訪問ライブ顛末記


美しが丘テラス・訪問ライブ /2017.2.28



 市内遠方にある介護施設で歌った。経営母体は病院で、デイサービスやサ高住、小規模多機能ホーム、居宅介護、介護カフェ、障がい者支援など、さまざまな形態の介護支援事業を複合的に営んでいる。
 今回はそのうち、デイサービスとサ高住の利用者を主な対象としたライブを依頼された。

 施設からの直接打診ではなく、今年になって2度歌った介護予防センターからの紹介で、その経緯から担当のKさんも立ち会ってくれることになる。
 構成等は介護予防センター事業に準ずるもので、ラストに全員で歌う歌声タイムも設けることになったが、歌詞カードをどうするか?という段になり、電子譜面搭載のタブレットPCから直接プロジェクターに出力して歌詞を表示することが可能だと話したら、Kさんが俄然乗ってきた。

 まだ構想段階なのでプロジェクターは持っていない旨を告げると、センターの備品にあるので、当日持参するという。こちらは接続用のHDMIケーブルのみを持参することになり、試験的にやってみることになった。

 路面から雪が消えたせいで、待合せ時間よりかなり早く着いた。まずは会場の調査をし、プロジェクターを使う旨を告げると、それならスクリーンが必要ですねと、職員さんが何かのスイッチを操作すると、横2M以上はありそうな立派なスクリーンが、天井からスルスルと下りてきた。
 Kさんとは白い壁にでも映しましょうか、と話していたので、嬉しい想定外だった。


 そうこうするうち、介護予防センターのKさんも助手と思しき方を伴ってやってきた。持参のプロジェクターをさっそくテーブル上に設置。前日に加工しておいた電子譜面ホルダの横穴にHDMIケーブルを差し込み、プロジェクターに接続する。自宅の液晶テレビでテスト済みだったで、画像は一発で投影された。

 画像の大きさや台形補正、室内照明の調整を繰り返し、40席ほど並べた椅子の最後尾でも歌詞が読めることを確かめる。
 窓のカーテンは閉めず、スクリーン真上の照明だけを消したが、プロジェクター照度が3000ルーメンあって、価格も5万円強。(EPSON EB-W420)これくらいのスペックがあれば、昼間でも問題なく映せるということだ。

 館内放送が流れ、三々五々に集まった聴き手は職員さんを含めて50名ほど。場としては盛況である。
 やや遅れて14時3分くらいから開始。予定を超えて1時間10分で21曲を歌った。


《セレクトタイム》
「小樽のひとよ」
「仰げば尊し」
「おかあさん」
「真室川音頭」
「津軽海峡冬景色」
「高校三年生」
「お座敷小唄」
「氷雨」
「釜山港へ帰れ」
「夜霧よ今夜も有難う」
「函館の女」
「宗右衛門町ブルース」
「いい日旅立ち」
「浪花節だよ人生は」

《リクエストタイム》
「荒城の月」
「あずさ2号」(初披露)
「ああ上野駅」
「瀬戸の花嫁」
「憧れのハワイ航路」

《うたごえタイム》
「北国の春」
「青い山脈」


 初めて歌う場で、初めて試すプロジェクター投影だったが、タイトルのほか、歌手名も同時に表示されるので、「これは分かりやすくていいね」と、聴き手には好評。当初はラスト2曲のみに使う予定が、ライブ中の全曲を投影することに。
 私の立ち位置はスクリーンの右端にしたので、歌う前に「この曲は3番に春を待ち望む箇所があります」と歌詞の一部を指差したり、「時間の都合で3番のこの部分を省略して歌います」などと、大画面表示の特質をできるだけ活かすよう努めた。

 施設自体が新しく、演奏ボランティアそのものをあまり受入れていない印象がしたが、職員さんは手拍子やかけ声で上手に盛り上げてくれて、ライブの進行はスムーズだった。
 スクリーンを見ながら一緒に口ずさむ姿も多数。「仰げば尊し」「瀬戸の花嫁」では涙が、「真室川音頭」「お座敷小唄」では歓声が湧いた。強弱を意識した選曲は、ほぼ思惑通りに運んだ。

 この日は先方の希望もあって1時間を超える長丁場だったが、場の集中は終始途切れることはなく、結果として休憩なしで一気に最後まで突っ走った。譜面のスクリーン投影が斬新で、それが聴き手の集中力につながった可能性が高い。

 後半のリクエストタイムでは普段使っている300曲余りのリクエスト一覧をpdf化し、タブレット経由でスクリーン投影させたが、それとは無関係に次々とリクエストが飛び出した。全曲の一括表示は不可能なので、リクエストに限っては、普段使っているA4サイズ一覧のほうが効果的だったかもしれない。

 この日、唯一リクエストに応えられなかったのは「北上夜曲」。以前は確かにレパートリーにあったはずが、歌う機会はないと勝手に判断し、削除してしまったようだ。
 同じ理由から廃棄寸前だった「あずさ2号」のリクエストが初めてあり、人の好みは実に千差万別であるということ。

 終了後、多くの方が近寄って声をかけてくださった。最近増える傾向にあるが、この日も曲間でさざ波のような拍手を数多くいただいた。これを貰うと、思わず背中がゾクゾクする。歌っていてよかった、と素直に思う。
 譜面のプロジェクター投影も充分に効果的であることが分かり、今後につながりそうだ。機会があれば、大型液晶テレビでも試したい。


 

清田区介護予防センター 緑ヶ丘会場 /2017.3.8



 一昨日の都心カフェでの打合せ中、今年になって3度歌った介護予防センターのKさんからの電話が鳴る。(もしや…)と思ったら予感は当たって、さらなる新規ライブの依頼だった。
 準備に充分な期間のあった前3回とは異なり、今回はわずか2日後という忙しい話。新年度から市の介護予防事業の対応が一部変わるそうで、どうしても年度内に消化しておきたい事業計画があるという。

 月が明けてから孫娘の初節句やガンの転移再発検査などへの対応に追われ、スケジュールは立て込んでいたが、奇跡的に希望日は空いていた。今月のライブはないものと思っていたので気持ちの調整が難しかったが、普段何かとお世話になっているので、お受けすることに。

 場所はこのところ通い慣れている札幌新道沿いの地区。地元町内会をベースにした住民組織で、諸般の事情から、あまり早く会場に入ってはまずいという。いつもより遅めに家を出たが、あまりにギリギリで、到着寸前にKさんから催促の電話があった。
 ともかくも、9時50分に会場となる町内会館に到着。駐車場完備の新しく、立派な建物に驚いた。

 この日も電子譜面をプロジェクターにつなぎ、歌詞をリアルタイム表示しつつ歌う予定だったが、今回は設置担当の女性が不在。電子機器は苦手というKさんで、接続調整一切は私がやることになる。

 時間がないので取説は無視し、直感だけでケーブル類をセット。本体は椅子に載せて適当にスイッチを押したら、割と簡単に映像は出た。
 しかし、室内が明るすぎて文字が読めない。急きょ照明を消し、窓にはブラインドを下ろす。スクリーンがないので備品のホワイトボードを使うことにし、ピント合わせやズーミング、台形補正などを目見当で操作。何とか読める状態になった。

 プロジェクターにやや手間取り、5分遅れの10時5分から開始。リクエストが相次いで、予定を大幅に超えた1時間25分で23曲を一気に歌う。


《セレクトタイム》
「北国の春」
「バラが咲いた」
「おかあさん」
「真室川音頭」
「大空と大地の中で」
「青春時代」
「さくらさくら」
「恋のしずく」
「釜山港へ帰れ」
「夜霧よ今夜も有難う」
「函館の女」
「いい日旅立ち」
「時の流れに身をまかせ」

《リクエストタイム》
「積木の部屋」
「涙そうそう」
「舟唄」
「酒よ」
「喝采」
「小樽のひとよ」
「五番街のマリーへ」
「吾亦紅」

《うたごえタイム》
「好きですサッポロ」
「青い山脈」


 聴き手は25名ほどで、男女比は3:7くらい。50代くらいの比較的若い層が多く、事前にその情報は得ていたので、短い準備時間の中で若向きの構成を手早くまとめて臨んだ。
 同じ地区の介護予防事業としては今年に入って3度目。プロジェクターを使った進行が2度目で、それぞれ前回の要領を参考にしつつ進めたが、大きな食い違いはなく、ほぼ思惑通りの進行となった。

「元気のいい方が多い」とKさんから聞いていたが、実際に歌ってみると、場としては全体的に大人しい。おそらくは「年齢層が若い」という傾向を意味していたのではないだろうか。
 そんな状況をある程度予期し、手拍子を促す曲は前半の「真室川音頭」くらいで、聴き手参加型の曲も皆無。「介護を予防する」という意図で集まってくる気持ちの若い方を対象とするなら、この方向性でいいように思える。

 場は静かだが、じっと集中して耳を傾けてくれるので、歌い手としてはやりやすい。前半40分くらいで私自身の選曲を打ち切り、リクエストを求めた。実はあと2曲を準備していたが、場の雰囲気から察し、早めにリクエストタイムに入るべきと判断した。
 開始前にリクエスト一覧を配っていたこともあり、予想通り次々とリクエストが飛び出す。請われるままに応えていたら、結果的に8曲も歌っていた。リクエストでこれほど歌ったのは初めてのこと。
 予定の1時間はとうに超えていたが、誰一人席を立つ人がいない。ラストに全員で歌う時間も必要なので、いつまで歌ってよいのかKさんに判断を委ねると、開始1時間15分を超えたところで、Kさんから「では残り1曲ということで…」と、終了宣言が出る。

 実は前半の私が選んだ構成より、後半のリクエストタイムのほうが手応えはよかった。聴き手が自主的に選んだ曲なので当然といえば当然。これもまた介護予防事業の傾向のひとつだろう。
「アメイジング・グレイス」「ハナミズキ」「虹と雪のバラード」「恋人よ」などの声もチラホラ聞こえたが、残念ながら時間の都合で歌えず。次なる機会へのお楽しみ、ということで落着となった。

 歌詞がプロジェクターでリアルタイム表示されるので、曲によっては共に歌う声も多かった。カーテンを下ろせる環境と、スクリーンかその代用品の調達が叶うなら、自分のライブの幅が格段に広がることが分かった。いよいよ自前でプロジェクターを調達すべき時期かもしれない。
 反省点は急なライブで喉の調整が盤石ではなく、途中で声がかすれた部分が2曲ほどあったこと。いつでも歌えるような体勢作りは日頃からしておくべきと悟った。

 終了後、多くの方に声をかけていただく。設営の一部をお手伝いくださった男性(おそらく町内会要職の方)からは、「素晴らしさにびっくりしました」との言葉を、町内会役員という女性からは、「別のイベントで直接依頼したいので」と、名刺を求められた。
 これが縁で、介護防止事業以外にも場が広がっていけば嬉しい。ひとつ終わればひとつ始まり、縁は縁を生む。


 

ツクイ札幌西野・訪問ライブ /2017.3.20



「あなたの歌を以前に聴きました」と、見知らぬ女性から電話があった。前の職場で偶然私の歌を耳にし、ぜひ自分の施設でも歌って欲しいと思ったという、大変ありがたい話。内部移動で新規デイサービス責任者となったそうで、開業して半年ほどの施設だった。

 ライブの新規依頼にはいくつかのパターンがあり、最も多いのがネット検索によるもの。単なる知人の紹介もあるが、今回のように実際に私の歌を聴いての依頼も少なくない。
 それが公的空間でのライブだったり、路上ライブだったり、介護施設訪問だったり、きっかけとなる場は多種多様。歌っている限り、チャンスはどこにでも転がっているものだ。

 系列のデイサービスでは数多く歌っていたが、訪問先としては初めてなので、聴き手の嗜好を相手に尋ねた。すると、気持ちの若い方が多い、とのこと。毎日のサービス開始時には「365日の紙飛行機」を、終了時には「また逢う日まで」を全員で斉唱しているという。確かに若い。
 ラストの曲をいくつか提案したが、「上を向いて歩こう」「青い山脈」「また逢う日まで」のうち、「また逢う日まで」で即決した。

 構成は最近急増している市の介護予防事業でのものをベースにすることに決め、後半にリクエスト一覧を使った本格的なリクエストタイムを設けることになる。

 場所はやや遠いが、幹線道路沿いの分かりやすい位置にあり、40分ちょうどで難なく着いた。施設長さんや担当の方と細部を詰める。リクエスト一覧の出し入れは、場の雰囲気を見て決めることになった。
 時間ぴったりの13時半に開始。予定を大幅に超え、1時間15分で20曲を歌う。

《セレクトタイム》
「北国の春」
「バラが咲いた」
「おかあさん」
「真室川音頭」
「大空と大地の中で」
「青春時代」
「さくらさくら」
「恋のしずく」
「釜山港へ帰れ」
「夜霧よ今夜も有難う」
「時の流れに身をまかせ」
「いい日旅立ち」
「浪花節だよ人生は」

《リクエストタイム》
「愛人」
「オー・シャンゼリゼ」
「星影のワルツ」
「落陽」
「カントリー・ロード」
「神田川」

《うたごえタイム》
「また逢う日まで」


 聴き手は30名弱。デイサービスとしては珍しく男性の比率が高く、およそ4:6ほどか。開演前から男性女性それぞれから、「楽しみにしてますよ」「弾き語りがあるというので、利用日を超えて聴きにきました」などと声がかかり、非常にやりやすい雰囲気のなかで歌い始めた。
 ほぼ全ての曲に間奏で拍手が湧き、喉は決して万全ではなかったが、聴き手にあと押しされるように調子はじわじわと上向いていった。

 この日はプロジェクターによる歌詞拡大投影はなく、聴き手参加型の曲もほとんどない。純粋に歌だけを聴いてもらう形となったが、「青春時代」あたりから涙を流す方が続出し、職員さんがティッシュの箱を持って走り回るような状態だった。
 聴き手の涙は特に狙っているわけではなく、そもそも狙って泣いてもらえるほどライブは簡単ではない。

 施設によって歌い手に求めるものはさまざまだが、私の場合、歌を聴いて自然に涙が流れるという「傾聴型」のスタイルが、結局のところ最も自分に向いているように思える。

 予定としてはリクエスト3曲程度、計1時間で終えるはずだったが、聴き手から「もう少し…」「ずっと聴いていたい」という声が相次ぎ、簡単に打ち切れない状況になった。
 請われるままに歌い続けたが、6曲のリクエストに応じた時点で「お応えできなかった分は、また次回へのお楽しみということで」と、私から提案。ようやく場を収めることができた。

 結果として「悲しき街角」「愛の讃歌」が歌えずじまい。撤収しながら一部をアカペラで歌って差し上げると、「また明日歌いに来てね」との声がかかる。さすがに翌日では厳しいが、聴き手からの要望で次回訪問がほぼ決まってしまうという、珍しい幕引きとなった。
 曲の嗜好など、歌い手と聴き手の相性がいい場なのだろう。長く続きそうな気配である。


 

清田区介護予防センター 真栄会場 /2017.4.11



 午前中から市内遠方の区で介護予防事業関連のライブがあった。今年になってから実に5度目の依頼で、市の事業が今年度中に終わる関係で、活発な活動が続いているように思える。
 自宅から1時間足らずの同じ地区だが、場は全て異なっていて、聴き手も毎回異なる。世代や男女比には共通点が多く、過去の反応もふまえ、春をやや意識した構成で準備した。

 9時半に会場に到着すると、センターの職員さんはすでに到着していて、会場の設営をやっていた。この日は買ったばかりのプロジェクターと作ったばかりの映写スクリーンを持参したが、会場内にはいつもお借りしている高性能のプロジェクターがすでに設営済み。

 歌う位置を決め、ひとまず電子譜面をつないでみたが、特にスクリーンをセットせずとも、ステージ背面にある柄付のベージュの壁に、何ら問題なく歌詞が表示できた。
 窓のカーテンを閉め、会場内照明を点けてみたが、それでも普通に読める。(ステージ照明はさすがに消した)場内があまりに暗いのも問題なので、その状態でやることになった。

 予定ぴったりの10時から開始。1時間15分で20曲を歌った。

《セレクトタイム》
「北国の春」
「ブルーライト・ヨコハマ」
「さくらさくら」
「珍島物語」
「時代」
「青春時代」
「長崎は今日も雨だった」
「野ばら」
「恋のしずく」

《リクエストタイム》
「乾杯」
「ダイアナ」(初披露)
「骨まで愛して」
「仰げば尊し」
「みかんの花咲く丘」
「故郷」
「時計台の鐘」
(「いい日旅立ち」
「つぐない」)
「ああ上野駅」

《うたごえタイム》
「バラが咲いた」


 聴き手は少なめの12人。男性は1人で、他会場に比べるとだいぶ様子が違っている。
 1曲目はリスクの少ない無難な曲だったが、場によっては間奏の時点で湧く拍手が全くない。歌い終えても拍手はまばら。この時点で悪い直感が走った。
(今日は苦戦するかも…)

 予感は当たって、2曲目を終えた時点で一人の女性から「もっとみんなで歌えるような曲はないですか」との要望が突然飛び出す。
 この日の進行は開始前に告げてあって、325曲の新しいリクエスト一覧は配布済み。およそ半分を終えた時点で、リクエストを自由に受け付ける旨も伝えてあった。さらには、最後に全員で数曲をシングアウトすることも。
 確認の意味で同じ内容をもう一度伝えたが、予期せぬ発言で場が一瞬鼻じらんだことは間違いない。

 以降のライブ進行はさらに難しくなり、1曲毎の拍手もまばら。なぜか喉の調子はよかったが、それと場の反応は必ずしも一致しなことは、過去に何度も経験している。
 見かねたセンター職員の方が聴き手に加わり、拍手で盛り上げてくれる。大変心強いことで、それを支えに淡々と歌い継いだ。

 30分が経過し、予定ではあと3曲を歌ってからリクエストタイムに入るつもりでいたが、この日の場の反応からして、早めにリクエストを受けるのが得策と判断。聴き手にその旨を告げると、思いがけずリクエストがすんなり飛び出して安堵した。

 不思議なことに過去にほとんど歌っていない曲ばかりで、「乾杯」ではリクエストした女性が感極まって涙を流す。「ダイアナ」は覚えたてのオールデイズだったが、会心の出来。終了を待たずに歓声と拍手が湧いた。
 遅まきながら場をつかんだ感じで、当初の発言をした女性からもようやく「仰げば尊し」のリクエストが出る。以降、同じ女性から日本唱歌のリクエストが次々と出て、歌詞画面を見ながら共に歌う声も数多く耳に届いた。
「みんなで歌える曲」が唱歌であったことにようやく気づいたが、ギリギリで間に合った。

 途中、リクエストが途切れた際は、歌い残した「いい日旅立ち」「つぐない」でつなぐ。その後に新たなリクエストが出るなどし、この日は事前のセットに固執せず、場の求めに応じて柔軟な曲の出し入れをするよう心がけた。

 ラストのシングアウトは時間の都合で1曲のみとなったが、いろいろな曲を候補にあげ、聴き手の声で最終決定する方向にもっていった。
 当初の予定通り1時間15分で終えたが、歌った曲数は他の会場と大差なく、リクエスト曲数が他よりもやや多かった。途中でリクエスト中心に切り替えたので、妥当なところである。

 終了後にセンター職員のKさんから聞いたが、聴き手は同一の町内会所属ではなく、バスで集まってくる方も複数いたらしい。場にややまとまり感がなく、前半部で盛り上がりに欠けた背景は、そのあたりにもあったようだ。

 同じような年齢層で同じような男女比でも、会場によって反応は微妙に異なる。極端な場合、ある人がいるかいないかだけでも反応は変わる。それがライブの怖さであり、同時に面白さでもある。
 必要なのは、場の流れに応じた柔軟な対応。一時は崩れかけたが、咄嗟の機転でどうにか面目は保った格好。いい勉強をした。


 

西円山敬樹園デイサービス・10周年 /2017.4.21



「予定していたボランティア演奏の方が急病で…」と、見知らぬ電話があったのは、つい先日のこと。デイサービス開設10周年記念イベントの予定に穴が開いてしまい、先方はかなり困った様子。
 要は代役として歌っていただけないか、との急なライブ依頼である。4月は例年にない過密スケジュールに追われていたが、先方の希望する日は奇跡的に空いている。もし受けると3連続ライブとなってしまうが、困ったときはお互い様。特に縁も義理もなかったが、お受けすることにした。
(その後予定のライブが施設内インフルエンザで順延になり、2連続ライブに軽減)

 施設は市内の円山公園西側にあり、自宅からはかなり遠い。グーグルマップで事前にシミュレートしたら、渋滞なしの場合で50分かかる。用心して開始予定の1時間10分前に家を出た。
 藻岩山麓の急斜面にコンクリート造の大きな施設が何棟も立ち並び、どの施設に行けばよいのか分からず、少し迷いながらも開始15分前には無事に到着した。

 会場はフロアから一段高い位置にある広いステージ付で、立派な音響設備とスポット照明があり、ステージ前には電動式の幕までついている。音響やマイクは持参のものを使うことにし、手早く準備。
 予定ぴったりの14時10分にイベントが始まり、施設長さんの挨拶などあって、14時12分からライブは始まった。予定外のアンコールを含め、およそ45分で14曲を歌う。


「北国の春」
「蘇州夜曲」
「おかあさん(森昌子)」
「釜山港へ帰れ」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「さくらさくら」
「恋のしずく」
「港が見える丘」
「人生いろいろ」
「月がとっても青いから」
「また逢う日まで」
〜アンコール
「丘を越えて」


 聴き手は当初25名ほどと聞いていたが、直前にケアハウス(サ高住)の利用者も合流することになり、50名は超えていた。
 デイサービスは比較的新しい曲を好むが、今回の施設は年齢層が80〜90歳と高めだという。そこで新旧の曲をミックスして構成し、初めての施設ということで定番曲も要所に入れた。

 歌う曲目と順番は事前にFAXで連絡してあり、全曲の歌詞をプリントした歌詞集が利用者に配られていた。
 聴き手が常に下を見ているので、プロジェクター投影に比べると歌いながらのコミュニケーションはとりにくいが、大半の曲で共に歌う声がステージまで届き、ライブのうたごえ風展開という意味では、いい雰囲気を作れていたと思う。

 前日にトラブルのあったPAは、固定金具を再調整したこともあってか、特に問題なく機能。2日連続の割には喉の調子もよく、ライブは尻上がりに熱を帯びて、先方の希望通り40分で終えた。

 終了後、進行の方から打合せにはないアンコールの声がある。場の雰囲気からして、(もしかすると…)と思っていたので、ありがたくお応えした。
 利用者の方からも「よかったよ〜」との声が複数湧き上がり、担当のIさんを始めとする職員さんからも喜ばれた。単なるピンチヒッターだったが、充分期待にはお応えできたと思う。


 

ベストライフ東札幌・4月誕生会 /2017.4.23



 有料老人ホーム誕生会余興で歌った。今回が通算7度目の依頼で、足掛け10年にも及ぶ細くて長い信頼関係が続いている。

 4日間で3度目という過密スケジュールなので、さすがに疲れを感じた。自宅でのリハは軽めにし、本番に備える。
 14時25分に先方に着き、14時40分から誕生会が始まる。施設側のイベントのあと、予定通り14時45分からライブ開始。およそ35分で11曲を歌った。

「北国の春」
「蘇州夜曲」
「おかあさん(森昌子)」
「バラが咲いた」
「二人は若い」
「さくらさくら」
「南国土佐を後にして」(初披露)
「港が見える丘」
「人生いろいろ」
「月がとっても青いから」
「また逢う日まで」


 入居者の入替えがあまりない施設で、歌う回数が増えるにつれ、マンネリ化が懸念された。幸いに春に呼ばれたことは一度もなく、今回は過去に歌っていない春系の曲で構成できる。

 場としては完全に傾聴型で、全体的に大人しい。いつものように手拍子系や聴き手参加型の曲は避け、叙情系の曲を中心に歌い進んだが、5曲目の「二人は若い」から、一人の男性職員の方が突然会場の中央で大きな手拍子を取り始めた。
 全く予期しないことだったが、これにつられて会場のあちこちで小さな手拍子が起きる。

 以降も手拍子が途切れることはなく、つられて他の職員さんも加わる。後半の構成がたまたまリズミカルな曲が多かったこともあって、この施設では珍しく「参加型」のライブに変貌した。

 誕生会には必ずお茶とケーキが出され、職員さんはその配膳作業に忙しく、利用者の方々は食べるのに忙しいという難しさがある。しかし、たとえ一人でも職員さんの参加があれば、ライブの有り様は大きく変わることを改めて学んだ。
 本来なら歌い手である私自身が上手に盛り上げられたらいいのだが、残念ながらそこまでの力量は持ち合わせていない。日頃から接している職員さんに、つい期待してしまうのだ。