訪問ライブ顛末記


のどか祭り /2015.9.5



 怒涛の敬老ライブ月間の第1弾となるライブが近隣のグループホームであった。
 この施設で最初に歌ったのが10年前の春で、介護施設訪問活動を始めた初期の頃のこと。まだ何の組織にも所属してなく、活動の場を求めて案内状を持参し、「歌わせてください」と自ら営業開拓した。

 その後さまざまなNPO等に所属するようになってからも依頼は続き、多い年は年3回。昨年までの訪問累計数が実に24回で、年数でも回数でも群を抜く、長くて濃密な家族的おつき合いが続いている。

 ただ、訪問が度重なるにつれて、互いに慣れや緩みが出てしまい、ライブの進行は徐々に難しくなってゆく傾向にあった。利用者の入れ替わりがほとんどないグループホームという形態の問題もあっただろう。
 一昨年末にガンを患ったのを機に、事情を話して訪問数を年1回に減らしていただいたが、それでも昨年の秋祭りでは、まるで手応えのない不本意な出来で、一時は自信を喪失した。

 1年後の今年、これほどまで間隔があくのは初めてのこと。前回ライブの何がいけなかったのか、かなり前からレポを読み返すなどして詳細に分析を試みる。
 数年前から隣接するサ高住の利用者も参加するようになり、微妙に空気感が変わった。それまでは落ち着いた叙情系の歌が好まれる傾向にあったが、場はニギヤカ手拍子系の曲を求めているように思えた。

 そこで今年は方向性をガラリ変え、全曲を手拍子の出やすい曲調でまとめることを決意。それに合わせてギター奏法はノリの良いストローク調で統一する。
 屋外会場なので使うPAもパワーの弱い乾電池式はやめ、交流式のローランドCM-30を選択した。電源は交流式のポータブル電源を持参。屋外ステージ用に作った電子譜面シェードも、この日初めて使う。

 施設側のオープニングセレモニーなどあって、13時10分くらいから歌い始める。聴き手は例年より多く、地域住民も含めて60名ほどか。練りに練ったセットリストは以下の6曲。


「高原列車は行く」
「東京音頭」
「おかあさん(森昌子)」
「お富さん」
「高校三年生」
「花笠音頭」


 この種のお祭り系の場では、特に運営側が手拍子で場を乗せたがる傾向にあって、この施設でもその例外ではない。特に1曲目はノリの良い曲を持ってくることが必須。今回はそれを6曲20分間通してやり通すという、大胆な試みだ。
 多少の不安もあったが、高齢者でも無理のないペースで手拍子が打てる曲を慎重に選んだこともあって、最後まで手拍子が途切れることはなかった。
 飲み物は出されていたが、まだ食べ物がテーブルに行き渡ってなかったことも味方した。
(食事に忙しいと、手拍子が打てない)

 ほぼ思惑通りに運んで、時間通りに終了。実戦では初めて試した電子譜面シェードも、全く問題なく機能した。
 ただちに撤収しようとしたら、職員さんから打合せにないアンコールが飛び出す。リクエストを募ると、入居者の方から「北国の春」をぜひに、との要望。
 歌いながら手応えがあったので、(もしやアンコール…)という感触は正直あった。この施設でのアンコール自体が実に久しぶりのこと。

 終了後、複数の方から同じ主旨の声をかけられた。声の透明感、少しも衰えてませんね、と。
 この日の声の調子は抜群というわけでもなく、ごく普通である。1年間の間隔があいたことによる新鮮さが、そんなふうに聴こえたのだろう。やはり飽きや慣れは怖い。自分の場合、同じ場で同じ聴き手に対しては、年1回が限度だ。

 とはいえ、叙情系バラードが皆無のセットリストで、声の透明感が…、という評価には当惑しつつも、ある種の自信にはなった。
 ジャンルが民謡であろうが演歌であろうが、はたまた歌謡曲であろうが、歌い手の歌唱次第で聴き手の耳には心地よく届く、ということか。歌い手としての「味」が出せるようになったのだとしたら嬉しいが。


 

ケアセンター栄町・敬老会 /2015.9.12



 ネット経由で初めて依頼された近隣のデイサービス敬老会で歌った。開設して6年ということだが、自宅から車で10分という近距離にも関わらず、依頼されるまでその存在を知らなかった。
 事前に「14時20分開始、正味30分で」という厳密な依頼条件があり、入念に時間調整して臨んだ。

 14時に会場入りしたが、ライブ後のスケジュールが詰まっているので、可能であれば早く始めて欲しいという。
 会場は間口に対して奥行きが長く、音響的に難しい場だった。高さ30センチほどのステージが準備されていたが、前後の長さがやや窮屈で、設営に少し手間取った。

 14時18分くらいから開始。先方の要望通り、ぴったり30分で11曲を歌った。
(※は施設側からの事前リクエスト)


「高原列車は行く」
「おかあさん」
「花笠音頭」
「知床旅情」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」※
「浜辺の歌」
「月がとっても青いから」
「星影のワルツ」
「浪花節だよ人生は」
「青い山脈」※


 聴き手はざっと60名ほどか。初めての場なので冒険は避け、無難な定番曲を並べた。11曲中、アルペジオで弾いた叙情系の曲は3曲のみ。他はこの種の場で人気の高い、ノリのいい曲である。

 最前列に座った方は、出だしから手拍子や声援で応えてくれたが、ステージから遠い聴き手の反応はいまひとつ。3曲目くらいから、職員の方の先導で何人かの方が最前列まで椅子を移動してきて、このあたりから場の反応はじょじょによくなった。

「幸せなら手をたたこう」では、過去に例がないほどの熱い手応え。先方から事前にリクエストのあった「高校三年生」を6曲目に歌ったが、ここで場の盛り上がりは最高潮に。
 以降、ラストまでその勢いでなだれ込んだが、終了の挨拶を終えても場に余韻が残り、会場のあちこちから、「すごくよかった」「素晴らしくて涙が出る」「アンコール聴きたい…」などの声が耳に届く。
 だが、施設側の進行スケジュールに余裕がないらしく、進行の方から「残念ですが、時間の都合でアンコールはなしということで、お願いいたします」との声。つまりは極めて稀な「アンコール・カット」である。

 施設側との事前打合せで用意する「お約束アンコール」ではなく、明らかに聴き手から自然発生した「真のアンコール」だったが、こればかりは歌い手が勝手に進めるわけにはいかない。
 これに関して、帰り際に担当のKさんから陳謝の言葉があった。今回は利用者の長寿表彰など、イベントが多数入っていたらしく、次回はもっとゆったりした場でぜひに、とのこと。
「次回」が実現するかどうかは別にして、歌い手として充分満足すべき結果であったことは間違いない。


 

デイサービス春・敬老会 /2015.9.14



 都心の大通公園近くにあるデイサービス敬老会で歌った。依頼は今回もネット経由。ときどき行くカフェの近くにあり、場所はよく知っていたので、事前の調査は特にしなかった。
 会場が小さめで聴き手も20名弱と聞いていたので、持参したPAも1台のみ。2日前に初めて訪問したデイサービスと似たオーソドックスな構成で臨んだ。

 先方の都合で、この日は苦手な午前中ライブ。開始は11時半で、早めに起きて備えた。
 11時25分にはスタンバイしたが、午後からの利用者が予定を早めて聴きにくるので、開始を少し遅らせて欲しいという。すでに会場には午前中利用者の方が開始をじっと待っている。
 間があいてしまったので、音響テストをかねて「誰か故郷を想わざる」「ここに幸あり」の2曲を場つなぎとして歌う。

 少し遅れて11時34分からライブ開始。およそ30分で11曲を歌った。


「高原列車は行く」
「おかあさん」
「花笠音頭」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「浜辺の歌」
「月がとっても青いから」
「星影のワルツ」
「瀬戸の花嫁」
「青い山脈」


 聴き手の9割は女性で、歌い始めるとニギヤカ手拍子系の曲よりも、叙情系の曲への反応が明らかによい。4曲目は「知床旅情」も選べるように電子譜面を調整しておいたが、その場の判断で「バラが咲いた」を選択した。
 9曲目は「夜霧よ今夜も有難う」も選べたが、自分では判断がつかず、趣向として聴き手のみなさんの多数決で決めてもらった。
(男性は全員が、女性の6割が「星影のワルツ」を選択)
 同じく10曲目は当初の「浪花節だよ人生は」から、急きょ「瀬戸の花嫁」に差し替える。この後半2曲の判断は正解で、終了後に「千昌夫、大好き〜」「《瀬戸の花嫁》で泣けた」という方が複数いた。

 最近は構成を完全に固定せず、時には候補曲を複数並べておいて、その場の空気で自在に選べるようにしてある。初めての施設には有効な手法だ。
 午前中ということで、声のツヤや伸びはいまひとつ。絶好調とは言い難かったが、みなさんには喜んでいただいた。

 終了後、施設側から「お昼ごはんをぜひ一緒に」と思いがけないお誘い。11時半開始というライブも稀だが、その後お昼ごはんまでいただくことは、過去に例がない。しかし、せっかくのご好意なので、ありがたくお受けすることに。

 このお昼ごはんが職員さんの手作りで、とても美味しい。デザートもついていて、量が少なめなのも胃の小さい私向き。同じテーブルの利用者の方々と、歌の感想やら普段の生活のことなど、食べながらあれこれと話が弾む。

「過去最高のボランティアでした」と、嬉しい言葉もかけていただく。介護施設のごはんを初めて食べたが、麺類で簡単に済ませる我が家よりもはるかに豪華で、栄養のバランスもいいように感じた。
 写真を見せると、妻も同意見。我が家の昼食を見直すいい機会だったかもしれない。


 

あろは=遊遊デイサービス・敬老会 /2015.9.16



 昨夏の夏祭りイベントに初めて依頼され、2日続けて歌わせてもらった近隣のデイサービスから再び招かれた。
 今回の依頼は敬老会イベントだが、実は1年前の敬老会にも招かれていた。しかし術後まもなくてライブをセーブしたかったことと、間隔があまりに近すぎるという2つの理由から、慎んでお断りした経緯がある。
 このまま縁が切れてしまう例も少なくないが、思い出してくれたことに感謝したい。

 責任者の方とは当初からメールのやり取りで打合せを進めており、今回もそうだった。「言った言わない」のトラブルが起きにくく、履歴も明確に残るので、依頼を受けた側としてはとてもやりやすい。
 今回は前2回と曜日が異なり、利用者がガラリ入れ替わると事前に聞いていた。しかし、季節が前回と異なるとあって、曲の重複は極力避けて臨んだ。

 予定ぴったりの午前11時からライブ開始。およそ40分で13曲を歌う。
(※はリクエスト、◎は歌詞配布で全員で斉唱)


「憧れのハワイ航路」※◎
「アロハ・オエ」
「おかあさん」
「花笠音頭」
「バラが咲いた」◎
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」◎
「浜辺の歌」
「三百六十五歩のマーチ」
「夜霧よ今夜も有難う」
「高原列車は行く」
「青い山脈」◎
〜アンコール
「東京ラプソディ」※


 この日の利用者は全体的に大人しいです、と事前に聞いていたが、1曲目からこの施設がテーマソングとしている曲を全員で歌ったこともあってか、場の乗りは決して悪くなかった。

 聴き手は職員を含めておよそ50名ほど。1年前よりも増えていて、ステージ前にはあまり余裕がなく、前回歌よりもはるかに盛り上がった「曲に合わせた即興ダンス」は今回はスペース的にやれない状況。
 しかし、その分歌に集中する環境が整っていたともいえる。

 1〜2曲目は施設名称がハワイに縁があるため、必ず歌っている曲。全体的に拍手の出やすい曲を中心に歌ったが、要所に配置した聴き手参加型の曲がいいメリハリとなり、場を盛り上げるのに効果的だった。
 拍手等で参加する「幸せなら手をたたこう」から、全員で歌う「高校三年生」にかけて、場の気分は最高潮に。大人しいはずだった場から、「いいぞ〜!」と歓声が湧いたほど。

 唯一外したのが叙情系演歌の「夜霧よ今夜も有難う」で、終了後に一部のヘルパーさんから、もっと元気のよい曲を…、と注文が出てしまった。咄嗟の判断で、次に予定していた「瀬戸の花嫁」をやめ、「高原列車は行く」に差し替える。
 盛り返してラストになだれ込んだが、打合せになかったアンコールが職員さんから飛び出した。「真のアンコール」からはやや外れるが、場の気分にはマッチしていた。

「何を歌いましょうか?」「去年ラストで盛り上がったあの曲をぜひに…」
「東京ラプソディ」である。1年以上も前の構成を、よくぞ覚えていてくれたもの。セルフレポを入念に読み返し、もしやと思って準備していたので、ただちに応じた。

 この日はまたしても苦手な午前中ライブ。2日前にうまく声が出なかったのでネットで再度情報収集し、「ライブ開始3時間前に起床」「ボイトレは直前までやらず、軽く10分ほどに留める」の2点を厳守したので、喉は絶好調に近かった。
 終了後、数人の利用者が近寄ってきて、「とてもよい歌でした」「聴いているだけで涙が出ました」と労われる。

 会場が吹抜け天井になっていて、音響効果が抜群だったことにも救われた。しばらくぶりの場だったこともあって、久々に会心のライブである。


 

ツクイ札幌栄通・敬老会 /2015.9.17



 新築開設してまだ間もないというデイサービスから、急なライブを依頼された。それが何と1週間前のこと。多忙な9月敬老月間のスケジュールは大半が埋まっていたが、希望日はポッカリと空いている。
「連続となるライブは原則受けない」を最近の活動方針にしていて、こちらの事情もお話ししたが、先方はなかなか諦めない。
 利用者がまだ数名しかいないこと、それに伴って運営予算が少ないこと等の事情で、あちこち当たったボランティアに、ことごとく断られたらしい。

 偶然だが、施設の場所は実家近くで、そう遠くない。これまた偶然だが、よく歌う全国展開デイサービスの系列施設である。いろいろとやり取りのあと、入社まもないという担当者の熱心な口調に気持ちが動き、「30分間限定」のお試しライブとしてお受けすることになる。
 当日の利用者は2〜3名しかいないということだったが、別の曜日の利用者にも声をかけ、出来るだけ多くの聴き手を集める、という方向性だった。

 開始20分前に施設に着くと、確かに職員以外の聴き手は3名だけだったが、機材をセットするうち、ポツポツと人が増えてくる。開始の14時には引率の家族も含めて、10名近くに達した。
 定刻から始まって、アンコールを含めておよそ32分で11曲を歌う。
(このほか、事前のマイクテストで「三百六十五歩のマーチ」を歌った)


「高原列車は行く」
「おかあさん」
「花笠音頭」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「浜辺の歌」
「月がとっても青いから」
「瀬戸の花嫁」
「青い山脈」
〜アンコール
「星影のワルツ」


 延々続く敬老ライブ月間の6本目で、昨日からの連続ライブである。睡眠は充分にとったはずが、午前中に倦怠感を感じる。疲れが溜まっていることは間違いない。
 初訪問ということもあって冒険は避け、このところ歌っている手慣れた定番曲を並べた。大事をとって事前の練習も最低限にとどめた。

 聴き手が少なく、声の伸びもいまひとつだったにも関わらず、場の反応はそれなり。途中から参加する聴き手もいて、終わる頃には職員を含めて16名に達する。
 職員の熱心なサポートもあって、1曲ごとに拍手歓声が湧いた。開設後わずか2週間の介護施設としては、これ以上ない盛り上がりだったといえよう。

 9曲目は趣向として「星影のワルツ」との二択方式とし、場の拍手で決めてもらったが、「瀬戸の花嫁」の支持が高かった。4日前のデイサービスでは、「夜霧よ今夜も…」との二択で勝利した「星影…」だったが、曲の組合せ次第で結果はこうも変わる。
 ところが終了後の職員さん主導のアンコールで、唯一の男性利用者から「星影のワルツが聴きたい」との強い要望。結局は歌うことなった。この2曲は両方歌うのが正解かもしれない。

 終了後、担当のKさんからは非常に喜ばれた。新人研修を経て、最初に配属された職場の最初の担当業務だったようだが、予想を超える盛況で、「こんなに集まってくれるとは」と、大感激。
 今回のライブの様子を近隣に配布するチラシや案内状に写真つきで紹介させて欲しい旨を依頼され、快諾した。人数をたくさん集めますので、ぜひまたお願いしますと、初々しく語ってくれた。

 運営や進行等に全く慣れていない様子なので、事前の出演確認の取り方や、ライブ前と終了後の施設側挨拶の心得など、具体的に教えてあげたが、「いろいろとご指導、ありがとうございます」と、感謝された。
 歌以外の分野でも若い世代を育て、模範となるよう心がけることはできる。世の中、損得だけで動いているわけではない。


 

新十津川かおる園・敬老会 /2015.9.18



 自宅から北へ65kmほど離れた新十津川町のデイサービス敬老会に招かれて歌ってきた。担当のMさんとは、4年前に参加した「ALIVEミュージックフェスティバル」という音楽イベントを介して知り合った。
 客席で観ていたMさんが私の歌に関心を持ち、ネット検索でメルアドを突き止め、突然連絡してきたという珍しい経緯である。当時のMさんは同じく遠方の介護施設に勤務していて、依頼に応じてはるばる歌いに行った。

 4年後の今年、そのMさんから突然のメールがあり、勤務先が変わったが、ぜひまた歌っていただけないか、との打診。札幌北端にある我が家からは、前回訪問した施設よりやや近い。よくぞ忘れずにいてくれたものと、ありがたくお受けした。

 延々続く敬老ライブ月間の都合7本目で、一昨日からの3連続ライブである。心身の疲労は溜まっていたが、待っていてくれる方々が確かにいる。それを励みに、今日も歌いに向かった。
 先日キャンプで通ったばかりの勝手知ったる道。11時45分に出発して、途中で10分の昼ごはん休憩。渋滞もなくスイスイ進んで、開始20分前の13時10分には先方に着いた。

 地方だが、介護施設としての体裁や位置づけは、大都市と少しも変わらない。隣接する老人ホームからも続々と利用者が集まってきて、開始までに聴き手は40名を軽く超えた。

 定刻の13時半にライブ開始。初訪問の施設なので最近のセットリストで使っている定番ソングを中心に、40分で13曲を歌う。
(このほか、事前のマイクテストで「北国の春」を歌った)


「高原列車は行く」
「おかあさん」
「花笠音頭」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「サクラ咲く」(オリジナル)
「三百六十五歩のマーチ」
「星影のワルツ」
「瀬戸の花嫁」
「月がとっても青いから」
「浪花節だよ人生は」
「青い山脈」


 マイクテストの段階から、会場は拍手喝采。確かめてないが、地方という事情もあって、ボランティア演奏自体が珍しいのかもしれない。
 ライブの進行と共に場は次第に熱を帯び、1曲毎に歓声と声援が飛んだ。疲れているはずだったが、聴き手に押される感じで喉の調子も尻上がりによくなった。

「花笠音頭」では、特にお願いしていないのに、「チョイチョイ〜♪」の合いの手が聴き手から複数入る。いろいろな場で歌っているが、こんなことは稀。
 出だしから全ての曲に手拍子が入ったが、叙情系の曲の「バラが咲いた」にも緩いペースの手拍子が入った。何を歌っても受ける、まさに「入れ食い」状態である。
 事前の打合せに従って中盤で歌ったオリジナル「サクラ咲く」では、一転して場が静まり返った。歌いながら気が一点に集中するような独特の空気が漂う。曲に込めた思いが確かに通じたと思う。

 このところ続けている終盤の「二択方式」の趣向は、「星影のワルツ」と「瀬戸の花嫁」が今回は互角。結局どちらも歌うことに。
 この時点で、時間は当初予定の30分をすでに過ぎていた。時間になりましたので、次の曲で終わりにしましょうか?とMさんに問うと、聴き手からすかさず「どんどんやって〜」との声。スケジュールに問題なければ、あと3曲歌って終わりにしましょうか?と、こちらからMさんに申し出る。
 ラスト3曲は実質的にアンコールの位置づけで、「青い山脈」以外は予定外の曲だった。

 終了後、MさんからオリジナルCDの案内がある。「オリジナルCDがあるなら、ぜひ持ってきてください」と、事前に言われていたので3枚だけ持参したが、施設に1枚、利用者に2枚が期せずして売れた。
 以前にもデイサービスでCDが売れたことがあるので、最近は最低1枚は持参するよう心がけている。チカチカパフォーマンスでの売上げが頭打ち傾向の反面、介護施設でのCD販売は増加傾向にある。
 いまのところ先方から要望があった場合のみの限定だが、今後の進むべき方向性を示唆している気がする。

 家に戻ったら、さっそくMさんから礼状が届いてた。涙を流して喜んでいた方が多数いたとのこと。その気配は歌いながら察していた。もしかすると、都会の施設よりも歌に対する思いは強いのかもしれない。
 移動と経費の問題はあるが、「地方の施設に向けたボランティア活動」もまた、今後の方向性のひとつかもしれない。


 

ツクイ札幌稲穂・秋祭り /2015.9.20



 市内遠方にあるデイサービス秋祭りで歌った。怒涛の敬老月間ライブの8本目となるが、今回の施設では先月も歌ったばかり。一昨年に最初の依頼があってから定期的な依頼が続いていて、今回が実に7回目。
 年内の依頼はもうないはずだったが、1週間前に突然の電話があり、予定していた秋祭りのボランティアにキャンセルが出たので、何とか歌っていただけないか、との打診。厳しいスケジュールだったが、該当日は予定が空いている。
 いわゆる義理人情の世界に近づくが、長いおつき合いがある担当者の顔を立てる思いもあって、お受けすることにした。

 先月とは曜日が異なるので、利用者の顔ぶれも変わる。しかし、秋祭りということで、先方はノリのいい曲と、長めの演奏時間を求めていた。短い準備時間のなかで工夫を重ね、新しい試みをいくつか加えて臨んだ。

 夏でも50分はかかる距離だが、今日は空いてそうな別ルートを初めて通った結果、40分強で到着。前の出演者が少し伸びた関係で、15時5分から開始。アンコールを含めて55分で15曲を一気に歌った。
(※はリクエスト)(◎は初披露)


「高原列車は行く」
「二輪草」
「炭坑節」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「抱きしめて(オリジナル)」
「埴生の宿」
「まつり」※
「星影のワルツ」
「ラブユー東京」
「時の流れに身をまかせ」
「ミネソタの卵売り」◎
「東京ラプソディ」
〜アンコール
「小樽のひとよ」※


 2ヶ月連続ということもあって、このところ使っている構成に、いくつかの修正を加えた。

・2曲目定番曲「おかあさん」を介護施設では初めて歌う「二輪草」に差替え
・民謡枠「花笠音頭」を「炭坑節」に差替え
・中盤にノリのいいオリジナル「抱きしめて」を歌う
・唱歌枠「浜辺の歌」を「埴生の宿」に差替え
・後半に介護施設ではあまり歌わない「ラブユー東京」「時の流れに身をまかせ」を
・ラスト前の定番曲「月がとっても青いから」を初披露の「ミネソタの卵売り」に差替え
・時間調整のため、反応のいい数曲をフルコーラス歌う

 いずれもマンネリを避けつつ、ライブ時間を長くする意図だったが、40名ほどいた聴き手で途中で席を外す方は皆無に近く、ライブはほぼ当初の思惑通りに運んだ。

 介護施設系ライブの構成で、最も気を配るのは曲順とその曲調。たとえば1曲目なら、ノリがよくて明るい曲調で場をつかむ。「北国の春」「憧れのハワイ航路」「高原列車は行く」などを季節に応じて歌い分けている。

 2曲目には森昌子の「おかあさん」を多く歌ってきたが、代替曲が見当たらなかった。明るくて手拍子も打てて、季節感が薄い。色恋エキスが少なく、歌詞にホロリとくるそんな曲。持ち歌を再検討してみると、「二輪草」が何だかいけそうな気がした。
 過去にほとんど歌ってないが、これは当たった。自然発生的に緩やかな拍手も飛び出す。2曲目として充分使える。

 同じ事情で、ラスト前には「月がとっても青いから」を長く歌ってきたが、毎回だとさすがに飽きられてしまう。ツイッターで悩みを書いたら、とあるフォロワーさんからすぐにメッセージが入った。「ミネソタの卵売り」はいかがですか?と。
 ラスト前の曲には、フィニッシュになだれこむ勢いが必要だ。しかし、ラストとはひと味違うテイストが欲しい。曲が長すぎてもいけない。レパートリーにはなかったが、「ミネソタ…」は条件に合う印象がした。

 さっそく歌詞等を調べたが、コードがどうしても見つからない。やむなくYouTubeから音を拾って、自分でコードを当てた。
 数回歌ってみると、いけそうだった。少なくともお祭り向きのニギヤカな曲調であることは確かで、思い切って本番で歌ってみることに決める。

 短時間の練習にも関わらず、結果としてこちらも当たった。担当のTさんが、「知らない曲ですけど、みなさんすごく乗ってますね!」と驚いていた。
 60数年前の曲だが、教えてくれたのは私の娘のような世代の方だ。とあるライブで一度お会いしただけだが、貴重な情報に感謝したい。

 長い演奏時間だったが、この2曲に限らず、外れのほとんどない手応え充分のライブだった。もうネタは出尽くしたと思っていたが、まだまだ改良の余地は残っている。
 今後の目標は、中盤の盛り上げに欠かせない「高校三年生」に匹敵する代替曲を探すこと。明るくて手拍子も打てて、色恋エキスが少なく、懐かしく昔を振り返る曲。きっと見つかる。


 

ライラックイースト・敬老会 /2015.9.21



 敬老ライブ月間のラストとなるライブを、近隣のデイサービス敬老会で締めくくった。9月上旬から始まって、途中3連続と2連続をはさみ、この日で9本目全107曲、よくぞ歌った。
 今回の施設は一昨年から毎年9月の敬老会に招かれていて、今年で3度目。いわゆる「高くて険しい3度目の壁」を越えた施設だったが、残念ながら「終わりよければ全てよし」とはならず、いろいろと悔いの残る結果となった。

 先方の希望する13時の10分前には着いたが、会場となる食堂ではまだ昼食のテーブル配置がそのままで、ライブの態勢が整っていない。
 入口付近で機材を組立てつつ、設営が終わるのを待ったが、始められたのは13時10分あたり。およそ35分で12曲を歌った。


「高原列車は行く」
「二輪草」
「花笠音頭」
「バラが咲いた」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「浜辺の歌」
「三百六十五歩のマーチ」
「星影のワルツ」
「ミネソタの卵売り」
「旅姿三人男」(リクエスト&初披露)
「青い山脈」


 過去2回の記録によれば、この施設では男性の比率が非常に高い、とあった。そのつもりで男性むきの曲を多めに準備していたが、いざ会場に入ると聴き手の多くは女性。全体数も15名ほどで例年より少なく、どうやら1年のうちに何かしらの変化があったらしい。
 急きょ予定曲を差替えて進めざるを得なかったが、数少ない男性を含めて反応が非常に弱く、難しいライブ進行となった。職員さんも他の仕事に忙しそうで、ライブに参加する余裕があまりない。

 他施設では大好評で、一番の盛り上げどころとなる「幸せなら手をたたこう」「高校三年生」でも大きな手応えはなく、かといって叙情系の歌に感極まって涙を流すという、他施設では多くみられた現象も、ここでは皆無。まさに「何を歌っても手応えナシ」の八方ふさがり状態である。

 構成自体に他施設との大きな違いはなく、同じ曲を同じ歌い手が同じ時期に歌って、こうも反応が違うのはどうしたことか。仮に違いがあったとすれば、歌い手のコンデションと聴き手の体調や資質、そして運営側の態勢あたりか。
 カンフル剤としての何か、たとえば強い曲を連発する「力技」を使ってでも、自分のペースに持ち込むべきだったかもしれないが、延々続くライブの最後ということもあり、もはやそんな気力体力は残ってなかった。

 消化不良のまま、ライブを終える。当然ながら、アンコールの声や気配などない。担当のYさんからも、「今日はどこか元気がないですね」と鋭く指摘される。
 気力体力の減退と、聴き手の反応の弱さとの悪循環がそうさせた。まだまだ未熟ということだが、言い訳が許されるなら、過去に例のない「月9本のライブ」をこなした大きなツケが、ここで出たのではないか。

 義理や人情に縛られるのもほどほどにしておけ、というのが数少ないこの日の収穫である。