訪問ライブ顛末記


ベストライフ東札幌・6月誕生会 /2025.6.22 Sun



 以前に何度か歌ったことのある有料老人ホームから、「コロナも収束に近づいたので、ぜひまた演奏を」との依頼が突然あった。
 調べてみると過去に11回歌っていて、最後の依頼が実に6年前。コロナ禍が始まる前年のことだった。担当者の名に覚えがあり、よくぞ忘れずにいてくれたものと思う。
 今回は初めてメールでの依頼。コロナ禍の直前に固定電話は解約し、連絡先のわかるNPOのボランティアサイトもすでにない。もしかすると、ネット検索でメルアドを調べたのかもしれない。
 ともかくも依頼自体はありがたいことで、10日ほど前から練習に励んだ。

 問題は気力体力面で、2週間前に終えた長時間ライブの疲れが未だ抜けきれず、このところの真夏日から肌寒い陽気への急変にも身体がついてゆけず、体調はよくなかった。
(2週間あれば回復するはず…)とスケジュールを入れたが、どうやら考えが甘かったらしい。
 幸いだったのは、ライブ開始が14時40分と遅かったこと。演奏時間も正味40分と少なめ。前日や当日の練習でも喉の調子はいまひとつだったが、腰にはコルセットを装着し、直前には喉の漢方薬「響声破笛丸」も飲んで備えた。

 13時40分に家を出て、40分後に施設到着。中心街経由の最短コースを選択したが、渋滞で逆に時間がかかった。
 担当者と6年ぶりの挨拶を交わし、入口で手指の消毒やうがいなど、請われるままに感染対策を施す。
 6月生まれの入居者誕生会イベントの余興出演で、最初に対象者の紹介と記念撮影、続いてケーキとお茶が配られる。セットティングは予め別の場所にマイクとPAを組み立てておき、記念撮影終了後の短い時間にバタバタとやった。

 予定より1分遅れの14時41分から開始。先方の希望通り、40分で12曲を一気に歌った。

「憧れのハワイ航路」
「宗谷岬」
「瀬戸の花嫁」
「お富さん」
「バラが咲いた」
「こんにちは赤ちゃん」
「月の沙漠」
「高校三年生」
「知床旅情」
「君といつまでも」
「丘を越えて」
「上を向いて歩こう」


 選曲&構成は悩みに悩んだ。全体的に大人しい場の傾向は把握していたが、6年間のブランクで、すべてゼロになっているのでは?との懸念があった。
 ある程度季節感に沿った内容にし、以前の施設の嗜好にあわせ、叙情的な歌を多めに、演歌は少なめにした。
 職員さん2人が手拍子で盛り上げてくれ、会場から共に歌う声も複数聞こえたりして、長いブランクの割には、まずまずの手応えだった。

 ただ、自分の歌唱には懸念した通り、問題があった。前半は高音部で声がかすれ、好調時の響きやツヤが全くない。後半でやや持ち直したが、今度は曲の最後で低音が安定しない。
 2週間前に不安定だったギターアルペジオは、汗拭きタオルの準備もあってどうにか演れた。

 中程に予定していた「ブルーライトヨコハマ」は、その場の判断で無難な「高校三年生」へ、ラストに予定していた「リンゴの木の下で」は、前日に「上を向いて歩こう」に変えた。
 ラスト近くの「君といつまでも」は他施設でたまにリクエストがあり、事前のAI調査でも「お勧め曲」と出たので歌ってみたが、反応はいまひとつ。
 対して「上を向いて歩こう」は、終了後も会場のあちこちで歌う声がしばし途切れず、さすがの強さを感じた。まだまだAIよりも人間の感覚が第一である。

 だましだまし進めてなんとか収めたが、自分の中では納得できない悔いの残るライブだった。
 活動を始めて20年、この日が累計599回目のライブで、やめる時期がいよいよ近づきつつある予感もする。


 

愛の家GH札幌福住・夏ライブ /2025.7.4 Fri



 4月に知人の紹介で初めて歌ったグループホームに、再び歌いに行った。依頼は前回ライブの終了直後にあり、わずか3ヶ月後という間隔の短さが気になったが、最終的にはお受けした。
 6月下旬に知人経由で、12曲分のリクエスト一覧が届く。曲順の指定があり、一部レパートリーにない曲もある。冒頭2曲がシャンソンという、通常の介護施設にはない難しさを感じたが、変更の余地はなさそうだった。

 別の問題が、6月上旬から引きずっている体調の悪さ。充分な休養で倦怠感からはどうにか解放されたが、風邪のような症状からくる声枯れは延々続いていた。
 毎日の黒豆茶による養生のほか、直前1週間の練習を1日15分以内にとどめる苦肉の策まで講じた。当日は発声練習のみとし、喉用の漢方薬と龍角散喉飴を飲んで備える。

 ライブは14時開始で、50分かけて先方到着。会場は前回と同じ2階の食堂だった。
 狭いことがわかっていたため、PAは小型の「ヤマハMS101-2」を使用し、軽量のアルミ製三脚に固定。エフェクターは持参せず、生音に近い感覚を心がけた。

 予定を5分早めてライブ開始。35分で12曲を歌う。
(すべてリクエスト)(※は初披露)

「ろくでなし」
「サン・トワ・マミー」
「高校三年生」
「リンゴの唄」
「四季の歌※」
「証城寺の狸囃子※」
「あんたがたどこさ※」
「川の流れのように」
「青い山脈」
「蛍の光※」
「荒城の月」
「東京ブギウギ」


 調整がうまく運んだか、喉は最悪だった2週間前の有料老人ホームライブから、かなり回復していた。
 ただ、ここ数日でまた腰痛がぶり返し、移動距離が長いこともあって状態は悪い。腰コルセットを装着してかばいつつ進めたが、水を飲もうと床に屈むと、ビリビリ痛んだ。
 聴き手は20名ほど。場の嗜好はニギヤカ手拍子系で、冒頭2曲が手拍子のとりにくいシャンソン。場がようやく馴染んだのは、手拍子の合わせやすい3曲目の「高校三年生」からだった。

 5曲目の「四季の歌」で、ちょっとした異変が起きた。叙情的な曲調に静まり返った場のあちこちで、涙をぬぐう姿が目に入る。人前で歌うのは初めてで、自分には向いている曲だと反応を見て思った。
 あやうく流されそうになるのを、聴き手から極力目をそらすことでどうにか回避。歌い終えてただちに次のニギヤカ系の曲へと移行し、気分を一新させた。
「川の流れのように」以降は共に歌う声が途切れず、要望通り14時半に全リクエストを歌い終えた。前回と同様、場が求めていてもアンコールはナシ。

 活動を始めて20年、大きな節目となる累計600回目のライブを無事に終えた。
 今後のことは明確ではないが、心身の衰えを自覚し、強いストレスに苛まれると思い知った依頼型のライブはやめる方向。負担の少ない自由参加型か、近隣での完全ボランティアが活動の中心になりそう。