無垢材の家具/多目的机 ... 2001.11




 手作り家具を本格的にてがけてかなりの月日が過ぎ去った。これまで材料は主に仕上げが不要で木目が美しく、加工が容易なシナランバーコア合板を使ってきた。
 ところがこの材料はもともとが構造用なので、強度を追求するために接着剤が多く使われる傾向にある。「シックハウス症候群」という病気が新聞を賑わし始め、住宅内にあるクロスや合板に使われている接着剤に含まれるホルムアルデヒドにもその原因があることが次第に分かってきた。
 工夫をこらして世界にひとつしかない作品を作り上げても、その材料に有害な物質が含まれていては意味がない。ちょうどそのころ、戸建て住宅を建てて引越す話が持ち上がり、必要に迫られて内装材も含めた安全な材料探しが始まった。

 途中の経過は省略するが、ホルムアルデヒドの放出量の少ない「F1合板」を使えば比較的問題は少ないことが分かった。ただ、DIYレベルでのF1合板の入手は、現状ではまだまだ難しい。結局新居での家具造りは、構造用のツーバィ材を中心としたものに切り替えた。このほか、素人が入手しやすい安全な材料には、構造用の無垢材、OSB構造用パネルなどがある。
 長年使い続け、愛着のあるシナランバーコア合板だったが、健康には変えられない。新居での家具作りにあたって、大量に残っている材料の一部はやむなく再利用したが、いずれ余裕が出来たら少しずつ作り直す予定である。

 長くこのコーナーの更新を休んできたが、以上のような事情で安全な材料を使った多くの家具を新しく生み出したので、すこしずつ発表したいと思う。家具作りに関する周辺逸話は、このページにある別連載、『本音で暮す手作りハウス』にて詳しく触れているので、興味のある方はどうぞ。



 引越して1年余が過ぎ、新居での家具作りが一段落したころ、大阪に住む三児のママさんから一通のEメールが舞い込んだ。近々お子さんが相次いで小学校に入学する予定とかで、兼用の学習机を自らの手で作りたいのだという。我が家にも3人の子供がいて、狭いスペースに必要に迫られて兼用の学習机を作ったものだった。決してひと事とは思えない。出来る限りの応援をすることにした。
 問題は使う材料だった。加工が容易で仕上げの不要なシナランバーコア合板は素人むきの材料だが、安全面で不安がある。北海道で入手困難なF1合板が、大阪で簡単に手に入るとも思えない。安全な材料であるツーバィ材を使った机は、居間で同様なテーブルを作ったばかりで机に応用するのは簡単だったが、作り方がかなり難しい。手作りが初めてのお母さんに、果たしてうまく出来るだろうか…?
 悩んだが、まずはそれぞれの利点と欠点を知らせ、どの材料で作るかの選択は相手にゆだねることにした。

「安全なツーバィ材を使いたいと思います。安価で安全というのは一番いいです」

 ほどなくしてそんな返事がきた。三児のママさんとしては極めて賢明な選択である。これで方針は決まった。最も入手しやすくて安価な幅89ミリのツーバィ材を横にどうやってつなぐかが勝負である。自身の経験も含め、使う電動工具の選択を含めたアドバイスを試みた。



 手作り机に関する私なりの基本がいくつかあるので、箇条書きにしてみる。

・天板は19ミリ以上の板を使い、原則として固定せずに棚や台、あるいは桟にのせるだけにする。これにより、子供の成長による改造が容易になる。

・天板寸法は奥行き550〜600ミリ、幅900〜1800ミリ程度。二人兼用の場合は1800ミリとする。1800以内なら原則として中央の支えは不要。

・机の高さは子供の背丈によって変える。二人兼用の場合は、大きい子に合わせ、小さい子は椅子と足のせ台などで調整する。

 天板高さ=その子のひざ下寸法+(座高÷3)−2センチ
  ・ひざ下寸法は直角に曲げたときの寸法で、概算値は身長÷4
  ・計算値は、小学生なら500〜600ミリ、大人なら700ミリくらいになるはず。

・机の片方は棚板の高さをいつでも変えられるような本棚かベット(手作りが望ましい)にし、棚の中に天板の片方を差し込むか桟で固定する。本棚の場合はぐらつきやすいので、鴨居か柱などに金具でしっかり止める。

・天板のもう片方は、引出しつきの袖机にする。奥行き45センチ程度、高さは天板高さ−天板厚さ。単純な箱を作り、途中に棚板をわたしてその中に引出し用の箱を入れてやるのが最も簡単な手法。
 引出し用の箱は100円ショップで売っているカゴ、無印良品で売っている段ボール引出しなどを使う。もちろん本格的な木の引き出しでも可。引出しの入る幅は、内のりで30センチ前後。ある程度の余裕をもってちゃんと収まる寸法を決める。

・天板を高くするには、片方の本棚の棚板を高くし、もう片方の袖机には側板の部分に適当な高さの板を外側から木ネジで止めてやる。レンガや角材のようなものを袖机にのせ、高さをあわせる方法もある。ベットに桟を打つ場合は桟の高さを変えてやる。

・もしも片方に本棚がない場合、袖机をふたつ作る。この場合は天板がずれやすいという欠点があるので、天板の一部を袖机に固定してやる必要がある。
 袖机や本棚に一切頼らず、天板に脚を4本つけて固定し、子供の成長にあわせて脚の寸法を変えてやる方法もある。この場合は完全に独立した机となり、テーブルなどにもそのまま応用が利く。



 ツーバィ材を連結させて机、あるいはテーブルを作るのは実はかなり難しい。いろいろ試したが、もっともやさしいと思われる方法を教えることにした。机もテーブルも座卓も構造的に差はないので、すべて同じテクニックの応用で作り出せる。

・まず、ツーバィ材38×89を必要な長さで6枚用意する。この材料はDIYの店なら全国どこでも入手可能。(長さ1800ミリで400円くらい)これで奥行きが約534ミリの天板が出来上がる。必要に応じて、枚数は増減する。天板に使う場合、歪みがあるとつらいので、店ではなるべくまっすぐで傷の少ないものを選ぶ。

・別に19×89(通常ワンバイフォー材と呼ばれているもの )の側板を長さ534ミリで2本用意。もしこの材料が店になければ、この寸法に近いマツ材を探す。
 サイズの大きいテーブルなどでは、荷重がかかるのでツーバィ材38×89をそのまま使う。

・平らな床などに先のツーバィ材38×89を6枚並べる。傷や歪みなどをよくみて裏表を決定する。すべてを裏側にして並べなおし、その両側から19×89の板を38〜42ミリの木工用ビスで2本ずつ止める。(ツーバィ材38×89を使った場合は75ミリの木ネジを使う)片側がすべて止まってから、もう片方を止める。

・こうして出来た天板に同じくツーバィ材38×89を使って脚をつける。脚をがっちりつけないと机がぐらつくので、作業は慎重に。
 やり方は同じで、1本の脚に対し、図のように75ミリの木用ビスを3本使用。脚の長さは天板の高さと同じになる。座卓の場合は380〜400ミリ程度の長さになる。子供用机なら成長を考慮し、少し長めの脚を切っておき、途中で止めるようなやり方もある。
 脚は厚みがあるので、直径3ミリくらいの下穴を開けてからビス止めする。また、脚をつけるビスの頭が見えていやな場合は、あらかじめ直径8ミリぐらいの穴を深さ1センチ程度あけておき、その後下穴を開ける。(この順番を逆にすると木目が傷みやすい)



・木ネジを止める道具は電動ドライバーがお勧めだ。女性でもがっちり止まり、外すのも簡単。コード式と充電式の2通りあるが、コード式のほうが安い。充電式は切れたときにいらいらするので、コード式のほうがいいかもしれない。バーゲンをねらえば、3〜4千円くらいから手に入る。値段が張るが、予備バッテリーつきの充電式があれば最高。
 クラッチつきで、なるべくトルク(締める力)の強いものがいい。私は7.2ボルトの製品を使っている。これと木用ビスをあわせて使うと、材料に下穴を開けなくとも、一発でネジの締めつけが可能。クラッチの数字を適当に設定してやれば、木を傷める前に、自動的に回転が止まるしかけである。メーカー品が安心かもしれない。

・穴開けは普通電動ドリルを使うが、電動ドライバーはほとんどの場合ドリルもかねているので、これがあれば電動ドリルを別に買わなくてもなんとか作業は出来る。

・イラストでは天板の前後に脚をつけたが、左右に4本つけたり、手前2本だけを左右につけたり、いろいろなバリエーションが考えられる。構造的には3箇所で固定するイラストのやり方が最も安定する。脚を短くし、天板形状を奇抜な台形にした例が、下の多目的テーブルの写真である。このテーブルは塗料代も含めて約7000円で出来た。


 私が使っている木工用ビス。
・ビックス40ミリスリムビス(20ミリ前後の薄い板用)
・ビックス75ミリナゲシビス(38ミリのツーバィ材用)
 色はどちらも金色のクロムメッキ仕上げ。銀色より金色のほうがさびに強い。たくさん入った箱入りと、数は少ないが安い袋入りがある。どんどん作る予定なら箱入りがお得。

・ツーバィ材は構造用なので表面がやや粗く、角に少し丸みがある。並べて天板にした場合、合わせ目に出来る窪みがいやだという人がいるかもしれない。小さな木に180番くらいの木工専用サンドペーパー(グレーのやつ→茶色のやつは駄目)を巻き、丹念に磨こう。完全に窪みを消したければカンナをかけるしかないが、初心者には難しいかもしれない。
 仕上げはなしでも構わないが、もしも表面の汚れが気になるなら、オイル系の安全塗料を探して薄く2度塗りする。

・天板と脚になるツーバィ材の切断が直角になっていないと、仕上がったときにガタが出たり、隙間が出来たりする。買った店で切ってもらうか、電動ノコで切るのが正確だが、そのどちらもが不可能な場合、定規で直角に線を引いた上に、ツーバィ材などの厚めの板をガイドがわりにあて、手ノコでまっすぐに切り落とすしかない。慣れると簡単だが、不要な材料であらかじめ練習したほうが無難である。

・寸法の長い机やテーブルの場合、ツーバィ材38×89を並べて両側で止めただけだと、中央部で多少のたわみが出ることがある。このときは中央部に下から19×89ワンバイフォー材などであて木をし、2箇所ずつ木ネジで止める。
 上の写真にある多目的テーブルでは、ツーバィ材38×89に60センチおきくらいに直径8〜10ミリの深い横穴をあけ、75ミリの木ネジで順に横につなぐ手法をとった。デザイン的にはこちらが優れている。技術的には高度だが、ツーバィ材全体がくっついてしまうため、極めて頑丈になる。このとき、電動ドライバーのビット(先端部分)は100ミリ程度の長いものを入手し、つけ替える必要がある。 (作業中の写真はこちら)


 こうして三児のママさんの初めての手作り家具「二人用ツーバィ材机」は完成した。添付されてきた写真には、二人の可愛いお子さんが完成した机の前で誇らしげに胸を張っている。数回のEメール交換だけで作ったとは思えない見事な出来映えだ。世界にひとつしかない、しかもどこでも買えない素晴らしい入学プレゼントである。
「お母さん、今度は椅子を作ってね」と、お子さんから早くも次なる注文が出たそうである。


◎参考文献:インテリア出版のSUNSET日曜大工シリーズ「テーブルと椅子」(絶版)
◎文中の価格は2001.11札幌での調査