グラーネ北の沢・訪問ライブ /2020.1.14
2020年の初ライブとして、市内遠方の老健施設で歌った。昨年5月にネット経由で最初の依頼があり、自由参加形式で小規模な部屋で歌ったが、手応え抜群だった。
翌月に再度の依頼がある。今度は大食堂で全員参加のイベントとして歌って欲しいとの要望。どのような場でも連続ライブは難しいが、「全曲リクエスト」という新たな形式でやることで受諾した。
ところがこの2度目のライブで開始時間を間違えるという大チョンボをやらかし、15分遅れての開始。ライブの手応えもいまひとつで、リピート依頼はないものと覚悟した。
半年後に再びの依頼があったときは正直驚いた。この理由ははっきりしないが、これまでの経緯をふまえ、前2回の午前中ライブから午後ライブに変更して欲しいこと、歌うスタイルを初回と同じ小部屋での自由参加方式に戻して欲しいことを、こちらの希望として申し出た。
いささか図々しいこちらの言い分は全面的に受入れられ、この日の3度目のライブに至った。
記録的な少雪で街なかの路面状態は良好だったが、施設は山間部にある。前回の遅刻でこりているので、早めに家を出た。
快調に走って50分足らずで先方到着。14時の開始までには充分な余裕があった。ゆっくりスタンバイして予定2分前にスタート。50分弱で14曲を歌う。(※はリクエスト)
「上を向いて歩こう」
「二輪草」
「真室川音頭」
「バラが咲いた」
「365歩のマーチ」
「蘇州夜曲」
「仰げば尊し」
「恋の町札幌」
「星影のワルツ」
「瀬戸の花嫁」※
「つぐない」
「君といつまでも」※
「東京ラプソディ」
「また逢う日まで」(アンコール)
開始時点での聴き手は10名ほど。30席ある会場は閑散とした印象だったが、これは初回と同じ傾向。歌い進むうちにジワジワと人が集まってくるのも同じ流れだった。
黒豆煮汁での対策が効いて咳喘息の影響はほとんどなく、喉は快調。次第にライブが熱を帯び始めた矢先、3曲目の「真室川音頭」のラストでギターに突然の異音。そう、魔の弦切れである。
歌い終えて「実は大変なことが起きまして、ギターの弦が切れました。2分くらいで交換しますので、少しお待ちを」と率直に説明。切れたのはまた4弦で、ただちに交換に取り掛かる。
ちょうどそのとき、5名ほどの聴き手がまとまって部屋に入ってきた。会場にいた知り合いを見つけ、「あら、来てたの〜」などと言葉を交わしている。ライブは中断していたが、この一時的な喧騒が格好の時間稼ぎに結果としてなった。
何事もなかったようにライブ再開。見渡すと、会場がいつの間にか満席になっている。突然の弦切れでチューニング全体が狂ってしまい、1曲毎に微調整を強いられたが、ツキも味方してダメージは最小限で済んだ。
以降のライブは熱い手応えのまま突き進む。「バラが咲いた」「蘇州夜曲」「仰げば尊し」「星影のワルツ」「瀬戸の花嫁」では共に歌う多くの声が耳に届いた。
入退去が頻繁な老健施設という事情もあり、昨年とは顔ぶれが相当入れ替わっていて、今回はどちらかといえば叙情的な曲が好まれた。
30分が経過して残り10分となった時点で、場にリクエストを募る。声が上がったのは「瀬戸の花嫁」だけで、残り1曲は準備した「つぐない」でつないだ。
(結果として、この日一番外した曲かもしれない)
そのままラストになだれこむつもりでいたら、最前列で熱心に声援を送っていた女性が「加山、聴きたいね」と、隣の女性にささやく声が聞こえる。これは無視できない。
「もしかして、加山雄三をお聴きになりたいのですか?」と、咄嗟に「君といつまでも」のさわりを歌ったら、「そうそうそれ」と嬉しそうに頷く。時間が迫っていて譜面を探す時間がなく、そのままアカペラで1番だけ歌ったら、大喜び。(歌詞は暗譜していた)
「確かセリフもあったでしょ?」と重ねるのでこちらも披露したが、伴奏なしにも関わらず、会場全体が湧いた。小さな声を拾い上げて正解。
時間オーバーしてにぎやかにラストを歌い終えると、担当の職員さんからアンコールが飛び出す。打合せにはなかったが、確かに場の気分には沿っている。ありがたくお応えした。
終了後、近寄って声をかけてくれたり、握手を求めてくる方が多数。「また歌いに来てね」と殺し文句を耳元でささやく女性もいた。
開始直後の弦切れという想定外のハプニングに見舞われたが、運にも恵まれて好評のうちに終えられた。