パピプペ問答


 ここでは我が家の日常に起きる、さりげない会話をピックアップして再現いたします。文中の内容は非常に作為的に感じられる方もおられるでしょうが、大筋において事実であることをここに証言しておきます。


 =CONTENTS=
   ●名 前
   ●乳 首
   ●お地蔵さん
   ●おつり
   ●チラシ
   ●バナナケーキ



 
《名 前》

ねえ、チチ。(注:娘が私を呼ぶ時の平均的呼び方)私の演劇友達にさ、親がエラく名前にこだわってる人がいるんだ。

へえ、どんなふうに?

一族の子供の名前を、みんな同じ言葉の繰り返しにしたいんだって。その子がそうなんだよ。なんて名か当ててみて。

たとえば「チチ」とか?

そうそう、そんな感じ。

う〜ん、じゃあ「ハハ」。

んなわけないでしょ。降参ね。

まった!ひょっとして「キキ」とか?

そりゃサンリオですがな。(いきなり次男乱入)

そういえば、魔女タクで変な名前のネコがいたっけな?(勝手に脱線)

それはジジでしょ。やっぱり降参ね。

なんなんだよぉ、いったい。

ふっふ。カタカナで「ココ」っていうんだ。驚いた?(なぜか得意そう)

お前が自慢することないだろうが!しっかし、アニメそのものだな。で、その子の兄弟とかは、なんて名なんだ?

一人っ子なのよ、その子。だからこれから生まれてくる一族の子には、そういう名前をつけるんだって。

ふん、子供にとっちゃ結構迷惑な話だったりして。ところで、確か高校の社会の先生が言ってたけど、子供と親が全く同じ名前だと、相続税がかからないらしいぞ。

うっそ〜!!(エラく驚く)

え?なになに、何だって?(再び次男乱入)

自信ありげだったけどな。確かめたわけじゃない。でも、本当にそれを代々実践している人がいるらしいんだな。つまり、男でも女でも、最初に生まれた子供には必ずその名をつけるって話さ。さあ、その名を当ててみろ!(いきなりのカウンター攻撃)

和美!

ブッブー!

薫!

ブッブー!(いつのまにやら家族クイズ合戦)

アキラ!(いきなり参加して、大はずし)

ブッブブブー!

もう、わかんないよぉ。

へっへ、「雪(せつ)」って言うのさ。たぶん、明治生まれの親の話だろう。

へえ〜、そ〜なの。

(急につまらなそうになり、めいめいの場に散って行く)






 
《乳 首》

このごろさあ、変なとこ痛いんだ。(思い詰めた表情)

ええ?ど、どこよぉ!(動揺した様子)

まさか、●ンポじゃないだろうな。(思いきりギャグをかましたつもりが、実は「自分の息子に限って、そんなことはあって欲しくない」と強く願っている)

そんなんじゃないよ、近いけど。

じ、じゃあお尻?(動揺を抑え切れない様子)

違うって。乳首だよぉ。このごろ変に膨らんできて、痛いんだ。俺、病気かな…。

ト、ト〜サン!!(ほとんど錯乱状態)

(ニヤニヤしながら)お前、実は女だったりして。

(うれしそうに)実は乳ガンだったりして。

なになに、兄貴がもうすぐ死ぬって。(いきなり次男乱入)

冗談やめてよ、本当に痛いんだから!(注:長男にあまりギャグは通用しない)

(やや冷静さをとり戻して)どんなふうに痛いの?

サッカーで胸のトラップ(ボールを止める)とかすると痛むんだ。

どれどれ、ちょっとさわらせろよ。ふむふむ、なるほど。

どう?(不安がぬぐい切れない様子)

確か、俺もこれくらいの歳で同じ症状になった気がするんだよなあ。たぶん、ホルモンのバランスとかいうヤツだろ。放っておけば治ると思うよ。でも、不安だったら、医者に行ってみれば?

い、医者って、何科に行けばいいのさ。

さあな、泌尿器科かな。(無責任(^=^;)

やっぱし、産婦人科じゃない?(完全に立ち直った様子)

ウソぉ!皮膚科じゃないの?(なぜかマジ)

まあ、そんなとこかな。確か「形成外科」なんてのもあったな。とにかく、手ごろな病院行って、はやいとこ「テクビ」を見てもらうんだな。

………

チチ、それってもしかして「…(長男の通称)のチクビ」のこと?

(内心「しまった」と思いつつ)う、うん。そ、そういうことだ。
(長男を除き、一同大爆笑)

(なお、その後の診断で「テクビ」には異常がないことが判明。めでたし、めでたし)






 
《お地蔵さん》

(ある休日の午後、新聞を広げながら)あれぇ、また変なの載ってるよ。

えっ、なあに?

ほら、サラ金とかでさ、「ひとりで出来ます、お地蔵さん」とか言ってるの、あるだろ?あれの新顔の広告がふたつも載ってるよ。

(たいして興味がなさそうに)へえ、今度はどういうの?

今度は「ちゃんと出来助」と「エンがある」だってさ。
(実在の物とは、一切関係がありません(^^;)

いったい何が出来るって言うのかしら?

「誰にも会わずにカードが作れます」って書いてある…。

そんなに簡単にカードが…。ちょっと怖くない?

確かにな。おい、免許証か保険証があれば、その場で審査してすぐキャッシュを貸してくれるとも書いてあるぞ!

どうやって本人だと分かるの?

コピー機みたいのにのっけて、読み取るんじゃないのかな。

「無人」とか言って、実はガラスの下に誰かが寝転んでて、本人かどうかじっと伺って見比べていたりして。

うう…。その光景、想像するだけでもおぞましいぞ。

どっちにしても、私たちには縁がなさそう。(妻はカード嫌いのレトロ人間)

拾った免許証や保険証なんかで、もし紛失届けが出される前だったら、いったいどうなるのかな?あとで分かっても、面倒に巻き込まれそうだな。

そうよ、お互い気をつけましょう。
(妻は数回財布を落とした経験あり→なぜかすべて戻っている)ほら、あんたも寝てないで、よく聞いておくのよ。

え?なになに、何の話?(横で熟睡の長女、寝ぼけ顔で起き上がる)

大事なものを落とすな、って言ってるのさ。まあ人のことは言えんが…。
(実は私も二度ばかり免許証を落としている。→なぜか二度とも戻ってきた)

わたし、定期券を三度も落としたけど、全部戻ってきたよ。(妙に得意そう)

そんなもん、ちっとも自慢になりません!

(関係者の方、ごめんなさい!)






 
《おつり》

誰か10円玉20個を両替してくんない〜?財布が重くって…。

いくらと替えるんだよ。

(きっぱりと)モチ、100円玉2個。

ふん、嫌だね。(軽く受け流し、そそくさ自分の部屋へ)

私も嫌だな〜。(長男よりは対応が暖か)

う〜ん、じゃあ母さんは?

(すまなそうに)ちょうどいま100円玉を切らしているのよ。

……(じっと父をみるが「この人に頼んでも駄目だな…」という表情がありあり)

(ダメを押すように)俺もイヤだよ。

どうしてそんなに溜めちゃうのよ。

だって、勝手に溜まっちゃうんだもの。

そりゃ、金を無節操に使ってるからだ。

(憮然として)無駄遣いなんかしてないよ、僕。

そうじゃなくって、何か買う時のお金の出し方のことを言ってるの。

出し方って?

分かった!私やってるよ。

たとえばだな〜、901円のものを買うとき、細かいのがなけりゃ、いくら出す?

これは常識ね。

(当然のように)1000円出せばいいじゃん。

だっから小銭がジャラジャラ溜まってくんだよぉ。

(片手を上げながら)ハイ!

はい、すいちゃん。

(自信たっぷりに)1001円!

キンコ〜ン。まあこれは序の口だぁな。次いくぞ。同じく907円。

それは1000円札出すしかないんじゃない?

ブッブー!私なら1010円出すよぉ。

俺も同じ。

どうして…?

1010-907=103円。1000円でもらうおつりより、小銭がはるかに少ない。

なるほど〜。

もっと難しいのいくぞ。同じく963円。

今度こそ1000円札だな。

(したり顔で)違うのよね、これが。

(俺は思慮深いんだぞ、という顔で)うんうん。

(得意そうに)1013円だすのよ。

正解!さすがだ。(何が?(^^;)

ええ?どうして、どうして。

1013-963=50円。つまり、おつりがたったコイン一枚!

すっご〜い!(必要以上に驚く)

だけど、13円がなかったらどうするのさ?

そのときは無理やり1020円出す!

1020-963=57円。持ってたコインは4枚増えるだけってわけね。1000円出した時の半分よ。

なんだかクイズみたいだな…。

ところで、いま言った最後の技は、地下鉄の自動販売機で260円の切符買う時にも使えるぞ。

え〜と、310円入れるのね?

そうそう、賢い機械は、ちゃんと50円玉でおつりをくれるのさ。

私さ、どうしても小銭が溜まっちゃった時、ジュースとかの自動販売機を使うよ。

160円とかの飲み物なんてあったかな…?

違うの。買わないで、ただ10円玉を5枚とか入れて「返却」のスイッチ押すの。ちゃんと50円玉に替えてくれるのよ、これが。
(器械にもよるらしい。あまり真似しないほうがいいかも…?(^_^;)

へえ〜、でもめんどくさい話ばっかだな。

(なぐさめるように)ねえ、500円玉なら何枚かあるわよ。

それじゃ、両替になりません!






 
《チラシ》

(チラシの束を握り締め、勢い込んで仕事部屋に入ってくる)
ねえ、見て見て。地下鉄駅まで13分の土地が、たったの990万円だって!

(気のなさそうに)へえ、どうせ土地だけなんだろ?

それでもずいぶん安いじゃない。33坪でサラ地の南向きよ。

(パソコンから目を離さず)ふうん、坪30万か。まあまあってとこかな。どれどれ、ちょっと見せてみな。(ようやくチラシを手に取る)

(したり顔で)ハアア、なぜ安いのか分かったぞ。

バブルがはじけて、土地の需要が減ったからでしょ?(他に何があるの、という顔)

それだけじゃないね。ほら、番地を地図で見ると、国道と環状通りに挟まれてる。こりゃ騒音がひどいぞ。

なるほどねぇ。(簡単に納得)

(追い打ちをかけるように)それに、確かこの場所は、送電線の真下だ。

電磁波の影響がどうとか問題になってたわね?

(とどめを刺すように)だいたい、ここのマンションのローンはまだたっぷり残ってる。子供の学費も必要だし、景気は当分回復しそうにないし…。

(半ばやけくそ気味で)分かったわ。要するにここが一番なのよね。

(内心、ほっとしながら)そういうこと。どっちみち、俺は宝石や不動産には興味がないからな。

分かってるわよ。 (別のチラシに目を移して)あら、こっちは『お金を次々に呼び入れる幸運の黄色い財布』だって!

なんだか高倉健の映画に出てきそうな安直な名前だな。だいたい、そんな財布くらいでドカドカ金が入ってくるなら、誰もこうやってあくせく働かないよ。
(と言いつつ、しっかりパソコンで遊んでいる)

でもこの人、宝くじが2回も連続して当たったんだってよ!ほら。

ふうん、どれ。(結局手にとる)ケバケバしくてとても使う気にはなれないけど、どうやらこの色に秘密があるみたいだな。

色にはパワーがあるのかな。

そういえば、赤いパンツがどうのこうのって話があったっけ…。(話がいきなりワープ)

何かの日に、お嫁さんから赤いパンツをもらってはいたら、お姑さんが下(しも)の世話にならずに済む、とかっていう話でしょ?

そうそう、それ。男も赤いパンツはくと、何かパワーがつくんじゃなかったかな?たとえば精力絶倫になるとか…。

(きっぱりと)そんな話はありません!

(がっかりして)それはなかったか。

ところでそろそろ父の日だけど、何か欲しいものある?

う〜ん、そうだな…。(考え込む)いっそ、この「幸運の黄色い財布」ってのを買ってもらおうかな…。

さっきの話と、全然違うじゃないの!

(結局、サイフはごく普通の茶色の革財布となりましたとさ)






 
《バナナケーキ》

〜ある午後のコーヒーブレイク。居間のテーブルには、コーヒーと小さな饅頭が1個だけ載っている。

あれ?今日はヤケに寂しいな。まあ、いいか。(とりあえず座る)

(ちょっと困った顔で)それがね、昨日確かに買ったはずのバナナケーキが、どこにも見当たらないのよ…。

(残念そうに)えっ?ちょっと食べたかったな、アレ。
 (注:バナナケーキは二人とも好物)

(意外な顔で)私が寝たあとで夜中に食べたんじゃなかったの?

(ぶ然として)食べてないよ。そもそも買うときに、「今日のオヤツは別のがあるから、これは明日半分ずつ食べようネ」なんて言ってたじゃないか。
 (注:バナナケーキは前日にスーパーで一緒に買った)

確かにそう言ったけど、どこ探しても見つからないから、てっきり…。

店のカゴに忘れてきたとか…。いや、それはない。(ふと思い出す)確かにカゴから袋に移した記憶がある。柔らかいから、つぶれないように一番上に置いたんだ。

(さらに困った顔で)でも、ないのよ…。

(立上がって)よし、ならばオレが探す。(台所をあちこち探索)

ないな…。もしかしてゴミ箱とか…?(ゴソゴソ)ん〜、ここにもない。

もういいわよ、今日はこれで我慢して。(完全にあきらめた様子)

しかし、ないハズがない。(きっぱりと)どこかに必ずある!

〜もう一度台所に行き、冷蔵庫を全部開けて調べる。すると、冷凍庫の奥から凍ったバナナケーキが出てくる。

あった!(勝ち誇ったように)ほ〜らな、絶対あるはずなんだよ。オレの記憶に間違いはない。(些細なことで得意満面)

私、全然入れた記憶ない。でも、他のものは別の場所にしまってあるから、やっぱり私よね。もうトシだわ…。(やや落ち込んだ様子)

(慰めるように)生クリームが傷まないように、冷凍庫にしまったんじゃないの?

それはないと思う。私はてっきりあなたが夜中に食べたものとばかり…。

(再びむっとして)だ〜から、それはないって言っとるダロ〜ガ。「半分ずつ一緒に食べようよ」って女房から言われたものを、いくら腹が減ったからといって、一人で食べてしまうような薄情な男じゃないぞ、オレは。
(たかがケーキを、強引に愛情問題にまで持込む構え)

(シラ〜として)アラ、私ならおなかが空いてたら、さっさと食べちゃうわ、きっと。

ふん、ス〜様(妻のこと)の愛情とやらは、しょせんその程度のものなのさ。

そうかもね。(あっさり認める)

ハッハッハ…。凍ったバナナケーキもなかなかオツなもんだな。

そうね。ホッホッホ…。

(なぜかケンカにもならず、静かに時が過ぎて行く)