僕は窓のある喫茶店が好きである    1973.10 菊地 友則






僕は窓のある喫茶店が好きである

窓辺の椅子に座り
通りを往く人々のさまざまな表情を
ぼんやりと眺めるのが好きである
細い煙草をくゆらせながら
人々のざわめきに
じっと耳を澄ませるのが好きである

そうして
黄昏の色の中に
人々の影と僕の影とが混じりあい
ひとつになってゆくのを感じとるのである

僕は窓のある喫茶店が好きである

残光の中で息を潜めて僕を待つ
古びた喫茶店のドアを
僕はきっと見つけるだろう

そして僕は
熱いコーヒーカップで
こごえた両手を暖めながら
通りを往く人々をいつまでも眺めるのだ



(1997.1.5北海道新聞「日曜文芸」に掲載された作品に、画像と音楽を加えたものです)