来が極度に悪くなる。我が家では4坪の畑を4つに分け、支柱の位置を目安に、毎年場所を変えている。(つまり、4年で元の場所に戻る)

トマトは病害に備え、別の種類(桃太郎と米寿)の苗を2本ずつ、合計4本を植える。小家庭なら、これで余るほど採れる。周囲の土は移植や挿し木と同様、ドーナツ状に掘り下げる。

苗の周囲に3〜4本の竹の支柱を立てる。思いがけないほど大きく成長するので、支柱は長いものがよい。我が家では女竹(まっすぐな竹)の1.8mを使用。多くの人はひとつの苗に4本の支柱を立てているが、3本でも充分もつ。(写真3)

支柱の周りにありあわせのビニール袋をかぶせて風よけにする。専用のものが売っているが、我が家では買物袋をリサイクルさせて何年も使っている。
 この風よけはトマトが成長して茎を支柱にひもで結べるようにになったら、撤去する。

ビニール袋の大きさに合わせて竹の支柱位置を調整。移植や挿し木と同様、苗の周囲を乾燥防止の枯れ草でおおうとなお可。(写真4)

引き続き、小松菜と枝豆(大豆)の種を植える。種は雨の翌日の夕方などにまくと芽がでやすい。芽が出るまで、こまめな水やりを欠かさないこと。

私の住む地区は鳥が多く、枝豆(大豆)は芽が出た瞬間に食べられる。最初の数年はやられっぱなしだった。鳥も必死だが、こちらも必死。
 植えた直後に種の上にペットボトルを半分に切ったものをかぶせてしまい、芽が成長して豆の形が消滅してから外すようにしたら、ようやく食べられなくなった。当然ながら、ペットボトルは毎年捨てずに同じものを使い続ける。(写真5〜6)

 以前はかなり多くの野菜を手当たり次第に作っていたが、いまは「細ネギ」「トマト」「小松菜」「枝豆」「青ジソ」の5種類だけだ。ジャガイモや大根、トウモロコシなど、場所をとる割に買ったものでもあまり味が変わらないもの、極度に手間がかかるものなどは、いまは作っていない。
「細ネギ」「青シソ」は思い立ったときにいつでも採れる新鮮な薬味として重宝するし、「トマト」「小松菜」「枝豆」は買ってきたものと自分で作ったものとでは、全然味が違う。このあたりが5年経ってみて、菜園の中で勝ち残った所以だろうか。

 小松菜には虫食いとの、トマトは風対策や枝芽との壮絶なバトルがこれから待ち構えている。ほとんど手間のかからない「孝行息子」は細ネギと枝豆、青ジソだが、「手のかかる子ほど可愛い」という言葉もあったよね。