訪問ライブ顛末記


ケアセンター栄町・生活介護忘年会 /2016.12.16



 近隣の障がい者支援施設の忘年会余興で歌った。実はこの施設、過去に何度か歌っているデイサービスと運営組織が同じで、建物も同じ施設の1階と4階という位置関係にある。
 デイサービスで私が歌うことを知って、障がい者支援部門の担当者から連絡があり、同じ日の別の時間帯で歌ってもらえないか、との打診があった。
 今年は他の系列施設でも歌わせていただいた。確かな信頼関係が築かれつつあり、同じ日の同じ建物なので、ありがたくお受けすることに。

 問題は聴き手の年齢や障がいの程度のこと。過去に何度か同様の施設で歌っているが、おしなべて嗜好が幅広くてマニアック。年齢層もかなり若い。
 今回もその例外ではなく、とりあえずリクエストを募ってもらうことになる。時間も短めに設定した試験的なライブという位置づけになった。

 自宅から車で15分弱なので、渋滞に対する不安はない。予定時刻の20分前に到着。会場に入って素早く機材をセットし終え、予定より5分早い13時15分から始めた。
 およそ25分で8曲を歌う。


「北国の春」
「愛燦燦」
「大空と大地の中で」
「恋の町札幌」(リクエスト)
「宗右衛門町ブルース」
「銀色の道」
「雪國」(リクエスト)
「また逢う日まで」


 聴き手は職員さんを加えて20人ほどで、こじんまりした場である。聴き手の大半は男性で、女性は2名のみ。平均年齢は50歳ほどか。他の似た施設と同様に、曲に対する反応は弱い。曲に対して手拍子や掛け声がかかるのは、大半が職員さんという寂しい状態だった。

 歌に対する反応が乏しいのは、歌い手としては正直厳しい。誰も立ち止まる人がいない地下通りの路上ライブで延々歌い続けるような境地だったが、ともかく受けた依頼はこなさなければならず、淡々と歌い進めた。

 場が少しだけ湧いたのは、リクエストのあった石原裕次郎と吉幾三を歌ったとき。予想通りリクエストに対する反応は敏感で、これも他施設と同じ傾向だった。
 選曲ミスだったのは、「宗右衛門町ブルース」と「銀色の道」。場によっては受ける曲だが、少なくともここではアウト。もし次回があるなら、職員さんとも協力し、より綿密な事前リサーチが必須である。

 ともかくも終わって次なるデイサービスのステージへと機材を運んでいたら、手伝ってくれた若い職員さんが、「吉幾三、喜んでましたよ。もっと聴きたいと言っていたんですが…」と残念そうに言う。
 意外な言葉に驚いて、「吉幾三のベスト曲はほとんど演れますよ、言ってくれたらアンコールで歌いましたのに」と応ずる。施設として外部ボランティアの受入れは稀らしく、遠慮があったようだ。

 初めての場には、歌い手や聴き手、そして職員にも、しばしの慣れが必要のようである。
(後半に続く)


 

ケアセンター栄町・デイサービス忘年会 /2016.12.16



(前半からの続き)
 4階の障がい者支援施設でのライブを無事に終え、ただちに1階のデイサービス部門へと移動。タイムロスを避け、PAやマイクスタンドは分解せずに、そのままエレベーターに積み込んだ。

 20分ほど休憩したのち、ホールへと移動して「第2部」とも言えるデイサービスでの忘年会ライブを始めた。いつもとは歌う場所が違っていて、窓際にあるスペースの端にある高さ20センチほどの舞台がステージだった。
 聞き手は100人近くもいて驚く。どうやら全利用者が対象のようだった。多忙に追われて確認を怠っていたが、今年は趣向が違ってXmas会としてではなく、忘年会として実施されるらしい。ステージの背景にも確かに「忘年会」との記載がある。

 まるでそんな展開を察知していたように、3日前に提出した曲目リストにXmasソングは入れてなく、どちらかと言えば宴会系の曲が多かった。偶然だが、運が味方した。
 予定を10分遅れて14時10分から開始。およそ30分で10曲を歌う。


「北国の春」
「おかあさん(森昌子)」
「お座敷小唄」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「月の沙漠」
「まつり」
「知床旅情」
「東京ラプソディ」
〜アンコール
「浪花節だよ人生は」


 テーブルの上にはビールジョッキが並び、日本酒の一升瓶を持って酌に回っている職員さんの姿もある。宴会モード全開といった様相で、どちらかといえば苦手な部類に入る酒席でのステージだった。直前のプログラムがカラオケ大会で、歌が連続するという難しさもあった。
 救われたのは、ステージ近くにいた利用者の方々が、熱心に聴いてくれたこと。歌に合わせて手拍子をくれたり、配られた全曲の歌詞集を開きつつ、一緒に歌う声がステージにも届いた。

 会場の配置が縦長で、いわゆる「うなぎの寝床」。PAの音が後ろまで届くか不安があり、普段よりもマイク音量を2割ほど上げた。

 ほろ酔い気分の場は、出だしではやや集中力に欠けていたが、「お座敷小唄」から一気に盛り上がる。以降、じょじょに場は乗ってきて、「まつり」でそれがピークに達する。そのまま一気にラストへとなだれ込んだが、熱くなった場は収まらず、自然発生的な「アンコール!」の嵐。
 この施設では過去にもこうした自然発生的なアンコールが数回飛び出したが、いずれも進行上の事情で歌えずじまいだった。

 実は開始前に担当のHさんから、「今回は14時40分まで時間をとってあります」との情報を得ていた。時計は14時37分あたり。つまりは、時間調整としてもピッタリはまるアンコールだった。
 高揚した場の気分と残り時間から、何を歌うべきかを素早く判断。アンコールでは歌った記憶のない「浪花節だよ人生は」を咄嗟に選んだが、これが大変な盛り上がりよう。時間の都合で3番はカットしたが、終わっても会場からは「もっと聴きたい!」との声が複数あがる。

 Wアンコールに応える用意はもちろんあったが、あいにく時計は14時40分ちょうど。進行の方が「大変残念ですが、時間の都合でまた次の機会ということに…」と申し訳なさそうに言う。
 計1時間近い長丁場のライブだったが、喉の調子は尻上がりによくなり、会心の締めくくりになったことは間違いない。


 

ホームのどか・Xmas会 /2016.12.17



 12年という長いお付き合いのある近隣のグループホームXmas会で歌った。施設名の変更や移転などを経て、今回がちょうど30回目のライブ。その間、入居者や職員さんにも多くの入れ替りがあったが、目には見えなくとも、ずっと変わっていないものも確かにある。
 イベントは食事会を兼ねたもので、開始は11時半。私の出番はずっとトップと決まっていて、施設側の簡単な開会宣言のあと、ただちに歌い始めた。

 この日は介護施設系ライブでは初めて試すことがあり、ずばりマイクなしで歌うことだった。いつも共演するフォークユニットのエイプリルさんがノーマイクを貫いていて、それに合わせたことがひとつ。
 さらには、今年9月に雨のため屋内開催となった秋祭りイベントでPAを使った際、最前列で耳を押さえて聴いていた利用者の方がいたことも理由のひとつだった。そう広くはない食堂内のライブで、PAは必要ないのでは?と考えたのだ。

 これまで屋外での路上ライブやカフェライブでマイクなしで歌ったことは数回ある。しかし、介護施設でも支障なくやれるのか、やや不安はあったが、まずはやってみることだ。
 およそ20分で6曲を歌う。


「高校三年生」
「きよしこの夜」
「花笠音頭」
「二人は若い」
「知床旅情」
「浪花節だよ人生は」


 4曲中2曲だけがアルペジオの穏やかな曲調で、他は基本的に元気の出るストローク系の曲でまとめた。夏祭り余興では全曲をニギヤカ系にすることも少なくないが、屋内とクリスマスということから、少し趣向を変えた。
 出だしから手拍子が飛び出し、調子よく進む。マイクがないということで、1曲目は多少の力みを自分でも感じたが、じょじょに慣れてきた。うつむいて歌うと声が広がらない感じがし、極力顔を上げて歌うよう努める。

 無難に終えたが、結果としてマイクがないことによる大きなハンデはないように思えた。前を見て歌うことで聴き手の顔もよく見えるし、上半身で自由にリズムをとって歌えるという利点もある。介護施設でも充分やれる。

 その後、職員さんや入居者の方々による手品やハンドベル演奏が続いたが、ほとんどタイムロスなくプログラムが進み、時間がすっかり巻いて(早まって)しまった。
 予定では12時半から最後の余興が始まるはずだったが、時計はまだ12時を回ったばかり。進行のNさんと責任者のAさんとが時間調整をどうしようか、困っている。とりあえずみんなで歌でも…、などと相談しているので、「よろしければ私が何か歌って場をつなぎましょうか?」と申し出た。

 実は責任者のAさんには、この秋に母が転居した施設を紹介していただいたという恩がある。歌でお役にたてるのなら、むしろこちらからお願いしたいほどだった。

 それでは次の出演者が現れるまで、ということになり、手頃なXmasソングを順に歌い継ぐことにする。結果として20分強で8曲を「第2ステージ」と称して歌った。
(※はリクエスト)


「ウィンター・ワンダーランド」
「恋人がサンタクロース」(初披露)
「赤鼻のトナカイ」
「サンタが町にやってくる」
「あわてんぼうのサンタクロース」
「まつり※」
「北海盆唄※」(初披露)
「故郷※」


 Xmasソングはどれも短いが、完全に別ファイルとして電子譜面にまとめてあるので、メドレーのように次々と歌える。聴き手からの手拍子は終始耐えることがなく、5曲を終えた時点で一息入れ、「もしかして、演歌も聴きたいですか?」「リクエストありましたら、歌手名でどうぞ」と声をかける。
 すると北島三郎と吉幾三との声があり、まずはこのところ歌い込んでいる「まつり」を歌う。続けて吉幾三に移ろうとしたら、Aさんから「北海盆唄」と「故郷」のリクエストがあり、それで締めて欲しいとの要望。
 どちらもこの施設では定番ソングのような位置づけで、「北海盆唄」はそのために最近覚えたばかりだった。

 無難にまとめて、ポッカリ空いた時間の穴埋め役は十分に果たした。Aさんにも喜んでもらい、個人的な義理も同時に果たせた。
 その後、食事会とビンゴゲームへと移行。(出演予定のエイプリルさんは手違いで欠席)いつもながら美味しい料理を堪能し、花束やお土産までいただく。記憶に残る通算30回目のライブだった。


 

ノアガーデン・Xmas会 /2016.12.18



 隣区にあるサ高住Xmas会余興に出演した。2年前のクリスマスにネット経由で最初の依頼があり、それ以降夏祭りとXmas会には欠かさず招かれている。
「高くて険しい3度めの壁」は軽々と越え、今回が5度目の依頼。このところ他施設でも似た傾向にあるが、おそらくは相性に起因すると思われる信頼関係が、着々と築かれつつある施設のひとつだった。

 イベントは13時半から始まっていたが、私の出番はいつも通りラストの14時半あたり。昨年は時間が25分も巻いて早めの出番になったので、用心して14時には会場入りした。
 ステージでは施設職員による歌の真っ最中。控えの廊下では次の出演者、アクション演劇の「わんわんズ」さんがスタンバイしていた。昨年もご一緒したチカチカパフォーマー仲間で、「しばらくです」と挨拶を交わす。

 14時10分くらいから、わんわんズさんのステージが始まる。廊下の片隅で機材をセットしながらチラ見したが、ステージをいっぱいに使った忍者時代劇に会場が湧いていた。
 14時35分くらいに終わって、ただちに機材を移動。L字型の大きな会場で、聴き手は100人を超える。これまではPAを2台使ってきたが、今回は1台で臨んだ。
 一昨日のデイサービスで歌った際、ボーカル音量を上げれば1台でも充分やれることを知ったからで、機材は少ないほうが機動面では当然優れている。

 やや遅れて、14時40分からステージ開始。先方の希望通り、30分で10曲を歌った。


「北国の春」
「おかあさん(森昌子)」
「ソーラン節」
「バラが咲いた」(歌詞カード)
「幸せなら手をたたこう」
「矢切の渡し」
「さくらさくら」
「まつり」
「また逢う日まで」
〜アンコール
「月がとっても青いから」


 熱い手応えのあった一昨日のデイサービスでのセットをベースに、1年以内に同施設で歌った曲との重複を避けるなど、微調整を加えて臨んだ。
 PAが1台であることにやや不安があり、生音でのボーカルは普段よりも強めにした。昨日のグループホームでノーマイクで歌ったばかりで、連続ライブの真っ只中の割に、声はよく出た。

 昨年は特に前半で場の反応が少し弱かったが、1曲目にXmasソングを避けて演歌の「北国の春」で臨んだ今年は、間奏の時点で拍手が湧き起こるという順調な滑り出し。以降もその流れを失うことなく歌い進む。
 聴き手参加型や叙情系の曲とのバランスもほどよく、あっという間にラストを迎える。最後は職員さんにも手拍子をうながし、にぎやかなフィナーレとなった。

 間髪をいれず、職員さんリードのアンコールの声。昨年はタイミングの悪い半端なアンコールとなった反省を踏まえ、今年は打合せの時点でどうするのか確認した。
 利用者からの自然アンコールは出にくいというが、演出面ではあったほうが望ましいとのこと。そこで職員さん主導で出すことが決定。持ち時間にはアンコールも含めることにする。
 つまりは「お約束アンコール」だったが、施設によって利用者の形態も変わるので、それに応じた進行もアリだろう。

 歌った10曲で特に手応えが大きかったのが、意外にもふとした思いつきで入れた「矢切の渡し」。当初は同じ細川たかしの「浪花節だよ人生は」を歌うつもりが、5ヶ月前の夏祭りでも歌っていたので重複を避けた。
 分類としては叙情系の穏やかな曲だが、直前の演劇がヒントになり、歌詞の女性と男性の声色を使い分けて歌うことを思いつく。これがハマったのか、終了後の拍手が割れんばかり。全く何が幸いするか分からない。

 終了後のセンター長さんの挨拶でも、繊細さと力強さの両面が素晴らしかった、いまや当施設の専属歌手ですね、とのコメントをいただく。外交辞令的な部分は割り引いても、歌い手としては単純に嬉しい。
 12月になって8本目、中旬から続く連続ライブの5本目だが、疲れも吹き飛ぶ手応えだった。


 

センターヒルズ恵み野・Xmas会 /2016.12.19



 ネット経由で依頼のあった札幌南東の近郊都市にあるサ高住Xmas会余興で歌った。千歳空港近くに位置し、片道で40キロ弱。市内で歌うことが大半なので、私の活動範囲としては最も遠い部類にはいる。
 近くに学生時代の友人夫婦が住んでいて、数年前に訪れた。10数年前には住宅設計の依頼で半年間、毎日のように現場監理に通った街だった。土地勘は充分にあるが、施設自体は初めての訪問になる。
 積雪による交通渋滞が怖く、14時開始だったが、12時10分に家を出た。

 折からの暖気で道はすっかり乾いていて、大きな渋滞もない。夏と変わらぬ順調な走行で、1時間10分で先方に着いてしまう。積雪時における市内遠方施設への所要時間と大差ない。
 コンビニで少しだけ時間をつぶし、13時半に施設内に入る。完成後1年半という施設で、全てが新しい。

 担当のKさんとは電話やFAXを通じ、かなり早くから数回に及ぶ打合せを重ねてきた。施設が新しく、イベント企画の歴史も浅い。運営手法に不安があるらしく、時間内への具体的な収め方まで相談された。
 遠方とあって下調べはしなかったので、開始までの時間を使ってライブの具体的な進行方法やアンコールに関し、細かい打合せをする。

 イベントは自由参加で、40人弱の定員と聞いたが、食堂に集まったのは20人ほどだった。予定より10分遅れの14時10分から開始。先方の希望通り、およそ45分で15曲を順に歌う。


「北国の春」
「おかあさん(森昌子)」
「お座敷小唄」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「サンタが町にやってくる」(Xmas企画)
「お正月」(年末企画)
「高校三年生」
「さくらさくら」
「まつり」
「憧れのハワイ航路」
「夜霧よ今夜も有難う」(二択企画)
「時の流れに身をまかせ」(二択企画)
「月がとっても青いから」
「青い山脈」


 聴き手に車椅子の方は皆無で、介護度は低く、元気のいい方が多い。男性の比率が4割ほどで、他に比べて突出していた。
 そうした特徴が影響していたのかは定かではないが、出だしから反応は非常に弱かった。高齢者が中心の施設では圧倒的に人気のある「北国の春」に、歓声や手拍子が全く起きない。歌いながら席を順に見回しても、目を輝かせて応えてくれる人はいなかった。
(これは厳しい…)そんな苦戦の展開を覚悟した。

 沈滞したムードはその後も変わらず、他施設では無条件に手拍子が起きる「お座敷小唄」でも、事前のMCで手拍子を促したにも関わらず、反応はまばら。ライブそっちのけで個人的な会話に勤しむテーブルもあり、ある意味では自由気ままなサロンふう、またある意味では無秩序なおしゃべり広場といった様相だった。

 あくまで依頼されて歌っている立場なので、運営に関してとやかくは言えない。聴き手参加型の歌を入れたり、Xmas企画を途中に挟んだり、時には力技を使ったりなど、可能な限りの工夫をこらして粛々とライブは進めた。

 少しだけ手応えを感じたのが、ラスト間近に仕掛けた二択リクエスト。女性は圧倒的に「時の流れに身をまかせ」を支持し、男性は「夜霧よ今夜も有難う」を推した。
 両者拮抗で判定に困っていたら、担当のKさんから、「両方歌っていただくというのは…」というナイス助け舟。「ではそうしましょう」と応じて、場が湧いた。

 アンコールは場の空気次第で、と事前に打合せていたが、聴き手からの自然発生的アンコールは当然ない。終了後にKさんに目配せし、「終わりです」と小さく告げる。あうんの呼吸でKさんが場を締めてくれた。
 初めての施設で歌う難しさをまたまた痛感したが、毎回アタリのライブなどあるはずもなく、奢りの気持ちを戒める意味では、よいクスリになったと自分で思う。

 何が足りなかったのか、帰路の長い道のりをずっと考えていたが、もしかすると入居者の意識が若すぎて、一般の高齢者施設向けの受身的な構成では、飽き足らなかったのかもしれない。
 介護施設では一度も試みてないが、地区センターなどで好評の「全曲リクエスト方式」をやってみる価値はありそうだ。もし次回があれば、の話だが…。


 

フォーレスト恵庭・Xmas会 /2016.12.21



 一昨日歌ったばかりの札幌南東にある近郊都市で、また歌ってきた。初めて訪問するサ高住のXmas会余興で、実は前回担当のKさんから紹介された施設だった。
 経営者が同じ系列の施設で、場所は前回よりさらに5キロ遠く、自宅からおよそ45キロある。

 11月中旬の穏やかな陽気で道路状況は改善され、遠方だが交通渋滞の不安はない。問題は一昨日の施設で起こった「歌えど踊らず」の手応えのなさだった。
 施設は別でも経営母体は同じで、施設の歴史が浅く、入居者や職員がまだ充分馴染んでいない、という条件も同じ。初めての施設で同じ構成で臨めば、同じような失敗に見舞われる可能性は高かった。

 中一日の休息で、何をどう修正すべきか、対策を一心に考えた。前回唯一「受けた」と感じたのは、後半に設けた「二択リクエスト」の仕掛け。
「次の2曲のうち、聴きたい曲をみなさんの拍手で選んでいただきます」という趣向で、ライブにゲーム的要素が加わることで、聴き手が入ってきやすくなるという利点がある。

 どの2曲を組み合わせるか?という難しさはあるが、過去には3曲から選んでもらう「三択」も仕掛けたことがあり、いずれも好評だった。
 そこで今回は、この「二択リクエスト」を要所で複数回仕掛けてみようと考えた。

 実はこの日は2ヶ所の施設で続けてライブをやることになっていた。同じ系列の施設が2棟隣接しているが、会場の関係で入居者を一箇所に集めることができず、時間をずらして2回連続で演って欲しい、という要望。
 今年はこの種の依頼が多く、体力的にはかなり厳しい。しかし、遠方なので何度も通うより、むしろ一日で済んでしまうほうが楽かもしれない、と前向きに考えた。

 最初の施設は14時半開始。15分前には会場に着いて14時35分から始め、およそ30分で11曲を歌った。
(※は二択リクエストで、カッコ内は選ばれなかった対決曲)


「北国の春」
「おかあさん」
「※お座敷小唄(お富さん)」
「※ここに幸あり(バラが咲いた)」
「矢切の渡し」(リクエスト)
「幸せなら手をたたこう」
「サンタが町にやってくる」(Xmas企画)
「※故郷(さくらさくら)」
「※時の流れに身をまかせ」
「※夜霧よ今夜も有難う」
「青い山脈」


 聴き手はおよそ20名ほど。車椅子の方が数人いて、介護度は他2施設よりやや高いとの情報を得ていた。それが関わっていたかどうかは分からないが、1曲目の反応は決して悪くなく、間奏の時点で拍手が湧く。
 明らかに系列の前施設とは違う反応で、(このまま普通に歌ってしまおうか…)という考えが一瞬よぎる。しかし、まてまてと考え直し、場がこなれてきた3曲目から、準備してきた二択リクエストを予定通り仕掛けた。

 結果は予想を超えるもので、聴き手の反応は上々。二択の組み合わせには「手拍子対決」「唱歌対決」「叙情歌対決」「演歌対決」等々、共通するテーマを設けて選びやすくした。
 聴き手の嗜好を尊重する、という姿勢がよかったのか、ライブ途中で突然リクエストが飛び出す、というハプニング発生。職員さんの許可を得て、これにも冷静に対応できた。

 結果として4セット5曲の二択リクエストをこなす。(「時の流れに身をまかせ」と「夜霧よ今夜も有難う」は両者拮抗のため、両方を歌う)純粋なリクエストを含め、全体の半分以上に聴き手の要望を反映させたことになる。
 介護施設でこれほど多くのリクエストを受けたのは初めてのこと。思いがけない手応えに勇気を得て、ただちに機材をまとめて次なる施設へと移動した。
(後半に続く)


 

恵庭フロント・Xmas会 /2016.12.21



(前半からの続き)
 介護施設では初めて本格的に仕掛けた二択リクエストライブが予想以上にうまく運び、いいイメージで次なる施設へと移動する。
 建物は徒歩1分の隣りにあるので、車は駐車場にそのままにし、機材は手で運んだ。

 こちらの施設では開始予定時間が15時半と遅い関係で、別のイベント始まっていた。会場に入ると整然と並んだ椅子には、すでに30名ほどの入居者が座っていて、拍手で迎えてくれる。
 それぞれの施設で方針が異なるが、準備万端整えてスタンバイしたのちに聴き手が三々五々と集まってくるケースと、会場に聴き手がすでに並んで待ち構えているケースとに対応が別れる。私の場合、ライブがスムーズに運ぶのは、おおむね後者である。

 素早く機材をセットし、準備は短時間で整った。15分前に歌い終えたばかりだったが、予定を前倒しして15時20分から始めることになった。
 アンコールを含め、およそ45分で14曲を歌う。
(※は二択リクエストで、カッコ内は選ばれなかった対決曲)


「北国の春」
「※瀬戸の花嫁(おかあさん)」
「※お富さん」
「※お座敷小唄」
「※バラが咲いた(ここに幸あり)」
「幸せなら手をたたこう」
「サンタが町にやってくる」(Xmas企画)
「※上を向いて歩こう(高校三年生)
「※故郷(さくらさくら)」
「※津軽海峡冬景色(矢切の渡し)」
「※知床旅情(星影のワルツ)」
「※夜霧よ今夜も有難う(時の流れに身をまかせ)」
「青い山脈」
〜アンコール
「月がとっても青いから」


 利用者の介護度は全体的に低く、一昨日の施設に準ずるもの。その分嗜好も幅広いことが予想された。場としては難しい部類で、2曲目から早々と二択リクエストを仕掛けた。
 以降、歌った14曲のうち、2/3に相当する9曲が二択リクエストによるもの。(「お富さん」と「お座敷小唄」は両者拮抗で引分け判定)
 自分のペースで普通に歌ったのは1曲目と、中ほどにアクセントとしてはさんだ聴き手参加型「幸せなら手をたたこう」とXmas企画、そしてラストとアンコールの5曲のみである。

 結果は直前に歌った施設をさらに上回るもので、目を輝かせて聴いてくれる方が多数いて、歌いやすかった。アンコールは職員さん主導だったが、打合せにはない自然発生的なもの。場の気分に充分沿うものだった。
 終了後に責任者の方からも、「素晴らしいライブでした。ありがとうございます」と感謝の言葉をいただく。

 二択方式にするとそのたびに場が湧くので、進行がやりやすい。施設によって全く反対の結果が出たりし、人の好みは実にさまざまだと興味深い。
 逆に「故郷」のように、圧倒的に強い曲も確かにある。組み合わせる曲を時に応じて変えてやれば、また別の結果が出るかもしれない。

 まだ始めたばかりだが、初めての場、マンネリに陥りそうな場、つかみが難しい場などでは、今後かなりの威力を発揮しそうだ。
 年末を目前にし、苦境をバネに新境地を開拓できた気がする。