訪問ライブ顛末記


ベストライフ清田・10月誕生会 /2018.10.14



 札幌南端にある有料老人ホーム誕生会で歌った。他施設からの紹介で最初の依頼があったのが、2007年夏のこと。以来、年1回ペースで細いが確かな依頼が続き、今回が14回目のライブだった。
 出掛けに雨が降り始めたせいか、車の流れがやや悪く、前回より5分遅れの45分で先方到着。それでも開始まで15分あって、準備には余裕があった。

 予定より5分遅れの14時5分から施設側の誕生イベントが始まる。今月が誕生日の方々の紹介とコメント、プレゼント進呈、全員でのお誕生日の歌斉唱などあって、私の出番となる。
 機材は組んであるので、ステージの位置に運んでケーブル類をつなげばスタンバイとなる。14時15分過ぎから歌い始め、およそ35分で12曲を歌った。


「高原列車は行く」
「瀬戸の花嫁」
「ソーラン節」
「ここに幸あり」
「二人は若い」
「上を向いて歩こう」
「浜辺の歌」
「上海帰りのリル」
「矢切の渡し」
「古城」
「月がとっても青いから」
「リンゴの木の下で」


 聴き手は50名ほどだが、この施設の難しさは年齢層がかなり高めであること。選曲には配慮が必要で、新しすぎる曲はもちろん、たとえ古い曲でも馴染みの薄い曲は反応が弱い。構成のベースは1週間前のデイサービスライブに準じたが、いくつか修正を加えた。
 前半は特に声をかけなくても、共に歌う声が数多く耳に届く。基本的には傾聴型に分類される大人しい場なので、ちょっと意外な展開だった。

「浜辺の歌」以降の後半4曲は、曲調がやや寂しすぎたかもしれない。「矢切の渡し」あたりで、もう少し明るく元気のいい曲(たとえば「二輪草」など)を歌うべきだった。
 ラスト2曲は明るく元気のいい曲で締めくくり、手拍子も自然に湧いて、楽しいエンディングになった。先方の希望通り、35分強で歌い終える。

 終了後の撤収作業中に施設長さんが挨拶に現れ、「長いおつき合いですねぇ」と、互いに感慨を深くした。最初に呼ばれた11年前は施設開設直後で、なんと施設長さん(女性)は当時入社直後の新人だったという。
 私もいつしか七十路を目前に控える身。茫漠とした月日の流れを感じずにはいられない。


 

ベストライフ東札幌・11月誕生会 /2018.11.25



 実家近くにある有料老人ホーム誕生会で歌った。最初の依頼が活動を始めたころの10年前にあり、しばしの中断のあと、5年後に再度の依頼が舞い込む。以降、最近は年2回ペースでの依頼が切れ目なく続いている。
(細かい経緯は不明)
 全国展開の施設で、市内系列施設4ヶ所でも歌っている。月一回の誕生会が定期的に実施され、その余興出演が主なもの。移動で職員さんの顔ぶれは変わるが、ボランティア登録は引き継がれているようだ。

 前日まで続いた寒さが緩み、道から雪は消えつつあった。イベントは14時半開始だが、20分前までに会場入りするよう前日までに念を押された。
 早めに出たので、35分で先方到着。時計は14時ちょうどで、少し早すぎた。挨拶後に20分ほどじっと待ち、その後機材を組み立ててスタンバイ。
 14時40分に施設側イベントが終わり、14時45分から歌い始める。およそ35分で12曲を歌った。


「高原列車は行く」
「瀬戸の花嫁」
「ソーラン節」
「ここに幸あり」
「二人は若い」
「上を向いて歩こう」
「荒城の月」
「上海帰りのリル」
「函館の女」
「古城」
「丘を越えて」
「リンゴの木の下で」


 早めの病院が効いて、治療中の咳喘息はほぼ回復。喉は絶好調に近く、普段は傾聴型の大人しい場だが、1曲目から一緒に口ずさんだり、誘導なしで手拍子が湧いたりし、やりやすい進行となった。

 構成は先月中旬に系列施設で実施した誕生会セットリストに準じたもの。そのときの反省を踏まえ、ラストに向かってゆっくり盛り上げるという意図で、後半の3曲を差し替えた。
「浜辺の歌」→「荒城の月」、「矢切の渡し」→「函館の女」、「月がとっても青いから」→「丘を越えて」と替えたが、この修正は正解だった。

 6曲目の「上を向いて歩こう」を終えた時点で、半分を歌い終えたことを場に告げる。同時に簡単な自己紹介をして、気分転換を図った。最近しばしば用いる手法だが、場をなごませつつ、冗漫に流されがちな進行にメリハリをつける大事な意味がある。
 だいたい思惑通りに運んで、ラストに向かってじわじわと場は盛り上がっていった。

 曲目のうち、ニギヤカ系と叙情系の比率は2:1だが、台風や地震の自然災害で気が沈みがちな昨今なので、たとえ傾聴型の場であっても、しばらくはこれくらいの配分でやっていこうと思う。
 終了後、場に余韻がしばし残り、誰一人席を立とうとしない。ライブがうまく運んだ証で、担当のOさんからも「みなさん、とても喜んでいましたよ」と労われた。


 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2018.12.9



「緊急で申し訳ないのですが、明日歌っていただくことは可能でしょうか…」と、遠慮がちながらも切羽詰まった様子の電話が突然あったのは、とある日の午後のこと。
 ライブスケジュールの立て込むいつもの12月ならとても無理だが、今年に限っては依頼が少なく、スケジュールは空いている。
 過去に10数回歌っている馴染みのデイサービスだったこともあり、お受けすることにした。それにしても、依頼翌日のライブとは過去に例がない。

「随分と急な話ですが、予定されていた方のキャンセルでも?」と尋ねると、実はその通りですとの返答。自分も過去に喉の不調で予定をキャンセルせざるを得なかったことが数度ある。
 プロでもアマでも突然の体調不良やアクシデントはあるもので、緊急時のフォローはお互いさまというもの。やれるときにやっておけば、巡り巡って自分のトラブル時には、誰かがきっとカバーしてくれるはず。

 週に一回程度歌うのが最近の調整法。下旬までライブ予定はなく、しばらく歌ってなかったので急きょセットを組み、軽く調整した。咳喘息も治り、喉の調子は悪くない。

 当日は3日連続の真冬日で、前日よりもさらに気温は下がった。雪もまた降って、午前中に手作業での除雪を強いられる。開演は15時だったが、20キロ以上離れている施設で、冬場は1時間近くかかる。用心してかなり早めに家をでた。
 滑る凍結路を慎重に走って、50分で先方到着。定刻ちょうどの15時から始めた。アンコールなどあって、ちょうど1時間で16曲を歌う。
(※はアンコール&リクエスト)

「ウィンター・ワンダーランド」
「高原列車は行く」
「おかあさん」
「瀬戸の花嫁」
「お座敷小唄」
「二人は若い」
「ブルーライト・ヨコハマ」
「荒城の月」
「恋の町札幌」
「つぐない」
「雪國」
「小樽のひとよ」
「まつり」
「旅の宿」※
「夜霧よ今夜も有難う」※
「故郷」※


 全体として冬や年末を意識した構成とした。叙情系の曲がやや少なめで、皮肉なことに「瀬戸の花嫁」「荒城の月」などの反応がよかった。もう1〜2曲、叙情系の曲を入れるべきだったかもしれない。
 1曲目はXmasを意識した選曲で、場の気分次第ではラストに「ジングルベル」を歌うつもりでいたが、結果としてXmas系はこの1曲のみとなった。

「お座敷小唄」「雪國」「まつり」は年末に合わせた選曲だったが、うまく収まった。他の曲の手応えもまずまず。
 中盤のMCで自己紹介をはさむ手法を今回もとったが、聴き手との思いがけない会話が弾み、場をなごませるのに充分役立った。

 終了後のアンコールは施設長さん主導のもの。「時間調整アンコール」に近かったが、「もう終わりかい?」との声が上がっていたので、場の気分には沿うものだった。
 ラストの「故郷」は「みなさんで歌える曲を」との施設長さんの希望によるもの。フレーズの間に歌詞指導をしつつ進めたこともあってか、ほぼ全員が歌ってくれ、歌い納めには相応しかった。
 緊急事態による準備なしライブだったが、経験値をフル稼働させ、無難に乗り切れたと思う。先方にも大変喜ばれた。


 

ホームのどか・Xmas会 /2018.12.23



 市内遠方での地域カフェライブを無事に済ませ、挨拶もそこそこに次なるライブ会場へと向かった。終了後の撤収作業等で予想外に手間取ってしまい、時間はすでに12時を回っている。
 1時間半のライブで23曲を歌い、かなりのエネルギーを消耗して空腹だったが、昼食ぬきで行くことを決意。幸いに道路状況はよく、前日に最短ルートを入念に調べておいたこともあって、わずか40分で会場となる自宅近くのグループホームに着いた。

 これまた挨拶もそこそこに、機材を搬入して担当者と打ち合わせ。まずは系列のケアハウスで歌い、その後続けてグループホームで歌うことになる。
 例年の進行では11時に余興をまずやり、12時から食事とプレゼント交換をやることになっていたが、今年に限って私の余興だけを切り離し、食事後にやる手はずである。
 昨年の失敗例もあり、気力体力面で支障のある1日に2本のライブは避けたいのが正直なところ。しかし、先方のたっての希望である。13年の長いおつきあいのある施設なので、結局お受けすることにした。

 会場の都合で、ここでは2年前からノーマイクで歌っている。弦の切れたオベーションは使えず、必然的にギターはヤマハのエレアコ。電子譜面の入ったタブレットだけをスタンドに組み立て、まずは廊下でつながったケアハウスに入る。
 機材が少ないこともあって、到着わずか5分後の12時50分にスタート。15分で6曲を歌った。(※はリクエスト)


「ウィンター・ワンダーランド」
「ソーラン節」
「恋のバカンス」
「クリスマス・イブ」※
「恋人がサンタクロース」※
「上を向いて歩こう」


 系列施設だったが、歌うのは初めてだった。会場となる食堂ではまだ食事する姿や、食後の歓談に興ずる姿もあり、歌そのものがやや場違いな雰囲気もあった。いつもならメイン会場のグループホームに全利用者が集合し、食事前に余興が終わってしまうので、無理もない。
 それでも施設側の要望に従い、淡々と歌い続ける。せわしい気分の割に声はよく出て、状態そのものは悪くない。

 いつもなら20〜25分を使って一回で終わらせるが、今回は2会場に分けて15分ずつつづけて演るという変則構成。場の気分がいつもと違うので、4曲目からはリクエストを募ることにした。
 利用者からは全く反応がなかったが、「クリスマスソングを…」との要望が職員さんからあり、歌える曲を順に告げると、山下達郎とユーミンという意外な組み合わせて決着した。

 終了後、あわただしく廊下を移動し、本来の会場であるグループホームへと戻る。空いている廊下の入口付近にセットし、ただちに歌い始めた。
 およそ15分で6曲を歌う。(※はリクエスト)


「ウィンター・ワンダーランド」
「ソーラン節」
「浪花節だよ人生は」
「ジングルベル」
「南国土佐を後にして」※
「知床旅情」※


 こちらの会場も雰囲気は似ていて、前半の余興とその後の食事でお腹いっぱいの場は、改めて歌を聴くという集中力と緊張感に乏しかった。
 ともかくも施設側の要望には応えて、自分の役目は終了。1日で40キロを移動し、3会場計35曲を歌うというハードなスケジュールだったが、どうにかこなして今年最後となる32本目のライブを無事に締めくくった。

 13時半くらいに施設側が準備してくれた昼食にようやくありつけた。手作りの料理が空腹に染みわたる。その後花束贈呈やビンゴゲームなどあって、プログラム通り14時過ぎにお開きとなる。
「無理いってしまいましたが、おかげで予定通りにやれました」と、担当者にはたいそう喜ばれた。


 

ベストライフ東札幌・2月誕生会 /2019.2.24



 およそ2ヶ月ぶりに人前で歌った。場は昨年11月にも招かれた市内の有料老人ホーム誕生会。今回が10回目の依頼で、細いが長く確かなおつき合いが続いている。
 よく考えるとこれが今年初のライブで、2ヶ月ものブランクがあるとライブ感覚が鈍っているような気がし、漠然とした不安に襲われた。

 咳喘息で喉を傷めて以来、歌の練習は週一回程度に控えているが、今回は10日くらい前から少しずつマイク前で歌う練習をし、5日前からはショウガ湯を飲んで備えた。
 幸いに昨年同時期のような体調悪化はなく、喉の調子もまずまず。前回歌ってからわずか3ヶ月後の依頼だが、急に間隔が詰まった理由は定かではない。ともかくも記録を元に曲の重複を慎重に避け、春モードを中心とした選曲で臨んだ。

 最強寒波や豪雪がウソのように温暖な日がこのところ続き、路面からは雪がほとんど消えつつあった。夏と変わらぬ時間で先方に到着。ライブ開始まで30分あり、ゆっくりスタンバイした。
 施設側の誕生イベントのあと、予定ちょうどの14時45分から開始。およそ35分で13曲を歌った。


「北国の春」
「おかあさん」
「真室川音頭」
「蘇州夜曲」
「幸せなら手をたたこう」
「宗谷岬」
「仰げば尊し」
「みかんの花咲く丘」(歌詞指導)
「誰か故郷を想わざる」
「釜山港へ帰れ」
「港が見える丘」
「青い背広で」(初披露)
「東京ラプソディ」


 過去10回のうち、春に招かれたことは1度しかなく、その点では構成がしやすかった。全13曲のうち、2/3にあたる9曲が何らかの形で「春」をイメージしていた。
 いつも大人しい典型的な「傾聴型」の場だが、曲の目新しさもあってか、場の反応はとてもよかった。

 ライブという修羅場から遠ざかっていた割に気持ちは落ち着いていて、歌詞はフレーズ毎にチラリと確認する程度にとどめ、横に広い会場を順に眺めて、聴き手とアイコンタクトをとりつつ進める余裕があった。

 普段は12曲を歌うが、欲張って唱歌を2曲入れたせいで、この日は1曲多い。その反動で自己紹介をかねたMCで中盤をつなぐという趣向は省略した。しかし、この日は単純に歌だけで場を引っ張るパワーがあった。

 特に手応えのあった曲は、「蘇州夜曲」「仰げば尊し」「釜山港へ帰れ」「青い背広で」あたり。
「青い背広で」は、かなり以前に某老人クラブでリクエストが出たが、全く対応できなかった曲。その後YouTubeで会得して備えたが、その後の求めはなかった。
 そのまま眠らせるには惜しく、歌詞に春を含むので今回思い切って歌ってみたが、自然発生の手拍子や共に歌う声が相次ぎ、予想外の手応えに驚いた。藤山一郎の歌はハズレが少ない。ラストのシングアウトにも充分使える曲だ。

 終了後、近寄って労ってくれる入居者の方が複数いて、ライブの成功を物語っていた。当初の不安を吹き飛ばす会心に近い出来だったと自己評価する。


 

パワフルひまわり・ひな祭り会 /2019.3.1



 ネット経由で依頼された市内デイサービスひな祭り会で歌った。やり取りはすべてメールで行われ、担当が男性か女性かも分からない。メールでの依頼は皆無ではないが、たいては途中で電話でのやり取りがあるもの。今回のようなケースは稀である。
 場所は市内を一周する環状通沿いにあり、初めてでも迷うことはない。途中スーパーに寄って買物をしたが、道が夏のように乾いていて車の流れが実にスムーズ。開始予定より30分以上も早く着いた。

 施設長さんに名刺をいただいて気づいたが、10年以上前にも系列の老健施設で歌っていた。しかし場所が離れていて担当も今回は女性。紹介ルートでの依頼ではない。
 しばし待って、予定より少し早い14時38分から開始。想定外のアンコールなどあり、予定オーバーの40分弱で13曲を歌う。


「北国の春」
「瀬戸の花嫁」
「真室川音頭」
「蘇州夜曲」
「二人は若い」
「高校三年生」
「うれしいひな祭り」
「釜山港へ帰れ」
「いい日旅立ち」
「つぐない」
「夜霧よ今夜も有難う」
「青い背広で」
「月がとっても青いから」(アンコール)


 聴き手はおよそ20名ほど。こじんまりした施設で、会場となった食堂もそう大きくはない。PAの音が大きすぎないか不安になり、事前に珍しくマイクテストをやり、音量はかなり絞った。
 初めての施設は何が受けるか分からない怖さがある。偏った選曲は避け、定番曲を中心にニギヤカ系と叙情系の比率を半々程度にし、介護度の低いデイサービスであることを考慮して、懐メロ系は少なめにした。

 1曲目からいきなりの手拍子が湧く。間奏でも拍手がおこり、出だしとしては悪くない。以降も共に歌う声や手拍子が相次いで、やりやすい進行となった。

 9曲目で会場の拍手で歌う曲を決める「二択リクエスト」を仕掛ける。告知の段階で歓声が湧いたが、なぜか2曲とも支持する拍手がない。まるで拍子抜けだった。
 それまでとは異なる反応でちょっと困っていたら、「2曲とも聴きたい」と職員さんが助け舟。「いい日旅立ち」「つぐない」の両方をそれぞれ短く詰めて歌う。「拍手の多いほうに決める」という趣向が、聴き手側によく伝わってなかった可能性がある。

 後半に配置した昭和歌謡系の手応えが抜群で、傾向としてはじっと聴いてくれる「傾聴型」の場だな、と思った。

 ラスト2曲を残して、時間はすでに終了予定の15時10分。どう締めくくるべきか施設側に確認すると、「あと1曲で終わってください」との応え。
 5日前に別の施設で歌って好評だった「青い背広で」を再び歌ったが、年齢層の低い方には、いまひとつの反応だった。古い曲なので、「どこでも受ける」というわけではないことを悟る。

 それでも終了後に思いがけず「アンコール!」の声が聴き手から上がる。全く打合せにない自然発生アンコール(真のアンコール)で、時間厳守を事前に言われていたので、これまた判断を施設側に委ねた。
 職員さんは次のスケジュールを気にしていたが、聴き手の勢いにすっかり気圧されていた。こちらも心得て、短い元気のよい曲で応じ、双方に配慮する形でおさめた。

 終了後も「よかったね〜」「最高だった!」との声があちこちから耳に届く。近寄って直接声をかけてくれる方も相次いだ。手探りで進めた場だったが、今後のリピート依頼につながることを期待しよう。