訪問ライブ顛末記


ノアガーデン発寒・夏祭り /2016.8.7



 隣区にあるサ高住の夏祭り余興に出演した。1週間前に同じ夏祭りで歌ったサ高住からの紹介で、以前勤めていた方が移動で赴任した施設。ときどきある「紹介型」の依頼で、新規依頼の比率としては、ネット経由に次いで多いパターンである。
 こちらの力量や場の扱いを踏まえたうえでの依頼なので、やりやすいといえばやりやすい。しかし、先方の期待を裏切ってはならない、というプレッシャーもないではない。

 場としては初めてだが、事前調査はしていない。早めに出て開始25分前には先方に着いた。先週は屋外が会場だったが、今回の施設は駐車場が狭く、屋内の食堂が会場。
 利用者の集まりがやや遅れ、予定を5分過ぎた14時5分から始めた。およそ40分で14曲を歌う。


「憧れのハワイ航路」
「瀬戸の花嫁」
「お富さん」
「二輪草」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「浜辺の歌」
「青春サイクリング」
「古城」
「時の流れに身をまかせ」
「月がとっても青いから」
「星影のワルツ」
「どうにもとまらない」
「青い山脈」


 系列施設とはいえ、初めての場であることに変わりはないので、冒険を避けて定番曲中心のオーソドックスな構成で臨んだ。

 出だしから数人の熱心な利用者の方が手拍子やかけ声で盛り上げてくれ、それに乗るような形で歌い進んだが、50人弱と思われる聴き手の大半は大人しく、全体としての手応えはいまひとつのように感じた。
 この日は32度という酷暑で、弱い冷房は効いていたが、高齢者には厳しい条件だった。始まるとすぐ、かき氷とスイカが断続的に配られ、ライブへの集中度はさらに弱まった感もある。

 そんな悪条件の中でも比較的反応がよかったのは、「浜辺の歌」「古城」「星影のワルツ」などの叙情性の強い曲。以前にもパターンを記したが、ここはいわゆる「参加型」の場ではなく、「傾聴型」の場なのだった。
 曲目リストは事前提出してなかったので、途中での変更も可能だったが、夏祭りの賑やかさということも意識し、当初の予定通りに歌った。

 終了時刻は14時45分と決まっていたが、予定よりも早く終わりそうだった。そこで、「時間が少し余りそうなので、何かリクエストはありますか?」と場に募ったが、「なんでもいいですよ」とのアッサリした応え。この日の雰囲気を象徴するシーンだった。
 つまり、ラストの「青い山脈」は時間調整型セルフアンコールである。

 場が変われば嗜好もガラリ変わる。初めての場は本当につかみにくい。もしチャンスがあれば、次回はぜひ修正したい。


 

ツクイ札幌太平・夏祭り /2016.8.22



 自宅から車で10分ほどのデイサービス夏祭りに招かれた。実はこの施設では、先月も歌ったばかり。昨年も夏祭りには招かれているが、さすがに同じ場で2ヶ月連続は厳しい。
 しかし先方は、ぜひにとの強い要望。妥協案として、2日間実施される夏祭りのうち、これまで歌ったことのない月曜日を選択。さらにはライブを前後半2つに分け、前半を私のソロ、後半を施設職員とのコラボとし、私は伴奏とサポートに徹するという趣向をこらすことにする。
 一緒に歌ったことは過去に何度もあるが、伴奏に専念とは例がない。しかし、職員とのコラボは利用者に受けることは間違いないので、やってみることにした。

 続けざまに2個の台風が上陸という、記録的な悪条件に見まわれ、朝から断続的な雨が降り続く。とても夏祭りの気分ではないが、幸いにライブ会場は屋内を予定していた。
 開始時間は昼食後の12時50分だったが、屋外に設置したコンロで食材を焼くという計画が、台風の大雨ですっかり狂った。まずはテントを設営し、その中で食材を焼くという手間のかかる段取りとなった。

 ライブ開始は大幅に延びてしまい、食事や予定のゲームが終わり、ようやく準備が整ったのは1時間遅れの13時50分あたり。空いた時間はタブレットPCで小説を読んだり、コラボする職員さんと簡単なリハーサルをしたりしてつぶしたので、延びたことによる心理的な影響はあまりなかった。
 想定外のアンコールなどあり、およそ50分で計15曲を歌う。


《前半〜ソロ》
「憧れのハワイ航路」
「青葉城恋唄」
「さんぽ」
「古城」
「恋の町札幌」
「浪花節だよ人生は」
「どうにもとまらない」

《後半〜職員とのコラボ》
「時の過ぎゆくままに」
「雪國」
「サボテンの花」
「また逢う日まで」
「上を向いて歩こう」(アンコール)

「あの素晴らしい愛をもう一度」
「青い山脈」(アンコール)

「まつり」(アンコール→私のソロで)


 土日以外で歌うのは初めてだったが、いつもより男性利用者の数が多いように思えた。そのせいもあってか、場の反応はやや弱い。
 そこで「さんぽ」では歌う前に手拍子を誘導した。場もじょじょにこなれ、「浪花節だよ人生は」「どうにもとまらない」では自然に手拍子も出た。

 後半の出だし4曲は、職員のHさん(同年代の男性)がボーカルを担当。候補7曲は全てレパートリーにあったが、全体のバランスを考慮して絞り込んだ。
 事前のリハで曲の入りとキー、長い曲で何番を省略するか打合せたが、最も不安だったキーは幸いに私のものとピッタリ一致して、事なきを得た。
 生ギターの伴奏で歌ったことは一度もないというHさんだったが、入りのタイミングや間奏を小声で伝えつつ歌い進むうち、次第に息が合ってきた。ラストの「また逢う日まで」は打合せ通りにサビを一緒に歌う。

 会場も大いに盛り上がって大団円のつもりが、期せずして場内から「アンコール!」の嵐。全くの想定外で、何も練習していない。その旨を説明して逃げようとしたが、「準備なしで歌うのがアンコールでしょ」と、女性ヘルパーさんがけしかける。
 応えないと収拾がつかない雰囲気なので、咄嗟の判断で目についた「上を向いて歩こう」をHさんに提案。キーは低めだし、話題性も充分。ただちにイントロを演奏し、入りは私が歌ってHさんに引き継いだ。
 この選曲は正解で、引き続き手拍子の嵐。共に歌う人も続出した。

 ラストは施設長のKさんとのコラボ。以前にも同じ曲を一緒に歌っているので、大きな問題はない。前回はキーを2つ下げたが、今回は事前のリハで何とかやれそうだったので、原キーのまま歌った。
 歌い終わっても、盛り上がった場は終了を許さない。「みんなが知っている歌をぜひに」と求められるまま「青い山脈」を歌い、さらには私のソロで「まつり」を歌って、ようやく熱くなった場は収まりがついた。

 未経験だった後半の「伴奏に専念」スタイルは、思っていたよりもずっとスムーズに演れ、自分の活動の幅がまた広がった感じがする。


 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2016.8.25



 3年前にネット経由で初めてライブを依頼され、以降定期的な依頼が続いている市内遠方のデイサービスでまた歌った。
 この施設では5月にも歌っている。数えてみたら、今回で10回目だった。年に3回ペースで、これほど長く続くのは、いろいろな部分で施設との相性がいいせいだろう。

 いつものようにライブ開始は遅めの15時から。実はこの施設で木曜に歌うのは初めてのこと。曜日によって利用者の顔ぶれがガラリ変わるのがデイサービスの大きな特徴だった。
 比較的新しい傾向の曲を好む場だが、聴き手が変わるリスクを考慮し、今回は懐メロ系の定番曲中心でやることを提案した。しかし、すっかり親しくなった担当者のTさんは、新しい曲を入れたいらしい。もしかすると、私を買ってくれる理由のひとつが、そのあたりにあるのか。

 相談のうえ、今回は新しい曲と古い曲とをミックスした構成で臨むことになった。

 後半にリクエストなどあり、ちょうど1時間で18曲を歌った。

「憧れのハワイ航路」
「少年時代」
「花笠音頭」
「カントリー・ロード」
「長崎は今日も雨だった」
「涙そうそう」
「古城」
「ブルーライト・ヨコハマ」
「いい日旅立ち」
「青春サイクリング」
「星影のワルツ」
「浪花節だよ人生は」
〜リクエストタイム
「小樽のひとよ」
「おれの小樽」
「故郷」
「人生一路」
「高校三年生」
〜ラスト
「どうにもとまらない」


 慣れた場とはいえ、利用者が異なるので、やや手探り的な進行になった。いつもなら1曲目から自然発生的な手拍子が飛び出すが、そうはならない。前半は新しい曲が多めだったせいもあっただろうか。
 そんななかでも、「花笠音頭」「長崎は今日も雨だった」の反応は非常によかった。どうやら演歌系の曲が好みであることを途中で知ったが、担当者との打合せに従い、予定曲の変更はしなかった。

 昭和歌謡の「ブルーライト・ヨコハマ」は介護施設系では初めて歌ったが、全くの期待はずれ。場によっては自然に手拍子も出る曲だが、そんな気配はまるでなし。難しい。
 対して、「星影のワルツ」「浪花節だよ人生は」等の演歌系の曲は大人気で、共に歌う人や手拍子がどんどん飛び出した。

 ラスト前に時間調整もかねてリクエストを募ったら、やはり演歌系が多めだった。小樽関連の2曲は、小樽出身の方からの強い希望から。「人生一路」はレパートリーになかった「お祭りマンボ」の代替曲だった。

 場をつかむのにやや苦心したが、担当者が希望する新しい曲もそれなりに歌い、後半はリクエストを中心に、聴き手の嗜好に沿った形でまとめられたと思う。
 曜日が変われば、場の好みも変わる。次回以降の参考にしたい。


 

のどか祭り /2016.9.10



 近隣のグループホーム秋祭りで歌った。演奏ボランティア活動を始めた11年前から切れ目なく依頼が続いている施設で、今回が実に28回目の訪問。職員さんはもちろん、入居者の方にも11年前と同じ顔ぶれがいて驚く。
 例年は屋外の駐車場を使い、地域住民にも開放されて行われるが、今回は開始2時間くらい前から、あいにくの雨。会場を食堂に移して行われた。

 開始は予定通り13時から。施設側の挨拶や開会宣言などあり、13時5分くらいからトップバッターとして私のステージが始まる。アンコールを含め、およそ25分で7曲を歌った。


「憧れのハワイ航路」
「青春サイクリング」
「三百六十五歩のマーチ」
「さんぽ」
「皆の衆」
「お祭りマンボ」(初披露)
〜アンコール
「北国の春」


 お祭りイベントなので、昨年に引き続き、全曲を手拍子系の曲で統一した。天気予報は悪くなかったので、屋外会場でニギヤカに歌うつもりでいたが、突然の雨に降られて気勢をそがれた印象。そこが気がかりだったが、いざ歌い始めると1曲目から手拍子の輪が一気に広がって、不安は吹き飛んだ。
 予定の6曲を終わるまで手拍子が途切れることはなく、難しいシチュエーションでのトップバッターの役目は、十二分に果たせたと思う。

 場を次なる演奏者であるフォークユニット、エイプリルさんに素早く譲ろうとしたら、「菊地さん、ぜひあと1曲お願い!」と、責任者のAさんが指を立てる。
 実は前日に施設で転倒して股関節にヒビが入った母が、一夜明けて熱が出てしまい、昼近くに入院することが決まっていた。手続き等で、終了後はただちに病院に向かうことになっており、そのことは事前にAさんにも伝えてあった。

 しかし、場の気分としてはアンコールである。リクエストを募った結果、昨年のアンコールと同じ「北国の春」に決まる。無難にまとめ、ただちに機材をたたんで病院へと向かった。
 いろいろと想定外のことが起きて慌ただしかったが、何とか綱渡りで対応できた。


 

ケアセンター栄町・敬老会 /2016.9.12



 車で10分ほどの距離にあるデイサービス敬老会で歌った。昨年9月にネット経由で初めて依頼があり、クリスマス会にも続けて招かれた。今回が「高くて険しい3度目の依頼」で、大きな壁をひとつ越えた。

 過去2回では、しっとり叙情系の歌が好みなのか、はたまたニギヤカ手拍子系の曲がいいのか、いまひとつ聴き手の傾向がつかみきれなかった。つまり、場が傾聴型なのか参加型なのか、まだはっきりしないということだ。
 そこで3度目となる今回は、手拍子系と叙情系の曲を交互に歌うという安全策で対応することにした。

 担当のHさんの希望で、全曲の歌詞を事前にプリントアウトし、聴き手に配って一緒に歌ってもらう、という趣向をこらしたいという。数曲の歌詞を配り、共に歌ったことはこれまでもあったが、全曲というのは初の試み。
 しかし、最近の傾向として、かっての歌声喫茶ふうの場作りがあちこちで試みられていて、中高年を対象に活況らしい。自分で歌集を作るには手間や経費もかかるが、今回は施設側でそれをやってくれるという。願ってもない話で、多少の不安はあったが、すぐに応じた。

 開始は14時10分の予定だったが、直前のイベントであるカラオケ大会で、かなり時間が押した。タイムロスを少なくするべく、控室で機材をセットして備える。15分遅れの14時25分からライブは始まった。
 考えに考えたセットリストは、準備の都合で1週間前に施設へFAX送信ずみ。先方の希望ぴったりの25分で8曲を歌った。


「憧れのハワイ航路」
「瀬戸の花嫁」
「お富さん」
「ここに幸あり」
「上を向いて歩こう」
「荒城の月」
「丘を越えて」
「高校三年生」


 聴き手は50〜60名ほど。直前のカラオケ大会が大変な盛況で、1曲目はその気分をやや引きずった感。いまひとつノリが悪かった。
 2曲目の「瀬戸の花嫁」では一転して一緒に歌う人が多数。ここから場の雰囲気は一気に「懐メロ歌声サロンふう」へと切り替わった。

 聴き手が歌詞を見ながら歌うので、手拍子やかけ声による聴き手参加型の曲は歌わなかった。強いて言うと、「お富さん」は手拍子を自然に促す曲だったが、数人の職員さんが代りに手拍子で盛り上げてくれた。
 持ち時間が少なめなので、全曲をフルコーラスでは歌わず、一部は省略した。「次の曲は1〜2番だけ歌います。ご協力、お願いします」などと歌う前に告知。歌集にはフルコーラスが印刷されていて、うまくやれるか不安だったが、何も問題なかった。

 歌そのもので聴き手がライブに参加するスタイルなので、場をリードする役目である私の歌は我流のクセを極力なくし、いわゆる「ため」や「走り」の類いは一切使わずに、ごくごくオーソドックスな歌唱法を貫いたが、この部分も非常にうまく運んだ。
 以前に妻にテストしてもらったことがあるので、キーは特にいじらず、普段通りに歌ったが、こちらも全く問題なし。

 中盤から後半にかけ、多くの歌声が吹き抜けのある空間に響き渡り、場がいつものライブとは異なる不思議な共有感に包まれた。若いころに新橋の歌声喫茶に数回行ったことがあるが、間違いなくそのときの空気感だった。
 終了後、担当のHさんから「やっぱり菊地さんの演奏は盛り上がります」と感謝された。初めての試みだったが、懐メロ歌声ふうサロン、成功と評価していいと思う。他の場でもやってみる価値は充分ありそうだ。


 

ベストライフ東札幌・9月誕生会 /2016.9.25



 市内にある有料老人ホーム誕生会イベントに出演。8年前にネット経由で依頼され、以後しばらく連絡が途絶えたが、忘れたころの5年後に2度目の依頼があった。その後年に1〜2回のペースで依頼が続いている。
 依頼のペースは施設によってさまざまだが、ちょっと珍しいパターンである。

 今回で都合5回目となるので、大きな緊張もなく臨んだ。当初はニギヤカ系の曲を好む場だったが、8年の間に微妙に嗜好が変わり、このところ叙情系の曲を好む傾向に変化した。推測だが、入居者や職員の入れ替りが背景にあるように思える。
 いつも同じように見えても、万物は常にゆっくりと動いている。

 場の分類としては完全に「傾聴型」で、構成もそれに沿った形で対応した。14時半から施設側のイベントがまず始まり、その後の余興が私の担当。14時45分くらいから始め、先方の希望通り、およそ40分で12曲を歌った。


「憧れのハワイ航路」
「瀬戸の花嫁」
「花笠音頭」
「ここに幸あり」
「上を向いて歩こう」
「知床旅情」
「秋の童謡メドレー:夕焼け小焼け・紅葉・赤とんぼ」
「丘を越えて」
「川の流れのように」
「古城」
「旅の夜風」
「東京ラプソディ」


 セットは先日のお寺ライブ同様の切り口で、「参加型」の曲はほとんどない。「花笠音頭」は構成にメリハリをつける意図で前半に入れたが、手拍子等は全く誘導せず、「民謡は普通三味線や尺八の伴奏ですが、ギター弾き語りでも実は演れます。聴いてください」としか告知しなかった。
 結果として一部の方から手拍子は出たが、あくまで自然発生的なもの。ノリのいい場なら必ず飛び出す「チョイチョイ」の合いの手は、さすがに出なかった。

 手拍子やかけ声の誘導は一切しなかったが、曲によっては「ご存知の方は一緒に口ずさんでください」と歌う前に言い添えた。
 この声かけに最も反応があったのは、秋の童謡メドレー。多くの人が共に歌ってくれた。童謡は久しぶりに歌ったが、傾聴型の場には向いている。

 前半は静かだった場も、中盤過ぎから次第に乗ってきて、聴き手がじわじわと熱くなるのが歌っていて分かった。ラスト3曲ではそれが最高潮に達する。聴き手の気持ちを歌に集めるべく、歌いながら聴き手に目で語りかけるよう努めたので、その効果もあったと思う。
 反面、歌詞から目を離しすぎて、コードの一部をミスタッチした曲があった。手慣れた曲なら暗譜しているが、普段あまり歌っていない曲は要注意である。

 終了後、場にちょっと余韻が残ったが、この施設では時間厳守で、アンコールは一切ない取り決めがある。それでもわざわざ近くにやってきて、「よい歌をありがとうございます」と労ってくれた入居者の女性がいて、嬉しかった。
 冒険はせず、施設の意向に沿う形で無難にまとめたが、それなりに収穫もあった。