訪問ライブ顛末記


ケアハウスつかさ・敬老会 /2019.9.13



 2年前に一度だけ歌った隣区の軽費老人ホームから連絡があり、敬老会イベントでまた歌って欲しいという。同じ年の連続依頼はよくあるが、2年を経ての再依頼は稀。よく覚えていてくれたものと感謝したい。

「自立度の高い居住型施設で、聴き手の層は介護予防事業に近い」との前回ライブ記録に基づき、昭和歌謡系の曲を中心に構成。施設側の要望で前半20分〜後半20分の2部構成とし、中間に休憩を設けることになる。
 前後半それぞれ6曲、最初と最後の曲にそれぞれメリハリをつけ、山を2つ作る工夫を施した。

 開始20分前に到着。13時50分から施設側のイベントがあり、予定2分遅れの14時2分から開始。休憩8分を含め、およそ50分で12曲を歌う。


《前半》
「高原列車は行く」
「二輪草」
「お富さん」
「瀬戸の花嫁」
「二人は若い」
「上を向いて歩こう」

《後半》
「君恋し」
「荒城の月」
「まつり」
「夜霧よ今夜も有難う」
「浪花節だよ人生は」
「リンゴの木の下で」


 聴き手は30名強。2年前に歌った際の記憶が希薄で、特に前半では好評だった5日前の有料老人ホームでのライブイメージをやや引きずった。
 場は全体的に静ひつで大人しい。曲に合わせた手拍子はそれなりに湧くが、共に歌う声はほとんどない。
「動いて歌う」技を時折仕掛けるが、なかなか場は乗ってくれない。消化不良のまま、前半が終了した。

 休憩時間中に飲物が配られる。乗っているときは休憩なしで突っ走るのが得策で、場もそれを求めるが、今回は間をおくのが正解だったかもしれない。

 14時半から後半を始めたが、手堅い「君恋し」の手応えはまずまず。場が一気に乗ったのは、3曲目の「まつり」からだった。内容は年末向きだが、年末に再度招かれる可能性は低く、直前になって歌ってみる気になった。

 曲紹介の時点で会場が湧く。歌い始めると職員さんの動きがが慌ただしくなり、途中で上の吹き抜けから紙吹雪が舞い始めた。まるで紅白歌合戦の演出のようで、会場は湧きに湧く。
 事前には何も聞いてなく、あまりに歌の内容にぴったりなので驚いた。あとで知ったが、ラストの曲に合わせ、紙吹雪とおひねりを交互にまくという打ち合わせになっていたという。

 会場はまるでフィナーレのような雰囲気となり、その後の3曲も職員さんの踊りや手拍子が加わり、お祭り騒ぎのまま突っ走る。
 そんな事情なら、叙情系の「夜霧よ今夜も有難う」と「まつり」は入れ替えて歌うべきだったが、これぞあとのまつり。まあそれでも、前半と打って変わって大盛り上がりの大団円となったので、よしとすべきだろう。

 喉の調子は決して万全とはいえなかったが、「紙吹雪舞う中で歌う」という、まるでプロ歌手のような貴重な経験をさせていただいた。
 終了後に全員が集まって記念写真。これまた過去に数回しかないことで、会の盛況を物語っていた。


 

新川エバーライフ・デイ敬老会 /2019.9.16



 5月に歌ったばかりの特養&デイサービスから、突然のライブ依頼があった。わずか1週間後のハナシだったが、たまたまスケジュールが空いていたのでお受けした。
 年1回の依頼ペースが急に詰まった訳は確かめてないが、もしかすると予定演者の急なキャンセルがあったのかもしれない。

 普段は特養とデイサービス両方の利用者が対象で、聴き手は100名近い。しかし今回はデイサービス利用者限定の敬老会で、参加者は30名程度だという。
 年齢層と介護度の違いを考慮し、幅広い選曲で臨んできたが、昭和歌謡系の比重を高くして歌うことにした。

 開演はいつも14時半で、20分前に会場入りすると施設側のイベントが進行中。ただちにスタンバイし、5分ほどで準備が終わると、施設側はすぐに始めて欲しいという。
 予定よりかなり早かったが、希望通り14時18分に開始。35分で11曲を歌った。

「高原列車は行く」
「高校三年生」
「お富さん」
「ここに幸あり」
「幸せなら手をたたこう」
「上を向いて歩こう」
「荒城の月」
「浪花節だよ人生は」
「夜霧よ今夜も有難う」
「まつり」
「リンゴの木の下で」


 いつもは高さ80センチほどのステージ上で歌い、PAも2台を使うが、今回は参加者が少ないこともあってステージ直下で歌うことにした。聴き手との距離が近く、一体感が期待できる。PAも他施設と同様に1台のみとした。

 いつもの傾向だが、歌い始めても場の反応が弱い。デイサービス利用者限定でも車椅子の数が多く、介護度の進んでいる方が多いように思えた。
 1曲終了ごとの拍手はそれなりだが、手拍子やかけ声、共に歌う声がほとんどない。あまりの手応えのなさに、急きょ予定になかった「幸せなら手をたたこう」を歌って場面転換を図った。

 しかし、場に大きな変化はなく、「動いて歌う」技や時折交えるMCにも効果がない。決め手のないまま、時間だけが過ぎ去った。
 多少の手応えを感じたのは、「上を向いて歩こう」「浪花節だよ人生は」「まつり」あたり。15時近くまで演って欲しいという施設側の要望には応え、おそらくは代役としての役目も無難にこなしたが、最後まで生煮え感が残るライブだった。


 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2019.9.29



 市内遠方のデイサービスで歌った。6年前にネット経由で最初の依頼があり、以降途切れることなく続いて、今回が実に17度目のライブ。通算ライブ数では2位に位置する施設だった。
 1週間前に続き、今回も孫娘のサッカー子守りとスケジュールが重なった。息子の試合会場が私の会場と正反対の方角で、時間的にもやり繰りが難しく、掛け持ち子守りは不可能。午前中から審判当番のある息子の都合で、8時半に最寄りの地下鉄駅まで迎えに行った。

 午前中は孫娘の子守りに専念し、昼食後に孫娘のお昼寝に付き合う。眠っている孫娘を起こさぬよう抜け出し、リハーサルもやらずに14時5分前にそっと車を出した。

 車中で数曲歌ってリハーサルの穴埋めをする。13時40分に先方に着いて、予定通り15時からライブは始まった。リクエストやアンコールを含め、およそ50分で14曲を歌う。


「高原列車は行く」
「高校三年生」
「お富さん」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「いつでも夢を」
「荒城の月」
「旅の夜風」
「いい日旅立ち」
「まつり」
「星影のワルツ」
「リンゴの木の下で」
「川の流れのように」(リクエスト)
「丘を越えて」(アンコール)


 以前は新し目の昭和歌謡やフォークが歌える貴重な場だったが、前回(今年4月)あたりから微妙に場の空気が代り、有料老人ホームや特養に近い雰囲気になった。
 対応策として今回は冒険を避け、ごくオーソドックスな路線に変更。曲調もニギヤカ系を多めとした。

 工夫のかいあってか、全体的な反応は前回よりも向上していたように思える。聴き手は40名ほどだったが、熱心に聴いてくれる方がけっこういて、手拍子や共に歌う声も時折耳に届き、進行としてはやりやすかった。

 中程の25分あたりで、「半分少し過ぎましたが、トイレ休憩をとらなくてよいですか?」と尋ねると、担当の職員さんがそのまま続けて欲しいという。
 ところが一通り歌い終えてリクエスト&アンコールになったとたん、複数の方がトイレに立ってしまい、しばしの中断を強いられた。休憩なしの40分は高齢者には辛い。進行の決定権はあくまで施設側にあるのだが…。

 アンコールは数名しかいない男性からのもので、「美空ひばりをなにか」といった要望。曲名ではなく、歌手指定のリクエストは選択肢が広がるので歓迎である。
 ラストの「丘を越えて」は、そのリクエストで場が静まり返ってしまい、そのまま終われないと判断した自主的なもの。なぜか喉は絶好調で、いくらでも歌えそうな感じだった。

 この日は60代として最後のライブでもあった。単なる区切りだとしても、70歳まで人前で歌い続けることがひとつの目標だったので、感慨深いと同時に、自分なりの達成感はある。

 15年前に積極的に人前で歌おうと弾き語り活動を始めて以来、今回が通算560回目のライブ。我ながらよくぞ歌った。
 今後のことはわからないが、すでにXmasライブの依頼も飛び込んでいる。当面は請われるままに歌い続けたいが、(やれない…)と自己判断したときが、どうやらやめる時になりそうだ。それがいつなのかは、天のみぞ知る。


 

デイサービス大倉湯・訪問ライブ /2019.11.6



 ネット経由で初めて依頼された市内のデイサービスで歌った。この施設が私の卒業した小学校の2ブロック南にあるという偶然。60年近く前にはよく遊んだ地域だった。
 ライブ中のMCでこのことにふれると、「何かの縁を感じませんでした?」と職員さんに問われ、「そう、感じましたね」と応じた。

 ライブは13時半からの予定で、13時5分前に家を出て20分足らずで着く。施設は以前、銭湯として使われていた建物を改築したもので、銭湯の名残があちこちに残っていた。
 ステージは脱衣所間仕切りあたりに設営し、客席は洗い場付近だった。5分遅れの13時35分から始まり、45分で13曲を歌う。

「憧れのハワイ航路」
「おかあさん(森昌子)」
「お座敷小唄」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「荒城の月」
「人生一路」
「夜霧よ今夜も有難う」
「まつり」
「月がとっても青いから」
「東京ラプソディ」
〜アンコール
「浪花節だよ人生は」


 聴き手は職員を含めて40名弱。初めての施設なので冒険は避け、ごくオーソドックスな構成で臨んだ。
 手探りで進行するつもりが、1曲目からいきなり手拍子が飛び出して驚く。開始前から親しく話しかけてくる女性がいて、ノリがよさそうな予感はすでにあった。

 不安だった咳喘息による声への影響はほとんどなく、聴き手の強い後押しでライブは調子よく進む。職員さんのかけ声や手拍子の先導も効果的だった。
 ニギヤカ系の曲には全て手拍子が入り、バラード系の曲には曲間でさざ波のような拍手が湧くという具合。多くの聴き手の顔が輝いていて、これほど歌いやすい場はそうあるものではない。

 特に手応えのあった曲は、「お座敷小唄」「荒城の月」「夜霧よ今夜も有難う」「東京ラプソディ」あたり。唯一外した感じがしたのは「人生一路」。美空ひばりの歌は難しいと再認識した。

 打合せ通りに40分で終えたら、最前列の女性からすかさず「えっ、もう終わり?」の声。終わりですと再度告げると、「もう少し聴きたい。アンコール!」と、絵に描いたような自然発生のアンコールが飛び出した。
 職員さんの声と手拍子がこれに続き、ありがたく「浪花節だよ人生は」を歌わせていただく。

 終了後も声をかけてくれる方が多数。「歌はやっぱりいいね〜」と嬉しそうに語る女性の顔が印象的だった。
 不思議な縁でつながった70代最初のライブ、長く記憶に残りそうな予感がする。


 

デイサービスつどい・訪問ライブ /2019.11.14



 札幌から北へ60キロの地方都市にあるデイサービスで歌った。昨年始めにネット経由で最初の依頼があり、今回が4度目。
 実は3月にも歌っているが、「あの人の歌をまた聴きたい」との要望が利用者からあったとのこと。歌い手にとっては一番うれしく、ありがたい言葉だった。

 11時25分に家を出て、55分後に途中のイオン岩見沢店で休憩し、昼食をとる。同乗の妻はそのままイオンに残って買い物。私だけが12時45分に店を出て施設へと向かった。
 途中で近道となる交差点を右折するつもりが、見過ごしてしまったようで、結局はいつもの道の駅三笠経由で向かった。

 13時15分に到着し、すぐに設営開始。ステージ位置はいつも決まっていて、椅子はすでに並んでいる。隣接のグループホームからも三々五々と人が集まってきて、いつも通り30名ほどが参加し、時間ちょうどの13時半から始めた。
 アンコールを含め、およそ45分で13曲を歌う。


《前半》
「上を向いて歩こう」
「好きになった人」
「お座敷小唄」
「荒城の月」
「北酒場」
「星影のワルツ」

《後半》(※以外全てリクエスト)
「襟裳岬(森進一)」
「二輪草」
「さざんかの宿」
「恋の町札幌」
「時の流れに身をまかせ」
「また逢う日まで」
〜アンコール
「まつり」※


 前半は私のセレクションで12曲を用意していたが、ライブ前の待ち時間に次々とリクエストが飛び出す。適当なところで打ち切って、後半はリクエスト中心でやることにした。
 利用者のライブに対する積極的な姿勢はいつものことで、他の施設ではあまり見られない傾向だった。あくまで推測だが、施設側の伸びやかな運営方針が反映されているのではないだろうか。

 1曲目は過去のライブで必ず歌っている人気曲。いきなり手拍子が飛び出して、一気に会場が湧く。
 複数の職員さんがライブをリードしてくれるのも、この施設の大きな特徴。歌い手は単純に歌に集中するだけでよく、大変やりやすい。

 基本的にニギヤカ系の曲が好まれ、前半のセレクションもそれに沿ったものだった。場の気分に乗って歌い続けるうち、あっという間に予定の40分が過ぎる。
 アンコールの「まつり」では、ラストの歌詞に施設の地名を入れて歌うと、これが大受け。大団円の幕切れとなった。

 終了後、「生の歌はやっぱりいいね〜」と、盛況だった先日の別施設ライブと奇しくも同じ声が会場から届く。
 アンコール前のMCで、「55歳からこうした活動を始めましたが、実は70歳でやめるつもりでした」と告げたこともあり、「また歌いに来てね〜」と、終了後に多くの方から声をかけられた。

 はてさて、いつまで歌い続けられるのか当人にも分からないが、請われるうちは細々とでも続けようかと目下考えている。


 

ツクイ札幌麻布・訪問ライブ /2019.11.17



 1年前に初めて依頼があった近隣のデイサービスで再び歌った。いわゆるリピート依頼だが、昨年は施設が開設してまもなかったこともあり、場をつかむのにやや苦心した記憶がある。
 昨年の記録を参考に構成を練ったが、季節の急変で冬の歌でも違和感がなくなり、最近の晩秋傾向の構成を微妙に変えた。

 スタートは15時で、14時20分に家を出る。気温が2度ほどで風も強く、とにかく寒い。ブラックバーン状態の道路を慎重に走り、20分で先方に着く。

 昨年とは担当者が変わり、ステージが客席を広く見渡せる窓を背にした位置に変わった。
 素早く設営して、10分前にスタンバイ。控室でしばし待って、予定から5分遅れの15時5分から始めた。想定外のリクエストが多数あって、50分で14曲を歌う。(※はリクエスト)

「上を向いて歩こう」
「好きになった人」
「お座敷小唄」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「荒城の月」
「小樽のひとよ」
「星影のワルツ」

「神田川」※
「つぐない」※
「涙そうそう」※
「ブルーライト・ヨコハマ」※
「まつり」


 聴き手はおよそ30名。前回は男性の比重が3割前後と高かったが、1年を経た今回は1割強まで減っていて、他施設と大差がない。

 抜群の手応えだった3日前のデイサービスに似た構成で臨んだが、歓声や手拍子は少なめで、前回同様に大人しい印象。アクセントのつもりで入れた叙情系の「バラが咲いた」「荒城の月」の反応が意外によく、共に歌う声も耳に届いた。
 傾向としては傾聴型の場で、直近の2つのデイサービスライブに比べ、明らかに嗜好が違っていた。

 8曲を歌った時点でおよそ30分が経過。打合せによる演奏時間は45分で、このまま残る4曲を歌えば要望には充分応えられた。
 しかし、事前のイメージと実際の反応に微妙なズレを感じたこともあり、ここで予定にないリクエストを募る気になった。

 実は1年前にもリクエストを募ったが、反応はゼロ。その旨を告げると、職員さんが急きょ場を巡回し、リクエストを集めてくれた。

 職員さんがリードすると、どのような場でもリクエストはでやすい。ライブは終盤だったが、続々と希望曲が出て、場は一気に盛り上がった。
 特に叙情性の強い「神田川」の出来が抜群で、終わると場からため息が出るほど。時間の都合で応えられなかったリクエストも多くあったが、終了後に「次回はリクエスト中心でぜひに」という話になり、それではとリクエスト一覧を置いてきた。

 偶然だが、他の系列デイサービスで以前に何度も私の歌を聴いた、という職員さんが2人もいて驚いた。リクエストを募ってくれた方もその一人。
 長く歌っていると、いろいろな形で過去の財産が活きるもの。不思議な縁に救われた。