訪問ライブ顛末記


グランウエルネス中島公園・訪問ライブ /2020.2.8



 市内の中心地区にあるサ高住で歌った。実はこの施設、昨年末にXmasライブを演った別施設の系列である。終了後に系列施設でもぜひ歌って欲しいとの打診があり、快諾。今回のライブにつながった。
 新型肺炎の影響で開催そのものが危ぶまれたが、数日前に連絡があり、予定通りに実施とのこと。

 遅れてやってきた先日の大雪で、市内は交通事情がよくない。場所はよく知っていたが、用心して1時間以上も前に家を出た。

 車の流れはまずまずで、45分で先方に到着。開始までには25分近くあり、ゆっくりスタンバイした。
 サ高住という形態から、ライブは自由参加。前回の別施設と同様に、集まりがあまりよくない。やや遅れて14時過ぎから開始。45分で14曲を歌った。(※はリクエスト)

「北国の春(マイクテスト)※」
「上を向いて歩こう」
「おかあさん(森昌子)」
「バラが咲いた」
「蘇州夜曲」
「幸せなら手をたたこう」
「仰げば尊し」
「サン・トワ・マミー」
「神田川」
「ケ・セラ・セラ」
「恋の町札幌」
「禁じられた遊び※(初披露)」
「星影のワルツ」
「東京ラプソディ」


 1曲目の「北国の春」は、早く集まった方々からこの日の予定曲を求められ、順に披露するうちに飛び出したリクエスト。稀にある開始前のセルフ・オープニングアクトのような位置づけだった。
 全く予定にはなかったが、この種の声が出ること自体、場が乗っている証。柔軟に応ずれば、ライブはたいていうまく運ぶ。

 予想通り、その後のライブはやりやすかった。歌い進むうちに参加者はじわじわ増えて、最終的には15名ほどになった。
 人前で歌うのはおよそ1ヶ月ぶりで、出だしの数曲は明らかに調子が悪かった。聴き手に後押しされるうち、じょじょにペースを取り戻す。

 プログラムは系列別施設での要望を取り入れたもので、シャンソンやフォークなど、ややリスクを伴う選曲だったが、問題なく受け入れられた。
 他施設に比べて元気のいい男性が多く、手拍子系の曲をもう少し増やしてもよかった気がする。

 後半でリクエストを募ると、最前列の女性から「禁じられた遊び」をぜひに、との思いがけない声。弾き語りむきの曲ではないが、以前にも別施設で同じリクエストが出たことがある。
 その際に覚えた弾き語り用のコード譜を探し出して披露すると、思いがけず受けた。クラシックギターによる本格演奏には程遠いが、転調部分も含めた和訳による弾き語りが、意外に新鮮に聴こえたのかもしれない。

 ラストの曲では職員さん2名も参加し、全員の手拍子でにぎやかにしめくくる。終了後に微妙な余韻が場に残ったが、アンコールの声はなかった。冒頭と終盤でリクエストに応えているので、先導すべき職員さんが遠慮してしまったかもしれない。

 直前まで迷ったが、戸口から戸口へ車での移動、人の出入りが少ない会場ということでウイルスの危険性は少ないと判断。マスクは一切せずに臨んだ。
 遅れてきた大雪と新型肺炎という想定外のアクシデントに見舞われたが、無難にまとめられたと思う。


 

グランウエルネス菊水・訪問ライブ /2020.2.15



 車で30分強の距離にあるサ高住で歌った。1週間前に歌ったサ高住と同じく、昨年末に歌ったサ高住の系列施設である。1週間後にも別の系列施設で歌う予定で、計4つのライブがまとめて企画された。
 どの施設もホテルのような高級感漂う造りである点で一致している。最初に歌った施設で洋楽やオリジナルを求められたのも、こうした施設の有り様と無関係ではないだろう。

 偶然だが、今回の施設は私の通った高校のすぐ近くにある。ライブ開始時刻は他施設と同じく14時。13時過ぎに家を出て、20分前には到着した。
 三々五々と聴き手が集まってきて、定刻にライブ開始。およそ45分で13曲を歌った。(※はリクエスト)

「上を向いて歩こう」
「おかあさん(森昌子)」
「バラが咲いた」
「蘇州夜曲」
「幸せなら手をたたこう」
「仰げば尊し」
「サン・トワ・マミー」
「神田川」
「恋の町札幌」
「影を慕いて」※
「星影のワルツ」
「東京ラプソディ」
「月がとっても青いから」(アンコール)

 聴き手は開始時点で10名強。開始後に少しずつ増えて、最終的には20名弱に達する。
 系列施設でも、場所が変われば嗜好も変わる。今回は開始前の時点で、ある男性から「リクエストOKですか?」との質問があった。
 高齢なので古い曲がいい。古賀政男の曲をぜひに、との希望。電子譜面を繰って、「影を慕いて」を見つけた。後半に歌うことを約束する。

 いざ歌い始めると、これまでとは空気感が微妙に異なった。ひと言でいうと、ノリが悪いのだ。歌に合わせた手拍子や、共に歌う声がほとんど耳に届かない。
 気分を一発で変える力のある「幸せなら手をたたこう」でも、大きなな変化はなかった。職員さんが最初の紹介だけで会場から姿を消したことも関係していただろうか。

 反面、叙情系の「バラが咲いた」「蘇州夜曲」「仰げば尊し」などへの反応はまずまずで、場としては明らかに傾聴型だった。

 いまひとつ場をつかみきれないまま、ラスト前の「星影のワルツ」を歌うと、これがこの日一番の手応え。
「千昌夫が聴けてよかった」とささやく声が複数届く。結果論だが、他施設の嗜好にとらわれず、演歌系の曲をもう少し増やすべきだったかもしれない。

 ラストの曲を歌って場を収めると、最初にリクエストを求めた男性からステージ名「トムノ」に関する質問があり、続けて「70歳とは思えない若々しい声に驚きました。できるだけ長く歌い続けてください」と労う声。さらには「もっとリクエストはありますか?」と不思議な問いかけ。
 一瞬戸惑いつつも、もしかしてアンコールですか?と、こちらから問い返した。場は大人しかったが、職員さんが終了を告げても誰一人席を立とうとせず、(もう少し聴きたい…)という気分が場に満ちていたのは確かだった。
「そう、そのアンコールです」と男性が応じる。職員さんも聴き手もライブに不慣れらしく、時にはこうした歌い手からの働きかけも必要だった。

 かの男性は終了後にも間近に近寄ってきて、いろいろ声をかけてくださった。「とても素敵な歌でしたよ」と、私にではなく職員さんに挨拶をして帰る方も多数いて、終わってみればライブそのものは好評、という不思議な結末だった。


 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2020.2.16



 新型肺炎の足音が間近に迫る気配のなか、漠然とした不安感にとらわれつつ、市内遠方にあるデイサービスで恐る恐る歌ってきた。
 昨日歌ったサ高住と比べ、利用者が自宅で普通に生活しているデイサービスは、格段にウイルスリスクが高い場のように思われた。週半ばにスケジュール確認の電話が先方からあった折、実施の是非を確かめたが、ぜひやりたいとのこと。
 よく考えると、体調の悪い利用者はデイサービスそのものを休むはずで、過去のインフルエンザ流行時もそうだった。ドア取手類には極力ふれないなど、個人的なウイルス対策を徹底させることで臨もうと腹をくくり、約束通りに出かけることにする。

 施設とは年2〜3回ペースで依頼が続く長いおつきあいがあり、今回が通算18度目のライブ。開始は15時だが、遠方なので14時10分前に家を出る。冬だと時に1時間かかるが、このところの暖気で道はすっかり乾いている。わずか40分で着いた。
 予定よりやや早くライブ開始。アンコールやリクエストが相次いで、50分で15曲を歌った。(※はリクエスト)


「上を向いて歩こう」
「二輪草」
「真室川音頭」
「瀬戸の花嫁」
「365歩のマーチ」
「蘇州夜曲」
「みかんの花咲く丘」
「恋の町札幌」
「矢切の渡し」
「星影のワルツ」
「ミネソタの卵売り」
「東京ラプソディ」
「丘を越えて」(アンコール)
「影を慕いて」※
「リンゴの唄」※

 聴き手は30名強で、8割が女性。時の経過と共に顔ぶれが大きく入れ替わり、当初の顔見知りは少なくなったが、新たな出会いもそれなりにあり、手応えは悪くなかった。

 共に歌う声が耳に届いたのは、「蘇州夜曲」「瀬戸の花嫁」「みかんの花咲く丘」「影を慕いて」など。「上を向いて歩こう」「二輪草」「真室川音頭」では自然発生の手拍子も出たが、中盤の「恋の町札幌」「矢切の渡し」あたりで、会場の元気がなくなった。聴き手に疲れが出始めたのかもしれない。
 終盤の曲で盛り返し、そのままラストになだれ込んで締めくくると、期せずして担当のSさんのリードで「アンコール!」の手拍子。打合せにはなかったが、職員さん先導のアンコールだった。

 手早く応えたあとも場に少し余韻が残ったので、こちらから「なにかリクエストありますか?」問いかけた。この日はライブ直前になめたのど飴が効いたのか、喉の調子が抜群によく、一度も水を飲まずに45分を乗り切るという快挙。余力は十二分にあった。
「影を慕いて」「お祭りマンボ」の声が上がったが、最初に出た「影を慕いて」に決定。昨日もリクエストで歌ったばかりで、今日のほうが出来はよく、1番を終えた段階でさざ波のような拍手が湧いた。

 これでお開きかと思いきや、職員さんから、「どのくらいレパートリーあるんですか?」「《ふきのとう》は歌えますか?」と矢継ぎ早の質問。
《ふきのとう》の代表曲は、だいたい歌えます。「風来坊」は昨年の北海道神宮祭ステージで歌いました。ここで歌っていいなら歌いますよ、と応ずると、Sさんから「やっぱりみなさんがよく知ってる歌がいいでしょう」とダメ出し。
 いろいろあって、会場から声のあった「リンゴの唄」で締めくくることに落ち着く。

 昨日のライブでも「菊地さんの《22才の別れ》が聴きたかった」と、終了後に職員さんから言われた。職員さんは利用者よりも年代が若いので、曲の好みが分かれる。自分としてはフォーク系の曲をどんどん歌いたいが、悩ましい。


 

グランウエルネス山鼻・訪問ライブ /2020.2.22



 今月に入って3週連続で歌っているサ高住系列施設で、今日も歌った。昨年末のXmasライブで最初の依頼を受けて以来、計4度のライブを演らせてもらったが、今日がその最後となる。

 新型肺炎を取り巻く状況が日を追うごとに悪化し、中国人を中心とする外国人観光客の多い北海道は、広がりの速さや範囲で全国でもトップクラス。外出や人の集まる場は極力控える方向に進んでいて、介護施設系ライブもその例外ではなさそうだった。
 施設からは特に中止や延期の連絡はなく、不安になってこちらから確認すると、ぜひやってほしいとのこと。正直気は進まなかったが、約束は約束なのでこれが最後と自分に言い聞かせ、覚悟を決めて出かけることにする。

 場所は市内南部の遠方。道は乾いていたが、45分かかって開始15分前に先方に着いた。
 素早く機材を組んでスタンバイ。予定ちょうどの14時に開始となり、2度のアンコールを含め、45分で14曲を歌った。

「上を向いて歩こう」
「おかあさん(森昌子)」
「バラが咲いた」
「蘇州夜曲」
「高校三年生」
「みかんの花咲く丘」
「サン・トワ・マミー」
「神田川」
「夜霧よ今夜も有難う」
「函館の女」
「星影のワルツ」
「東京ラプソディ」
「月がとっても青いから(アンコール)」
「サクラ咲く(オリジナル・リクエスト)」


 過去のライブの手応えから、構成は微妙に変えた。

「幸せなら手をたたこう」→「高校三年生」
「仰げば尊し」→「みかんの花咲く丘」
「恋の町札幌」→「夜霧よ今夜も有難う」
「ケ・セラ・セラ」→「函館の女」

 聴き手は20名強。過去3施設に比べて集まりはよかった。男性は6名ほどで、どの施設も男性の比率が比較的高いのが特徴だった。
 職員さんはスタート時の開会宣言だけで姿を消し、ライブ中は入口のガラス戸越しに時折様子をうかがう程度。自分ひとりで場を取り仕切るという、難しい進行となった。

 場の反応は今回が最も弱く、手拍子や共に歌う声はほぼない。苦心の構成も当たったかどうかの判断は難しく、歌い終えた後の拍手だけがそれなりに熱いので、それを励みに淡々と歌い継いだ。

 ラスト前にリクエストを募ったが、特に声は挙がらない。それまでの空気からある程度予期はしていたので、そのまま歌い収めたが、終わっても誰も席を立とうとしない。
(これはセルフ・アンコールか…)と一瞬思ったとき、期せずして最前列の男性から「アンコール!」の声。地獄で仏とはこのこと。思わず「ありがとうございます」と頭を下げた。

 アンコールが終わったころに担当のKさんが会場に現れ、「菊地さんのオリジナルがぜひ聴きたい」と言う。系列施設の打合せ会で昨年末のXmasライブが話題になり、オリジナルを歌ったことを知ったらしい。
 あいにくニギヤカ系のオリジナルは持ち合せてなく、その時に歌った叙情色の強い「サクラ咲く」を再び歌ったが、皮肉なことにこれが最も受けた。
 終了後に近寄って労ってくれる方が多数。担当のNさんとアンコールをくれた最前列の男性は、「いいオリジナルでしたね」と声をかけてくれた。

 撤収して外に出ようとすると、中程に座っていた女性が玄関までやってきて、「オリジナルで思わず泣いてしまいました。亡くなった主人と聴きたかった。ありがとう」と涙目で言う。差し入れよ、とバッカスチョコを一箱握らせてくれた。
 場をつかめていないと思い込んでいたが、ちゃんと届いていたようである。

〜サクラをみたよ 今年もみたよ
 あなたとみたよ 二人でみたよ…(中略)
 日々を清かに重ねてゆきたい
 あのサクラの花のように…〜



 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2022.6.4



 2年4ヶ月ぶりに人前で歌った。場所は20キロほど離れた市内のデイサービス。9年前から切れ目のない依頼があり、この日が実に19回目のライブ。昨年末にも依頼されていたが、新型コロナ・オミクロン株の感染急拡大とまんぼう措置発令により、あえなく中止となる。
 4月下旬になって再度の打診があり、今回は幸いに市内のコロナ感染が減少傾向。ようやく実施の運びとなった。

 依頼された時点では演れるかどうかはっきりせず、前回の急な中止のこともあって、いまひとつ気持ちは乗らなかった。しかし、受けた以上は演ることを前提にして準備する必要がある。1ヶ月前から1日10〜15曲を歌い込み、じょじょに喉の調子を上げていった。
 長いブランク中にもそれなりに練習はやっていて、直前の1週間までには、まずまず人前で披露するレベルに達した。

 当日は15時開始にあわせ、14時に家を出る。石狩市役所経由の新ルートを見つけ、35分という過去最短時間で先方に着いた。玄関で体温測定や手指の消毒などコロナ対策を入念にやり、控室に案内される。部屋の換気は充分だった。
 オヤツ時間が少し長引いて、予定10分遅れの15時10分から開始。50分でアンコールを含めて15曲を歌った。


「北国の春」
「おかあさん」
「お富さん」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「蘇州夜曲」
「いつでも夢を」
「みかんの花咲く丘」
「君恋し」
「時の流れに身をまかせ」
「小指の想い出」
「いい日旅立ち」
「ミネソタの卵売り」
「リンゴの木の下で」
「青い山脈(アンコール)」

 コロナ禍が完全に終息したわけではなく、病院や介護施設での感染リスクは相変わらず高い。ライブは終始マスク装着でやることで事前の了解を得ていた。
 聴き手は30名ほどで、職員や利用者も当然ながら全員がマスク姿。衣装はXmas以外ではほとんど着ない赤をあえて選んだ。

 イメージトレーニングを含めた充分な調整のかいあって、喉の調子は悪くなかったが、マスクで聴き手の表情が読めず、反応をつかみにくいというやりにくさがあった。同時に聴き手にとっても、歌い手の表情がよく見えないという不満があっただろう。
 再開1回目のライブということもあり、全体的に守りの進行となった。聴き手との意思疎通を図るべく、極力目線を上げて会場を見渡しつつ歌うよう努めたが、ほどほどにしないと歌詞を見失うのが怖い。
「どうぞご一緒に歌ってください」との声もかけづらく、聴き手の参加は曲間の拍手や手拍子に限られた。

 そんな悪条件下でも、曲間で「いい声だね」「70代とは思えない」など、自然発生の声が会場からあがって勇気づけられた。
 構成は定番曲を中心に、起承転結やメリハリを考慮したオーソドックスなもの。大きな冒険はないが、長いブランク後の生ライブということで、聴き手の耳にも歌が新鮮に届いたように思える。

 最後の歌が終わると、最前列に座っていた男性が突然立ち上がって一歩踏み出し、
「コロナで溜まっていたクサクサした気分が吹き飛ぶ素晴らしい歌でした。ぜひともアンコールを!」と熱く労ってくれる。
(届いていなかったのでは…?)という漠然とした不安も、この一言で吹き飛んだ。

 アンコールを歌い終えたのち、この日が見学日という別の男性から、「並んで記念写真を」との要望がある。珍しく全員での写真も撮り、早々と9月の敬老ライブまで依頼される。再開によって歌の力を再認識した。みんな歌を求めていた。
 反省としては、力を入れて歌うと唇がマスクの内側にふれて、歌いにくかったことか。あとで職員さんに確かめたら、特に聞きづらくはなかったという。次回は立体マスクを準備すべきかもしれない。
 ともあれ、手探りではあったが、無難にやり終えたことを喜びたい。


 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2022.9.8



 6月に2年半ぶりに人前で歌ったデイサービスから、3ヶ月後のライブを依頼されていた。当時はまだ新型コロナ感染が落ち着いていた時期で、翌月から新型コロナ第7波が爆発。
 コロナの勢いはなかなか収まらず、ライブの実施は難しいように思われた。しかし、引き受けた以上やる前提で準備しなくてはならない。

 前回のような長いブランクはなく、練習に本腰を入れ始めたのは8月中旬から。折悪しく定期検診で胃ガン宣告を受けたが手術は9月下旬で、ライブ自体に支障はない。
 施設からは特に連絡がなく、予定の4日前になってこちらからスケジュール確認すると、予定通り9/8に実施するという。日々の練習を怠らずに正解だった。


 時間は前回と同じ15時開始。14時5分に家を出て、40分で先方に着く。前回開拓の裏道ルートでも平日のせいか、やや時間がかかった。
 施設はちょうどおやつタイム。椅子のセッティング替えなどあって、開始は15時15分あたり。秋メニューを中心に、アンコールを含めて50分で15曲を一気に歌った。


「高原列車は行く」
「二輪草」
「炭坑節」
「瀬戸の花嫁」
「二人は若い」
「高校三年生」
「荒城の月」
「北酒場」
「星影のワルツ」
「涙そうそう」
「古城」
「つぐない」
「丘を越えて」
「また逢う日まで」
「時計台の鐘(アンコール&リクエスト)」


 聴き手はおよそ30名。前回と曜日が異なるせいか、顔ぶれは大幅に入れ替わっている。マスクを着用し、聴き手との距離は広くとって感染に配慮した。

 聴き手も当然ながら全員がマスクで、表情が読みにくい条件は変わらない。1曲ごとの拍手で反応をうかがったが、全体的に大人しいなかで、手応えがあったのは「二輪草」「高校三年生」「荒城の月」「丘を越えて」「また逢う日まで」あたりか。
 前半の喉の調子はいまひとつで、特にロングトーンの音程が不安定だった。だましだまし進めて、後半は尻上がりに回復。不織布マスクの新品を使ったせいか、前回のような歌いにくさはなかった。


 ラスト曲を歌い終えたのが16時ちょうどで、係員がまとめようとしたら、利用者から「アンコールは?」の声が自然に湧く。  準備していた「リンゴの唄」をありがたく歌おうとすると、最前列で熱心に聴いていて、ときに一緒に口ずさんでいた男性利用者から、「『時計台』をぜひに」との声があがる。
 思わず「裕次郎(「恋の町札幌」→出だしに時計台が登場する)ですか?」と問うと、違う、時計台の歌だよ、と重ねる。

 どうやら唱歌の「時計台の鐘」が希望らしい。過去のライブで何度も歌ったが、リクエストは一度もない。素早く電子譜面を検索すると、案外簡単に見つかった。
 5年ぶりに歌ったが、これが自分でも驚くほどうまく歌えた。求められると、普段持っている以上のパワーが歌に乗り移るものらしい。


 終了後、全員で記念撮影。移動してきたばかりの若い施設長さんから労われる。
 ライブ前に調べてみたら、最初の依頼が大腸ガン発症直前の9年前の夏。以降年2〜3回ペースでコンスタントに依頼があり、奇しくもこの日は20回目のライブだった。
 Xmasライブの打診もあったが、胃ガン発症と手術の予定を率直に話し、患部の進行状況がはっきりするまで、しばらく活動を休止することで了解をもらった。
 先日の本修繕ボラと同じで、ボランティアを続けるにも、まずは自分の健康が最優先である。