シナランバー家具/居間編 ... 1996.3




「子は親の背中を見て育つ」

 よく言われるこの言葉は、どことなく押し付けがましい響きがしてあまり好きではないが、こと私の手作りに関すれば、この言葉はやはり的を射ているようだ。
 大工の家に生まれた私は、自分の住む家はもちろん、ストーブや茶ぶ台、スキーのはてまで魔法のように作りあげてしまう父親を見、「身の回りのものは、たいていは人間が作っているのだ」ということを、当り前のように感じて育った。ふと気がつけば、ペンたてや本箱、おもちゃや鯉のぼりまで自分で作ってしまう子供に私はなっていた。

 時は流れ、大人になってもこの嗜好は変わることはなかった。結婚してからは台所ワゴン、ゆりかご、ベビーダンスと次第に作るものは大型化していった。そして独立開業して2年目の夏、私たちはマンションを購入することになった。ところがここで大問題である。
 家具を買う金がないのだ。独立の資金やら引っ越しやらで、もともとたいした蓄えはなかったのに、無理をしたせいだった。仕方がない、こうなれば十分ある暇を使って、「家具は自分で作る!」と家族に大胆宣言。

 究極的に私は脳天気な性格のようである。それまでの知識の寄せ集めと、偶然手に入れたアメリカの家具作りの解説本で、私は家中の家具を作り上げてしまったのだ。


 これが私の家の居間である。壁際にあるのが本棚。手前左にあるのがロングこたつ。これは夏にはヒーターを外して普通のテーブルになる。その右側がベンチ。これは下が季節物の収納になっていて、上にあるクッションも私の手作り。



 上の写真右奥にちらりと見えているのが長テーブルと椅子。それを台所側から撮ったのが左の写真である。
 これらはすべて「シナランバーコア」という厚さ19ミリの、両側が滑らかなシナベニヤでプレスされた合板で作られている。



 シナランバーコアはDIYの店などで手に入る。厚さは15ミリ、19ミリ、24ミリなどいろいろあるが、家具には19ミリが手頃だ。値段はカット代は別にして910ミリ×1820ミリ(いわゆるサブロクのパネル)で6000円くらい。
 この板は本来、棚板などに仕上げなしで使われているもので、あまり細く切ると強度が落ちる。上の写真にあるテーブルの足は、4センチと6センチの幅のものを直角に合わせ30センチおきくらいに木ネジで止めている。 こうするといろいろな方向からの力にも耐えられる。なお、これらの材料は買った店でワンカット50円くらいで切ってくれる。

 この方法を応用すればたいていの家具は作り出せるが、一番問題になるのが部材の結合方法である。いくら強い部材を使っても、結合方法を誤れば家具としての強度は半減してしまう。


 図ように受けるほうの板にあからじめドリルで8ミリの穴を開けておき、そこに同じ直径の丸棒を打ち込み、のこで切断しておく。こうすれば木ネジを板ではなく、丸棒で受けることになるので非常に強度が増す、というわけだ。

 木ネジはφ3.8×38ミリのものを座金と併用している。これらの作業が面倒な場合は、費用や手間はかかるが、T字形やL字形の補強金具を使う方法もある。
 なお、写真にあるテーブルの足と天板は、5ミリのボルトナットで固定している。



 使用する道具

・ドリル/
 8ミリの穴が開けられるもの。木ネジの穴も、すべてドリルで開ける。(3000円くらい)電源延長コードがあるとなお便利。

・プラスドライバー/
 握りが太くなっているもの。普通のものだと力が入らず、きっちり締められない。無理をすると手の皮がむける。
(2001.9現在、ドライバーはすべて電動ドライバーを使用。抜群の作業性は、一度使うと手放せない。バーゲン品を探せば、4000円くらいからある)

・のこ/
 電動のこ(5000円くらい)があると最高。厚いランバーコアでもきれいに切れる。

・モンキースパナ/
 接合にボルトナットを使う場合に必要。



・ランバーコアは表面が非常に滑らかなので、このまま使ってもいいくらいだが、テーブルなどではやはり塗装をしたい。天気のよい日を選んで、ポリウレタン系の塗料を薄く3回塗りすれば完璧だが、塗る回数は使う場所によって調整する。
(2001.9現在、有害物質の放出の可能性のなる塗料は一切使わず、安全無害なドイツ製オイル塗料を使用)

・丈夫な家具を作るには、接合部分に働く3方向からの力をうまく受ける工夫をすること。また、高さのある家具の設置場所はなるべく壁際にし、場合によっては壁そのもに家具の一部を木ネジ止めしてしまえば、かなりの地震がきても大丈夫だ。

・作る家具を決めたら、材料取りをメモして無駄のないよう、店で切ってもらう。ランバーコアは長手方向に強く出来ているため、細長い材料は必ず長手方向に材料取りする。


◎参考文献:インテリア出版のSUNSET日曜大工シリーズ「テーブルと椅子」(絶版)
◎文中の価格は2000.9札幌での調査