シナランバー家具/子供部屋編 ... 1996.9




 前回、マンションを購入してしまって資金がつき、苦肉の作として家中の家具を作り始めたことを書いた。さて、居間や食堂の家具を作り終えたあとは、子供部屋の番である。
 個室が3室しかないマンションの一室は私が仕事部屋として占領し、一室を夫婦寝室にしてしまうと、残りは6畳の和室しかない。ここでプロに頼んでお金をかけて改造すれば簡単なのだが、そんな余裕があるはずもなく、なんとかこの6畳和室をやりくりして、子供たちを育てあげなくてはならなかった。
 この段階で私がどこか外に事務所を構え、仕事部屋を子供に明け渡す、ということはあまり考えなかった。わが家ではあくまで大人(夫婦)を一番目に、子供は二番目に考えて物事を進めている。

 そこで子供たちが全員小学生のうちは、6畳にカーペットを敷き詰め(畳は断熱や防音効果があるのでそのまま)障子を外してカーテンに替え、和室を洋間ふうに使うことにした。
 机や椅子は引っ越す前から手作りのものがあったので、それらを部屋にあわせて簡単に改造。ところが、3つの机や椅子を並べてみると、3人分の布団を並べるスペースがない。無理に寝かせてみても、上の娘が中学生くらいになれば、それも不可能である。そこで私は考えた。3段ベットだ。



 部屋の中央に3段ベットを作って固定してやれば、広い床が常時確保出来る。急な来客時には、夫婦がその床に寝れば、寝室をまるごと客に提供出来るではないか。
(実際、5度にわたるホームスティ時は、すべてそうやって対処した)
 それに、ベットをひとつの「可動間仕切り」として考えれば、子供たちが大きくなってからもなんとか対応出来る。こうしたコンセプトで出来上がった最初の3段ベットがこれだ。


 こうしたベットに昇って眠るのは、子供にとってとても楽しいようだ。最初の頃、最上段はいつも取り合いだった。大人でも眠れる大きさなので、私や妻もちょっとした「お昼寝」によく利用する。特に上の段はとても静かで、よく眠れる。
 材料は大半が前回書いた「シナランバーコア」である。基本的な作り方は前回紹介の居間の家具と同じ。コストを下げるため、寝床の部分は9ミリ厚のラワンベニヤ板を使用。強度を上げるため、最も加重のかかる寝床部分に30ミリ×40ミリ、長さ910ミリのマツ材を各3本補強に使っている。
 また、地震や昇り降りの振動に耐えるため、柱のうちの2本を壁に50ミリの木ネジで固定している。作成にかかる費用は塗料代も含めて2万円程度である。



 さて、こうして出来た3段ベットだが、当然子供はどんどん大きくなる。強度のほうは問題なく、長さのほうも1820で作っておいたのでなんとか足りた。
(わが家の長男、次男はそれぞれ身長175cm、178cm)
 問題は上の娘をどうするか?だった。出来うれば個室を与えたいところだが、前述の通り、それは不可能である。そこで考えたのが当初の予定通り、ベットを可動間仕切りとして部屋の中央に配置することだった。(写真の配置をちょうど90度回転させた位置)
 この右側を息子ふたりの空間、左側を娘の空間として心理的に分配する。うまい具合に左側には押入があったので、そこを改造して上の段を娘のベット、下の段にカーテンを吊るして収納とした。
 もともとの3段ベットは息子2人のものとし、体格にあわせて寝床の高さを下げ、最下段を半分に仕切って右側を季節もの布団収納に、左側を娘の本棚にした。(つまり両側収納家具)

 この3段ベットは使用13年目になるが、まだまだ元気でいまでも3人の子供たちの愛用品である。「思春期には男女の子供は別の部屋にする」が世の常識だが、建築家の設計した家でドアのないトイレがあるように、私も必要に迫られてそのタブーに挑戦してみたわけである。
 その結果報告だが、子育てがほぼ終了したいまの時点で振り返ってみても、これといった欠点はなかった。場所をめぐるトラブルは特になく、逆に兄弟3人がとても仲がいい。時には部屋中央のベットをはさんで、3人が夜遅くまで話し込む場面もしばしばだった。ただ、やはり自分ひとりの空間へのあこがれは人並み以上に強いらしく、子供たちが早々と家を出そうなのも、おそらくその現われであろう。
 このことを「悪いこと」と私は捕えていない。寺山修司の「家出のススメ」ではないが、特に事情のない限り、子供は早く家を出るべきと私は考えている。



 前回紹介した「ダイニングテーブル」と「椅子」の作り方を詳しく教えて欲しい、というメールがイギリスから届いたため、詳しい作り方について紹介する。

・まず天板を用意。(私の場合は19ミリ厚、790ミリ×1820ミリのランバーコア合板。以下すべて「ランバー板」とする)ウレタン樹脂系の塗料を薄く3度塗りする。(2度だと傷や汚れがつきやすい)

・次に脚を作る。厚さ19mmのランバー板をテーブル脚の長さ分だけ(私の場合は長さ65センチ)幅4センチと6センチ、各4本ずつ用意する。このふたつをL字形に木ネジで止める。
(前回イラストを参照)

・補強のため、天板の裏側に厚さ19ミリ、幅60ミリのランバー板を天板の長さよりも50ミリだけ小さく(外寸で740ミリ×1770ミリ)「額縁」のように枠を組み、木ネジ8本で天板に止める。このとき、下図のようにネジの頭だけが入るよう、直径8ミリ、深さ30〜35ミリの「ほぞ穴」をあらかじめ開けておく。こうしないと木ネジでしっかり固定出来ない。このテクニックは非常に重要。

・テーブルの脚と天板の「枠」をつきあわせ、5ミリのボルトナット3本で交互に止める。ボルトの長さは2枚の板の厚さ+ナットの厚さ。(約50ミリ)以上で完成!
 一番分かりにくい角の部分を真下から見た詳細が下図である。


《ヒント》
・テーブル脚、天板枠にも塗料をあらかじめ塗っておく。(2度塗り)
・枠と脚の接合部分はもっとも力が加わるので、合板でなく、スプルス材(マツ)などを使ったほうが長持ちする。
・どちらにしても、脚と枠の接着部は丸棒補強(前回イラスト参照)が必要。



 椅子の作り方は以下の通り。


・左の断面図と前回紹介の椅子の写真を見るとだいたいのことは分かるはず。黒い部分はすべて木ネジで止める部分。部材の色が違うのは、分かりやすくするため。
 椅子の座板の高さや部材の寸法は体格などにあわせて適当に変える。(私の場合、座板高さは360ミリ)

・最も難しいのは斜めになっている脚の材料のカットと組み立てである。自信のない方は古新聞紙などで原寸の型を作った方がいいかもしれない。カットは電動ノコでやるのが無難。2つの脚部材の接続は、前述の「ホゾ穴」を深く掘って行う。

・座板はランバー板の上に2ミリのコルク板をボンドで張り付け、さらに周囲を米ツガ材かスプルスス材(7×25くらい)などで額縁のようにボンドで接着する。

・以上の部材を木ネジで図のように止める。受け手のほうにはすべて丸棒補強(前回イラスト参照)が必要。

 こうして出来た椅子は使い続けて13年たった今年、2つが相次いで壊れ、残っているのはひとつだけ。現在、家族の食事はすべて「大型こたつ」に変っているため、残った椅子は「植木置き」として使っている。負荷の激しい椅子は、合板で作ると寿命が短いようだ。


◎参考文献:インテリア出版のSUNSET日曜大工シリーズ「テーブルと椅子」(絶版)
◎文中の価格は2000.9札幌での調査