スポット照明のいろいろ ... 1998.3




 電気のない過疎の村に私は生まれ育った。初めて村に電気が通ったのは小学校5年生のときで、それまでの夜の灯りといえば、いまでは古びた山小屋くらいでしかお目にかかれない、つり下げ式の石油ランプだけだった。
 おそらくそのせいで、こと電気というものには、幼いころからある種の憧憬を抱いてきた。電気スタンドというものをなかなか買ってもらえず、仕方なくそこらにある古い電気コードやソケット、電球などを加工して、なんとか自分だけのオリジナル電気スタンドを作り出そうとしたのは、確か小学校6年生のころだ。

 あるとき、コードをペンチで思いきり切断したとき、右腕全体に「ズシン」という衝撃が走り、コードから青白い火花が散って握っていたペンチがふっ飛んだ。そう、工作に夢中になってしまい、なんと私はコードをコンセントに差したままであることを忘れていたのだ。
 幸い、ブレーカーが落ちただけで何事もなく済んだが、この自ら招いた「感電の恐怖」は、しばらく尾を引いた。もしこのとき左手を使っていたなら、おそらくいまごろ私はこうしてのんきにキーボードに向かっていることはなかっただろう。



 こうして感電の恐怖におびえながらも、私の電気工作への興味が萎えることはなかった。試行錯誤を繰り返すうち、何が危なくて何が安全かは、だいたい分かってきた。
 たとえば、電気コードは基本的に途中でつないではいけないし、白熱灯などが接する部分には、木やプラスチックなどの熱に弱い材質のものを使ってはいけない、などだ。

 結婚してから初めて作った電気工作は、拾ってきた古いタイヤホイルを使った、つり下げ式のペンダントライトだった。これはすでに処分してしまって手元にないが、リサイクル品とは思えないなかなかの出来映えだった。


 後にこれを応用して出来たのが、左の写真にある、クレーン式ペンダントライトである。
 見ての通り、シナランバー合板を細く切って作った折曲げ式の「クレーン」にライトをつけたもので、クレーン本体は端部を本棚の最上部にネジ止めしている。ネジには遊びがあるので、クレーンの腕の伸縮と回転でねらった好きな場所に光りを落とせるというわけだ。

 シェードは0.3ミリ厚のアルミ板300ミリ×300ミリを加工して作った。扇形を正確に切らないとぴったり合わないので、まず紙で模型を作ってから本加工する。シェードの端部はボンドで止める。(リブ加工がベストだが、私の手にはおえない)

 電球をねじこむキーソケットは、DIYの店でバラ売りしているものを使う。最も難しいのが、シェードとこのキーソケットの固定である。まず加工したシェードとキーソケットをテープで仮止めし、キーソケットを下にしてボンドを少し多めにすき間に流しこみ、完全に乾かしてやればOK。写真のライトはこの固定方法で15年間問題なく使っている。
 キーソケット上部の電気コードを通す穴にZ字形に曲げた針金を入れ、クレーンから吊り下げるときのフックにする。針金がキーソケット内部で電極に触れると、またまた事故のもとになるので、ビニールテープなどで充分巻いてから通電のこと。

 電気コードとソケットは単純にネジ止めするだけだが、吊り下げたときにコードに負荷がかかると、漏電などの事故のもとになる。これを避けるには、ネジ止めする前にキーソケットの中でコードを結び、ネジ止め部分に負荷がかからないようにする工夫が必要。また、使うときはコードに充分ゆとりをもたせ、電球とシェードの重さを直接クレーンで受けるようにすることも大切である。

 人に頼まれた分も含め、いままでこのライトを5個作った。3人の子供は小学校まですべてこのライトで育った。材料費は1000円もあれば充分足りる。
 初期のころはクレーンはステンレスのカーテンレールを加工し、プラスチックの鎖でシェードを吊り下げていた。プラスチック鎖は各種の色がそろっていて、色分けして使えば子供部屋にもぴったりマッチする。
 シェードの材質は、一度だけステンレスを使ったことがある。アルミより加工が難しいが、丈夫で高級感がある。DIYの店にはほかにも銅板など、金属板が各種そろっているので、いろいろ試すと面白い。当然だが、燃えやすい材質のものはここでは使えない。



 夜に灯しておく天井の常夜灯が壊れてしまい、困っていたところ、ちょうど室内用の物干し器を作ったときのパイプが余っていることを思いだし、あれを使ってスタンドが作れないか?と工夫してみた。

 パイプは「イレクター」と呼ばれる32ミリのプラスチックでコーティングされた丈夫で美しいもの。50センチから各種サイズが全国発売されている。
 このパイプには各種ジョイントが発売されており、パイプとうまく組み合わせれば、アイディア次第ではそれこそベットでも作れてしまうという、たいへんな優れ物である。


 今回使ったジョイントは、上部のキーソケットとの接合部に使ったL字形のものと、下部の架台代わりに使った十字形のもの。
 キーソケットとL字ジョイントとはボンド接合。電気コードはジョイントとパイプの中を通して隠している。電球は5Wの豆球を使用。材料費は全部で500円くらいで済んだ。

 私はこうした電気工作品を作ってきて、結果的にいままで一度も事故はなかった。しかし、単なる木材加工品と違って電気は生きている。使い方や加工方法を誤ると重大事故になりかねない。自信のない方は真似をしないほうが無難である。
(このコーナーをご覧になって万一同じことを試みる場合、すべて各自の責任の範囲でやってください)