訪問ライブ顛末記


ホームのどか・クリスマス会 /2012.12.22



 12月都合6本目となるライブを近隣のグループホームにて実施。ギター弾き語り活動を本格再開した8年前から長いおつきあいのある施設で、以降年に2〜3回ペースで、途切れることなく歌わせていただいている。
 今日は毎年恒例のクリスマスライブだったが、開始はお昼12時で、15分前には会場入りするつもりでいた。ところが目覚ましを見て3時間前に起きたつもりが、階下の時計ではすでに11時を回っている。調べると、目覚まし時計の電池切れという前代未聞の失態。

 幸いに妻が休暇で家にいたので朝食の準備を頼み、オニのように素早く動いて11時30分にはマイク前で軽いリハーサルを始めた。
 起きて30分では普通、まともな声はでない。しかも季節は喉にとって最悪の冬である。新しい曲を中心に恐る恐る歌ってみたが、まるで奇跡のように声は出た。状況によっては数曲のキーを下げるつもりでいたが、問題なしと判断。数分で止め、荷物をまとめて早々に家を出た。

 自宅から車で5分で着く施設だったことも幸いし、12時10分前に滑りこむ。どうにか穴を開けずに済んだ。
 昼食をかねたイベントなので、職員さん手作りのごちそうが並んでいるが、私の出番はいつも1番なので、軽く飲物をいただく程度に自重。ほぼ予定通り、12時35分から歌い始めた。

 広い食堂だが、50名を超える客で立錐の余地もない。それを見越し、ギターは強めの音がでるヤマハのエレアコを選択した。
 最近になって入居者や職員さんの入れ替りがあり、場の空気が当初とは少し変わった。以前は静かな落ち着いた歌が好まれたが、最近は手拍子の出るニギヤカ系が好まれる傾向にある。そうした状況の変化を配慮し、20分で以下の8曲を歌った。


「ウィンターワンダーランド」
「年下の男の子」(初披露)
「瀬戸の花嫁」
「北国の春」
「ひなげしの花」(初披露)
「バラが咲いた」
「東京ラプソディ」
「We wish you a Merry Christmas」


 1曲目からいきなり手拍子が飛び出したが、これは予定通り。そのまま初披露の「年下の男の子」へなだれ込み、「ちょっと手をお休めください」と前置きし、この日唯一アルペジオで弾いた「瀬戸の花嫁」へと続けた。
 まだ食事中の方も多く、暗黙にでも手拍子を要求する歌の連発はまずい。以降の2曲も手拍子系ではない曲を選択した。

 ラスト3曲は逆に手拍子をうながす選曲。(とっても、一切催促はしてないが)「バラが咲いた」は普通アルペジオで弾くが、あえてゆったりしたストロークで弾いたら、予想通り穏やかな手拍子が自然に出た。
 初披露の2曲のうち、「年下の男の子」は使える。ただ、「ひなげしの花」はイマイチの反応。同じアグネスチャンの「草原の輝き」はイベント系の場でしばしば歌い、使える曲だったが、曲が変わると反応がガラリ変わるのはよくあること。無理しないほうがいいかもしれない。

 食事中の歌なので、聴き手参加型の曲は入れていない。お酒は出てなくとも、宴席での選曲は非常にデリケートで難しいのである。

 その後、いつもご一緒するフォークデュオ「エイプリル」の歌、入居者有志の歌、入居者のご家族の歌、ビンゴゲームと続き、進行表通り14時50分にピタリ終了。
 花束やお菓子、ビンゴの景品などたくさんいただき、帰宅後にフルーツケーキを妻と美味しくいただく。今年45本目となるライブを無事に終えた。2012年が静かに暮れてゆく。


 

笑顔の村音楽祭・誕生会 /2013.1.26



 5〜6年前に2度招かれた隣区のグループホームから再度の依頼があり、1月の誕生会余興として歌わせていただいた。いわゆる「3度目の壁」という、自ら名づけた高いハードルを越えた、5つ目の施設である。
 最初の依頼と同様、今回もネット経由で打診があった。実は担当のNさん、昨夏のチカチカパフォーマンスにも来てくれている。自身もバンドを組んで音楽活動をされていて、そんな経緯から、今回の依頼も二つ返事でお受けした。

 5年前の場所から施設が移転していて、事前にグーグル・ストリートビューで入念に場所のチェックをした。大雪で道路事情が悪いので、探す時間は最小限に留めたい。
 かなり余裕をみて家を出たが、幹線道路を選んだせいか、流れはスムーズ。開始予定時刻の25分も前に着いてしまった。駐車場で少し休んだあと、新築したばかりという、広くてきれいな施設に入る。

 施設側の準備などの都合で、ライブ開始は13時10分。事前にNさんと内容について入念に打合せ、今回は予め聴きたい曲のリクエストを募ってあった。
 幸いなことに、希望曲はすべてレパートリーの範囲。それらを含め、およそ45分で15曲を一気に歌った。(※はリクエスト、◎は初披露)


「北国の春」※
「真室川音頭」
「草原の輝き」
「高校三年生」※
「お富さん」
「故郷」※
「きよしのズンドコ節」※
「函館の女」
「憧れのハワイ航路」※
「あなたに笑顔」(オリジナル)◎
「浪花節だよ人生は」※◎
「月がとっても青いから」
「誕生日の歌」※
「青い山脈」※

〜アンコール
「二人は若い」


 聴き手は職員も含めて、20名弱。5年も経つと入居者や職員の顔ぶれもガラリ変わっていて、知っている顔のほうがむしろ少なかった。
 歌の傾向は前回と同じニギヤカ手拍子系で、と頼まれていたが、いざ歌い始めると、いまひとつ場のノリが弱い印象がした。このままではまずいと、私にしては珍しく曲間で積極的に声をかけてみる。すると、少しずつ場がほぐれてきた。最初は職員だけだった手拍子も、じわじわと会場全体に広がり始める。

 意外だったのは、この日唯一アルペジオで弾いた「故郷」の受けが非常によかったこと。この曲は手拍子系ではなく、完全な叙情系である。リクエストがなければ、たぶん歌わなかっただろう。
 歌い終わると、「いい歌だね〜」と会場からため息がもれたほど。メンバーが変われば、場の空気も変わる。結果論だが、もう1曲くらいこの傾向の歌があってもよかった気がする。

「前回は確か、歌に合わせて踊り出した方もいましたっけ」と振ると、「みなさん、遠慮なく踊ってください」と、すかさずホーム長さんがフォロー。すると「憧れのハワイ航路」の途中から本当に踊りだす方が現れ、場の盛り上がりはピークに。
 以降、その勢いでラストへとなだれこむ。

「青い山脈」を全員で歌って終わりのはずだったが、終了の挨拶をしても誰ひとり席を動かず、場が妙に収まらない。いわゆる「アンコール」の気分が満ちていたのだった。
 そこで聴き手参加型の決め歌、「二人は若い」で場をまとめる。途中でも「誕生日の歌」を急きょリクエストで歌ったりし、ライブは曲数も時間も予定をかなり超えたが、喜んでいただけたので、歌い手としては満足である。

 この日唯一歌ったオリジナル「あなたに笑顔」は、8年前に作った介護施設訪問系オリジナル「あなたにメロディ」の曲だけを活かし、歌詞に施設名を入れて新たに作り直したもの。職員さんの視線で歌ったもので、施設側には大受け。「職場のテーマソングとして歌いたいので、ぜひ音源を」と、後日メールで連絡があった。
 大変ありがたく、嬉しい話である。新たに録音し、CDに焼いて差し上げることになった。チカチカパフォーマンスで頒布しているオリジナルCDで培ったノウハウが役立ちそうだ。

 終了後、みなさんと共に美味しいケーキと珈琲をご馳走になる。寒さや多忙で喉の調子はいまひとつで、時折声が途切れそうにもなったが、一部の曲で直前にキーを半音下げるなどして対処。致命的なトラブルは何とか回避できた。
 これから3月くらいまで、喉を傷めやすい危険な気候がしばし続くが、節制に努めて乗り切りたい。

 ところで、この日は出かける直前に譜面データを入れてある中華Padの調子が突然悪くなり、ちょっと慌てた。「マイクロSDカードが破損していて、データが読めません」という見慣れぬメッセージが出てしまい、譜面が全く表示されないのだ。
 オフにしてカードを抜き取り、PCに差し込んでみると、普通に読める。つまり、カードには異常がないことになる。すると中華Padの読み取り機能に問題ありか?

 念のためもう一度やってみると、今度は普通に認識した。仮にダメでも、譜面ファイルをメール添付で自分宛に送り、それを読んでやれば対処できるが、出かける前に中華Padを起動させ、必ず譜面を表示させてから出発するよう心がけておいて正解だった。
 依頼型ライブの場合、その日のセットの紙譜面も必ず別に用意する。電子譜面は便利だが、万が一のトラブルの場合、致命的なダメージをこうむる。バックアップ体制は必須。


 

ホーム延齢草・ひな祭 /2013.3.1



「菊地くん、お願いがあるんだけど…」と、小学校時代の恩師から電話があったのは1ヶ月ほど前のこと。ご主人が通所で利用している介護施設の雛祭りイベントで、歌ってもらえないか、とのことだった。
 50年ぶりの同窓会で一昨年に再会して以来、私のライブに何度もおいでいただき、全道展会員である先生の絵の展覧会には、欠かさず顔を出している。

「交通費や謝礼は一切出せないという条件なのよ」と、先生は頼みにくそうな口ぶり。病院が主体の施設となると、条件としてはどこも完全ボランティアだ。
 そもそも私の活動がボランティアを旨としたものなので、歌を評価してくれての依頼であれば、手弁当も厭わない。ましてや依頼主が小学校の恩師である。一も二もなくお受けした。

 施設の場所は自宅から30分足らず。都心を経由しないので、渋滞の恐れはないが、前日にギター内ピックアップの電池が切れてしまったので、1時間前には家を出て、途中の100円ショップで買うことにした。
 開演は14時だったが、15分前には余裕で着いた。この日は介護施設系ライブでは初めて赤いセーターと赤いバンダナで衣装をまとめた。施設内には赤い毛氈を敷き詰めた立派なお雛様が飾ってあったので、場の雰囲気にはマッチしていたと思う。

 ホーム長さんの挨拶などあって、14時5分からライブ開始。およそ30分で以下の9曲を歌った。(※はリクエスト)


「うれしいひな祭り」※
「真室川音頭」
「リンゴの唄」※
「宗谷岬」
「荒城の月」※
「二人は若い」
「みかんの花咲く丘」
「月がとっても青いから」
「青い山脈」※
〜アンコール
「北国の春」


 ステージは大きな窓を背にした広間の一角で、聴き手からは逆光で見えにくく、歌い手からは電子譜面搭載の中華Pad液晶が光って見えにくいという悪条件だが、この種の施設ではよくあること。事前に液晶の角度を入念に調整して備えた。

 聴き手は職員を含めておよそ20名。事前にホーム長さんと選曲に関して打合せたが、なぜかマイナー調の静かな曲が多い。ニギヤカ手拍子系よりは、唱歌系の穏やかな曲を好む傾向ということで、リクエストもそれに沿ったものである。
 こちらの選曲で全体のメリハリをつけるということになったが、いざ歌い始めると、予想以上に場が大人しい。2曲目の「真室川音頭」は普通どの施設でも手拍子が飛び出すが、最後まで静かなままだった。

 あとで聞いたところによると、ギター弾き語りの訪問ボランティアは初めてだったそうで、普段は職員がアカペラで歌をリードしているのだそう。この日のPAは乾電池式のごく小型のものだったが、初めて目の前で生の弾き語りを聴き、その迫力に皆が驚いてしまったらしい。
 場の反応がようやく生き生きし始めたのは、「荒城の月」あたりから。いつもとは違う雰囲気を察知し、珍しくMCを長めにとって場の気分を和らげようとしたが、この試みはある程度成功した。

 聴き手巻き込み型の「二人は若い」で完全に場をつかみ、「みかんの花咲く丘」では、ほぼ全員が一緒に歌ってくれた。そのまま一気にラストになだれ込み、終了の挨拶を済ませたが、どうにも場が静まらない。
 くしくも職員さんの間から「アンコールはないんですか?」。それを機に、会場のあちこちから「アンコール!」の合唱。施設系ライブでは進行の都合もあって、あまりアンコールは出ないが、ここではOK。ありがたく歌わせていただいた。

 終了後、食堂の一角に案内され、美味しい抹茶と桜餅をごちそうになる。ホーム長さんからは、「こんなに素晴らしいとは思わなかった」と、別の病院系施設でのライブを打診される。
 恩師のO先生にも大変喜んでいただく。何より、私を推薦してくださった先生の顔をつぶさずに済んだことを、まずは喜びたい。


 

ツクイ札幌八軒・訪問ライブ /2013.3.10



 暴風雪警報発令のなか、かねてからネット経由で依頼されていた隣区のデイサービスセンターに歌いに行った。
 朝起きると風雪はさほどでもなかったが、午後から天候が急変。玄関前にはあっという間に吹き溜まりができた。前日の除雪で再び腰を傷めてしまたこともあって、除雪せずに強引に車を出したら、案の定雪にはまって動けなくなった。
 スコップで車輪の周囲だけ雪をどかし、勤めから戻っていた妻に車の後押しを頼む。出た勢いでエンジンを吹かし、吹き溜まりを一気に突っ切った。その後、幹線道路を選んで進み、どうにか開始15分前に施設に滑りこむ。

 初めて行く施設だったが、予定よりも聴き手が増え、会場には40人近い人があふれている。「弾き語りボランティアの方が来ます」と告知したら、しばらく来てなかった方が続々とやってきたのだという。

 デイサービスでのライブは久しぶりだった。通所の施設なので、介護度の低い元気な方が多い。嗜好も多様で的を絞りにくく、かっては苦手としていたが、活動も足掛け10年目に差し掛かり、経験値も積んだ。どうにかやれるだろう。

 14時ちょうどから開始。アンコールを含め、およそ40分で以下の13曲を歌った。


「北国の春」
「瀬戸の花嫁」
「知床旅情」
「真室川音頭」
「リンゴの唄」
「宗谷岬」
「二人は若い」
「みかんの花咲く丘」
「高校三年生」
「月がとっても青いから」
「青い山脈」
〜アンコール&リクエスト
「川の流れのように」
「なごり雪」


 春間近ということで、構成は3月上旬実施の介護施設系ライブに準じた。初めて歌う場なので前回の反省を踏まえ、ニギヤカ手拍子系の曲は中盤に配置。様子を探るように歌い進めたが、全体的に反応がよかったのは、大人しめの叙情的な歌だった。

 一緒に歌ってくれる方も多数いて、調子よく進んだが、中程で職員さんから突然声がかかる。「すみませんが、美空ひばりの歌を何か、という声が挙がってますが、可能でしょうか?」
 要するにリクエストなのだが、まだプログラムは半分ほど残っている。予定分を終了後にアンコールとして歌わせていただきます、とその場をおさめた。

 美空ひばりは全く予定になかったが、電子譜面を検索すると「川の流れのように」がすぐに出てきた。しばらく歌ってなかったが、この歌はほぼモノになっている。リクエストということもあって、場の反応は非常によかった。
 無事に歌い終え、ヤレヤレと撤収にかかろうとしたら、「すみませんが、もう1曲リクエストを、という声があるのですが…」と、担当のSさんがすまなそうに重ねて言う。

 なんでしょうか、と問うと、実は「なごり雪」をお願いしたいそうです、とSさん。一瞬耳を疑ったが、紛れもなく利用者の方のリクエストだった。時節柄ピッタリの曲ではあるが、まさかディサービスで「なごり雪」とは…。
 当惑しつつも、MCでつなぎながら譜面を検索。700曲分のストックを50音順に2つに分け、検索しやすく整理したばかりだったので、割とすんなり見つかった。何年も歌ってなかったが、もともと得意な曲なので、ノーミスで無難に乗り切る。

「菊地さん、『なごり雪』で泣いている人がいましたよ。何か胸に響くものがあったんですね」と、終了後にSさんから打ち明けられた。
 この日の会場は横に広くて場全体を見回すことが難しく、歌っている当人は気づかなかったが、あの歌で高齢者の方が涙を流すとは驚きだ。そもそも介護施設でフォークのリクエストが、こうも明確に出たのは初めてのような気がする。
 リクエストに即座に応えると場はいやでも盛り上がるが、それもこれも電子譜面の装備があってこそ。先を読んで投資しておいて正解だった。

「ネットで偶然見つけてお願いしましたが、予想を越える素晴らしさでした」と、今後の定期訪問を打診された。ただ、年に3〜4回ともなると、飽きられてしまうのが常。そのむねを率直に説明し、なるべく間隔をあけていただくようお願いした。
 施設側のニーズに合致するボランティアさんが、実はなかなかいないのです、と息子のような年のSさんは言う。そのニーズとは何か、あえて聞かなかったが、およその想像はつく。今後も精進あるのみ。


 

茶話本舗デイサービス発寒中央・誕生会 /2013.4.13



 ネット経由で依頼されていた隣区のデイサービスで歌ってきた。初めて行く施設だが、いつものようにグーグル・ストリートビューで事前に場所をチェックし、イメージを頭に刷り込んで行ったので、全く迷わずに着いた。
 同じ系列の小樽にある施設で、昨年2度歌わせてもらっている。電話で打診があった際にその旨を告げると、その小樽の担当者が、移動で着任しているという。てっきりその方の紹介かと思いきや、全くの偶然で、別の担当者がたまたま探し当てたらしい。

「4月の誕生会」という切り口だったので、2日前に担当のNさんと打合せ、春にふさわしい曲を選んで、事前にFAXしてあった。
 聴き手は職員さんを含めて15名前後。古い民家を改築した家庭的な雰囲気の施設である。選んだ曲はNさんが立派なプログラムに直し、手回しよく全員に配られていた。

 予定より少し早く、13時58分から開始。3月からいくつかやっている介護施設系ライブのセットと大きな差はないが、以下の13曲(アンコールを含めると15曲)を順に歌った。


「お誕生日のうた」
「北国の春」
「バラが咲いた」
「知床旅情」
「真室川音頭」
「荒城の月」
「夜霧よ今夜もありがとう」
「二人は若い」
「みかんの花咲く丘」
「高校三年生」
「月がとっても青いから」
「ここに幸あり」
「青い山脈」
〜アンコール
「お富さん」
〜ダブルアンコール
「バラが咲いた」


 初めての施設なので、定石通り手探りで歌い始めたが、最初の「お誕生日のうた」でいきなり手拍子が飛び出したので、「ニギヤカ系」を好む場であると瞬時に判断した。
 以降、時に踊りも飛び出すなど、抜群の手応えでトントンとライブは進む。しっとりした叙情的な曲を要所に挟んだ構成も、ほぼ思惑通りに働いた。
 選曲の目玉は、「バラが咲いた」「知床旅情」「夜霧よ今夜もありがとう」「ここに幸あり」あたり。得意の叙情系の歌である。いずれも介護施設対象としては、やや新しめの曲なのだが、これも当たった。

 予定通り13時35分で終了し、素早く撤収しようとしたら、期せずして会場から「もっと聴きたいな…」のつぶやき。進行係のNさんは完全にまとめに入っていたが、会場から利用者の女性が私のすぐそばまで近づいてきて、「ぜひもう1曲お願い」と請う。
 予期せぬ事態に担当のNさんは慌て気味だったが、「アンコール、準備してますよ」と告げると、ようやく場が落ち着いた。

 ニギヤカ手拍子系の「お富さん」で無難にまとめ、ヤレヤレと機材を片づけにかかると、再び会場から「『バラが咲いた』をもう一回聴きたい…」とのつぶやきが。
(声の主は男性だったが、こうした施設で元気がいいのは女性と決まっていて、男性から積極的な発言があること自体が非常に珍しい)
 同じ曲をもう一度、というのは介護施設系では稀にある。全く別の曲を、と請われるよりは楽。時間的には問題ないとのことで、こちらもありがたくお受けした。

 いろいろあって、終了は予定オーバーの14時45分。しかし、「いい声だね〜」「知ってる曲ばかりだったよ〜」と、利用者の方々には満足していただいた。
 よく考えてみると、先月のデイサービスでもダブルアンコールを貰ったばかり。しかもどちらも職員さんの仕掛けた「お約束アンコール」ではなく、一時は職員さえ当惑させた、利用者からの要望だった。ここに大きな意味がある。
 かっては苦手としていたデイサービス・ライブ、自分なりの試行錯誤で、およそのさばき方は会得した。


 

さつきの里・訪問ライブ /2013.5.28



 平日だが、ネット経由で依頼された近隣の小規模多機能ホームに歌いに行った。事前に担当の方から電話であれこれと情報収集したが、どのような反応があるのかは、実際に歌ってみるまでは分からない。初めての場とは得てしてそんなものである。
 これまで弾き語り系のボランティアを頼んだことは一度もないそうで、施設側も完全な手探り状態。どのような状況にも対応出来るよう、ニギヤカ系としっとり系2パターンの曲をバランスよく混ぜてプログラムを準備した。

 いつも行く地域カフェに行く途中に施設はあり、迷うことなく20分で到着。開始5分前には準備万端整った。
 予定より2分早く、13時58分からライブ開始。アンコールなどいただいた関係で予定を少しオーバーし、結果として45分で以下の15曲を歌った。


「北国の春」
「バラが咲いた」
「ソーラン節」
「知床旅情」
「お富さん」
「浜辺の歌」(ノーマイク)

「夜霧よ今夜もありがとう」
「二人は若い」
「みかんの花咲く丘」
「さんぽ(となりのトトロ)」
「高校三年生」
「ここに幸あり」
「丘を越えて」
「青い山脈」
〜アンコール
「宗谷岬」


 聴き手はおよそ40人。場の反応を探りつつ、慎重に歌い進めたが、叙情的な歌には一緒に歌ってくれる方が多数おり、ニギヤカ系の歌には職員さんがうまくリードして手拍子が飛び出すなどし、ライブは順調に進んだ。

 大きな分岐点は、6曲目にマイクなしで歩きながら歌った「浜辺の歌」。状況次第では飛ばすつもりでいたが、歩き回るのに充分な空きスペースが会場にあり、場の反応も悪くないので、思い切ってやってみた。
 先日の地域カフェ・オープンステージで初めて試して好感触を得ていた手法だが、介護施設系でやるのはこの日が初めて。失敗が許されないシチュエーションなので暗譜に自信があり、無難な唱歌を選択。
 事前に充分にイメージ練習を重ねていたこともあり、うまく場に収まった。聴き手との物理的な距離がこれ以上ないくらい縮まるので、互いに強く通じ合うものを感じる。思い切ってやって正解だった。

 以降、トントンとライブは進む。ラストにはこの日の朝、担当のEさんから連絡があった「何かみなさんで歌えるものを…」との要望から、急きょ予定変更して「青い山脈」を全員で歌う。
 終了時点で開始後40分が経過していたが、盛り上がった場はすぐには冷めず、「アンコール!」の声。ありがたく「宗谷岬」を歌わせていただいた。

 終了後、利用者の方々や職員さんと共に手作りのおやつを美味しくいただく。PAなしの生歌を始め、多くの歌を喜んでいただき、苦心した構成が報われた気がした。

 自分としてのこの日最大の収穫は、やはり「歩きながらの弾き語り」ということに落ち着く。元々の発想は、敬愛するフォーク歌手、及川恒平さんがコンサートでやっているのを観てからのこと。
 決してオリジナルな手法ではないが、「完全なる暗譜」のほかに、歩きながらブレずに歌う難しさと、聴き手に目で語りかける難しさとが加わる。アカペラか抱えて弾くことが可能なアンプラグドな弦楽器か鍵盤楽器でしかやれない技であろう。名づけるなら「ウォーキング・シンガー」といったところか。
 今回でどのような場でもこなせる自信がついたので、気分を大きく転換させる決め技として、今後要所で使っていきたい。