訪問ライブ顛末記


ベストライフ西・ひな祭 /2014.3.2



 隣区にある有料老人ホームのひな祭イベントに出演。依頼はごく最近だったが、大腸ガン関連検査日の谷間に、ぽっかりと予定が空いていた。
 施設そのものには、弾き語り活動を再開して間もない8年前にも2度うかがっている。その後担当者の移動などで途切れていたが、1月に歌ったばかりの系列の有料老人ホーム施設長さんが、内部移動で新施設長となり、その縁で依頼された。
 仕事と同じで、ライブ依頼も多くは人の縁でつながっている。手を抜かず地道に活動を続けていれば、輪は自然に広がってゆく。

 イベント開始は14時で、最初に施設側の催し物があり、私の出番は14時20分あたりから。春の訪れを意識した構成で、およそ30分で10曲を歌った。


「北国の春」
「うれしいひな祭り」
「真室川音頭」
「いい日旅立ち」
「幸せなら手をたたこう」
「みかんの花咲く丘」
「瀬戸の花嫁」
「サン・トワ・マミー」
「高校三年生」
「まつり」


 造影剤注入によるガン検査の副作用と、度重なる抜歯による消耗が重なったせいか、このところ喉の調子が思わしくなく、直前の練習でも声の伸びがいまひとつの感触だった。声が割れたり途切れたりしないよう、やや守りの歌唱になった印象は否めない。
 聴き手は職員を含めて60名ほど。過去のライブレポには、(全体的に大人しい印象)と記してあったが、それから8年を経て人や職員もすっかり入れ替わり、全く別の雰囲気になっている可能性もある。いろいろな意味で手探りの進行となった。

 不思議なことに、大人しい印象は8年前と全く変わっていないことに、歌い始めてすぐに気づいた。前半3〜4曲の手応えはまずまずだったが、どの施設でも受ける「幸せなら手をたたこう」の反応がまるで弱く、ちょっと困った。
 前回のレポで、(無理にニギヤカ系の曲で引っ張っても、反応は変わらない)とあったことを思い出し、ここは無理せず、予定通りに叙情系の曲を淡々と歌い継ぐ。

 当初はラスト前に「ここに幸あり」を歌うはずだったが、「高校三年生」あたりでひな祭りのお菓子が配られ、場がざわつき始めた。担当の方がやってきて、「あと1曲で終わらせてください」とささやく。どうやら、おやつタイム到来のようである。
 急きょ1曲とばして「まつり」で歌い納めとしたが、結果として最も盛り上がったのがこの曲だった。苦しいときに実に頼りになる曲で、これまで何度救われたことだろう。

 推薦してくれた施設長さんの顔をつぶさぬよう、そして揺れ動く体調と相談しつつ慎重に進めたライブだったが、どうにかボロを出さずに収められた。悪ければ悪いなりに時に応じてまとめる、それがこの日の収穫だったかもしれない。


 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2014.3.9



 20数キロ離れた、少し遠い市内のディサービスで歌ってきた。昨年7月にネット経由で初めて依頼された施設で、いわゆる「最も強い2度目の依頼」である。
 全国展開している施設で、過去にも同系列の施設で数多く歌わせてもらっている。新し目の曲を好む利用者層と、どこか相性のよさを感じる。

 前回も大変な盛り上がりだったが、その傾向をよく分析したうえで、春を意識した構成で臨んだ。

 開始20分前に到着し、10分前にスタンバイ。50名ほどの聴き手もすでに席についていたので、予定より早めの14時55分にスタート。以下の14曲を歌った。


「北国の春」
「花(滝廉太郎)」
「真室川音頭」
「リンゴの唄」
「年下の男の子」
「二人は若い」
「みかんの花咲く丘」
「浪花節だよ人生は」
「夜霧よ今夜もありがとう」
「青い山脈」
「かなりや」
「あの素晴しい愛をもう一度(リクエスト)」
「なごり雪(リクエスト)」
「まつり」


 1週間前の有料老人ホームと似た内容だが、施設の聴き手に合わせ、微妙に修正を加えている。叙情的な曲や洋楽を減らし、手拍子の出やすい明るめの曲を中心に、以下の入替えを行った。

「うれしいひな祭り」→「花(滝廉太郎)」
「いい日旅立ち」→「リンゴの唄」「年下の男の子」
「幸せなら手をたたこう」→「二人は若い」
「瀬戸の花嫁」→「浪花節だよ人生は」
「サン・トワ・マミー」→「夜霧よ今夜もありがとう」
「高校三年生」→「青い山脈」「かなりや」

 ステージに立つと、前回となぜか微妙に空気感が異なる。開始前に進行の方が「昨年も歌っていただきましたが、覚えている方」と振っても、会場の反応はゼロ。どうやら前回とは曜日が異なり、利用者の大半が入れ替わっていたようだ。
 ともかくも歌い始めると、出だしの数曲は反応がいまひとつの印象だった。場がようやく乗り始めたのは、「リンゴの唄」あたりから。過去の実績が少なく、リスクの大きいアイドル系ソング「年下の男の子」で大いに湧く。状況次第では1番でやめるつもりでいたが、歌ってよかった。

 その後は順調に進む。「なるべく長く」との要望があったので、12曲を当初準備していた。11曲終わった時点で「あと2曲くらいで終わります」と伝え、不動のラスト「まつり」以外に何かもう1曲…、と電子譜面を繰っていたら、その気配を察した進行係のTさんが、「菊地さん、実はフォークのリクエストが事前にあったのですが、歌っていただけませんか?」と尋ねてきた。
「何でしょう?曲にもよりますが」と応じると、実は「あの素晴しい愛をもう一度」が聴きたいとの声が複数ありました、と言う。一瞬耳を疑ったが、どうやら間違いない様子。「本当に歌っていいんですか?」と確かめつつも、指ではもう譜面を検索していた。
 探しながら、「実は1年前にも《なごり雪》のリクエストが飛び出して、びっくりしたんですよ」と伝えると、《なごり雪》が演れるんですが、ならばそれもぜひ聞きたい、と重ねてのリクエスト。思ってもみなかったフォークの連発である。

 実はこんなこともあろうかと、先日電子譜面内の全レパートリーを、50音順に6分割したばかり。「ALL4_TaNa」などのように、それぞれ頭文字を含むファイル名をあて、検索しやすいよう1ファイル内の曲数も100前後に抑えてあった。
「あの素晴しい愛をもう一度」は10年近く人前では歌ってないが、譜面は確かに「ALL1_A」のファイルに入っている。20秒ほどであっさり探し当てた。
 半信半疑だったが、いざ歌ってみると大変な盛り上がりよう。続けて歌った「なごり雪」も同様の反応。折しも窓の外には春の雪が舞い始め、絶好の借景である。ツキも味方していた。

 一種異様な雰囲気のなか、ラストの「まつり」になだれ込む。確実に計算できる曲で、介護施設系ライブのラストは、当分この曲でいいような気になってきた。
 終わってみれば50分も歌い続けていた。進行とは別の職員が近寄ってきて名刺を差し出され、来月別の施設に移動するが、ぜひそちらにも来ていただけないか、との要望。快諾した。
 ディサービスは曜日によって利用者が変わるので、うまくやり繰りすれば「聴き手に飽きられる」という最大の不安を回避できる。新しい曲への抵抗感も少なく、今後の進むべき方向かもしれない。

 施設にもよるが、ディサービス系の場合は、最初から定番フォークをプログラムに1曲入れても、充分いける気がする。「介護施設でフォーク」という足音は予想よりもはるかに早く、確かな足音でディサービスからやってきた。


 

新川エバーライフ・4月誕生会 /2014.4.16



 隣区にある介護施設誕生会余興に出演。昨夏にネット経由で依頼され、やはり誕生会で歌っている。自分としては、やや不本意な出来だったので、2度目の依頼があったときは正直うれしかった。
 当時のライブレポを読み返し、反省点を慎重に修正して準備した。

 場所は自宅から車で25分。先方の指定通り、14時ちょうどに着いた。ステージが設けられた専用ホールがある恵まれた施設だが、特別養護老人ホームとデイサービスの利用者が半々という構成で、対象の絞り込みが難しい。

 予定ぴったりの14時30分に開始。最初に施設側のイベントがあり、生ピアノ演奏での「誕生日の歌」を全員で歌う。14時36分から私のステージが始まった。

 聴き手はおよそ100人。前回、音が届きにくい印象がしていたので、この日は機材を一部変え、ミキサーの代りにエフェクター(ZOOMのRFX-300)を経由して、メインPA(ローランドCM-30)につないだ。
 自宅で充分にテストを重ねてはいたが、実戦で使うのは初めて。しかし、前回よりは音の響きが優っているように感じ、歌いやすかった。

「アンコールを含めて、演奏時間は30分を厳守してください」と、事前に念を押されていたので、電子譜面内蔵の時計を確認してからスタート。ぴったり30分で以下の11曲を歌った。


「北国の春」
「花(滝廉太郎)」
「真室川音頭」
「リンゴの唄」
「瀬戸の花嫁」
「幸せなら手をたたこう」
「みかんの花咲く丘」
「おかあさん(森昌子)」
「ここに幸あり」
「花 〜すべての人の心に花を」
「丘を越えて(アンコール)」


 前回は慣れないステージと予想外の大空間、30度近い暑さ、難しい聴き手の構成などの悪条件下で、かなりの苦戦を強いられたが、今回は2度目ということもあってか、ステージに立ってみると会場が狭く、そして明るく感じられた。気持ちに余裕があった証しであろう。
 全体的に場が大人しい印象が前回したので、無理に盛り上げようとせず、淡々と誠実に歌うよう努めた。

 今回のプログラムは1週間前にFAXで送信し、事前了解を得たもの。曲目と曲順は印刷されて会場に配られている。進行時間の件といい、緻密な運営姿勢を感じる。
 4曲目の「リンゴの唄」はプログラムの裏に歌詞が印刷されていて、全員で歌うという趣向。5曲目の「瀬戸の花嫁」と7曲目の「みかんの花咲く丘」は前回と重複しているが、手応えがよかったので、あえて歌った。

 最初は大人しかった場も、順に会場を見回しつつ歌い進むうち、じょじょに反応がよくなってきた。「幸せなら手をたたこう」は時に外してしまうこともある歌だが、予想外にみなさんが乗ってくれた。

 ラストの「花」では、後奏の部分で「本日はありがとうございます、みなさま、これからもどうぞお元気でお過ごしください」と、ギター音に重ねて挨拶。ここで場が一気に湧いた。
 以前に自主企画ライブのラストで、「ヘイ・ジュード」の曲に重ねてやった技だが、介護施設では初めての試み。前日にふと思いついたものだが、これは使える。

 前半で少しMCを入れすぎたせいか、後半で時間が押してきた。間奏などでうまく調整し、ラストの「花」を歌い終えた時点で時計は15時3分。開始27分が経過していて、打合せ通り「アンコール3分」を残した。
 終わって舞台袖にいた進行のNさんを見ると、期せずして会場から「アンコール!」の声。打合せでは、Nさんからアンコールを出すことになっていたが、予想外の展開である。しかし、アンコールには違いないので、準備してあった「丘を越えて」をありがたく歌わせていただく。

 周到な準備のかいあって、出来は前回を凌いでいたと思う。全員とは言いがたいが、喜んでくださった方も多数いて、手応えを感じた。「最も強い2度目の依頼」を無事に乗り切ったので、「高くて険しい3度目の依頼」も夢ではない気がする。


 

ベストライフ清田・6月誕生会 /2014.6.15



 自宅から往復50キロも要する、市内では最も遠いと思われる有料老人ホームの誕生会余興で歌ってきた。縁あって2007年から毎年招かれる施設で、数えてみたら今回で8回目。実に長いおつき合いが続いている。

 月初めの猛暑から一転し、梅雨のような空模様が延々続いていたが、すでに暦は6月中旬で、札幌では初夏の幕開けを告げる北海道神宮祭が始まっている。歌は夏らしいものを中心に準備した。

 14時から誕生会のイベントが15分ほどあり、その後私の余興となった。およそ35分で12曲を歌う。


「憧れのハワイ航路」
「青春サイクリング」
「夏の思い出」
「ちゃっきり節(初披露)」
「知床旅情」
「バラが咲いた」
「東京ドドンパ娘」
「瀬戸の花嫁」
「われは海の子(歌いながら歌詞指導)」
「ケ・セ・ラ・セラ」
「花〜すべての人の心に花を」
「りんごの木の下で」


 肌寒い陽気で、衣装には直前まで迷った。長袖シャツの上にカーディガンをはおり、シャツ襟の外にストールを巻いて、同系色のバンダナでまとめてみたが、いざ歌い始めると、少し暑さを感じた。自宅でのリハではちょうどよかったので、どうやら弱い暖房が利いていた感じだ。

 歌い慣れた施設だが、足掛け8年も定期的に通っていると、顔ぶれもゆっくりと変わってゆく。転勤移動のある職員さんたちはもちろんだが、入居者の顔ぶれも例外ではない。見慣れた顔がふっと消えていたりもする。自分の親のことを考えれば分かるが、むしろ変わって当然で、それが人生というものだろう。
 とはいえ、ずっといつも同じ席で熱心に聴いてくださる方も確かにいて、歌いながら目で語りかけると、頬笑みをそっと返してくれたりする。長く歌っていると、こんなことも喜びのひとつである。

「毎度同じ歌」というパターンを避けたい気持ちもあって、今回は普段あまり歌わない曲もかなり入れた。
「青春サイクリング」「ちゃっきり節」「東京ドドンパ娘」「ケ・セ・ラ・セラ」「りんごの木の下で」あたりがそれで、多少不安がないでもなかったが、思っていたよりも反応はよくて、安心した。

 特にMCでお願いはしていなかったが、会場から自然に歌声が流れてきた曲も複数あった。
「夏の思い出」「知床旅情」「バラが咲いた」「瀬戸の花嫁」「われは海の子」「ケ・セ・ラ・セラ」あたりがそれで、叙情的な歌がいつも好まれる場なので、ほぼ予想通りの展開である。
 ただ、「ケ・セ・ラ・セラ」を一緒に歌う声が聞こえてきたときは、正直驚いた。介護施設では初めて歌ったが、全体の1曲程度なら、この種の曲も今後許されると自信を持った。

 終了後、数人の入居者の方から声をかけていただく。「いつもよい歌をありがとうございます」「また歌いにきてくださいね」「次はもっと古い歌もぜひお願いします」等々。
 好意的な中にも、今後のライブへの要望もちゃんと入っている。ありがたいことだ。確かに、バタ臭さが過ぎたかもしれない。次回にむけての反省としたい。


 

ツクイ札幌稲穂・訪問ライブ /2014.6.22



 往復40キロほどある隣区のデイサービス・サマーライブで歌ってきた。昨夏にネット経由で初めて依頼され、過去最高とも思える盛り上がりをみせた施設で、その後今春にも依頼が舞い込み、歌ったばかり。その3ヶ月後に再び招かれた。
 いわゆる「高くて険しい3度目の壁」を軽々と乗り越えてしまったわけで、そのこと自体は大変うれしかった。だが、さすがに短期間でこうも依頼が頻繁だと、歌う側としては逆に不安になる。
(利用者に飽きられてしまうのではないか…?)

 しかし、先方はぜひにと熱心である。「請われるうちが華」と割り切り、結局お受けすることにした。

 とはいえ、なるべく過去ライブとの重複曲は避けたかった。幸いに前回は春メニューで歌っている。今回は全面的に夏らしい構成で臨むことにした。「サマーライブ」とは、そんな打合せのなかで施設側が命名してくれた名前。
「今後、もし継続的にご依頼いただけるなら、季節ごとに」ともお願いしてあるので、その意味もある。もしも「次」があったなら、「オータムライブ」というタイトルになるはずだが、本当にそうなるかは、神のみぞ知る領域のハナシ。

 ともかくも、車を飛ばして開始15分前の14時45分に先方に到着。10分で準備を終えたが、開始前のわずかな時間で、早くもリクエストの話となる。
 希望は、菅原洋一、フランク永井の歌。どちらもレパートリーにあるので、事前に電子譜面を繰って、曲を準備しておいた。  そうするうち、別の利用者から「ダーク・ダックスはグループですから、無理ですよね?」と尋ねられる。「いえ、ソロでよろしければ歌いますよ」と応じる。

 そうするうち、開始時間となる。まずは私自身の構成による12曲を35分で歌い、その後アンコールとしてリクエスト曲を10分で3曲歌った。

「憧れのハワイ航路」
「知床旅情」
「お富さん」
「青春サイクリング」
「ちゃっきり節」
「二人は若い」
「バラが咲いた」
「浪花節だよ人生は」
「恋する夏の日」
「われは海の子」
「東京ドドンパ娘」
「月がとっても青いから」
〜アンコール&リクエスト
「知りたくないの」
「君恋し」
「銀色の道」


 利用者は週1〜3回の範囲内で曜日ごとに毎日入れ替わるそうで、これまでの2回で見知った顔もあれば、今回が初めての方もいる。嗜好がつかみにくく、毎回雰囲気が変わる難しさがある。前2回比べて、今回は全体的に場が大人しい感じがした。
「知床旅情」「われは海の子」では歌いながら歌詞指導をし、「二人は若い」では、曲間の伴奏中に合いの手を聴き手にお願いするなど、場をつかむ工夫は怠らなかったが、冷静に判断して、3回の中では今回が最も盛り上がりに欠けた印象はある。

 反省点として、「夏」に固執せず、もう少し定番曲を入れるべきだったかもしれない。(たとえば「高校三年生」「青い山脈」など) 「夏の民謡」として歌ったはずの「ちゃっきり節」の反応が弱く、拍子抜け。先週別の施設で歌った際もそうだったが、この曲は北海道人にとって、馴染みが薄い感じだ。「北海盆唄」などが無難だった。

 場が最も盛り上がったのは、リクエストタイムだった。「知りたくないの」はチカチカパフォーマンスでしばしば歌っているが、実は洋楽系の曲である。菅原洋一のリクエストが介護施設で出ること自体が、オドロキ。

「君恋し」「銀色の道」は久しぶりに歌ったが、無難にこなした。一度歌いこんだ曲は、たとえ数年のブランクがあっても、本能的に歌えるもの。
 なかでも「君恋し」の反応が抜群。「イニシエの有名歌手の曲は、最低1曲をレパートリーに」と自らに課しているが、地道な努力が実った。まだ多少の「欠け」(たとえば、都はるみや五木ひろしが苦手、など)はあるが、今後もコツコツとレパートリーを増やしたい。


 

あろは=遊遊デイサービス・夏祭り1 /2014.7.28



 車で15分ほどの距離にあるデイサービス夏祭りで歌ってきた。依頼は2ヶ月前にネット経由であり、先方はすでにブログ等でセルフレポを詳細に読んでいる様子である。
 開設後数年で、まだ一度もボランティア演奏の類いを頼んだことはないが、1週間にわたる夏祭りの計画があり、その中でぜひ歌って欲しい、との内容だった。

 あいにく先方の希望する夏祭り初日は、すでにシルバー大学音楽講師のスケジュールで埋まっていた。数度のメールやり取りのあと、シルバー大学終了後に中2日あけ、翌週の月曜火曜の2日間連続で歌わせていただくことになる。
 初めての施設なので、用心して事前に現地調査に行った。新築間もない垢抜けしたデザインの施設で、会場となるホールが屋根まで吹き抜けになっている。いかにも音響効果がよさそうな印象がした。

 PAは大型のCM-30を使うことを即断。ステージの位置や椅子の配置、進行や選曲の打合せを、その場で済ませる。

 当日は開始20分前の14時40分に到着。予定通り15時ちょうどから歌い始め、およそ40分で、以下の14曲を歌った。


「憧れのハワイ航路(リクエスト)」
「お富さん」
「アロハ・オエ」
「知床旅情」
「リンゴの唄」
「二人は若い」
「バラが咲いた」
「浪花節だよ人生は」
「われは海の子」
「高校三年生」
「星影のワルツ」
「月がとっても青いから」

「青い山脈(リクエスト)」
「矢切の渡し(リクエスト)」


 事前に先方から出た要望は、1曲目に「憧れのハワイ航路」を歌うことだけ。実はこの曲は施設名にちなんだ曲で、毎日開始時に必ず全員で歌っているという。
 いざ歌い始めると、いきなり手拍子と共に、ヘルパーさんや利用者の方による「振付け」が始まる。あとで聞くと、体操をかねたオリジナルの振付けをつけて歌っているそうだ。なるほど。

 聴き手は職員さんを含めて40名弱。会場の天井高が程よく、予想通り抜群の音響効果。初めての施設で選曲も含めて手探りで進めざるを得なかったが、事前調査による印象から、ニギヤカ系の曲を多めに選んだのは正解で、終始手拍子の飛び出す楽しい気分でライブは進んだ。

 会場の雰囲気がさらに盛り上がったのは、6曲目の「二人は若い」から。歌詞に登場するかけ声の返答を、聴き手にアドリブでやってもらうという、「聴き手参加型」の希少な曲だが、「あな〜た」との呼びかけに、聴き手とヘルパーさんが大喜びで返答。ついには踊りながらステージ前に飛び出す人まで現れた。
 こんな盛り上がりはそう滅多にあるものではなく、こうなればさらに乗ってもらうのが得策。
「どうぞ遠慮なくステージ前で踊ってください」と声をかけると、以降の曲には全てヘルパーさん5人によるアドリブの即興ダンスがつく、という事態になった。

 私自身はダンスのバック演奏のような立場になり、「じっくり聴いてもらう」という雰囲気からはやや離れたが、主役はあくまで利用者のみなさん。楽しんでもらえれば、それでいいのだ。

 およそ35分で当初の予定分12曲を歌い終える。その後、アンコールをかねたリクエストタイムとなったが、飛び出した5曲のうち、譜面の準備があった2曲を歌う。
 ちなみに、応えられなかった3曲は、「旅の夜風」「誰か故郷を想わざる」「さざんかの宿」で、このうち「旅の夜風」「さざんかの宿」は、帰宅後さっそくレパートリーに加えた。こうした素早い地道な対応が、実はあとで効いてくるのだ。

 終了後、多数の利用者の方から「楽しかった〜」「知っている歌ばかりでよかった」との声。施設長さんを始めとする職員さんからも、大変喜ばれた。
 この日の収穫は、聴き手とヘルパーさんの両方と、うまくコミュニケーションをとりつつ進められたこと。会話形式のMCに大きな比重をさばいたシルバー大学講義での経験が、無駄にはなっていないことを知った。

 翌日も同じ場所で同じ時間にライブがあるが、セットリストも実は同じである。デイサービスは多い方でも隔日利用なので、曜日が変わると、利用者もガラリ変わる。聞けば、ヘルパーさんも全員が代わるらしい。同じ曲構成でも、何ら問題ないのだ。
 ひょっとすると今日とは全く違う反応があるかもしれず、怖さ半分、楽しみ半分の気持ちだ。


 

あろは=遊遊デイサービス・夏祭り2 /2014.7.29



 デイサービス夏祭りイベント、2日目に出演。同じ会場で同じ時間から始まったが、2日目ともなると歌う私も迎える施設側もすっかり慣れ、開始時刻よりもかなり前に、準備万端整ってしまった。
 そこで予定を少し早め、14時55分から歌い始めることになった。

 気分を変えたかったので、衣装を前日とはガラリ変えた。長袖からリメイクした茶系の半袖シャツに、同系色のバンダナ。襟の外にアクセントとして白系のストールかバンダナを巻きたかったが、あいにく手持ちがない。
 妻のを借りようにも、やはり持っていないという。端布箱を漁ったら手頃な布を見つけたので、前夜に急きょストールに仕立てあげた。

 開始直前に派手なコスプレ衣装の女性2人から「昨日はどうもありがとうございました」と頭を下げられたが、一瞬誰だか分からない。そもそも昨日のヘルパーさんは全交代のはずだったが、なぜか2人が今日も参加しているのだという。
 3人目のコスプレ女性は、当初メールで打合せをしていたSさん。下見の際にも合っているが、あまりにもメイクが派手で、見分けがつかなかった。

 プログラムは前日と同じだが、この「2日続けて参加」のヘルパーさんが、段取りをすっかり把握しているので、1曲目からいきなりダンスが飛び出す展開になった。
 重複するが、15時30分までの第1部の曲目は、以下の12曲。


「憧れのハワイ航路(リクエスト)」
「お富さん」
「アロハ・オエ」
「知床旅情」
「リンゴの唄」
「二人は若い」
「バラが咲いた」
「浪花節だよ人生は」
「われは海の子」
「高校三年生」
「星影のワルツ」
「月がとっても青いから」


 聴き手は完全に入れ替わっていて、前日よりはやや大人しい印象がしたが、ヘルパーさんの張り切りダンスが、場を圧倒的に支配した。

 第1部終了後に、「何かリクエストありますか?」と尋ねても、前日と違って特に声はない。そこでヘルパーさん主導で、普段よく歌っている曲の中からリストアップしてもらい、あとは時間の許す限り、私のストックから適当に見繕って歌うことになる。
 結果として20分で6曲を「第2部」として歌う。前日リクエストが出て対応できなかった「さざんかの宿」に別の方から再度のリクエストがあり、前夜急きょ会得していたのが、思いがけず活きた。


「東京ラプソディ(リクエスト)」
「皆の衆」
「おかあさん(森昌子)」
「さざんかの宿(リクエスト・初披露)」
「瀬戸の花嫁」
「青い山脈」


 時計を見ると15時50分を回っている。何やかやで合計18曲、1時間近くも歌い続けていた。幸いだったのは、喉が絶好調に近かったこと。30度を超す暑い日だったが、まだまだ歌える余力があった。

 前日よりもさらに「お祭り騒ぎ」の気分に満ちた場となったが、盛り上げ役としての役目は十二分に果たせたと思う。
 ライブによって求められるものは微妙に違う。それを素早く察知し、こなすことだ。またまた経験値が活きた。