訪問ライブ顛末記


ら・ぱーす Xmasライブ /2023.12.25



 社会福祉協議会のサイトから情報を得た介護施設で歌った。今年はこれが3度目のライブ。6月に地区センターロビーコンサートで、10月には区内市民広場の自由参加路上系ライブで歌った。
 新型コロナ感染に対する不安が消えないなか、それなりに場を重ねてきたが、介護施設で歌うのは実に1年3ヶ月ぶりのこと。先方から依頼されたわけではなく、音楽ボランティアの募集に応募して実現した場である。かなりの緊張感をもって臨んだ。

 具体的なスケジュールが決まったのは12月上旬。施設は自宅から車で5分と近い。事前の調査はすでに済ませてあり、50〜100歳の通所利用者が対象だった。
 聴き手の年齢層が広く、選曲には悩んだ。XmasライブということでXmasソングを冒頭で2曲歌い、以降は季節感を考慮しつつ、オーソドックスな構成でやることにした。初めて歌う場なので冒険は避け、どんな傾向の曲が受けるのが、見極めたかった。

 ライブ開始は13時30分。13時5分に先方に着き、食堂ホールの一隅にあるテレビの前に機材をセットする。
 コロナ禍以降の弾き語り活動再開に備え、電子譜面表示用のタブレットやエフェクター、そして譜面隠しなど、各種機材を更新した。それらを初めて試す場でもあった。
 予定ぴったりの13時30分にライブ開始。当初の打ち合わせ通り、40分で13曲を歌った。

「ジングルベル」
「きよしこの夜」
「上を向いて歩こう」
「二輪草」
「お座敷小唄」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「いつでも夢を」
「時計台の鐘」
「つぐない」
「星影のワルツ」
「まつり」
「リンゴの唄」

 聴き手はおよそ30名ほど。リハビリが主目的の施設なので、介護度は低い。介護施設には珍しく、男性の比重が半分近くと高い。
 事前の相談で、歌唱中はマスクを外すことになった。利用者にもマスクなしの姿が多い。マイクからの距離が近い席が一部あったが、施設側からの要望は特になく、そのまま歌い始めた。

 特に声がけはしなかったが、1曲目から調子良く手拍子が飛び出す。一転して静かな2曲目になっても、反応は悪くない。歌い終わって「メリークリスマス」と声をかけると、期せずして歓声があがった。
 通常モードとなった3曲目以降も終始手拍子が入り、「幸せなら手をたたこう」でピークに。3日前から黒豆煮汁で調整した喉の調子もよく、歌い手としてはやりやすい展開だった。

 潮目の変化を感じたのは8曲目の「いつでも夢を」から。場によっては受ける曲だが、ここでは反応が弱かった。手堅い「高校三年生」を歌うべきだったかもしれない。
 開始後30分弱が経過し、聴き手に疲れも見え始める時間帯で、長めのMCを入れるなど、工夫の余地はあった。

「つぐない」以降は演歌を連発したが、やはり期待したほどの手応えはない。途中に挟む予定でいたシャンソンの「サン・トワ・マミー」は場の気分にそぐわないと判断。時間の都合もあってカットした。
「あと2曲で終わりです」と宣言した「まつり」から少し盛り返し、予定ぴったりの40分でライブを終えた。

 演奏中もリハビリのために席を立つ方がいたりし、位置づけとしてはライブというより、自由参加型の音楽イベントである。  弾き語り系のボランティアは過去にほとんどないらしく、職員も利用者もライブそのものに慣れていない印象はした。

 終了後に職員や利用者から複数の声をかけていただき、「2ヶ月後くらいにまたぜひ」とのありがたい依頼もあったが、どのような場でも続けざまだと飽きられるのが常。季節感や曲の重複などを考慮すると、同じ場で歌うのは年に3〜4回が限度と思われる。
 事情を話し、「雪解けの時期にでも、またお声をかけてください」とお願いしておいた。場のおよその傾向はつかんだので、次回は途中でリクエストを募るなど、聴き手を誘導する手段も考えたい。


 

ら・ぱーす 敬老会ライブ /2024.9.10



 社会福祉協議会の仲介で昨年のクリスマスに歌った近隣のデイサービスから再び招かれ、6日間続く敬老会イベントの一環として歌った。
 今年に入り、自由参加型の路上イベントでは3度歌ったが、介護施設系では同じデイサービスでのXmasライブ以来となる。ボランティアとはいえ、自由参加イベントとは異なる責任を伴う場だった。
 加齢に伴う関節&筋肉痛や喉の衰えなど、取り巻く状況は厳しかったが、可能な限りの調整で臨んだ。

 ライブ開始は14時で、集合は13時半。施設は車で5分ほどの距離にあり、自宅で軽くリハーサルを済ませて向かった。
 到着後、ステージと電源の位置、マスク装着の有無などを新担当のKさんと打ち合わせ、基本的には前回と同じ要領でやることに決まる。
 13:45から食堂ホールの壁際に設営を始め、5分前にはスタンバイ。客席にはすでに40名ほどの利用者が開演を待っている。Kさんの判断で予定3分前の13時57分からライブを始めることになった。

 前回のXmas・冬メニューとの重複を極力避け、アンコールを含めた35分で以下の12曲を順に歌う。

「高原列車は行く」
「二輪草」
「お富さん」
「瀬戸の花嫁」
「三百六十五歩のマーチ」
「高校三年生」
「荒城の月」
「君恋し」
「夜霧よ今夜も有難う」
「涙そうそう」
「青い山脈」
「高校三年生(アンコール)」

 出だしからKさんのリードで賑やかに手拍子が飛び出す。4曲目は一転してアルペジオ奏法での「瀬戸の花嫁」。タイトルを告げると会場から歓声が上がり、歌い手としてはやりやすい展開だった。
 この日は賑やか手拍子系の曲と、静かな傾聴型の曲とのメリハリに気を配ってセットを構成したが、だいたい思惑通りに運んだ。

 折り返しとなる6曲目には、ハズレの少ない「高校三年生」を配置。ここで曲にまつわるMCを少し入れ、後半に向けて場の気分を変えた。
 その効果か、後半は場の反応がじわじわと向上し、ラストまでほどよい緊張感が続いた。「荒城の月」「君恋し」「夜霧よ今夜も有難う」「涙そうそう」等々、どの曲にも熱い手応えを感じた。

 時間ぴったりに終えると、ただちにKさんがマイク前にやってきて、アンコールの打診。特に打合せはしてなかったが、利用者のノリがよかった「高校三年生」をもう一度歌い、若きよき日を懐かしく思い出して締めくくって欲しいとの要望。
 この日の喉は100%とは言い難い状況で、調整ミスというより、加齢に伴う衰えだとの自覚。ブレスやマイクの使い方などでごまかしている状況だったが、それでもギリギリ聴き手には届いていたようだ。

 特に男性利用者が喜んでいたのが印象的だったと、終了後にKさんから言われた。男性比重が高いのはこの施設の大きな特徴で、女性に比べてイベントへの積極性に欠けるのが悩みだという。
 前回からその傾向には気づいていて、男性に人気の高い北島三郎、石原裕次郎、千昌夫のうち、1曲はセットに入れるよう心がけた。

 反省点として、「夜霧よ今夜も有難う」の後半でアルペジオ奏法が怪しくなったこと。この曲は「4拍子の3連符」で弾く典型で、1小節のピッキングが12個と多い。普段なら問題なく弾けるが、今回は関節痛が右手親指にも及んでいて、ピッキングがおぼつかなくなった所以。
「瀬戸の花嫁」から異変は感じていて、ストローク奏法に変える選択もあったが、メリハリの面からアルペジオ奏法にこだわった。右手にもサポーターを巻くとよかったかもしれない。

 責任を伴う場で久しぶりに12曲も一気に歌い、帰宅後はどっと疲れが出た。曲間のMCをもっと効果的に入れるなど、工夫の余地はあった。
 体力との相談になりそうだが、今後も要望がある限り、細々とでも続けられたらいい。


 

ツクイ札幌太平・敬老会ライブ /2024.9.19



 2014年に最初のライブ依頼があり、以降年に数回ペースで計14度の依頼が続いていたデイサービスから、6年ぶりに招かれた。最後の依頼は2018年で、2年後に始まったコロナ禍で縁が途切れたと思っていた。
 記憶があやふやだが、昨年の地区センターイベントで手伝いをやっていた際、同じ施設の職員さんから声をかけてもらったはず。思いがけない復活は、そのことがきっかけだったのかもしれない。

 今年に入って介護施設系ライブは先週の近隣デイサービスに続き、2度目。久しぶりの責任ある場と加齢に起因する体調不良などあって、前回は苦戦を強いられた。その反省をふまえ、入念に調整を重ねた。
 喉の対策として黒豆茶を飲み、季節の変わり目で風邪の前兆があって早めに板藍根(漢方薬)を飲んだ。筋肉痛&関節痛はストレッチやサポーターで軽減に努めた。

 開始は14時で、20分前に到着。先週の施設よりはやや遠いが、車だと10分で移動に関わるストレスはない。
 6年ぶりに施設の門をくぐると、施設長を含めた職員さんは大幅に入れ替わっていた。ライブ開始直後に進行の方が確かめると、私を知る利用者は皆無。施設そのものは変わってないが、全くゼロの状態から始める気構えが必要だった。

 開演前にマスク装着の有無を確認したが、施設側の方針がはっきりしない。「他のボランティアの方は?」と尋ねると、「実は今回がコロナ禍以降、初めてのボランティア受入れなのです」と意外な答え。
「先週歌った施設では、歌う直前までマスクを装着し、ライブ中は外して終了後に装着という流れでした」と伝えると、では同じようにお願いします、と最終決着。どの施設もコロナ後のボランティア対応には腐心しているようだ。

 施設側の敬老イベントがやや長引き、10分遅れの14時10分ころから開始。アンコールを含め、45分で以下の14曲を歌った。

「高原列車は行く」
「おかあさん」
「お富さん」
「瀬戸の花嫁」
「三百六十五歩のマーチ」
「高校三年生」
「荒城の月」
「君恋し」
「矢切の渡し」
「夜霧よ今夜も有難う」
「涙そうそう」
「月がとっても青いから」
「青い山脈」
「また逢う日まで(アンコール)」

 気力体力の問題もあり、セットリストは先週別の施設で歌ったものと大差ない。いわば「秋の定番ソング」である。
 進行の職員さんが1曲目から手拍子で盛り上げてくれ、歌い手としてはやりやすい。利用者は30名ほどで、一緒に歌ったり、「いい声だ!」と掛け声をかけてくれる方が複数いて、調子よく進んだ。

 前回ギター演奏に問題のあったアルペジオ系の曲「瀬戸の花嫁」「荒城の月」「夜霧よ今夜も有難う」は、事前の調整がうまく運んで問題なく弾けた。
 以前は傾聴型のおとなしい場だったが、賑やか手拍子系の場にガラリ変貌していて驚いた。ライブ中に確かめたら、週に3回はみんなで歌うイベントを開いているという。そのせいか、ノリのいい曲への反応が熱かった。

 喉の調子はまずまずで、出だしは高音部がやや不安定に感じたが、進行と共に解消。低音部の音程とロングトーンは終始安定していた。
 半分を過ぎた「君恋し」から数曲は、場の反応がやや弱くなった。ラスト3曲で盛り返したが、おそらくは施設側のイベントから休憩なしで私のライブへと突入し、聴き手に疲れが及んだものと思われる。
 スケジュール的に厳しかったとライブ後に職員さんから聞いたが、自主判断で1曲減らす選択もあったと反省。

 ともあれ、6年のブランクを一気に埋めることはできたと思う。先週より10分長く、2曲多く歌ったが、不思議に前回ほどの疲労感はなかった。やはり「ライブ」という修羅場に対する慣れは必要のようだ。
「近々またお願いしますね」と帰り際に声をかけられたが、準備さえ怠らなければ、体力的にも精神的にも、もう少しやれそうな気がしてきた。