訪問ライブ顛末記


のどか祭り/2012.9.9



 近隣のグループホーム祭りに参加。毎年地域住民を招いて屋外で開催されるオープン形式の定例イベントである。あいにく前夜未明から降りだした強い雨が上がらず、念のため屋外用の機材も準備して出たが、やはりステージは屋内の食堂に変更されていた。
 長い付き合いのある施設なので、多くの方が顔見知り。今夏の地域センター夏まつりステージにも多数応援に来ていただいた。

 少し遅れて13時15分から私のライブ開始。当初の話では30分の持ち時間のはずが、進行のAさんが冒頭の挨拶で、「それでは13時35分まで菊地さんの歌をお楽しみください」などと言っている。
 聞き違いかと思わず確かめたが、正味20分でお願いします、とのこと。2日前に屋外ステージの場所に関し、マイクスタンド持参で現地調査にうかがい、Aさんとも会っているのだが、どこかで行き違いがあったらしい。
(私のあとにもう1組が歌うことになったことを、後に知る)

 よくあることなので、30分を20分に縮める手段に関し、素早く頭の中で考えをめぐらせる。結果として、20分強で以下の9曲を歌った。


「草原の輝き」
「月がとっても青いから」
「赤とんぼ」
「さんぽ」
「丘を越えて」
「アロハ・オエ」
「高校三年生」
「青い山脈」
「まつり」(北島三郎)


 30分のつもりで11曲用意していたが、「森へ行きましょう」「我は海の子」の2曲をまず外した。そのほか、リフレインをやめたり、歌詞を省略したり、MCを飛ばしたりの工夫をこらし、短時間で9曲という離れ業をこなした。
 バッテリの修理が終わり、初めて実戦復帰した電子譜面の素早い切り換えも、効果的に働いた。

 自宅でのリハの段階で、休暇で家にいた妻から「今日は調子が悪い」との鋭い指摘を受けていた。あきらかに前夜のライブと宴会のダメージを引きずっている。それに伴う睡眠不足もあった。
 不調は自覚していたので、特に高音部の厳しい「月がとっても青いから」「まつり」のキーをひとつ下げることを即断。これで問題は解消されたはずが、いざPAをセットしてみると、今度は音が全くでない。最近調子の悪いミキサーのトラブルらしかった。
 いつものようにスイッチの入り切りをやっても復帰しないので、諦めてミキサーを介さずにPAに直結することをこれまた即断。聴き手は50名に迫る盛況だったが、どうにか無事にライブは進んだ。

「月がとっても青いから」を歌い終えると、感激した新顔の入居者の方が、立ち上がって握手を求めにやってきた。こういう方が現れるとライブは乗る。この日は1曲目から終始手拍子が絶えず、叙情歌の「赤とんぼ」にまで手拍子が飛び出した。
 準備していたアニメソングの「さんぽ」は、会場に全く子供の姿がないので飛ばして歌っていたら、途中からどやどやと子供連れの若いお母さんが数組現れる。そこで急きょ歌ったが、不思議なことに高齢者にも受けた。
 どうやらこの歌のリズムパターンは「お座敷小唄」によく似ていて、手拍子のしやすい曲のようだ。

 残り5分になって進行のAさんに確認すると、あと2曲歌って欲しいという。ラストに決めていた「まつり」を賑やかに歌っていたら、途中でピックが割れた。予備は持参していたが、油断してすぐに取り出せる場所には置いていない。
 この歌は和太鼓のリズムを切って強くストロークしているが、どうも本番で力が入りすぎたらしい。やむなく、まだ残っている部分にうまく持ち替えて歌い続けた。たぶん誰にも気付かれなかったはずだ。
 ラストの歌詞は「これが日本のまつりだよ〜♪」だが、ここを施設の名前に置き換えて歌うと、思惑通りに拍手喝采。先日の総合介護施設でも受けたが、お祭り系の場では非常に強い歌である。

 予期せぬトラブルが続発したが、終わり良ければすべてよし。過去の経験値をフルに活かして、うまく乗り切れた一日であった。


 

北区社会福祉協議会 敬老演芸の集い /2012.9.15



(前半ライブレポからの続き)
 酷暑の掛け持ちライブのうち、1本目を何とかこなし、オーデションの結果を確かめる暇もなく、すぐに機材をかついで駐車場へと戻る。普段と違ってPAとマイクスタンドがないその分、いくらかは楽だが、とにかく暑さのなかで歌うのは体力を消耗する。
 ひとまず車を出して木陰に停め、持参したバナナとクッキーを水で流し込む。こんな日に歌うには、マラソンでもやるような準備が必要だ。

 ひと息ついたのち、次のライブ会場である自宅近隣の地区センターへとむかう。ここで13時から地元社福協主催の敬老会が進行中である。自宅に戻る時間はなく、機材は出掛けに積み込んであったが、実はこの機材が曲者で、2つのライブで微妙に種類が違うのだ。
 チカチカパフォーマンスの機材は、常用するオベーションのエレアコに太めのシールド、そして電子譜面搭載の中華Padと譜面台である。ところが、地区センター敬老会ではエレアコが使えず、いつもはモーリスギターを持参してマイク録りをしていた。
 今回もそのつもりでいたが、最近になってモーリスギターの音ズレがひどく、カポを移動するごとにチューニングするような状態。ギターを2台持参する煩わしさもあり、今回は両方のライブを同じエレアコでやることにした。

 エレアコでのマイク録りもやれなくはないが、常用する乾電池式のPAを持参し、ギターの音だけをこれで出すことにした。予算の関係で敬老会には専任の音響スタッフが不在。やむを得ない選択である。

 15時過ぎには会場に着き、まずは責任者のMさんに到着の挨拶。急な依頼で気をもんでいたようで、しきりに恐縮された。
 私の出番は15時45分だったが、プログラムを見ると持ち時間が10分に減っていて、しかもラストで歌うはずだった「故郷」が、なぜか「青い山脈」に入れ替わっている。
 急きょMさんと打合せたが、Mさんの意向が印刷側に届いていなかったらしい。中華Padに全譜面が入っているのでどちらでも歌えたが、結局はプログラム掲載の「青い山脈」で行くことになる。持ち時間は多少伸びても、予定曲を全部歌って欲しい、とのことだった。

 中華Padをとりにいったん駐車場に戻り、「青い山脈」のコードを確認。他の3曲は印刷譜面でやるつもりでいたので、その場でプログラムの歌詞にコードを書き写す。時間ロスを最小限にするべく、控えのロビーでPA用の三脚や譜面台を組立て、シールドも移動が楽な細くて短いタイプをPAにつないで準備した。
 節電のため、地区センターにも冷房はない。出番がくるまでロビーの椅子に座っていたが、暑さと疲れでついウトウトしてしまう。

 少し遅れて、15時55分からライブ開始。ギターを肩から背負い、PA一式は両手で抱えて舞台袖の階段からステージに上る。譜面台とマイクスタンドだけは係員の方に運んでもらった。電子譜面を使わなかったのは、この舞台袖からの移動時に慣れない係員が中華Padを落下させてしまう恐れがあったから。
 素早くシールドをつないでPAのスイッチを入れてスタンバイ。この間、たぶん1分以内である。
 季節外れの暑さと3時間近いイベントのラストということで、150席ある会場は半分ほどの入り。聴き手の多くが扇子やウチワを使い、さすがに疲れが目立つ。こんな展開も予想していたので、選曲は元気がよくて短めの懐メロ系でまとめた。


「月がとっても青いから」
「高校三年生」
「青い山脈」
「世界の国からこんにちは」


 どの曲も2分ほどで終る曲だが、場の反応によってはさらに切り詰めるつもりでいた。しかし、「月がとっても青いから」の反応が案外よいので、珍しく3番まで省略せずに歌った。
 遅れて着いたのでほとんど観ていないが、プログラムによるとギター弾き語りの出演者は私一人。ポップ系の懐メロも皆無だった。多数が出演するこの種のイベントは、「他があまりやりそうにない選曲」というのがポイントのように思われる。

 ラスト2曲は主催者指定のシングアウト用の曲で、まずは無難にこなした。真横に置いたPAから響くギターの音はよく聞こえたが、ボーカル用マイクの音は高い位置にあるスピーカーから出るので、ステージからはほとんど聞き取れず、勘で歌わざるを得ない。
「モニターなし」「リハなし」「時間や曲は直前でよく変わる」毎度のことだが、この種のステージでは、こうした悪条件がごく普通であり、それらをうまくさばく技量が求められる。過酷だが、自分のスキルは間違いなく向上する。


 

ジャパンケア札幌八軒・敬老会 /2012.9.17



 全国展開の介護施設のひとつで実施された敬老ライブで歌ってきた。最近急増するネット経由での依頼だが、場所は先日小学校同期会をやったホテルのすぐ近くで、車で30分弱の距離だ。
 一昨日の掛け持ちライブで消耗した直後でもあり、気力体力面でかなりの不安があったが、中一日で充分な休養をとったせいか、どうにか回復。冒険はせず、定番曲を中心に無難な構成で臨んだ。

 事前にグーグルストリートビューで充分なイメージ調査をしてあったので、迷わずたどり着けたが、当初は13時40分から開始だったはずのイベントが、10分早まったという。
 到着は13時20分だったので、大きな問題はない。5分で機材の搬入と設置を終わらせ、用意された控室で出番を待った。

 冒頭の挨拶等があり、13時35分からライブ開始。職員を含めて、およそ40名ほどの聴き手である。窓を背にしたステージだったので、やや顔が見にくかったかもしれないが、顔は二の次で問題は歌であろう。
 50代の若年性認知症の方がいるとのことで、少し新しい曲も歌って欲しい、との要望が事前にあり、ほかにも数曲のリクエストがあって、結果として以下の13曲を30分で歌った。(※はリクエスト)


「月がとっても青いから」
「さんぽ」
「高校三年生」
「二人は若い」
「草原の輝き」
「夕焼け小焼け」
「紅葉」
「赤とんぼ」
「北国の春※」
「知床旅情」
「丘を越えて※」
「故郷※」
「炭坑節」


 この日のプログラムは4つあり、合計2時間のうちのトップバッターが私である。後半には職員さんの出し物も予定されていて、ライブ中も人の出入りが激しく、ややざわついた雰囲気の中でライブは進んだ。
 あまり好きではない状況だったが、こんなこともある。ストローク系の曲を多めに用意したので、そんな喧騒を吹き飛ばす勢いで歌い進んだ。

 全体的には大人しい方が多かったが、乗りのいい方が数人いらして、かなり助けられた。例によって中盤には聴き手参加型の「二人は若い」を歌う。たいていは事前にかけ声を練習してから本番に進むが、これで場は一気に乗る。非常に便利な歌である。
「さんぽ」「草原の輝き」は若い方むけに選んだが、高齢者にも問題なく受ける曲であることは分かっている。「フォークも歌って」との要望から、本当は松山千春の「大空と大地の中で」も予定に入っていたが、場の雰囲気から無理と判断。無難な「知床旅情」へと咄嗟に差し替えた。

 今回も電子譜面を使ったが、背後の窓からの光が予想外に強く、電池消耗を抑えるため輝度を下げた設定にしてあったので、やや液晶が見にくかった。ミスはなかったが、途中で設定を変更すべきだったかもしれない。
 中盤の童謡3曲はキーをカポなしで統一し、譜面も1画面に3曲入れて、MCなしのメドレーで一気に歌った。唱歌系の短い曲ならこの技が使える。30分で13曲は普通は歌えないが、こうした工夫と電子譜面があれば不可能ではない。

 終了後、珍しく数名の男性利用者の方から声をかけられた。どの世界でも同じだが、元気がよいのはおしなべて女性。介護施設でも例外ではないが、ここは違っていた。
 残りのイベントも見届けたかったが、次に行くところがあったので、途中退出。この日も真夏のような暑さで、歌いながら汗が噴き出たが、喉の調子はピークに近く、途中一度も水を飲むことなく乗り切った。


 

茶話本舗デイサービス銭函・秋祭り /2012.9.21



 平日だが、午後から近隣の小樽市にあるデイサービスの秋祭りで歌ってきた。連日の猛暑もようやく一段落し、秋らしく過ごしやすい陽気。ステージ衣装も久しぶりにシャツを1枚増やして臨んだ。
 札幌の北端に位置する我が家から小樽市は比較的近いが、それでも往復で50キロあった。ライブ会場としてはかなり遠い部類に入るだろう。

 実はこの施設では今年2月末にも歌っている。利用者や職員の方々から「あの人の歌がもう一度聴きたい」との要望があったそうで、わずか7ヶ月後という短すぎるインターバルが気がかりだったが、歌い手にとって殺し文句に近いそのお誘いを拒むことなど不可能である。

 距離的には遠いが、渋滞のない裏道を通るので40分弱で着く。開始予定は13時30分だったが、15分前には着いてすぐにスタンバイ。一昨日作ったばかりのマイクスタンド直付電子譜面はこの日が使い始めだったが、思惑通り設置はごく簡単に終わった。
 床が1段低い食堂では、すでに利用者の方が椅子に座って開演を待っている。職員の方に予定より開始を早めることを提案。5分早い13時25分から歌い始め、35分で以下の14曲を歌った。


「高原列車は行く」
「草原の輝き」
「知床旅情」
「高校三年生」
「二人は若い」
「おかあさん」
「夕焼け小焼け」
「紅葉」
「赤とんぼ」
「月がとっても青いから」
「ここに幸あり」
「お富さん」
「丘を越えて」
「まつり」


 ライブが目白押しなので冒険はなく、実績ある曲を並べた。マイクスタンド直付電子譜面は使用中も終始安定していて、スタンドや丸型クリップがずれたり動いたりすることは一切なかった。今後、普通に使えるメドがたった。
 前回歌った曲との重複は「知床旅情」のみ。歌う間隔が短いので、場としては非常に難しい。「前回よかったから、次もよい」とは必ずしもならないのがライブの難しさで、基本的に人は飽きる動物なのだ。

 全体的に大人しい方の多い場で、どちらかといえば叙情的な歌が好まれる。私の得意なジャンルだが、秋祭りイベントの一環なので、ニギヤカ系の曲もうまく取り混ぜた。
 ライブは笑いあり手拍子あり涙ありで、前回以上に手応えのあるものだった。起承転結に気を配った曲の構成もうまく運んだ。「二人は若い」ではいつものように聴き手を巻き込み、ラストの「まつり」では歌詞の一部に施設名を入れて、喝采を浴びた。「ここに幸あり」では聴き手の目に光るものを見た。

 この日は中間あたりで、普段より長めのMCを意識的に入れた。電子譜面採用以降、曲間の時間ロスがほとんどないので、35分だと15曲は歌ってしまう。さすがにそれでは多すぎるように思えたので、場とのコミュニケーションを図るべく、思いつくままにあれこれ話した。
 話してみて思ったが、数曲毎に長めのMCを入れるのも悪くないと感じた。聴き手との親密度が増し、以降の進行がスムーズに運ぶ。無駄をそいで生まれた時間的余裕だったが、思わぬ効用があった。

 終了後、職員の方から「利用者も職員も癒され、楽しませてもらいました」と労われる。「まさかここで『草原の輝き』が聴けるなんて」「菊地さんの歌う『夕焼け小焼け』は、ちょっと違って聴こえる」「どうやってその声を維持してるんですか?」など、歌い手冥利につきる言葉もたくさんいただく。

 同じ場で2度目までは何とかやれるが、問題はここからだ。以前にもどこかでふれたが、3度目の壁はとてつもなく厚くて高い。しかし、今日はそんな先のことなど考えず、思惑通りに運んだ満足感にしばし浸っていよう。


 

ベストライフ清田・11月誕生会 /2012.11.18



 激しい暴風雪のなか、自宅から25キロ離れた遠方の有料老人ホームまで歌いに出かけた。南下するにつれ風雪は強まり、施設に着いたころはかなりの積雪となった。なんでも122年ぶりの遅い初雪だそうで、ともかくもこれでようやく冬らしくなった。
 家を出てから、ワイパーを冬用に換えてなかったことに気づく。しかし、ヒーターを最大にして降る雪を解かしながら走り、どうにか無事に到着した。

 年に一度は招かれる長い付き合いのある施設だが、つい最近施設長さんが替わり、少し空気が変わった。今日は11月の誕生会で、施設側のイベントが15分あったあと、14時15分からライブ開始。

 聴き手は60名ほどだが、年に1回の訪問だと、入居者の顔ぶれも微妙に変わっている。いろいろな事情が背景にあるに違いないが、こうして職員さんも含めて少しずつ顔ぶれが変わってゆくのが世の習いであろう。果たして私はいつまでこの場で歌わせていただけるのか。

 この日はいつもと少し構成を変え、これまで介護施設ではほとんど歌ったことのないシャンソン系洋楽をかなり入れた。大きな冒険だが、過去の経験からこの施設でなら無理なくやれそうな予感がした。


「サン・トワ・マミー」
「ペチカ」
「サンタルチア」
「宗谷岬」
「月の沙漠」
「瀬戸の花嫁」
「ケ・セラ・セラ」
「東京ラプソディ」
「雪が降る」
「また逢う日まで」
「愛燦々」
「月がとっても青いから」


 内訳はシャンソン系洋楽4曲、唱歌系3曲、昭和歌謡系5曲、合計12曲を休憩なし、MCもほとんどなしで一気に歌った。定番曲や似たジャンル、似た曲調などが固まらないよう、直前まで曲目や曲順を慎重に吟味した。

 実績ある定番曲は「宗谷岬」「瀬戸の花嫁」「月がとっても青いから」くらい。他は介護施設には合わないと判断し、これまで封印してきた曲。しかし、チカチカパフォーマンスでは多くの中高年がじっと耳を傾けてくれる強い曲ばかりだ。介護施設だといったいどんな反応があるのか、ぜひとも確かめたかった。
 最も怖かったのは「雪が降る」。しかし、いいタイミングで大雪となったこともあり、これは当たった。全部歌い切らないうちにさざ波のような拍手が湧いたほど。時期にもよるが、この系列の施設では間違いなく使える。

 ライブは終始静ひつで、心地良い緊張感のなかで進んだ。雰囲気としては11月初旬に実施した自主企画ライブに非常によく似ていた。60名の聴き手の「気」が、一点に集まる手応えを終始感じた。
 はっきりしないが、介護施設でこうしたライブをやれたのは、初めてかもしれない。チカチカパフォーマンスで受ける曲は、構成にさえ気を配れば施設でも受けるということ。自分の手法にちょっと自信を持った。

 終了は14時55分。正味40分で、介護施設としては長いほうである。開始25分あたりで聴き手の体力が心配になり、職員の方に時間を確かめたが、「予定通りお願いします」とのこと。幸い、最後まで聴き手の集中力が途切れることはなく、中座する方も全くなかった。
 入居者の方々からは、「もっと歌いに来て!」と、ありがたい声援をいただく。そうなれば嬉しいが、施設長さんの交代もあり、実現するかは神のみぞ知る領域の話である。


 

ベストライフ白石・12月誕生会 /2012.12.16



 以前に住んでいたマンションのすぐ近くにある有料老人ホームからの依頼で、誕生会余興として歌ってきた。偶然だが、この施設の責任者の方が系列の別施設から異動で着任したばかり。
 最初にお会いしたのがさらに別の施設で、2006年春のこと。足掛け7年にも及ぶ長いおつき合いである。仕事とは無縁の関係だが、私の個人的なイベントである還暦コンサートにも来てくださった。こうなると利害を超えた人間そのものの縁といっていい。

 施設そのものに伺うのは初めてなので、プログラムは隔たりがないよう、無難な構成で準備した。とはいえ、同じ系列の施設なので、ある程度の傾向は確かに存在する。
 14時10分からちょっとした施設側のイベントがあり、14時20分からライブ開始。35分で以下の11曲を歌った。


「ウインター・ワンダーランド」
「サン・トワ・マミー」
「瀬戸の花嫁」
「宗谷岬」
「ラ・ノビア」
「バラが咲いた」
「月がとっても青いから」
「愛燦々」
「高校三年生」
「ここに幸あり」
「東京ラプソディ」


 実績ある日本の叙情系の歌をベースに、一部外国の曲をまじえるという基本構成。ストリートライブのような冒険は避けた。
 聴き手は60名ほどで、知っている顔はもちろんない。しかし、反応は非常によく、拍手も強くて暖かかった。特に要求はしなかったが、多くの曲を一緒に口ずさんでくれ、自然発生的手拍子もいただいた。「いい声だね〜」の声もあちこちから耳に届いた。

 演歌系の歌は結果として皆無だったが、リクエストを募っても最近の有料老人ホームではこうした傾向が強い。同じ理由から、明確な唱歌も歌っていない。求められた場合は別にし、当面はこの路線でいきたい。

 終了後はただちにオヤツタイムに移行したので、入居者からの直接の言葉はなかったが、長いおつき合いの施設長さんからは、「一段と磨きがかかりましたね」「声が加齢と共になぜか向上してます」「ステージのさばきに余裕がある」などと、ねぎらいをいただく。
 聴き手が常に流れてゆくストリートと違い、固定されている場での有難みをしみじみ感じた。毎回がシビアな場ばかりだと息をつく間もない印象だが、時折こうした用意された場で歌うのも、悪くはない気分である。