訪問ライブ顛末記


グラーネ北の沢・訪問ライブ /2019.5.18



 ネット経由で初めて依頼された老健施設で歌った。施設は自宅から25キロほど離れた市内南端の山間部にある。
 9時45分に家を出たが、途中でトイレ休憩などのアクシデントがあり、到着は開始ギリギリの10時50分。ただちに設営にかかり、どうにか5分前にスタンバイした。

 会場が施設の奥に位置する会議室のような部屋で、自由参加のせいか集まりがあまりよくない。予定ちょうどの11時に始めたが、その時点で10名強という状態で、空席が目立った。
 歌い始めると声を聞きつけて隣接するホールから人が集まってきて、最終的には並べた椅子30席が全て埋まる盛況。突発的なリクエストやアンコールなどあって、予定を超える50分で15曲を歌う。

「北国の春」
「おかあさん(森昌子)」
「お富さん」
「瀬戸の花嫁」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「春の童謡メドレー/ちょうちょう・チューリップ・めだかの学校」
「みかんの花咲く丘」(歌詞指導)
「故郷」
「上を向いて歩こう」
「夜霧よ今夜も有難う」
「霧の摩周湖」(リクエスト)
「君恋し」
「また逢う日まで」(三択リクエスト)
「月がとっても青いから」(アンコール)


 40分間のライブを求められており、初めて訪れる施設ということで、定番曲を中心にオーソドックスな構成で臨んだ。

 1曲目の間奏で会場から自然に拍手が湧き、この時点ではやくもライブの成功を予感させた。以降、曲紹介の時点で歓声が湧くなど、手応え抜群の進行。場の反応がよいとMCでのアドリブもうまく出て、さらに会場が湧くという好循環だった。
 会場が小さめでステージに段差がなく、聴き手との距離が近いという条件も幸いしたように思える。

「童謡唱歌を多めに」と施設側から事前の希望があり、中ほどで5曲を続けて歌ったが、結果として昭和歌謡系の曲が好まれていたので、ここは3曲くらいに留めるべきだったかもしれない。

 終盤のMCでリクエストやレパートリー数のことをふれた途端、最前列で熱心に聴いていた男性から、「布施明の曲をなにか…」と突然求められた。予期せぬリクエストだったが、時間には余裕があるとのことで、急きょお受けすることにした。
 レパートリーをいくつか挙げるうち、他の方の賛同もあった「霧の摩周湖」に決まる。数年ぶりに歌った塩漬け曲だったが、無難にまとめた。

 ラストの曲を歌う段になってふと思いつき、久しぶりに三択リクエストを仕掛けてみた。当初は「リンゴの唄」を予定していたが、もしかすると場の嗜好は違うのでは?と考えた。
「リンゴの唄」「青い山脈」「また逢う日まで」を候補にあげ、拍手と挙手で選んでもらうと、圧倒的多数で「また逢う日まで」で決着。盛り上がりはピークに達した。
 歌い終わっても場には強い余韻が残り、職員さん主導で打合せにはないアンコールが飛び出す 。結果として予定時間を10分オーバーしたが、ごく自然な流れだった。

 終了後、近寄って声をかけてくれる方、握手を求める方が相次ぎ、10名を超えた。その半数が男性で、男性がこれほど生き生きとしている施設は珍しい。
「次回はリクエスト中心でぜひに」との声が複数あがり、ひょっとすると実現するかもしれない。ギリギリ到着の午前中ライブで、喉の調子は決して万全とは言えなかったが、聴き手の強い後押しと初回の物珍しさも手伝って、久しぶりに会心のライブだった。


 

シルバーハイツ中島公園 一般棟・誕生会 /2019.5.23



 1週間前に歌ったばかりの有料老人ホームで再び歌った。前回は介護度の重い利用者が聴き手で、今回は介護度の軽い方が対象。誕生会イベントとしての位置づけは同じだが、今回は夕食会に合わせた企画だった。
 時間は17時半開始という私にとっては遅い時間帯。早すぎるのも遅すぎるのも調整は難しく、なかなか都合よくは運ばない。

 時間的な問題のほか、食事をしながら歌を聴いてもらうという、別の難しさがあった。アルコールは出ないのが幸いだったが、食事の妨げとなるニギヤカ過ぎる傾向の歌や、手拍子などのアクションを暗黙のうちに要求する歌は避けるべきだった。

 前回とは異なる都心の幹線道路を通って向かったが、40分弱で着いた。開始まで40分ほど余裕があり、控室でゆっくりスタンバイ。17時20分ころに機材を食堂に運び込み、予定ちょうどから始めた。
 アンコールを含め、およそ25分で9曲を歌う。


「北国の春」
「おかあさん」(森昌子)
「ここに幸あり」
「くちなしの花」
「ケ・セラ・セラ」
「君恋し」
「恋心」
「リンゴの唄」
「月がとっても青いから」(アンコール)


 介護度の違いや夕食会余興という事情から前回とは構成を大きく変え、3曲を入れ替えた。

「真室川音頭」→「くちなしの花」
「二人は若い」→「ケ・セラ・セラ」
「東京の花売娘」→「恋心」

 手拍子系の曲を外し、洋楽系を2曲入れた。シャンソンは過去2回の同じ場でも歌っていて、職員さんからの要望である。

 聴き手は50名ほど。食事中ということもあって、特に前半はBGM的な歌唱を心がけたが、すでにデザートや飲物に進んだ方は、熱心に耳を傾けてくれた。
 食事開始から45分が過ぎた後半の「君恋し」あたりからじょじょに場の反応がよくなってくる。お腹がいっぱいになると、歌に耳を傾ける余裕が出てくるのだろう。
 この日も歌詞はプロジェクターで表示させたが、共に口ずさむ声は後半に多かった。

 ラストの「リンゴの唄」とアンコールでは軽い手拍子も自然に出て、静ひつな場ではあったが、それなりの盛り上がりはあった。
 夕方開始の食事会余興という難しい場、邪魔にならずに手堅くまとめられたと思う。


 

ネクサスコート真駒内・6月誕生会 /2019.6.16



 市内南端にある有料老人ホーム誕生会で歌った。依頼はネット経由であったが、実はこの施設では8年前にも2度歌っている。当時の担当者はすでに退職していて、引き継ぎによるリピート依頼ではなく、まっさらな状態からの依頼だった。
 とはいえ、施設の建物や経営形態は同じで、入居者の多くは8年前から変わっていないという。当時の記録を参考に進行や構成を打合せたが、洋楽を多めに歌うという希望は変わってなく、中ほどで歌詞カードを配って全員で歌うという趣向が新たに加わった。

「サン・トワ・マミー」「ケ・セラ・セラ」の要望が施設側からまずあり、ラストは「また逢う日まで」で締めくくることが最初の電話で決まる。
 実施2週間前までに、30分10曲の構成を先方にFAXして最終了解を得た。

 当日は雨の予報だったが、うまい具合に降られずに済む。前日夕方にイベントライブで歌ったばかりで、帰宅は20時過ぎ。ライブ開始は12時で、施設までは1時間近くかかる。10時45分に家を出て、先日の墓参りで開拓した新ルートを通って向かった。
 いったん終息したはずの腰痛が昨日のライブ後にぶり返し、腰にはコルセットを巻いた。過酷なスケジュールで身体は悲鳴をあげているが、この日を乗り切れば一息つける。

 どのルートよりも早く、50分で先方に到着。新担当者と挨拶を交わし、まず会場の下見をする。前回とは食卓の配置が大きく変わっていて、ステージ位置は中央壁際に設定されていた。
 予定通り12時ちょうどに開始。11時半から始まった昼食は、食べ終わってお茶を飲んでいる時間帯で、歌と食事が重なる問題はない。およそ35分で11曲を歌う。


「サン・トワ・マミー」
「ここに幸あり」
「恋の町札幌」
「恋はやさし野辺の花よ」
「バラが咲いた」(歌詞カード)
「上を向いて歩こう」(歌詞カード)
「ケ・セラ・セラ」
「君恋し」
「エーデルワイス」
「また逢う日まで」
「月がとっても青いから」(アンコール)


 最初の数曲は反応がやや硬かった。8年も経つと歌い手も聴き手も互いに記憶が薄れ、ほとんど初訪問に近い。過去2回の記憶を頼りに、ていねいに歌い進める。
 典型的な傾聴型の場で、ニギヤカ手拍子系の曲は皆無だったが、1曲ごとの拍手は熱く、手応え自体は悪くなかった。

 中ほどの歌詞カード配布曲では、共に歌う声がかなり耳に届き、以降の後半はじわじわと反応がよくなった。
 ラストの「また逢う日まで」では、期せずして会場から小さな手拍子が湧く。過去2回にはなかったことで、これは驚きだ。そのまま締めくくると、奥に座っていた男性利用者から「アンコール!」の声。会場の拍手がそれに続く。
 全く打合せになく、もちろんこの施設では初めてのこと。気遣った担当者が「アンコール、大丈夫ですか?」と確かめにきたが、もちろん問題なかった。

 終了後も「よかった」「最高だった」の声が多数耳に届き、ステージまで近寄ってきて、ていねいに労いの声をかけてくれる方も複数いた。
 体調が最悪に近い状態での連続ライブで、無事にやれるか不安だらけだったが、想像以上の手応えで正直ホッとした。

 反省として、歌いながら聴き手と目で語りすぎて、「ケ・セラ・セラ」の2番歌詞を一瞬見失ったこと。他施設ではあまり歌わない曲が多く、歌詞から目を離し過ぎるのは禁物だった。
 そのほか、アンコールの「月がとっても青いから」のロングトーンで、一部声が切れた。体調が悪いときに起こる現象で、大きなキズではなかったが、欲を出さずに半音下げて歌うべきだったかもしれない。


 

グラーネ北の沢・訪問ライブ /2019.6.29



 先月下旬に初めて訪問した遠方の老健施設から連絡があり、利用者からの強い要望があって、また歌って欲しいという。確かな手応えがあったので、(もしや…)と思っていたが、うれしいリピート依頼だった。
 問題はわずか1ヶ月後という短い間隔であること。どのような場でも短期間に同じ歌い手が続くと、どうしても飽きられる。多くても年2回くらいが程よいペースで、10年を超える長いお付き合いのある施設は、おしなべてこのペースを守ってくれている。

 その旨を施設側に説明したが、「では前回と全て違う曲を歌うということで」と、新たな提案。どうやら歌わざるを得ない雰囲気で、代案として前回歌った際、後半に自然発生で飛び出したリクエストを、今回は積極的に取り入れることを逆提案した。
 利用者の選んだ曲であれば、短い間隔でも受け入れられるのでは?との考え。さっそくリクエスト方式ライブで使っている330曲の曲一覧を先方にFAX送信する。

 開始時間は前回と同じ11時。車で軽く1時間近くはかかるので、10時前には家を出なくてはならない。そのはずだった。
 ところがなぜか開始時間を12時と勘違いし、気づいたときには10時を回っている。あわてて機材を積んで出発し、時計は10時20分。
 前回帰路に選んだ空いているコースを選んだが、どう急いでも11時には間に合わない。15分ほど走ったあとで施設に電話し、正直に理由を告げて遅れる旨を伝えた。

 到着は50分後の11時10分。施設側がゲームで場をつないでくれていて、急いで機材をセット。11時15分から歌い始めた。

 利用者から募った13曲分のリクエストが印刷してあり、ほぼそれに沿った構成で進める。遅刻のせいで予定より5分短い40分で11曲を歌う。
(1曲目以外は全てリクエスト)


「憧れのハワイ航路」
「サボテンの花」
「いい日旅立ち」
「ルビーの指輪」
「上を向いて歩こう」
「知床旅情」
「サン・トワ・マミー」
「北国の春」
「カントリー・ロード」
「君恋し」
「また逢う日まで」


 前回は30席ほどの会議室が会場だったが、今回はなぜか食堂ホールで歌って欲しいという。聴き手は軽く100名を超えていて、吹抜けの大空間が広がっている。PAが1台では不安があったが、突然のことで準備がない。
 理由ははっきりしないが、自由参加だった前回ライブの評判がよく、急きょ全員参加のイベントに「格上げ」になった可能性がある。

 遅刻による動揺と広すぎる会場への戸惑いがあって、ライブの出来はいまひとつだった。歌に興味がある方だけが集まってきた前回と異なり、聴き手の集中度もいまひとつ。
 前回は1曲目から自然に湧いた間奏の拍手や手拍子も、今回は皆無。会場が広すぎて聴き手とのコミュニケーションもとりずらく、打開策を見いだせないまま、ズルズルと負のスパイラルにはまりこんだ。

 やってみて気づいたが、介護施設での完全リクエスト方式は早すぎたかもしれない。曲の傾向が隔たってしまい、違う曲調で場の転換を図ることが難しいからだ。結果論だが、前半を自分の構成で進め、場が乗ってきた後半に様子をみてリクエストを募るという従来の方式が、やはり無難である。
 事前にもらったリクエスト曲のうち、時間切れで歌えなかった曲は「なごり雪」「夜霧よ今夜も有難う」「柳ヶ瀬ブルース」の3曲。13曲中5曲が前回歌った曲で、(あの曲をもう一度聴きたい…)という聴き手の思いが明確に表れていた気がする。

 自分のミスによる遅刻から始まったトラブルだったが、多忙の中でも出発時間を逆算から確認し、携帯のアラーム設定で間違いを減らすという習慣を怠ってはいけないと痛感した。
 反省ばかりの痛いライブだったが、帰り際に食事の手を休め、「いい歌をありがとう」と声をかけてくれた女性が一人いたのが救い。


 

アサヒケアホーム山鼻・訪問ライブ /2019.4.27



 4月末に初めて歌ったサ高住から再び招かれた。活動を仲介するNPO法人からは、「今後シーズン毎に歌って欲しい」という要望が前回終了後にあり、半信半疑でいたが、その言葉通りの依頼だった。

 施設がオープンして間もないこともあってか、非常に大人しい場という印象が前回ライブであり、消化不良に終わった記憶がある。
 なにが受けるのか、つかみきれない部分もあって、前回との重複を避けつつ、夏関連の歌を慎重に選曲。新旧や異ジャンルの曲を取り混ぜた苦心の構成となった。

 13時45分に着いて10分後にはスタンバイし、館内放送後に入居者が三々五々と集まってくる。開始は前回と同じ14時10分。45分で14曲を歌った。


「憧れのハワイ航路」
「二輪草」
「お富さん」
「バラが咲いた」
「二人は若い」
「恋のバカンス」
「牧場の朝」
「我は海の子」〜(休憩)

「上を向いて歩こう」
「いい日旅立ち」
「山小舎の灯」(初披露)
「浪花節だよ人生は」
「青い山脈」
「また逢う日まで」


 聴き手は20数名で、出だしから場は静ひつ。しかし、手拍子を遠慮がちに膝の上でする方がチラホラいて、曲に合わせて歌う方もいたりし、前回より手応えはあった。
 ライブの途中から参加する方が複数いた反面、「恋のバカンス」が終わると場を去る車椅子の女性がいて、(曲の傾向が新しすぎたか…)と、一瞬ドキリとした。

 予定時間45分の半分を過ぎた時点で休憩を挟んだのは、危機感からくる咄嗟の判断。ちょうどお茶が用意されていて、タイミングとしてはよかった。
 休憩を利用して、簡単な自己紹介をする。活動を始めた時期の失敗談なども披露して、場をつかむには効果的だった。

 この短い休憩が効いたのか、後半の手応えはぐんとよくなり、ラスト前の「浪花節だよ人生は」では、ついに自然発生的な手拍子が飛び出す。終了まで席を立つ方は皆無だった。(ライブは自由参加である)

 時間に多少の余裕があり、終了前にリクエストを募ったが、互いに顔を見回すばかりで、具体的な声はない。
 そこでラストに得意の二択リクエストを仕掛ける。「懐メロVS昭和歌謡」と称し、「青い山脈」と「また逢う日まで」の2曲を拍手で選んでもらったが、不思議なことに判断が難しいほど拍手の数が拮抗。
 最終的に一部を省略して2曲とも歌ったが、この趣向がまたまた受けたから、なにが幸いするか分からない。

 施設の要望通り45分で終えたが、「よかった〜」「涙が出た」との声が複数あがる。機材を片づけながら、構成の苦心などを語りつつ、さらなる場との交流を図る。「シーズンごとに来て欲しい」との要望があるので、聴手とのコミュニケーションは欠かせない。

 そうするうち、「アンコールをぜひ」との声が期せずしてあがった。機材はほぼ片づいていたが、ノーマイクでも…と応じる気でいたら、担当の方が「次回のお楽しみということで」とまとめてしまう。時計がすでに15時で、次のスケジュールが詰まっていたらしい。
 しかし、前回の消化不良を完全に克服する出来だったことは間違いない。1ヶ月ぶりのライブで、直近のライブは15分遅刻という失態をやらかすトラウマがあったが、喉の調子も抜群によく、心機一転リスタートが切れそうな予感がする。


 

ベストライフ清田・9月誕生会 /2019.9.8



 市内南端にある有料老人ホーム誕生会に招かれて歌った。最初の依頼があってから足掛け13年が経過。今回が15回目という長い長いお付き合いのある施設だった。
 車で1時間近くかかるが、今回は孫娘のサッカー子守りと日程がぶつかり、あれこれ調整のすえ、施設近くにある大規模公園の遊具広場で孫娘を遊ばせつつ、その合間に抜け出してライブをこなすことになった。
 スケジュールとしては厳しいが、施設と大規模公園が隣接していたことが幸いだった。

 開始時間の20分前に施設到着。子守りからライブへと気持ちを切り替えるべく、ゆっくりとスタンバイする。

 予定より10分遅れで施設側のイベントが始まる。数分で終わって、ただちに予めセットしておいたPAとマイクスタンドを搬入。14時17分から歌い始めた。想定外のアンコールなどあって、およそ40分で13曲を歌う。

「高原列車は行く」
「おかあさん」(森昌子)
「蘇州夜曲」
「君恋し」
「山小舎の灯」
「上を向いて歩こう」
「荒城の月」
「高校三年生」
「長崎の鐘」
「東京の花売娘」
「青い背広で」
「東京ラプソディ」
〜アンコール
「月がとっても青いから」


 依頼は年1回ペースと程よいが、ライブ回数が多いことに変わりはなく、怖いのは惰性からくるマンネリだった。前2回の記録を参考に、慎重に構成を練る。
 当初は曲を静かに聞く「傾聴型」の場だったが、このところ微妙に傾向が変わり、ニギヤカ系の曲が好まれるようになった。入居者の入れ替わりが少なく、高齢化が進みつつあることと関係があるかもしれない。

 以前に「古い曲をぜひに」とリクエストされたことがあり、以来懐メロ系を多めにするよう心がけていて、今回も懐メロ系8曲、昭和歌謡系3曲、唱歌1曲という比重にした。懐メロにはこの施設では初披露の3曲を入れた。
 結果として、昭和歌謡系をもう1曲増やしてもよかった気がする。

 出だしの数曲は飲物とケーキをテーブルに配る関係で会場がざわつき、じっと我慢の時間が続く。
 4曲目の「君恋し」あたりから場がようやく落ち着いてきて、手拍子や共に歌う声が耳に届き始めた。

 傾聴型の曲は3曲を散らして配置。他9曲はストローク系のニギヤカ系でまとめたが、この比率は正解だったと評価したい。
 今回初めての試みとして、春の曲を数曲入れた。秋に招かれることが多く、季節感にこだわると曲が隔たることを避けるためだったが、新鮮味を出すという目的は達成できたと思う。

 場は中盤以降からじわじわと盛り上がり、ラストの「東京ラプソディ」で最高潮に。

 1週間前のギター交流会で「オー・シャンゼリゼ」を場を盛り上げる意図で身体を揺らしながら歌ったが、同じ技を今回のラストでも使った。
 吹奏楽の新ジャンル「ダンプレ」に近いイメージで、動く自由度はノーマイクだった前回よりも低いが、マイクを軸に半円を描くよう動けば遜色ない。以前にギターネックを振りつつ歌ったことがあるが、場を乗せるにはそれ以上の効果がありそうだ。

 予定をややオーバーして37分間のライブを終えたが、期せずして会場から拍手歓声が湧き上がり、「アンコール!」の声がそれに交錯する。聴き手からの自然発生アンコールで、つまりは真のアンコールだった。
 進行の方がまとめようとするが、事前の打合せにはなかった事態に当惑している様子。時間は過ぎていたが、場の熱狂に押され、2分で終わる短い曲を1曲限定でありがたく歌わせていただく。

 終了後も「いい歌だった」「楽しい時間をありがとう!」との声が多数耳に届く。苦心の掛け持ちライブが報われた思いだった。