"篠美咲き" /2010.6.19



 自宅ライブ「音の庭*歌の森」の通算3回目が無事に終了。今回は遠方から美唄アコースティッククラブの谷仁さんを客演として招き、前後半に別れて歌った。
 サブテーマは互いの住む地域である「篠路」「美唄」の頭文字をひとつずつとって、「篠美咲き」とした。完全な造語だが、ライブのタイトルはイメージを作るうえで、非常に重要だと私は考えている。互いの住む地域の狭間に咲く一輪の花として今回のライブを位置づけ、地域や風土を反映させた構成で臨んだ。

 前半の40分は私の担当。あいにくというか、幸いにというべきか、気温はぐんぐん上がって、午前中には30度近くまでになった。会場となる2階も28度を超える暑さ。自宅南側では住宅工事の真っ最中なので音がうるさく、南側以外の窓を開けて風を室内に流しながら、予定通り午後3時ちょうどにスタートした。

 前半の構成は短めのカバー曲なども取り混ぜ、全体で10曲。うち、オリジナルは6曲である。曲は順に以下の通り。(◎はオリジナル)


「里山景色」◎
「佇む石」◎
「Teimi/丁未」◎( 作詞:ふじりん)
「東京」(マイペース)
「夏の思い出」
「赤い花白い花」
「雨ニモ負ケズ」◎(作詞:宮沢賢治)
「この道」
「向い風」◎
「風街だより」◎


 参加者は私の学生時代の友人夫婦や、妻の職場友達など、歌い手を含めて8名。先月実施の自宅ライブ「桜の宴」との重複は、私たち夫婦をのぞいてなく、「場は同じでも、聴き手が異なる」という点では恵まれていた。


 大きなミスもなく進んだが、やはり暑いことがやや集中力を欠く要因として働いたかもしれない。「Teimi/丁未」の2番出だし部分で、歌詞の入りが一瞬遅れ、一部を飛ばして歌わざるを得ないという失態をやらかした。
 この日は自宅ライブを聴くのはもちろん、我が家を訪れることも初めてというM子さんがいて、実はかなり気を遣った。しかし、暑さにもめげず、熱心に聴いてくださった。

 構成としては、1曲目の「里山景色」が私の生まれ故郷である幌加内町の歌。続く「佇む石」が客演の谷さん夫婦が住む美唄の歌。3曲目の「Teimi/丁未」が、参加者のひとり学生時代の友人T君の故郷である夕張の歌、という順で、自分や参加者にゆかりのある地にちなんだ曲をそろえた。
 続く4曲で、妻と知り合った東京や周辺の関東地区の歌を、そこからJターンして札幌に戻るシナリオ上で「この道」を歌った。ラスト2曲は現在住む地である「篠路」にちなんだ歌で締めた。

 ライブに不可欠な「起承転結」を十二分に意識して臨んだが、いつもよりオリジナルが多めなのは、客演の谷さんの存在を意識したせいだ。

 後半40分は谷さんの担当。谷さんとは昨年秋に美唄で実施された「森の広場の音楽会」に招いていただいたのが縁で、今回のジョイント形式のライブは、そのお返しのような位置づけである。
 若い頃からオリジナル曲中心の活動を続け、独立開業のために一時期中断、最近になって活動再開という、私とよく似た弾き語り活動歴を持つ。
 違っているのは、私よりもはるかに輝かしいキャリアがあること、そして私より一回り以上も若いことだろうか。

 今回は7曲を歌っていただいたが、すべてがオリジナル曲。「土地」「街」というキーワードにうまく配慮しつつも、独自の世界を展開してくださった。さすがである。
 ボサノバ風の新曲「栄枯盛衰」、透明感のある「初秋の頃」、力強く訴えかける「大地に根をはる柳のごとく」など、印象に残った。

 互いのステージ終了後、「セルフ・アンコール」と称し、賛美歌の「いつくしみ深き」を二人で歌った。事前にメールで音源を送ってもらい、谷さんがリードボーカルを、私がイントロのハモニカと途中のサブボーカルを担当。
 直前に音合わせを一回やっただけだったが、充分にイメージ練習してあったので、何とかうまく合わせられた。


 ほぼ予定通り、午後4時半過ぎにライブ終了。その後階下に移動し、持ち寄った食材で茶話会を繰り広げる。あれこれ話が盛り上がって、解散は午後7時前後であった。暑さのせいで用意した飲み物がやや不足した印象だった。なかなか思い通りに運ばないのがライブの難しさだ。

 茶話会のなかで飛び出した特筆すべき話題がある。「妻のライブサポート」といった主旨だが、要は「弾き語り道楽」にふける亭主を、妻がどこまでサポートするか?といった類いの話だ。

 音楽仲間は大半が既婚男性で、妻が夫のライブ活動に全く無関心だったり、カンペキにサポートしたり、暇があるときだけつき合ったりと、その形態もさまざま。突き詰めれば夫婦の問題であり、第三者が介入すべきものではない。
 我が妻の場合、活動を本格再開した6年前は、かなり深くつき合ってくれた。自宅ライブも含め当初の2年程は、ほぼすべてのライブに「引率」してくれたように思う。
 最近では私自身がライブ活動にすっかり慣れ、持参する備品も一人で搬入移動が可能なよう調整したこともあり、妻の引率度は激減した。
 つき合ってくれるのは、遠方のカフェライブか自宅ライブくらい。妻の勤めに影響する介護施設系ライブや、夜のライブに妻はまずついてこない。写真が必要なときは手近な方に頼んで写してもらう。私もじょじょに「自立」しつつあるらしい。

 谷さんの奥様は、非常にサポートが徹底していて、備品の搬入やライブ写真の撮影はもちろん、遠方ライブの移動ナビゲーションから、時にはタイムキーパーや運転手代行までやっておられるようだ。
 唯一やってないのが、ライブそのもののサポート。たとえば何らかの楽器を演奏したり、サイドボーカルとしてハモったり等々。陰で支える役割はいとわないが、目立つのはイヤ、ということらしい。奥ゆかしいのである。

 実は私も以前に似たような役割を妻に打診したことがある。ハモニカやボーカルが無理なら、せめてタンバリンかカスタネットでも…と。しかし、アッサリ却下。理由は同じで、「目立つことはアナタがやりなさい」。
 年に数回にも及ぶワガママなる自宅ライブを気持ちよく受け入れてくれるだけで、よしとしなくてはネ。

 暑さ対策の課題は残ったが、初めて実施した客演形式のジョイントライブそのものは、互いの個性がうまく引き立て合った感じで、よかったと思う。ライブの常連であるSさんからは「新鮮味があって楽しめた」、初めてお招きしたM子さんからも「素敵なひとときでした。ぜひまたお招きを」との好評価をいただいた。
「新しい歌い手」「新しい聴き手」は、やはり場を活性化させる得難い要素である。