間取り最終確定へ
ご返事がおそくなりました。金曜日夜に工務店に伺い相談してきまして、間取りがほぼ決まりました。菊地様のご提案を大部分採用させてていただきました。本当ににありがとうございました。明日の日曜日にでも工務店の手書きの絵をFAXさせていただきます。
ただ、UTルームにつきましては、ミニシンクを収納に隠したいとの私たちの要望から、菊地様の妥協案を参考にして工務店と決めさせていただきました。そのため、父親室からトイレへの通路が開き戸になってしまいました。トイレに行く時は外へ開くのでまあいいかと妥協しました。詳細は明日のFAXをご参照ください。
なお、先回のメールでご提案いただきました件に関してですが、
●父親室の件
菊地様案の父親室を455だけ北に縮めて、2階と壁をそろえる案を使わせていただきます。また、玄関右の袖壁をくり抜いて、と言うより柱のみにして行き来できるようにします。
デッキと玄関の行き来が必要なのは、目の前に車が置いてあるので、多少足が悪い父にはデッキから庭への昇降が難しく、玄関側から降りられたほうが良いという考えからです。
●絵本室の件
考え直して普通の部屋にします。その代わり、絵本を読んだりするのにふさわしいように内装材の柄等をチョッピリこだわることにしました。ご指摘、ありがとうございました。
●階段室と絵本室の通路
菊地様の、窓は引戸の板ガラス案を使わせていただきます。しかし、木製のU字形ステップの良い材料が思い浮かばず、昇降するなら南壁と東壁をつなぐ木製の細い棒か板を、直角二等辺三角形の長辺のように入れてはどうかとの話がでました。
菊地様のほうで良い材料をご存知ではないだろうか、聞いてもらえませんか?とのことです。私も含め、この取り付けた感じが今ひとつイメージしづらいので、何かわかりやすい絵等はありませんでしょうか?
「このステップを無事に昇れたら、勇者として認める」という儀式の件、元保母だった妻にたいへん好評です。なんとかして菊地様のアイディア通りにしたいと考えます。申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
●外物置の件
広さ一坪、または横幅がもう少し広いものを、家事室の左手、西6畳和室からみて後ろやや左に設置したいと考えています。できれば木製の物置を置きたいと考えますが、そんな物置を安く作ってくれるところがまだ、見つかっておりません。インターネットで今後探す予定です。
なお、今ごろになって気づいた工務店の特徴なのですが、今時珍しい、竹古舞を用いた土壁作りの工務店でした。(もちろん、お客が希望すれば、ボードや断熱材を使った作り方もするそうです)ですから、斬新なデザインやアイディアで勝負ではなく、昔風の高級感ある作り方で勝負するお店だったわけです。今まで、なんとなく歯がゆい感じがしていた理由がわかったような気がしました。
お酒が入ってますので、今日はここで失礼させていただきます。インフルエンザがはやっていますので、お体を大切になさってください。
札幌の菊地です。どうやら大きな山を越えられたご様子で、私のほうもほっとしました。大枠で私の提案を受け入れていただき、大変うれしく思っています。
●父親室〜UT扉の件
できれば引戸がよかったのですが…。図面を拝見してから再度コメントさせてください。
●勇者のステップの件
私が考えていたのは、バリアフリー用の木製手すりです。なにせバリアフリー用ですから、つかみやすくて丈夫です。ずばり200〜250の幅のサイズがあれば一番いいのですが、もしなければ、長い物をカットし、専用金具と組み合わせれば最適のものができると思います。このあたりは工務店さんのほうが詳しいでしょう。
参考パースを描きましたので、添付します。2階ブリッジ上部から見下ろした感じです。階段手すりの一部は描いてませんが、おおよその様子はお分かりになるでしょう。
内装などのバランスにとりますが、安く仕上げるなら、普通の角材の角を丸くして組み合わせ、U字形にして、長いビスなどで壁にがっちり止めるとよいでしょう。
工務店案の45度の棒もなかなかいいアイデアだと思います。取付け方が難しくなりそうですが、もし45度の専用金具などがあれば、同じような形でつけられそうです。もちろん、普通の角材を45度にして、長いビスで止めてもかまいません。大屋さんの好みと、予算、技術などの面から最終決定してください。
「勇者のステップ」は、我ながらいい命名だと思います。私は53歳ですが、コンピュータゲームなどもいまだにやっていて、いわゆる「遊び心」はまだ十二分に持っています。
「勇者として認める儀式」は、以前に私が作った子供用3段ベットの一番上に昇れるかどうか?を子供たちにけしかけるときに使った言葉です。
垂直のハシゴだったので、結構難しく、長男→長女→二男の順にクリアしましたが、それぞれかなりの月日を要しました。マンションに住んでいた頃の話ですが、家にこういうしかけがあると、生活や子育てが本当に楽しいものです。
●外物置の件
その位置で1坪だとすると、家事室からの外回り動線が難しくなりそうですね。西和室の北側窓の通風もどうなりますか…。大きな物がないのなら、多機能デッキの下部に作る手段もありますよ。
独立したものは、北欧などの輸入品のキッドで安いものがホームセンターなどでも売られています。こちらの場合は、バルコニーの木製手すりなどのデザインと合ったものを選択すれば、建物全体の雰囲気をこわさずにすみます。塗料なども当然あわせるべきです。
工務店は地元では長い歴史があり、ハード面では信頼出来そうですが、プランニングに代表されるソフト面では、やや物足りなさがあったようです。ふとした縁で私と大屋さんがこうしてメールをやり取りしているもうひとつの意味が、おそらくそこにあったのでしょう。
それではFAXをお待ちしています。
…勇者のステップ説明パース/TOM工房…
札幌の菊地です。FAX届きました。とても住みやすそうな間取りにまとまっていると思います。私のところに最初に送られてきた原案と比べてみると、その差がより鮮明になります。
…TOM工房の修正案を元に、工務店がまとめた間取り図最終案…
(先方のスケッチをもとにTOM工房が作図)
気がついた点を箇条書きにします。
●1階西南の部屋
居間と一体にしながらも、畳を敷くことで心理的に区切ったようですね。こたつを置いて雑談したり、寝転んで居眠りしたりなど、居間の使い方のバリエーションが広がりそうです。
●父親室北側出入り口
開き戸になったうえ、幅が910に戻っていますが、それでよかったのでしょうか?
●居間の壁
広くなったのはいいのですが、その反動で壁が極端に少なくなっています。壁際に置きたい、あるいは置かざるをえない家具類をもう一度チェックなさってください。
●階段
降り口が当初の私の案より、227だけ西に移動していますね。そのことで回り部分が一部正方形の形状となり、安全の面では大変いいのですが、弊害として、階段の裏側が居間の天井に一部食い込んできますが、ご承知でしょうか?
居間の天井に階段の一部が斜めに食い込んでくるのは、実はあまりみっともいいものではありません。狭い私の家でも6段分が居間に食い込んでいますが、圧迫感がないよう、けこみ板(垂直部分)をすべてなくし、居間から階段の昇り降りが見えるようにあえてしてあります。夜は居間からの光がこの隙間から抜けて階段を明るく照らし、足元が明るくて、非常に幻想的な雰囲気を作ります。ご参考までに。
●勇者のステップからの開口部
階段半分の幅かと思ってましたら、全幅ですね。階段上部天窓の採用で、ここからの光はそれほど期待しなくていいはずですが、最後は好みの問題でしょうか。
(ちなみに、窓やドアは多ければ多いほど、大きければ大きいほど構造的に弱くなり、コスト高になります)
●2階トイレの幅
幅が原案より少ない910になっているのは、工務店の要望でしょうか。実は階段やトイレの寸法で最近多用されている1000という寸法は、とても不経済な寸法なのです。木材の規格は輸入ものも含めて、大半が910の倍数に近いものになっているからです。
もし1000の寸法が指定されていると、使う材料は1820か2730を切って使うしかありません。端数部分は捨てることになり、見積上は大変な無駄が生じます。ローコスト住宅ではこれが馬鹿になりません。
父親室北側出入り口寸法が、いつのまにか910に戻ってしまった訳も、おそらくこのあたりでしょう。(910を1000にするだけで、10万近くは違ってくるはず)
私自身は、この不経済な1000の寸法があまり好きではありません。自宅の階段もトイレも幅はすべて910ですが、不便を感じたことはありません。「みんながやってるからウチも」ではなく、それが自分たちの生活に必要なのか?を全ての基準にすべきだと考えています。
●UTの収まり
内部はなんとかすべての希望要件が満たされたようですが、弊害として、居間からUTへの出入りが窮屈になってしまいました。車椅子での転回はもちろん、出入り自体がかなり難しいでしょう。父親室北側出入り口も条件が悪くなっているし、その辺がとても気がかりです。皆様が納得づくなら、意義は唱えませんが…。
大屋です。だいたい終わったと1人喜んでいたのですが、なかなかうまくいかないものですね。ご指摘の件、ウーンと考えてしまった次第です。
●父親室北側出入り口幅
これはその場で手書きしたので、前のままになっています。実際の図面を書く時は1000に広くすることになっています。注釈をつけるのを忘れてしまいました。いつもながら、説明が足りず申し訳ありません。
●居間の壁
良く考えると、壁をとりすぎたかな?と思います。リビング左側の真ん中の通し柱の南北に壁をいれようかと考えています。
1案:南側は窓から2730はあけて910壁、そして通し柱、その北側に910壁、910引戸、1820壁
2案:南側は通し柱までは1案と同じ、そして通し柱より奥は、現状と同じ
●階段の移動による居間天井くいこみ
気がついていませんでした。工務店と相談します。
●勇者のステップからの開口部幅
私は逆に全幅と思っていました。窓は大きくという気持ちが強いのでしょう。ただ、ムダな広さでもあり、考えてみます。
●2階トイレ幅
2階のトイレはあまり体の悪いものは使わないだろう、という気持ちがありました。まあ、このままでよいと思います。
●居間からUTへの通路
ウーン、これも気がつきませんでした。ただ、絵には書かれていませんが、キッチンは2700ではなく2550を使う予定ですし、ミニシンクや洗濯機の奥行きも910はないので、少し広い通路が確保できるでしょうから…と、思った矢先、引戸では困るか?それに、車イスではやはり入りにくいかな?と気がついた次第です。これも工務店と相談してみます。
もうちょっとだけ、がんばって考えてみます。
札幌の菊地です。頂上はもう見えているのに、最後の一登りがどうにも辛い。山登りにたとえると、まさにそんな心境でしょうか。ここが最後のふんばりどきです。
●居間の壁
置く物がなければ、現状でもいいと思いますよ。ただ、玄関と居間の境にある窓はもういらないと思いますが。玄関右の袖壁を柱だけにしてしまい、強度面で不利になっていますから、ここを壁にしてやれば、かなり違います。
中央に壁を追加するなら、2案がいいと思います。西和室の壁と引戸はいじらないほうがいいでしょう。いずれにしても、南側に壁は作らない方針ですね。
●階段の居間天井へのでっぱり
工務店は知っているはずですよ。伝えるのを忘れたと善意に解釈しましょう。実はこうしたほうが構造材が少なくて済み、作りやすいのです。住み手が納得すればこれでもいいのですが、奥様がどう思われるでしょう。
我が家のように、けこみ板を抜いてしまうのもなかなかいいアイデアと思いますが。
●UTの収まり
現状は洗濯作業がやりやすく、作業が終われば扉で隠せるしで、まさに「女性に優しい家」となっています。そのあおりで、高齢者が辛くなっているわけです。この両者を同時に満足させるレイアウトは、非常に難しいと思われます。
以前に私が送った妥協案を奥様が受け入れてくだされば解決ですが、「洗濯流しと洗濯機を同じ箱に入れて扉で隠す」というのが絶対条件だとすれば、この案はボツです。
そこでみんなが少しだけ譲歩し、みんなが90%幸せになれる妥協案を添付します。
この案のポイントは、洗濯と洗面台の作業スペースを背中あわせで共有したことです。HPにも同様のテクニックが書いてありますが、狭さを補なう場合によく使う手です。両者の作業が同時進行する可能性は極めて低いので、たぶん問題ないはず。
これによって居間からUTへの通路が広くなり、車椅子がスムーズに通行可能となります。父親室からUTへも引戸で対応出来ます。UTが多少暗くなりますが、ガラス引戸と上部開放欄間からの光で、そう問題にはならないでしょう。
3枚引戸が1350の1枚引戸となり、通常は西側に開けておいて、洗濯機コーナーの目隠しにします。入浴時と洗濯機使用時のみ、東側に閉じます。扉類が大幅に減って、かなりのコストダウンになります。もしこの使い方が嫌なら、それぞれにクローゼットに使うような2枚折戸をつけます。(開けるときはそれぞれ西側の壁にたたむ)
洗濯機コーナーが浴室に近いので、残り湯などが使いやすくなります。UTの裏側に位置したので、洗濯機の音も静かでしょう。大きさをぎりぎりにしたのは、浴室前とトイレ前の作業スペースをなるべく広くするためです。介護等の可能性を考えると、これが譲歩可能な限界だと思います。
収納は階段下収納と洗濯機コーナーの上部400くらいを棚にすることで解決します。我が家の階段下にも全く同じ大きさの収納スペースがありますが、掃除機、ミシン、裁縫箱、古新聞1ケ月分、アルバム30册、これら全部が入って、まだ余裕があります。充分足りるはずです。
以上の案、みなさまでよく話合ってみてください。
…UTの第2修正案/TOM工房…
大屋です。昨日、工務店に出向いて相談してきました。今度こそ、仕様が固まった?と思いたいです。
●居間の壁
お勧めどおり、2案となりました。
●UTの収まり
さんざん考えた末、当初の菊地さまの広いUT案を活かしたく、添付図のようになりました。父の部屋からの出口も引き戸に出来ました。洗濯機やミニシンクは、できれば木の板でかくす予定です。2度も案をだしていただき、本当にありがとうございました。
●2階寝室とフリースペースの壁
南側から910だけ壁を残し、のこり2730はふすまか障子にして、フリースペースとつなげることにしました。そうすれば、初夏から秋にかけては、広い部屋で家族で眠れます。
●ダイニングのテーブル
菊地様の自宅にあるような、台形型のテーブルを大工仕事で作ってもらう予定です。
次の工務店との相談でも間取りが変わりませんでしたら、この作業も完成となるのですが…。また改めてご連絡します。
次は内外装をどうするか、頭を痛めなくてはいけなくなりそうです。純和風の内装にこだわる工務店なので、私のローコスト仕様の説得は骨が折れそうです。
…UTの最終決定案…
札幌の菊地です。
間取りに関する諸問題がほぼ解決の見通しで、ようやく先が見えたようです。施工に関する大きな問題はあまりないはずで、間取り計画はほぼ終結したといっていいのではないでしょうか。
家族の様々な要望をさばき、工務店とアドバイサー役の私との関係をすべてやりくりした大屋さんのご苦労は、さぞかし大変だったことでしょう。材料の選定や外部デザインなど、まだまだ解決すべき事柄は残されていますが、おそらくよき方向に進むことでしょう。本当にご苦労さまでした。
UTの収まりは、結局私が以前に出した修正案に極めて近いものになりましたね。ミニシンクの向きが洗濯機と並列でなく、やや使い勝手の悪い直角配置になってしまいましたが、UT全体から見れば、この案が最善だと思います。位置が脱衣所の奥で完全なブラインドになっているので、仮に隠し扉がなくてもそう目立たないと思いますし、洗濯機と一体にして扉で隠すのもまた容易でしょう。
女性の代表である奥様には小さな譲歩をしていただいたようですが、もし第三子が生まれたケースを考えた場合、浴室前の広いスペースは、赤ちゃんの入浴時にも大変有効だと思いますよ。私は3人の子を赤ん坊の頃に自ら入浴させた経験があるので、このことを身に染みて分かっています。
つまり、広いUTは決して高齢者のためだけではなく、子供や女性のためでもある、ということになりましょうか。
2階寝室とフリースペース間の壁を少なくする件は、お子様が小さい現時点ではよいと思いますが、お子様が成長されて子供室の改築時期がきたときに、見直しが必要となるかもしれません。思春期になったときの子供室と夫婦寝室があまりに近く、オープン過ぎるからで、1階西南コーナーの間仕切り戸増設なども含めた問題となるかと思います。
家族は日々成長し、変化していくものですから、それにあわせて家作りも徐々に進化してゆくべきものだと思います。そのためには家自体にフレキシブルな要素を残しておくべきで、家族の形態が変貌したときに家が対応不可能であったり、莫大な改築費用がかかったりするのは、お金の面でも心理面でも大変なストレスになりますから、極力避けなければなりません。
「勇者のステップ」と「階段の居間天井くいこみ」がどう決着したのか気がかりです。確認申請には無関係で、現場が始まるまで流動的な要素かと思いますが、決まった段階で教えてください。
こちらはここ数日暖かい日が続いています。襟巻きをすると暑いくらいです。このまま春になってくれればいいのですが。札幌の様子はいかがですか?
お問い合わせの件ですが、「勇者のステップ」は、菊地さんの案にそって作る予定です。また、壁が多い方が良いということなので、絵本室への窓幅は半分にしました。
「階段の居間天井くいこみ」は、壁と同じように材料でおおうことになっています。階段からすかしを入れることにはなっておりませんが、内装をしっかりやる工務店なので、任せてみようかと考えています。
来週の2/22日(土)には決定した?間取りと、見積もりを出してもらう予定です。そのさい、間取り図をFAXと郵便で送ります。
『素人に良い間取りがわかるわけもなく、菊地さんのアイディアがなければ、平凡な家になってしまったろうな』と妻とも話しております。真夜中までお仕事をしていただき、ほんとうにありがとうございました。
大いなる成果
約1カ月半にわたる三度目のインターネット住宅間取り相談は、当方の修正提案の大半を受け入れていただくという最高の結果で終わりを告げた。短い時間でまとめた当方の修正案だったが、紆余曲折はあったものの、結果的に基本路線は最後まで崩れることはなかった。相談者の方にも素人や工務店とはひと味違ったプロの建築家の技術力を認めていただき、喜んでもらえたと自負している。
相談の途中でも幾度か触れたが、大勢の家族と工務店、そして遠方の偏屈な設計士の間にたって様々な事柄の仲裁役をつとめた相談者の立場は、自分の家の事とはいえ、さぞや大変だったに違いない。そして面識のまるでない当方の提案を、ほぼ丸ごと受け入れてくださった工務店の度量の広さと寛大さにも感心させられた。もちろん、施工する側の立場にも充分配慮して提案したつもりだが、万が一工務店側がかたくなな姿勢を見せていたなら、計画はこうスムーズには運ばなかっただろう。
今回の企画が成功した理由のひとつに、施主と建築家の家作りに対する考えに、大きな差がなかったことがまず第一にあげられる。依頼者には私のサイトの家作り連載にくまなく目を通していただいたようで、大いに共感もしていただいた。ついには我が家と同じ多機能台形テーブルまで作ってしまうという。相談のなかで示された高齢者や子供、そして女性などに幅広く気配りする姿勢、そして暮しの中で新しい発見や遊びを大切にする姿勢は、私の生き方ともよく合致する。
「自分の生き方にそう建築家を見つければ、家作りは成功したも同然」と常日頃から考えているが、今回はそれにぴたりあてはまるケースだった。
相談を終えてみてつくづく感じたのは、やはり私は話すより書くほうが得手である、という事実だった。コミュニケーション手段として話すことはもちろん重要だが、こと家作りに関すれば、話すことと書くことの差はほとんどないといっていい。
むしろ面談を重ねて様々な考えや主張をその場で調整するより、少しの時間を置きながらメールの交換を重ね、議論を進めたほうが互いが冷静になれ、よりよい解決案が出る可能性が高い。私のようにひとつの言葉で感情がすぐに表に出やすい人間にとっては、話すことよりはるかにメリットがある。今回はそのことを身を持って知った。
今後はメーリングリストなどを活用して、ご主人だけでなく、奥様や同居予定のご両親、施工予定の業者なども交えた複数の方々と議論を交わす手法が、より有効になるだろう。パソコンの苦手な高齢者なら、お孫さんに代筆(代メール?)などしていただければ、家作りの準備段階として最適のコミュニケーションが計れるに違いない。
設計費用の中で、施主との打ち合わせに要する時間給の占める比重が馬鹿にならないが、こうしたEメールによる打ち合わせを有効に使えば、設計費用の削減につながるのはもちろんである。議論をすすめるスピードが面談に比べると格段に早いので、家作りに大切な「鉄は熱いうちに打つ」という大前提が崩れる心配もまずない。互いの忙しいスケジュールを調整して面談を重ねるわずらわしさからも解放される。
今回のように土地をハウスメーカーや工務店に見つけてもらうと施主は非常に楽だが、その後の一切がハウスメーカーや工務店主導で進んでしまうという、ある意味での弊害も覚悟しなければならない。「すべてあなたにおまかせ」の施主ならこれで問題ない。だが、家作りに対する強いこだわりが施主にあり、それが当該メーカーや工務店で柔軟に対応出来なかった場合、計画はたちまち暗礁に乗り上げる。
家作りに強いこだわりがあり、なおかつ特定のメーカーや工務店におかませもしたくないという場合は、先にも触れたように、まず人生観や価値観の面で馬の合いそうな建築家を見つけ、一緒に土地を見てもらって土地を契約する段階から家作りに関わってもらうのが理想である。
土地が何らかの色にそまっており、しかも設計がある程度進んだ段階から設計依頼を受ける建築家もいないではないが、ちょっとした提案でもすべて工務店やメーカーの了解を得る必要がでてくる。今回の私の場合、その点で多少歯がゆさを感じたのは正直な事実である。なにより、中途段階で他の設計者の介入を極度に嫌うケースが大半だから、よくよく考えなくてはいけないだろう。
計画の実現性が強い場合、相談内容もよりシビアになり、解決にもかなりの時間を費やすので、モニター相談の要素を割引いても、費用面での見直しが必要なことも痛感した。
物である商品と違ってアイデアには形のないものだが、必要とされる側にとっては、具体性のある物と比べても全く遜色なく、充分に意味と価値があるものだと思っている。それどころか、もしもひとつのアイデアによって家族の夢や希望が限りなく膨らんでいくのだとしたら、物よりはるかに意義深いものとなるに違いない。
自分の手法と技術力、そして方向性に大いなる自信と確信が芽生えた今回の相談だった。微力だが、人々に夢と希望と生きがいを提供する活動に、今後とも尽力していきたいと思う。