訪問ライブ顛末記


ベストライフ白石・3月誕生会 /2015.3.15



 自宅から20キロほど離れた有料老人ホームの誕生会余興に出演した。この施設から招かれるのは都合3度目だが、実は系列の別施設でも先月末に歌ったばかり。
 その際の手応えがいまひとつだった。経営母体は同じなので、入居者の入替えが少なく、年々高齢化が進むという条件も同じ。同じ轍を踏む可能性がある。歌い手としては悩ましいが、前回までの記録を入念に調べたりし、考えうる限りの対策を練って臨んだ。

 裏道を通ったこともあって、わずか30分で到着。今回もPAは2スピーカー方式を選択した。最近はチカチカパフォーマンス以外、全て2スピーカーで対応している。音が安定しているし、機材にも工夫して車から一回で移動できる態勢も整えた。

 14時15分からイベント開始。まず施設側のイベントが10分あって、プレゼント贈呈などが行われる。3月が誕生日の最高齢入居者は108歳だそうで、元気に参加されていた。100歳を超える方に遭遇するのは初めてだ。
 14時25分から私の出番。先月のようにオヤツや飲み物は配られず、歌い手にとっては条件がいい。およそ35分で12曲を歌った。


「北国の春」
「おかあさん」
「みかんの花咲く丘」
「幸せなら手をたたこう」
「リンゴの唄」
「宗谷岬」
「さくらさくら」
「釜山港へ帰れ」
「仰げば尊し」
「月がとっても青いから」
「花笠音頭」
「高校三年生」


 構成はこのところずっと採用している「春メニュー」が中心だが、前回の反省をふまえ、単純に聴いてもらうだけでいい叙情性の強い曲を多めにした。
 中間部で歌った唱歌系の「さくらさくら」「仰げば尊し」では、一緒に歌う人が多数。涙を流す方もいた。「3月誕生会」ということで、内容的にもタイムリーだった。

 聴き手は50名ほどで、最後まで集中を切らすことなく、無難にまとめられたと思う。先月末のライブで抱いた漠然とした不安は、どうにか払拭できた。

 終了後、ようやく全員にお茶とオヤツが配られた。ライブとオヤツとが重ならないよう、どうやら施設側が配慮してくれたようだ。ありがたいことである。
 たとえ経営母体が同じでも、細かい行事の進行手段は、各施設に委ねられている。それをどう解釈し、どうまとめるかは、それぞれの施設長や担当者の裁量次第ということなのだろう。

 ライブは歌い手の力量だけではどうにもならない部分が確かにある。ちょっとした気配りで、ライブはガラリと変貌する。場を取り仕切る側の役目は大きい。


 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2015.4.14



 年に数回招かれるデイサービスで歌ってきた。自宅から最も遠いグループの施設で、車で1時間近くかかる。今回が5度目の訪問。「高くて険しい3度目の壁」を軽々と乗り越えた施設である。
 曜日毎に利用者が入れ替わるので、場所は同じだが、顔ぶれはいくたびに変わる。私が歌うことを知って、本来の利用日ではない方が急きょ参加されることもあって、同じ顔も皆無ではない。

 約束の15分前となる14時45分に到着。この施設はライブ中の飲み物や食べ物のサービスは一切なく、歌に集中できる条件が整っている。施設側の配慮を感じる。
 15時2分くらいから歌い始める。休憩なしのちょうど1時間で、リクエストをまじえ、18曲を一気に歌った。


「北国の春」
「お富さん」(リクエスト)
「宗谷岬」
「真室川音頭」
「みかんの花咲く丘」
「二人は若い」
「リンゴの唄」
「草原の輝き」
「さくらさくら」
「お座敷小唄」
「釜山港へ帰れ」
「いい日旅立ち」
「浪花節だよ人生は」
「花笠音頭」
〜ここからアンコール&リクエストタイム
「酒と泪と男と女」
「待っている女」
「知床旅情」
「憧れのハワイ航路」


 ニギヤカ系の曲をおおむね好む場だが、要所に唱歌系の静かな曲を配置してメリハリをつけたが、これが見事にハマった。あたかも人生の歩みのように、笑いと涙が交錯する展開。ここ数日、充分に歌いこんだこともあって、喉も絶好調に近かった。
 長い演奏を望まれる施設なので、状況次第では途中で休憩をはさむつもりでいたが、そんな雰囲気には全くならず、あっという間に当初予定の14曲が終了。この時点で時計は15時45分を指している。

 その後、最近の定番となっているアンコールをかねたリクエストタイムに突入。今回は大半の要望に応えられた。
(ちなみに、「お富さん」は予定曲とリクエストが偶然一致)
 唯一譜面が見つからなかったのが、目下練習中の「長崎の鐘」。あとで調べてみたら、かなり前に「NEW」という特別なファイル名でまとめて保存してあったことを思い出した。時間的には残りの4曲でぴったり収まったので、よしとしたい。

 介護施設では初めて飛び出したリクエスト、「酒と泪と男と女」では一瞬面食らった。80歳くらいの女性からだったが、この施設では以前にも「なごり雪」「あの素晴らしい愛をもう一度」のリクエストが利用者から出ている。フォーク系の曲が受け入れられる施設なのだ。何とも嗜好が新しい。

 その「酒と泪と男と女」、週末に地区センターで実施予定の叙情歌サロンでのリクエスト曲一覧にも入れてあるので、おさらいとして最近練習したばかり。思いがけず高齢な女性からの希望ということもあって、気持ちは乗った。
 歌の進行に伴って、場からの強い「気」を感じた。過去最高とも思える出来。終わったあとで、職員さんから「あの曲で泣いている人がたくさんいましたよ」と告げられた。むろん悲しみの涙ではない。

 先月のチカチカパフォーマンスでの反応が2度続けて思わしくなく、自信を失いかけていただけに、大きな励みとなった。条件さえ整えば、まだまだ働ける場はあるのだと、今後の自分の方向性を再確認できた。


 

ツクイ札幌豊平・訪問ライブ /2015.5.20



 市内でも遠方にあるデイサービスから招かれた。2年前にネット経由で依頼され、2度ほど歌わせてもらったデイサービスに勤務していた担当者が、その後社内移動で別施設に移り、しばしの間隔を置いて突然の連絡があったのが、つい先日のこと。
 実は当時3度目の訪問を約束していたが、思いがけないガン告知と入院手術により、キャンセルせざるを得なかった経緯がある。よくぞ2年近くも忘れずにいてくれたもの。

 片道25キロほど離れているので、裏道を通っても50分かかった。担当のSさんは施設長に栄転していて、あいにくこの日は急な契約が入り、留守。
 施設そのものは初訪問で様子がまるで分からなかったが、思っていたよりも利用者が少なく、20名強。2台準備していったPAは、1台のみでやることにした。

 予定ぴったりの15時からスタート。およそ50分で15曲を歌った。
(※はリクエスト)


「釜山港へ帰れ」
「お富さん」
「おかあさん(森昌子)」
「ソーラン節」
「みかんの花咲く丘」
「幸せなら手をたたこう」
「リンゴの唄」
「夜霧よ今夜も有難う」
「お座敷小唄」
「バラが咲いた」
「月がとっても青いから」

「霧の摩周湖」※
「恋の町札幌」※
「襟裳岬(森進一)」※
「花笠音頭」


 全国規模で展開する施設で、市内の他4施設ですでに定期的に歌っている。しかし、施設ごとに利用者の傾向は全く異なるのが常。何が受けるか分からないので、1曲毎に手探りで進めていった。

 5曲目くらいまでは職員の方がそれぞれ別の作業に忙しく、ライブに全く参加しなかったこともあり、進行の全てを私一人でやらざるを得なかった。

 ボランティア演奏そのものに慣れていないのか、全体的に反応が弱く、表情も硬い。どう反応してよいのか、戸惑っている様子もみえる。介護度の重い方が数名いたことも影響していたかもしれない。
 歌詞やコードを見失わないよう注意しつつ、極力利用者の顔を順に眺めながら歌う。世間話的なMCも普段より多めにした。

 6曲目の「幸せなら手をたたこう」で、ようやく場がほぐれてきた。手の空いた職員さんが参加してくれたのも大きい。この種の聴き手参加型の曲は5〜6番目に配置し、局面打開を図るのが効果的だ。
 7曲目が終わったところで、担当のSさんが契約を終えて戻ってきた。そのまま横に立ってもらい、この日のライブに至った経緯などを簡単に説明。場はさらに柔らかくほぐれてくる。

 10曲目の「バラが咲いた」を歌い終えると、突然一人の女性から「リクエストいいですか?」と声がかかる。職員を介さない直接のリクエストは、極めて稀。予定曲を一通り終わってからリクエストタイムを設けるつもりでいたが、場の流れを尊重し、急きょ応えることにする。
 その歌がおそらく10年近くは歌っていない「霧の摩周湖」。ずっと好きな歌だが、このところ聴く機会がないのでぜひに、との強い希望である。

 それが引き金となり、続々とリクエストが飛び出す。予定曲をひとまず保留にして対応した。
 リストは特に配っていないので、全くの出たとこ勝負だったが、不思議なことに全てレパートリーにある曲だった。

 先日のチカチカパフォーマンスでも感じたが、聴き手のリクエストには、ある一定の傾向が確かにある。それは必ずしも自分の歌いたい曲とは一致しないが、ある場で飛び出したリクエストは、別の場でもまた出る可能性が非常に高い、ということだ。
 仮に歌えない曲を要望されても、決してそれで終わりにせず、可能な限りレパートリーに加えておくこと。地道な努力はいつか必ず実を結ぶだろう。

 気がつけば、予定を5分もオーバーして歌い続けていた。始まりの頃と終わりの頃の聴き手の表情は、まるで違っている。初めての施設だったが、辛抱してうまく乗り切れた。


 

イリーゼ篠路・月例会 /2015.6.3



 珍しく午前中にライブがあるので、普段よりも早めに起きて備える。寝起き直後は声が出にくく、そもそも午前中のライブは大の苦手だ。
 過去にも声が途切れるなどの苦い思いを何度かしていて、ライブの失敗を引きずって帰りに車の自損事故を起こしたのも午前中のライブ。前日からのプレッシャーで、夜中に何度も目が覚めたほど。

 呼ばれたのは、以前にカフェライブや自宅ライブなどで何度かご一緒したアコーディオン弾きのNさんが主催するデイサービスライブ。
 Nさんの知人が関連施設を利用している縁で、このところ毎月何らかの音楽系ライブを開いているそうで、今月は私に声がかかった。

 会場には車で数分で着く。よく知っている場所ということもあって、事前の調査はしなかったが、明るくて広々とした清潔な施設だった。

 簡単な打合せのあと、10時45分くらいからオープニング担当のNさんがアコーディオンで「鈴懸の径」「線路は続くよどこまでも」の2曲を弾いた。
 サラリーマン時代は営業職を担当していたこともあって、聴き手を引きつけるMCが相変わらず巧みである。

 そのNさんの紹介で、場を引き継ぐ。10時55分から歌い始め、35分で12曲を歌った。


「麦の唄」
「憧れのハワイ航路」
「知床旅情」
「お富さん」
「瀬戸の花嫁」
「幸せなら手をたたこう」
「われは海の子」
「リンゴの唄」
「夜霧よ今夜も有難う」
「月がとっても青いから」
「バラが咲いた」
「浪花節だよ人生は」


 1曲目の「麦の唄」は、普通介護施設系の場では歌わない曲だが、4月に近隣地区センターで実施の「叙情歌サロン」に来てくれたNさんがこの歌をいたく気に入り、ぜひ今回のライブでもと、強い要望だった。2曲目以降は私の構成で、6月を区切りに夏メニューへと改変した介護施設むけのもの。
 5年以上の付き合いがあるNさん主催とはいえ、初めての場である。先月のデイサービス同様、何が受けるのか分からないので、手探りで進めていった。

 午前中という大きな不安要素はあったが、いざ歌い始めると喉は絶好調で、自分でも驚くほど。理由ははっきりしないが、部屋の音響が抜群だったことと、前夜飲んで寝たショウガ湯が効いていたかもしれない。
 施設自体の歴史が浅いせいもあってか、聴き手の反応は全体的に大人しい。今回も極力聴き手の顔を眺めつつ歌ったが、手慣れた曲が多いこともあり、歌詞を確認するために電子譜面に目を落とす時間は、ごくわずかで済んだ。

 ライブへの参加は各自の自由だったが、歌い進むにつれ、部屋の各所からじわじわと人が集まってきて、終わる頃には30名近くに達する。
 特に反応がよかったのは、バラード系の静かな曲で、最近のデイサービスの傾向としては異色。しかし、叙情系のバラードはもともと得手なジャンルである。

 ラストは「浪花節だよ人生は」「時の流れに身をまかせ」「高校三年生」の3曲から聴き手に選んでもらったが、一番熱心だった女性の鶴の一声で決定。聴き手全員の拍手で選んでもらうつもりでいたが、ここは場の流れに従った。
 義理がからむといつもとは違う神経まで使うものだが、自分でも珍しく満足できるライブ。推薦してくれたNさんにも大変喜んでもらった。


 

ツクイ札幌太平・訪問ライブ /2015.6.7



 近隣のデイサービスから招かれて歌った。通算3度目、今年に入って2度目だが、曜日が変わるので利用者もガラリと入れ替わる。曜日を越えて聴きにくる方も多少はいるが、全く別の場と考えて臨むべきだった。

 開始15分前に施設に着いたが、今回は担当のヘルパーさんもこれまでとはガラリ入れ替わっていて、知っている顔は相談員のKさんくらい。
 時期はずれの寒さのせいで利用者に風邪が急増し、参加者は予定より10人ほど減ったとかで、15人前後の少人数だった。いつもは30名を超すのでPAは2台準備して行ったが、急きょ1台でやることにする。

 14時からライブ開始。リクエストや予期せぬアンコールなどあり、予定を大幅に超えて65分で18曲を歌う。
(※はリクエスト)


「憧れのハワイ航路」
「知床旅情」※
「お富さん」
「瀬戸の花嫁」
「幸せなら手をたたこう」
「三百六十五歩のマーチ」(初披露)
「われは海の子」
「時の流れに身をまかせ」
「夜霧よ今夜も有難う」
「東京ドドンパ娘」

「たなばたさま」※
「バラが咲いた」
「神田川」※
「川の流れのように」※
「上を向いて歩こう」※
「高校三年生」
「花笠音頭」※
「東京ラプソディ」(アンコール)


 特に休憩は設けなかったが、1曲目の「憧れのハワイ航路」から10曲目の「東京ドドンパ娘」までが前半、リクエストが中心の「たなばたさま」以降が後半という位置づけである。
(「知床旅情」は予定曲とリクエスト曲とが偶然一致)

 これまでと違って全体的に場が大人しく、ニギヤカ系よりはしっとりバラード系の曲が反応がよい。ここ数回続いている「手探り的進行」にまたまたなってしまったが、いつものように聴き手参加型の「幸せなら手をたたこう」で俄然場の反応がよくなってくる。
 初披露の「三百六十五歩のマーチ」でも「ワンツー!」の歌詞で拳を上げてもらう、という趣向をこらしたが、こちらも場を乗せるには絶好だった。

 以降、尻上がりに場は盛り上がる。いつも50分近く歌う場なので、25分過ぎに休憩タイムを設けようかとMCで探りを入れたが、「もっと聴きた〜い、どんどんやって!」との応え。結局休みなしで突っ走ることに。

 最前列の女性から突然飛び出した「たなばたさま」は、レパートリーにない曲。しかし、簡単な童謡なので1番なら何とか歌えると、即座にお応えした。
 後半のリクエストは、開始前に相談員のKさんからメモで渡されていたもの。ちなみに、「神田川」は「ぜひ聴きたい」とのKさんからの要望である。

 リクエストにも一通り応え、「上を向いて歩こう」で終わりにするつもりでいたが、いちど燃え上がった場は簡単に収まりがつかない。
 求められるままに予備曲を歌い続けたが、前回リクエストが出て歌えず、その後会得した「花笠音頭」で今度こそ終わりだろうと思っていたら、「たなばたさま」のリクエストを出した最前列の女性が、歌い終えたとたんに指を1本立てて「もう1曲お願い!」と叫ぶ。

 後半は力の入る曲を連発し、やや疲労感に襲われていたが、気力をふり絞って「東京ラプソディ」を歌う。
 このラスト曲が最高の盛り上がりで、サビの「楽し都〜♪」で聴き手から「ミヤコ〜♪」との合いの手が、何の打合せもなしに飛び出す。こんな経験は初めてのことだ。
 最後は声もかすれ気味だったが、ともかくも聴き手と歌い手とが一体感を持ち、楽しい時間を共有することができた。


 

ベストライフ清田・6月誕生会 /2015.6.14



 札幌南端にある有料老人ホーム誕生会イベントに出演。2007年に最初の依頼があってから、年1回ペースで招かれる施設で、今回が実に9回目。まるで職員か家族のような、長いおつき合いが続いている。
 片道およそ25Kmあって、車でも1時間弱を要する。昼食もそこそこに出発。裏道を通って順調に走り、開始15分前の13時45分に着く。

 施設側の催し物がまずあって、14時10分くらいから私の出番となる。聴き手は50名ほどで比較的広い場なので、PAは迷わず2台を使用した。

 足掛け9年も通っていると、知った顔も多数。まるで自宅で歌うような感覚だが、怖いのは「慣れ」による気の緩みと、聴き手に飽きられること。
 同じ介護施設系でも、デイサービスのように顔ぶれが激しく入れ替わる場なら、飽きられる不安はあまりないが、有料老人ホームやグループホームは入居者の大きな入れ替わりはないのが特徴である。
 数日前から過去のライブレポを読み返し、どのような構成で今回臨むべきか、慎重に対策を練った。

 昨年のライブレポに「次回はもっと古い歌もぜひお願いします」と、終了後に入居者から声をかけられたとあり、そうだったかと、いったん決めていた定番曲中心の構成に、大きな修正を加えることに。
 これまで冬眠状態にあった古い曲を揺り起こし、目下練習中の懐メロも思い切って歌ってみようと考えた。

 自分としては苦手な曲もあり、大きな冒険でもあったが、練りに練ったこの日のプログラムは以下の通り。(※は初披露)


「リンゴの唄」
「忘れな草をあなたに」
「君恋し」
「青葉城恋唄」
「幸せなら手をたたこう」
「たなばたさま」
「われは海の子」
「長崎の鐘」※
「エーデルワイス」
「旅の夜風」
「誰か故郷を想わざる」※
「東京ラプソディ」


 トップの「リンゴの唄」から始まり、12曲中8曲が私が生まれる以前の曲で、最も古い曲は1910年(明治43年)の「われは海の子」である。アクセントとして入れた新しい曲(あくまで他と比べて)は別にし、大半の曲に一緒に歌う方が続出。当初の不安は吹き飛んだ。
 冒頭の施設長さんの挨拶で、入居者の平均年齢は87歳であることを知った。昭和10年代に青春を送った世代である。なるほど、この時期の歌が受けるはずだ。

 実は「長崎の鐘」「旅の夜風」「誰か故郷を想わざる」は、他のデイサービスで以前にリクエストのあった曲だった。当時は全く歌えなかったが、その後苦労して会得した曲。後半にもってきたこともあって、いずれも強い反応があった。
 同じ経緯での候補として「野崎小唄」もあったが、残り3曲となった時点で聴き手に何が聴きたいか、ずばり曲名とさわりを歌って尋ねてみた。その結果、「野崎小唄」だけが脱落。古ければなんでもいい、ということではない。これは心に留めておきたい。

 ラストの「東京ラプソディ」では手拍子と歓声、そして笑顔が会場いっぱいに広がり、フィナーレに相応しい大変な盛り上がり。1週間前のデイサービスでも同じ傾向だったが、この曲は本当に強い。
 終了後も「懐かしい歌が聴けた」「涙が出たわ」と、しばし余韻が収まらない様子。「た〜のし都ぉ〜♪」と、ラスト曲のサビを繰り返し歌っている方もいた。

 今回つくづく思ったのは、「自分が歌いたい曲」「得意な歌」イコール「聴き手が聴きたい曲」では決してないということ。正直に書くと、歌った曲には苦手な曲やピンとこない曲も多く含まれている。しかし、聴き手の反応は過去9回の中でも、ベストに近いものだったように思える。
 リクエストをライブの中心軸にし、「聴き手の求めに応じて歌うこと」を最近の歌うコンセプトに据えているので、これも自然な流れなのだろう。