家作りNet相談〜その1
 海野さんのこだわり二世帯船の家



「本音で暮らす手作りハウス」本編の第1部を書き終えた直後の2001年6月上旬、一通のメールが私のもとに飛び込んだ。連載中にも他のコーナーを見にきた方を中心に、「ところで家作りのほうの連載もなかなか面白いですね」との評価を数多くいただいていた。だが、今回のメールはそれらとは明らかに内容が異なっていた。

「非常に面白かったので、思わずメールをしました」
 ここまでは同じだが、この方にはすでに進行しつつある具体的な物件があったのだ。しかも、「ハウスメーカーじゃ絶対イヤだ」という強いこだわりがある。本やインターネットで相当勉強されていて、いくつかのプランがすでにあり、なんと自分で模型まで作ってしまったという。お住まいが関東地区ということもあり、どう考えても受注には結びつかないが、「ご意見ご要望ご質問などありましたらぜひどうぞ」などとページに書いている手前もあり、詳細な返事をしたためた。

 それから約1カ月、メールでの「住宅よもやま雑談」は絶えまなく続き、当初の予想をはるかに越える成果があがった。このままメールボックスにしまいこんでおくのはいかにも惜しい…。ついそんな誘惑にかられ、先方の許可をいただいて、その顛末を詳細に記すことにした。


 ・CONTENTS・

   設計士に笑われる?
   有料へのこだわり
   船の美学
   アイディアの値打ち
   なんちゃって間取り
   二世帯同居の難しさ
   大切な趣味の空間
   閃きの最終修正案



 
設計士に笑われる?



 はじめまして、横浜に住む海野と申します。HPでTOMBOXの完成までの様子を読ませて頂きました。非常に面白かったので、思わずメール書いております。

 現在私は、両親と二世帯同居を検討中であり、土地探しに毎週明け暮れていました。今日菊地さんのこのページを読んで、「そうそう」とうなずいておりました。現在、土地のメドはたったのですが、実家売却の方の話が進んでおります。うまく実家が売れれば、この土地を購入できるのですが、ダメな場合はあきらめなければなりません。売りに関しては、不動産屋と父に任せているのですが、なんとも待っている時間がもったいない。
 持て余した時間に我慢できず、素人ながら本を購入し、間取り作成、そして模型まで作ってしまいました。パッシブ換気の事を本で知り、検索していた所、こちらのページにたどり着いたわけです。

 土地が決まり、設計士さんにプランの依頼をする時、こんな感じでお願いします、と模型や間取りをみせたら嫌がるでしょうね。結構外装の材料まで指定したりして…。この土地にどんな家が建てられるんだろう?と思っていたら、ここまで来てしまいました。
 菊地さんは、「絵に描いた餅」を実現させたのでしょうが、私のは本物の「絵に描いた餅」で、しかも建築規制なんてまったくわからないものだから、この絵を実現するのは不可能でしょう。設計士さんにも笑われるでしょうね。(ちなみにハウスメーカーは絶対イヤなんです)
 仕事の昼休みだったんですけどね。面白かったので感想まで…。続き読ませていただきます。(その前に仕事です)



 ページへのご訪問ありがとうございます。「パッシブ換気」の項目検索からいらっしたとは意外でした。「家作り」として検索エンジンへのジャンル別登録をしていないせいですね。あの連載には力を入れていますので、応援メールは大変励みになります。まだ第1部が終わったばかりですが、続編をまた書く気になりました。

 土地購入、そして家の新築という人生における大きなイベントにまさにとりかかろうとしているようで、これからが大変ですが、大いなる楽しみでもありますね。
 ハウスメーカーではなく、建築家の設計でやりたいとのご希望だそうで、これがお近くの方ならば、この私もぜひ立候補させていただきたいと思いましたが、遠い関東ですからそうもいきません。
 しかし、縁あってこうしてメールをいただいたわけですので、私も出来るだけの協力をさせていただきます。餅を「絵に描いたまま」にしてしまわないために…。

 メールにありました「問いかけ」のいくつかにお答えしておきます。
 まず、施主が建築家にいくつかの間取りプランと模型などを見せることですが、それ自体は悪いことではありません。施主側に関する情報は具体的にたくさんあったほうが建築家は助かるでしょう。
 ただ、「これ以外はダメ」と断定的な言い方にしてしまうと、建築家に頼む意味はほとんどなくなります。法的な規制をチェックするのはもちろん、施主の生き方、暮らし方を注意深く観察し、潜在的な願望まで引き出すのが優れた建築家だと思います。
 いまは不況で仕事が少ないので、施主の言いなりに、「さあ、あなた様のおっしゃる通りに設計しましたよ」という建築家もいるかもしれませんが、これでは建築家に依頼する意味がありませんし、費用の点でも街の工務店に頼んだほうがましかもしれません。
 建築家に細かく注文を出す施主に対し、反対に「細かいことはおまかせします」と、予算と大体の間取りだけしか呈示しない施主もいますが、最終的な家の仕上がりと満足度が、どちらがいいかは微妙なところです。
 仲間うちでもよく言い合いますが、極度に注文の多い施主の場合、おしなべて仕上がりや満足度は落ちる傾向にあるようです。結局は信頼関係の問題で、人間が相手のこの世ですから、何ごとも度を過ぎてはいけないのでしょう。

 施主がプランを練る場合でまず大切なのは、「建ぺい率」と「容積率」の数字です。家を建てるには、その土地に対して面積の上限が決められているわけです。この数字が小さい地域ほど住環境は良好と言えますが、逆に土地に対して建てられる家が小さくなってしまいます。
 これを無視していくら詳細なプランを練っても無駄になってしまいます。購入する予定の不動産会社でも当然教えてくれますが、既存の土地で分からない場合は、計画の土地を管轄する市の建築課にゆき、住所を示すと誰にでもそれらの数値を教えてくれます。

 パッシブ換気に関してですが、自然の温度差を巧みに利用したとてもエコロジーな換気法なのですが、ちょっとした制限があります。
 詳しくは今後の連載で語る予定ですが、室内を暖房しない夏期は極端に効率が落ちますから、何らかの補助換気を考えておかなくてはなりません。どちらかといえば暖房期間の長い北国むきの手法です。関東ならば月平均気温が10度を越えるであろう4〜11月の間は効率が落ちます。
 以上、あれこれ書きましたが、何かの参考になれば幸いです。



 早速の丁寧な返信ありがとうございました。ここまできちんと返事いただけるとは思っていませんでしたので、大変驚きました。
 今回の件で、素人ながら勉強しております。勢いに乗って2級建築士でも勉強しようかと思いましたが、受験資格なしと知った時点で、勉強する気は失せました(実務経験0なので)。菊地さんは1級ですもんね。尊敬します。ご協力いただけるとのことですが、お金を払いますので、私の描いた間取りの添削をお願いできますでしょうか?小学生が書いたような、幼稚なスケッチです。
 設計士さんへ依頼する姿勢についてですが、菊地さんの言うように、あくまでも「こんな感じにしたいのだけど」と謙虚な姿勢で行くべきだと思います。やはり素人ですから…。それで、ひとつかふたつ「自分のこだわり」を伝えるべきでしょうね。いろんな意見、アイデアに常にオープンでありたいと思っております。
 ご指摘にもありましたが、プロの仕事分野にはあまり首を突っ込まない方が、いい関係を保てるでしょうね。気持ちを入れすぎて、期待や夢も膨らみすぎた施主さんは、完成品に満足できない場合もあるでしょうね。
 自分にしっかりした知識があれば、自分で図面書いて、施工監理できます。せっかくお金を払って依頼するのですから、「プロの設計士がプラン出すとこんなにすごいんだぞー、どうだー」そのぐらい言える自信に満ちた設計士さんがいいですね。

 実は土地が決まったらこの人にお願いしたいと思っている、設計士さんを見つけました。ただ土地が決まらない事には(=実家が売却できなければ)先に進めません。
 プランを早く見たい、でも設計士さんにプランを出してもらって土地がパーじゃ、設計士さんをもて遊んだことになる。そこで、私の「なんちゃって間取り」の作成に結びつきます。間取りまでは良かったのですが、わからない(めんどくさそうな)のが、高さと北側斜線の関係です。これは、「設計士さんに計算してもらえば良いや」とほとんど投げやりです。
 それでも具体的なイメージをつかみたかったので、「なんちゃって模型」まで作ってしまいました。これは本当、小学校1年生の工作よりひどい代物ですが、外壁の色のイメージがつかめました。私の場合、予算も限られているので、建材も調べています。今回菊地さんのHPに内装材、ホルムアルデヒドの事などが書いてあり、大変勉強になりました。
 私が、間取り等描くのは、何もしないで待っていると、「今の気持ちの勢いが消沈してエンストを起こしそう」だからです。菊地さんが何度も「鉄は熱いうちに打て」と書いてますが、まさしくその通りと思います。早く売却が決まればいいのですが…。

 土地の測量図等は、登記所で取り寄せました。水道も下水も調べました。希望の土地は、4.5Mの南面道路で間口13M、東が12.65Mだったかな?西が12.85Mだと思いました。北側が13Mのほとんど13Mの正方形に近い50坪の土地です。(坪あたり75万ですが、この辺の相場よりは安めです)
 建ぺい率と容積は50/80です。建物の予算は設計費、設備(照明等含む)までみて、2500万位に収めたいと考えています。引越し費用、地鎮祭、上棟、挨拶費、お茶代等は別予算です。
 パッシブ換気に関して、これもその後家でいろいろ調べてわかったことなんですが、関東にはあまりむいていない。するとセントラル空調か? でも、いままでそんなもの使わなくても自然換気で十分対応できてたし、北海道みたいに冬もシビアじゃないし、それにかかる予算を他に回しも良いのかなーと、これもまだまだ勉強の余地ありです。
 本当にご丁寧な返信ありがとうございました。土地が決まったら、設計士さんに見せようと思っている、私の希望を箇条書きにしたものをメールに添付しておきます。それほど、無理な事は言ってないと思いますが、どうでしょうか?
 そろそろ仕事に戻らないと…、だいぶサボってしまいました。



 札幌の菊地です。お住まいに関して大変よく勉強されているご様子で、感心しました。
 メールにありました「お金を払いますので、私の描いた間取りの添削をお願いできますでしょうか?」の件ですが、私としては無料でも一向に構いませんが、それでは海野さんの気がすまない、ということでしたら、おまかせします。
 ただ有料となると、たとえ5千円とか1万円でも、やはりプロとしての仕事になりますから、それなりのことはしなければなりません。平面図の「添削」はもちろん、法的なチェック(北側斜線制限も含めて)も出来る限りやらせてください。
 50/80の建ぺい率と容積率は分かりましたので、もし分かれば用途地域を教えていただければと思います。北側斜線制限が確実にあるとすれば、第1種低層住居か第2種低層住居だとは思いますが…。
 あと、「壁面後退線」の指定があるかもしれません。こちらも土地に対する建物の配置に大きく関係してきます。北側斜線制限の厳密なチェックには敷地の正確な方位が必要ですが、もし入手が無理であれば、おおよそ何度くらい北の方位がふれているかを教えてください。(真北であれば問題ないです)

 ところで、メールの添付書類がどうしても開けません。仕事の都合で私は機種がマックなので、WIN系の書類は読めないのです。お手数かけてすみませんが、文章をメールに変換するか、プレーンテキストに変換するかして、再度お送りください。さしつかえなければ、その中に家族構成なども書いておいてください。
 出来ましたら「なんちゃって間取り」のほうも見せていただきたいのですが、郵送かFAXでお願いします。勝手ですが、電話と兼用FAXのため、深夜の送付はなるべく避けてください。(ここで私の住所電話番号等の個人情報を呈示)
 細かい話ですが、土地の周囲の状況、特に周囲の隣地の状況がどうなっているか、もし分かればおおよそで結構ですから教えてください。実際の設計依頼ですと、敷地に何度も足を運ぶのが常です。それでは。



 
有料へのこだわり



 お返事ありがとうございました。早速ですが、添削の無料・有料の件ですが、私は有料にこだわります。プロの時間を少しでも割くわけですから、きっちり形で表すべきと思っております。
 実は最近、別の設計士さんに、「プランまでは無料です」と言われました。(菊地さんと同じようにメールでのやりとりです)丁度「間取りを添削してもらえる所」を探しているときに、この方のサイトを見つけて、連絡してみたのです。
 その方は「営業の一環だから無料」と言っておりました。プラン作りはラフなものでも大変な作業です。「なんちゃって間取り」を自分で描いてみて本当にそう思いました。「間取りが描けたら見せてください」と言われていますが、送るのをためらったままです。
 この設計士さんもポリシーがあり、大変良い人だなと思いましたが、私の中で「無料」が引っかかっているのです。私も大分「有料」にこだわったので、この文章をこの設計士さんが読んだら、間違いなく私だとわかるでしょう(笑)。

 新規のプランを菊地さんに描いてもらったりしてしまうと、それを元に家を建てたくなった時の事が怖いです。間取りの添削は、不可能な部分の指摘、改善必要部分の指摘、助言にとどめていただくのが良いかと思うのですが、どう思われるでしょうか?
 以下添付資料をこのメール貼り付けます。少し長いですが、ご勘弁。ちなみに家族構成は、私の父と母、私(本人)30代前半、妻30代前半、就学前の子供2人(男、女)この6人の二世帯住宅計画です。



●延べ床面積最大40坪、建築面積最大25坪

●共有部分
・玄 関:広め、1坪、独立させる。
     呼びリン世帯別に2台。
     新聞、郵便受けは玄関扉わきに(外に新聞を取りにいかなくて良いように)。
     靴などの収納が世帯によって分かれている。
     コート・ジャンパーをかけられる収納があると良い。
・1階トイレ:2階より広め、手すり付き、0.75坪。
・お風呂:広め、手すり付き、1〜1.25坪。
・脱衣所:広め、1.25坪。
     洗濯器を2台置ける事、洗濯機は扉で隠せる事、ハワイで見た収納扉。
     世帯別にわけたタオルなどの収納、汚れた服の投げ込みいれがあると良い。

●1階部分(1階に関しては親の希望を優先)
・LDK :2階息子世帯家族と娘夫婦家族が訪ねてきた時一緒に食事できる広さ。
     キッチンに食器洗い機がついていると便利。
・両親の寝室:6畳基本。
・家事室:2畳でも母が一人で趣味やパソコン等できる部屋、一人になれる部屋。
     キッチンに連続させて仕切りで区切る。キッチンの延長としても使える事。

●共有の納戸(1階)
・人には見せないので、内装仕上げはしなくてもよい。
・床から天井までの棚がほしい。洋服をかけられるバーもほしい。
・実は機能に相反しているが、この部屋で大きめな音で音楽や映画を観たい。
・物置兼用の逃げこむ部屋、視聴室。
・テレビやオーディオ機器の棚、電源、スピーカー設置。エアコンの設置。
・ある程度の防音も考慮したい(どちらも中途半端な機能しかなくなる?)。
・クラビノーバ(電子ピアノ)もこの部屋におきたい。生ピアノも将来置くかもしれない。
・本当はこの部分にコンクリートの防音室をもってきたかった(悲)。
 窓無用のコンクリートの箱。空調、換気必要。
 用途:トロンボーン、ピアノ、ホームシアター。予算と機能の面から却下。
・物置兼用視聴覚室とできたらよいなー。

●2階部分
・我々の居住区なので自由に、将来の変化に対応することを年頭においた計画。
・すべて完璧に作らない。生活して必要性を感じたら作る。
・1階に視聴覚室を持ってこれないなら、ステレオは2階に持ってくるか?
 クラビノーバも2階か?でもどこに置く?
・DK、主寝室、子供部屋、全部大きなスペースで考える。
・主寝室のみ間仕切りできるようにする。
・子供部屋は、将来壁もしくは移動家具で部屋を分割。
 個室にできる事を見越して必要な基礎だけ作っておく。
・子供部屋にロフト、グルニエも検討。
・夫婦の寝室をロフトに置けば、ロフトの下にステレオを置けるか?全くわからん。
・トイレ:小さくてよい。
・シャワー:半畳のシャワー、座シャワーを検討。
・2階に関しては、とにかくオープンなスペースでシンプル。
・天井が高いと嬉しい。メンテナンスの難しい天窓は必要ない。
・収納スペースは多いほどよい。片付けるのがヘタなので、収納で隠してしまう。
 収納ですっきりできるなら、居住スペースは多少狭くなっても良い。
 物はすべて隠せる事、これが基本。
・子供部屋になる部分の壁は安い材料で。どうせ落書きやポスター貼られるし…。

●外観に関して
・1案:1階部分にはケミコウォールのサイディング、2階部分はガルバリウム鋼板。玄関ドアは大き目の木のドア。ガル板が別に安いわけではないが、メンテフリーって事でランニングコストを抑えられる。2階より補修しやすい1階部分はガル板でなくて良いと思う。屋根もガルバリウム鋼板。
・2案:1階部分のケミコウォールのかわりに、ネイビーブルーのサイディング。客船などの船のイメージ。両親がなんと言うかわかりません。
・コストにもよるが、フェンス、駐車場、アプローチまでは仕上げておきたい。
・玄関ドア:船の丸窓を付けたい。ハウスメーカとの個性の差もここで出せると思う。船舶用丸窓はネットで価格を調べた。キャリオシティーで5万円で真鍮の丸窓。300mmパイで2万くらいのものもある。真鍮ではない。真鍮だと手入れが大変なので、安いほうで良いと思う。
・屋外灯には船舶ランプを使ったらどうだろう?と思ってヤフーで検索したら、ガーデニング用品として船舶ランプが売られていた。結構同じことやってる人多いかも。丸窓は利休屋が安かった。
 船舶の装飾品には、Nautical Seasonsってアメリカのお店がWEBで出店してる。このお店が良いと思う。舵でも日本語のサイトに引っかかった日本のお店もある。インテリアデコレーションにもこじ付けの意味をつけてみよう。
 舵→方向を決める(木製舵輪で検索)
 いかり→安定(錨の形のカギかけ)
 オール→推進力(ドアの上?別になくてもいいや)
・インターネットで見つけたケミコウォールは輸入の建材らしいが、木目の材料でかっこいい。1階部分はケミコウォールでウッディーに仕上げても良いかも。設計士さんは何ていうかな?大工さんが輸入建材嫌がるかもなー。国産で似たような材料あるのかしら?


 以上までが添付内容です。資料等は、私の「なんちゃって間取り」と一緒に別途郵送いたします。暫くお待ちください。住所と電話番号を頂いたので、私の方もお知らせいたします。(ここで先方の住所、電話番号等の個人情報を受け取る)
 実は最近の不動産とのやり取りのためにFAXを購入しましたが、まだ使い方をマスターしておりません。受け取ることは出来るのですが…。こちらも勉強が必要です。



 
船の美学



 有料、無料の件は大変よく分かりました。私もそうですが、一般的に設計士の方が「プランまで無料」をうたうのは、多くのハウスメーカーがそうしているための対抗策のひとつかと思われます。もちろんそうした経費がタダで済むはずもなく、ハウスメーカーや設計事務所はそれら経費を受注した現場にふりわけてしまうわけです。結局は回り回ってお施主さんが支払うしかけで、いまの日本ではそれが当り前になっているようです。
 海野さんのような理解あるお施主さんばかりだと、設計者は本当に助かります。あまりキャリアのない私でさえ、こうした「やったけれどもちっともお金にならない仕事」がたくさんあります。
 今後はこうした「受注を前提とした無料の営業用プラン提出」はなくしていったほうが理想なのかもしれません。たとえわずかでも、かかった分はいただく方向が正道です。そんな意味でも、「間取りの添削」だけを専門的にごく安い費用で請負う仕事があってもいいような気がしてきます。

 いただいた資料でかなり海野さんのイメージが鮮明になってきました。「なんちゃって間取り図」を見せていただくと、もっとそれははっきりするでしょう。あれだけ詳細に具体的にご要望を書いていただくと、設計する側はとてもやりやすいです。現段階でもいろいろお話したいことはありますが、ぐっとこらえ、資料が届くのを待ちます。
 それにしても設計屋としての虫が騒ぎます。私が自宅の設計にあたり、試行錯誤の中で自然発生的に「縦の美学」が発生してきたことは連載にも書いてありますが、海野さんの場合は、さしずめ「船の美学」「港の美学」ですか。読んでいてそんな印象がしました。この直感は大事です。このイメージをつらぬくべきです。
 つい最近まで娘が横浜市内に住んでいたので、かの地はとても好きな場所です。昨年秋に娘の招待で銀婚旅行に行ってきたばかりです。確か横浜港にも、ヨットの帆を模したコンチネンタルホテルという美しい建物がありましたね。
 計画の地からは海が見えますか?ガルバリウム鋼板にはネイビーブルーの製品がありますから、これに「デッキ」を連想させる板を随所にあしらうと、いい感じの家になると思いますよ。「鎖」「鉄板」「ロープ」「布」「樽」…。船をイメージするものは他にもいくらでもあります。



 海野です。草案に目を通していただきありがとうございました。本当は、床や壁にに使って欲しい材料や、結構細かい建具の希望等もあるのですが、私の考え方では、まずこの草案をお願いする設計士さんに見せて、自分の希望を伝える程度に留め、その設計士さんが「よし」と思うプランを作ってもらう。細かい仕様書ができた時点で、「この壁ですが、この材料になりませんかねー?」と尋ねるようにしようと思います。
 素人の私が、いきなりあれこれ指定できるわけがありません。あくまでもいろんな意見にオープンである事、「Open mind」が基本です。
 この「Open Mind」の精神ですが、それは家族での話し合いでも重要です。私の両親は「ハウスメーカー」が良かったりします。玄関丸窓の件はまだ話してませんが、イヤがられるかもしれません。「ハウスメーカー」を両親が好む理由は、設計士さんにお願いした注文住宅は「高価」で「贅沢」なイメージ、「打ち合わせ等」大変そうって理由でしょう。共同出資なので、説得、妥協を繰り返し、母と私の納得する家を建てることが重要です。
 なぜ母と私かというと、1)父は母が気に入ればなんでも良い。2)私は家内と話しをしているので、家内の意思は十分反映されているからです。

 費用の件を、往復の電車の中で考えていました。どうしても料金を提示するのは、無償でお願いしてもらって、トラブルになる事があることを実務からの経験で知ってるからです。プランが無料だと、設計士Aさんのこのアイデアは好きだけど、Cさんのこのアイデアもいい、でも基本的なデザインはBさんでお願いしたい。
「Bさんすみません。AさんとCさんのアイデアも取り入れてもう一度描いてください」
 こんなモラルに反した事をする人も中にはいると思います。
 間取りの添削をしてもらった場合、全体の助言、別の方向性の検討指摘にとどめ、「プロが考えるとこんなにすごいぞー」と言うようなまったく新規のプランは求めません。あくまでも菊地さんとのやり取りは、私のアイデアを基礎にしたいと思っております。

 さて、かっこつけて「有償で」ともうしておりますが、私の小遣いにも限りがございます。初回5000円で、以後1回2000円位でいかがでしょうか?郵送料は送り側が持つという事で…。
 イメージが鮮明になってきたとありましたが、あんな資料からでもイメージが湧きますか?さすがです。近隣の様子等、週末ビデオにでも収めて、そちらも郵送させていただこうかなと思っております。
 横浜に銀婚旅行ですか、すばらしいです。私も両親に何かプレゼントしなければという気になります。かなり職務怠慢なんですが、仕事前に会社でメール書いています。週末の連絡は自宅のメールにでも送ってください。でも返事は会社からの方が確実なんです。



 こんにちは、海野です。昼休みを利用して続きを書いております。
「船の美学」「港の美学」朝からこの言葉が頭からはなれません。かっこいいです。菊地さんにいわれるまで、まったく意識していませんでした。でも、庭には芝生の変わりに、珊瑚の白い石をまいた白い石庭にしたいなーなんて構想もあり。やはり海から離れてませんね。
 両親の設計士さんに対するもうひとつの不安の要素は、建物が個性的だったり、奇抜になったりするのではないかと思うところもあるようです。この辺の不安は、お願いしようとしている設計士さんから、きちんと説明してもらうのが良いでしょうね。

 昨夜、担当の不動産屋さんから電話が入りました。
「先日ご実家を見学したご家族が、前向きに検討したいと申しております」と…。何にしても早く決まって欲しいです。検討中の土地は、実家の近所です。どなたが実家を購入するにせよ、その家族とはご近所さんになります。忘れていましたが、検討中の土地は、第1種低層住居地域です。



 札幌の菊地です。実は月曜一杯、きつい納期の仕事が入ってまして、休日返上で仕事です。勝手ですが、間取りの件は、少しお待ちください。
 代金のほうは妥当な線かと思います。あまり私のほうでアイディアを出さないようにしますが、これって結構きついことかもしれません。イメージでいろいろ書くだけならいいかも…?(一歩間違うと無責任か?)

「船の家」「帆船ハウス」
 独り言。屋根を頂点の部分で少しずらしてやって、帆船の帆に見えるようにしてやればいいのだ、たぶん。ずらした部分に高い窓を垂直につけて、そこから光を下に落とす。いまの自分の家にも似た手法を使っている。ぶつぶつ…。



 ご連絡ありがとうございました。夜遅くまで(朝早くまで?)お仕事ご苦労さまです。お忙しい中のお願いですので、ほかの大切なお仕事を最優先してください。私の間取りは、菊地さんに「楽しみながら」、「ハッピーな気持ち」で取り組んでいただきたいと思っております。返信が、2、3週間かかろうと問題ではありません。
 アイディアの件ですが、たしかに難しいと思います。私としては、お願いしようとしている設計士さんに、「別の設計士さんから出してもらったアイデアです。これを設計に取り組んでください」と言ってしまう事だけは避けたい。それが自分のアイデアだったなら、「これ自分で考えたのですが、こんなイメージを図面にとりこめませんか?」と言えるし、相手の設計士さんも気持ちよく受けてくれると思う。

●タテマエ:菊地さんに考えてもらったアイデアが、私の感性にぴったりはまり、別の設計士さんに「このイメージを図面にしてください」と伝えてしまいそうな、自分との葛藤。それがイヤなので、あくまでも基本は自分のアイデアのみ。
●本音:菊地さんのアイデアを、見たい、知りたい。

 オープンマインドが基本ですので、お願いする設計士さんのアイデアも素直に聞くつもりです。ただし、こちらの設計士さんに出してもらったプランに、菊地さんが考えたアイデアで、自分がどうしても取りこんで欲しいものがなかったら、どうしましょう。「口頭で伝えるならOKですよ」と菊地さんの許可はおりますでしょうか。
 折角自分が出したアイデアや、菊地さんに考えてもらったアイデアも、親の考えに反してボツになるかもしれません。共同出資なので、親の意見を無視できません。
 母は以前から、「普通の家で良い」と言っております。この「普通」の解釈に悩んでおります。土地が確実に決まったら、両親とも具体的に細かい家の話しもできるのですが、ボツにならないとも言えませんしね。なんとも、…。
 臨機応変に対応したいと思っています。新規アイデアの件は、お任せいたします。約束できるのは、菊地さんのアイデアやプランを、そのまま工務店や別の設計士さんに持っていったりは絶対しません。その点信用してください。
(工務店はどうかわかりませんが、まず普通の設計士さんはそんなの持ってくる人は嫌がるでしょうね)

 今日、宅急便で「土地を撮影したビデオ」、土地の測量図面、「なんちゃって間取り」を送ります。外観のイメージを描いた漫画もあるのですが、あんまりヘタなので今回は送りません。描けないから模型にしてみた所もあります。それでは。



 
アイディアの値打ち



 仕事は明け方までかかってなんとか終えました。明日の仕事はどうなるか分からないご時世ですので、くる仕事はきつくとも全部受けるようにしています。
 土地の件はなんだかうまくいきそうな気配ですね。私のときも住んでいたマンションがあっという間に売れてしまったので、拍子抜けした覚えがあります。縁とか勢いがあるときってのは、そんなものかもしれません。その勢いを大切にすべきと思います。

 私のアイディアの件ですが、海野さんの家に対する詳細な記述と、良く知っている土地(ちなみに、若い頃首都圏に10年近く暮らしていて、横浜にはよく行きました)とのイメージから「船の美学」「港の美学」が生まれたわけで、もしもこれが海野さんの家に対する潜在的な願望を掘り当てていたとすると、私の仕事は終わったも同然です。
 あとは海野さんが決めた設計士さんにその概念を伝えればいいのだと思います。何も伝えずに進めると、ひょっとするとその設計士さんも同じイメージを掘り当てるかもしれませんが、あえてそんな意地悪(?)をする必要もないでしょう。
「このイメージはどこから?」ともし尋ねられたら、「あるインターネットサイトの間取り相談で指摘されました。まさにこれだと思いました」と、率直に話されたほうが信頼関係を結びやすくなると思います。
 あくまで私自身の場合ですが、隠し事や駆け引きをされるお施主さんは好きではありません。どうせ仕事をや るなら、「お金のために割り切って」ではなく、「このお施主さんのためなら、多少損をしてでもやりたい」そんなふうに進めていきたいものです。結果的にそのほうが格段にいい家が出来るはずです。

 アイディアの話で思い出しましたが、エンジニアだったサラリーマン時代の平社員のころ、技術的にすごくいいアイディアを思いつき、個人的に資料にまとめてみましたが、どうにも会社を説得させる自信がない。社員の意見を取り入れる制度なども、まだ未発達な時代でした。
 そこで部署は別でしたが、私を買ってくれていたかなり力のある係長にそれを見せました。
「いいアイディアだ。しばらく貸してくれないかな」
 やがてそのアイディアをほぼ全面的に取り入れた新製品が開発されました。提案書が回覧されてきましたが、責任者(発案者)はその係長です。私の名はどこにもありません。私の力では不可能だったことを実現させてくれたので心密かに満足はしましたが、心境は複雑でした。
 サラリーマンならよくある話でしょう。その後数年を経て私も係長になり、こんなくやしい思いはせずに済むようになりました。

「船の美学」「港の美学」のアイディアはご自由に使っていただいて構いません。ただ、これに附随する細かい案はイメージ程度にしておきます。海野さんのほうで正式に設計士さんが決まるまで、雑談形式で話を進めればいいのではないですか。
 たとえば外壁の色の「ネイビー」にしても、海野さん自身のアイディアですし、たとえば私が「その色のガルバ鋼板がありますよ。若い人にはその色がよく似合いますよ」と口添えしたとしても、何も問題は生じないでしょう。
 ただ、「屋根を船の帆のように使って設計を進める」というアイディアは、かなり突っ込んだものです。これをそのまま別の設計士さんに突き付けると抵抗があるかもしれません。一般論ですが、個々の設計家は強い個性とプライドを持っています。「船の家」に対し、その設計家が全く別のイメージを持っている可能性があります。それは私のアイディアより、もっと優れたものかもしれません。
 いずれにしても、私との具体的な話し合い(雑談)は、設計士さんが決まった段階で終了とさせていただいたほうがいいでしょう。

 むしろ海野さんの場合は、お母様との話合いがポイントになる予感がします。船頭が二人いては船は前に進みません。「船の家」もうまく行きません。請負った設計士も困るでしょう。私自身の経験も含め、こうした失敗例をたくさん知っています。
 お母様のおっしゃる「普通の家」が、もしもカタログやチラシに載っているような家、ということでしたら、海野さんとの摺り合わせが難航するかもしれません。
「家は人を造る」これが私の持論です。ハウスメーカー関係者が読むと目をむくかもしれませんが、カタログハウスが世にはびこりだしてから、時代は悪い方向に進み始めたのではないか、そんな疑念さえ持っています。もっともそのカタログハウスにしても、結局は世の多くの人々のニーズに応えただけのことなのですが…。
 私のホームページ内にある「徒然雑記」に、それに関するエッセイ
「こもる部屋」があります。興味がありましたら、読んでみてください。
 宅急便の到着を楽しみにしています。それでは。



 海野です。本当に、本当に丁寧な返信いつも恐縮いたします。「アイデア」に関しての概念はほとんど一緒なので助かります。「アイデア」は財産ですもんね。やはり当初の基本、「私のアイデア主体」で行きましょう。知ってしまうとジレンマに陥りそうですし…。

 おっしゃる通り、菊地さんに指摘を受けずとも本などに良く載っている外壁などの建材、収納などのアイデア、インテリアなどのアイデアなど、本などを参考にして到達できる非常に一般的なアイデア。それと、構造などの専門知識、プロでもないかぎり思いもつかないような、例えば「屋根を船の帆のように使って設計を進める」アイデアは、まったく別の物です。
 私も家内も、お願いする設計士さんに出してもらったプランを基本に話しを進めて行こうと、決めています。これは、恐らく菊地さんもそうでしょうが、設計士さんがプラン作成前に、私の話、家内の話、そして両親の話を聞き、総体的にまとめてプランを出してくれるのだと思っています。それが、どんなアイデアにせよ、両親の希望を聞き、私らの希望を聞いた設計士さんが、「これだ」と思うものを出してくれるわけですから、オープンマインドで、「そんなアイデアもありね」と。
 怖かったのは、菊地さんがプランした家にどうしても「住みたい」と思ってしまった時です。
 信頼関係を築いていくためには、本音で語るのが良いでしょうね。正直に言いますよ。概念だけは伝えますが、細かい所までの指摘を最初から伝えたりしません。前にも書きましたが、最初にお知らせするのは、箇条書きした例の文章と、私の「なんちゃって間取り」のみです。

 サラリーマンの時の話、読んでいて私もくやしい気持ちになりました。このような、モラルに反したことを平気でする人達がいるのですね。話は変わりますが、日本ではまだまだ「著作権」「アイデア料」「版権」などの認識が非常に薄いと思います。アイデアやデザインも立派な財産ですもんね。良いアイデアは賞賛されるべきだし、保護されるべきです。
 正式に決まるまで雑談形式で進めるやり方、わたしもそれが良いと思います。雑談形式で話しを進めましょう。打切りのタイミングに関しても賛成です。アイデアなどの部分は設計士が正式に決まった時点で終了するのが良いですね。ただ、このように折角知り合ったわけですから、進行状況をお知らせしますよ。一方通行でもかまいませんから。迷惑なら止めときますがお知らせください。どうでしょう。

 母との件、その通りなのです。なるべく私がリードするつもりですが大変です。設計士さんと話しをする前に、沢山の家族会議を両親を含めしなければなりません。今から家のプランの話をしたいのですが、「家が売れたわけでなく、あの土地が買えると決まったわけではない」と、ついはぐらかされてしまいます。しかも、「おかあさん達は、普通の家で良いのよ」と…。
 この「普通」が、怖いですよねー、なんとも。家内とはばっちり話してるんですけどね。土地が決まれば、ざっくり本音で話せるでしょう。
 土地を探していたときもそうなのですが、私は50近くの土地を見て、その中で2、3良いと思ったものを、両親と見に行ったのですが、文句言われてがっかりした経験があります。でもそれって、両親は1見て1、私は10見て1の違いだなと思いました。一生住む住宅ですからね。親にもある程度勉強してもらわないと…。好きなタレントが宣伝してるから、「あの家が良い」なんて言われたくないです。
 では、資料到着までお待ちください。



 何度もすみません。昼休みに「こもる部屋」を読んで、私の考えとあまりにも近く、驚きのあまりメールしてます。明日届くであろう資料を見ていただけば、私と家内の考えが間取りから伝わると思います。
 私ら夫婦も、目的別の部屋数は少なくて良いと思っています。居心地の良い家は作りたい、でも居心地の良い子供部屋はいらない。これが基本。

「こんな家出てってやる。オレの自由になる家に住んでやる」
 子供にはそういう気持ちが生まれれば良いと希望しています。しかし、菊地さんのHPって読み応えありますねー。



 
なんちゃって間取り



 さきほど資料一式が無事届きました。はやばやと代金までお支払いいただき、大変ありがとうございます。領収書は後日送付させていただきます。
 ビデオを見せていただきましたが、第一印象はずばり、閑静な住宅地ですね。敷地や前面道路に大きな段差もなく、設計や工事はやりやすそうです。

…海野さんの描いた「なんちゃって間取り図」…

 平面図に関して意見をのべさせていただく前に、いくつか教えていただきたいことがあります。

●駐車スペース2台は必須条件ですか?
 図面では2台分の並列駐車のスペースとしては必要十分なスペースを確保なさっていますが、これは計画面で大きなポイントになります。極端に言うと、この条件如何で建物全体の計画は大きく左右されるでしょう。そこで、

・縦に2台並べる駐車方式は受け入れ可能ですか?
・片方のスペースを軽自動車(または1000CC前後の普通車)に限定することは可能ですか?

 この2点の条件がもし出た場合、いずれか(あるいは両方)を受け入れ可能か、ご家族でよく話あっておかれたほうがいいと思います。もちろん、現状のままでも条件としては構いませんが、いろいろと制約が出てくる可能性があります。

●家に対する主たるアプローチは、ビデオにありました西道路からと考えてよろしいですか?(東方向が行き止まりにも見えました)
 家の「表」と「裏」をどう考えるかに大きく関与してきます。(私の自宅の場合、南東を主、北東を副にして立面デザインや平面計画を進めました)

 意見(考察)は、雑談形式がよろしいか、あるいは充分煮詰めて一括レポート方式がよろしいか、あわせてお知らせください。(後者の場合は多少時間がかかります)
 いずれにしても、検討は法規、構造、設備、生活、その他多岐にわたる視点からのものになります。それではよろしくお願いいたします。



 海野です。勤務中なので短めな返信です。資料が無事届き安心しました。

●駐車スペース2台は必須条件ですか?
・縦に2台並べる駐車方式は受け入れ可能ですか?
 これは可能です。縦2台でプランした間取りも描いてみました。しかし今回送ったプランの方が好みです。
・片方のスペースを軽自動車(または1000CC前後の普通車)に限定することは可能ですか?
 いずれは可能ですが、今は親父の車と私の車をイメージしています。父アコード、私はフォレスターと乗用車でも少し大きめです。

●家に対する主たるアプローチは、ビデオにありました西道路からと考えてよろしいですか?
 ビデオでは、車で西から入りましたが、徒歩の場合、主に東の方からのアプローチになると思います。東方向は行き止まりではなく、T字路となっています。
 意見(考察)は、雑談形式お願いいたします。そしてアドバイスを基に、何枚か描き直したいと思っています。



 札幌の菊地です。さっそくですが、私なりの意見を述べさせていただきます。

●1階居間の出っ張り
 平面図を拝見して真っ先に気になったのがこれでした。「なぜこれが居間の一角に…?」いろいろ調べると、どうも外部の2台並列駐車スペースにあるらしいことが分かりました。それで先ほどの問合せとなったわけです。
 あの出っ張りは、構造、意匠、動線などの点でいろいろ問題があります。駐車スペースをどう決めるにせよ、なくす方向で考えたほうがいいと思います。
 ここからいきなり別の話になりますが、特に1階居間に「たまり」がありません。「たまり」とは、動線に遮られない、自然に人が集まり、くつろぐ空間のことです。今のままですと、居間の北側半分以上が動線の関わる場所になってしまい、寝室に人が集まってしまいかねない。大人数が集まる非常スペースとしてはそういうこともあり得るのでしょうが、やはり気になります。せっかくの居間の広いスペースがもったいないです。
 たまりがなくなってしまった理由のひとつが、あの居間の出っ張りだと思います。

●1階の動線
 上の問題と関連した話になりますが、大人数が集まったときの食事スペースは寝室になるのでしょうか?ホール〜キッチン、ホール〜寝室、キッチン〜寝室、キッチン〜居間収納、これらの動線が交叉しすぎていて、すっきりしません。
 重なる動線、短い動線は空間の無駄がなくていいのですが、交叉する動線、長い動線は落ち着かない空間を生み出しかねず、好ましくありません。
 先に書いた「たまり」の作り方ですが、家具等で強引に導いてしまう方法、床に段差をつける方法などもありますが、動線で心理的に区切ってしまう手法をまずお勧めします。その場合、各室の配置、ドアの位置、収納の位置は非常に重要になります。平面プランを作るときに、「短い」「交叉しない」をチェックしながら進めるといいと思います。

●玄関ホール廻り
 広い玄関ホールは私はとても好きです。海野さんの場合、二世帯の家族の交わる「ホットコーナー」とも言える場所ですので、これくらいの広さは欲しいですね。
 気になったのは上がり框にある引戸です。最近の玄関ドアの断熱性は向上していますから、もしも防寒面での配慮でしたら、不要かと思われます。(私の家にはついていません)
 階段の位置ですが、玄関から入った直後、しかもまっすぐに上がっているのが気になります。玄関アプローチと玄関ドアも直列になってしまっているのも、本当は避けたほうがいいと言われています。(直角にふるか、ややずらす)このままですと、階段の昇降時に、常に玄関(前面道路)からの視線を気にしなくてはいけないことになります。

●納戸の是非
 失礼ながら、海野さんの「隠れ家」が納戸(視聴覚室)、お母様の「隠れ家」が家事室と拝見しました。(^_^; 余計なことですが、奥様とお父様のちょっとしたスペースは必要ないですか?我が家では、妻のために居間の陽当たりのいい場所に「お昼寝ベンチ」を作ってあげました。(→まるでネコのように大喜び。毎日お昼寝してます)
 納戸を木造で、ある程度の防音構造にすることは可能でしょう。(厚い石膏ボードを二重張にするとか)
 収納棚を全面に作った場合、少し狭さが気になりますね。2階子供エリアの3分の2くらいを、当面の「父と子のお遊び&お勉強共有空間」とするわけにはいきませんでしょうか?
 仮にの話ですが、納戸をなくし、駐車場を東側に縦列駐車とすると、いままでいろいろ書いた問題がすっきり解決する平面プランが完成するかもしれません。収納はホール部分にドアつきのものが充分とれるはずです。

●家具のスペース
 図面に家具の記載がありません。動線や収納計画などにも関係してきます。手持ちで引続き使う分、新たに買う部分をリストアップし、おさまる場所をすべて考えておかなくてはなりません。
 できれば上の納戸の問題ともからみ、どれくらいの収納スペースが必要か、家中の持ち物をチェックしてみる必要があります。私の場合、面積単位ですべての持ち物をチェックした結果、収納計画に全く無駄はありませんでした。(たとえば本ならば普通に並べた場合で何平方メートル必要か調べる)

 長くなりましたので、法律的な問題と2階の話は次回以降にさせていただきます。



 目の覚めるすばらしいコメントありがとうございました。早速家内に転送して、菊地さんのコメントに目を通してもらう事にします。
 1階部分の間取りについては、両親の意見が優先だからと、あまり力を入れていませんでした。母の2畳分の部屋をどこにするかのみです。(反省)今の実家が狭く、居間兼、寝室兼、食卓兼、ごろごろの間兼と、両親ともひとつの部屋を多様しています。そのイメージが抜けてない事も確かです。
 納戸は私の隠れ家のみならず、家内の隠れ家でもあります。お互い顔を見たくなくなった時は、そこへ避難。仲良く映画や音楽を聴きたい時も、二人でそこへ避難です。
 父は居間兼寝室を占拠するでしょう。逃げ場が必要なのは母のみです。庭にゴルフパットの練習場所を小さく設けてあげれば、それで満足と思います。

 両親も私ら夫婦も、家具はほとんど持ち込みません。冷蔵庫、テレビ、私のオーディオセットくらいでしょうか。納戸をなくすと、たしか車を2台縦列出来るスペースが確保できるはずです。私の別の計画に、菊地さんから指摘のあった「2階子供エリアの3分の2くらいを、当面の父と子のお遊び&お勉強共有空間とする」がありました。(主に私のステレオ置き場) ただしその場合、家内の逃げ場の確保が絶対必要です。
 将来必要ができたら、「納戸」の部分を増築。増築するその頃は、父も運転をあまりしないかもしれません。車を大家族向けのワゴン1台、必要なら軽を1台の合計2台にするという考えです。

 アプローチは本当は曲げたかったのですが、並列駐車にこだわったために直線になりました。玄関の上がり框の引き戸ですが、玄関の扉には丸窓を付けたいと考えております。玄関内が丸窓をとおして外からみえても良いように、引き戸をつけました。夜、玄関内の明かりが、丸窓からストレートに通りにもれても良いと考えております。
 ず〜っと昔、私が小学校の低学年の頃、長野の遠い親戚を訪ねた時、その家に土間がありました。そこには3畳の畳が敷かれており、おばあさんがそこに腰掛け、近所の人と話しをしているイメージが、私のあこがれの「玄関」「入り口」です。玄関は隔離できたほうが良いです。
 ちなみにお送りした間取りは、2階を意識して最初に描きあげ、そして1階を描きました。いただいたコメント、ゆっくり反芻して計画を見直します。



 
二世帯同居の難しさ



 返信を拝見し、いろいろとほぐれてきました。

●同居の難しさ
 お父様とお母様の年令がはっきりしませんが、おそらく私とおなじ50代、現役ばりばりといった感でしょうか。お父様は家族のために懸命に働き、お母様はそれを陰でささえてきた。そんな印象がします。
 実は私も姉三人がいる末っ子の長男です。高齢ですが、両親も健在です。二人とも介護などどこ吹く風、といった感じの元気溌溂老人です。
 くしくも海野さんご夫婦と同じ私と妻が30代前半の頃、私たちにも同居の話が持ち上がりました。当時、両親は土地が50坪の古い家に住んでおり、私たち夫婦はアパート住まいでした。
 前年に東京での会社勤めを辞め、独立した直後でした。仕事は順調でした。私が図面を引き、かなり具体的なところまで話が進んだのですが、最終的にこの話は頓挫してしまいました。(このへんの下りは、ページ内の連載「僕の脱サラ日誌」にも一部書いてあります)
 理由は一言で書くと、父が同居と新築の話の主導権を私に渡さなかったことです。父はもと大工で、その頃はある工務店で見積や現場監理をやっていました。建築のプロとしての自負もあり、口出ししたくなる気持ちは分かりましたが、私も父以上に頑固でプライドが高いですから、船頭が二人いては船は迷走するばかりです。

 当時、父母の住んでいた土地には隣人との境界問題があり、(隣人の買った土地に私道がなく、父母の土地の一部を行き来していた)私道分の土地を等価交換する話で、20年近くももめていました。
 私がまだ子供だったころからの話で、これだけは父に話をつけてくれるよう強く頼んでいたのに、一向にその話を父が進めないのです。これが終わらないと土地が確定せず、広いスペースが必要な二世帯住宅の設計がうまくいきません。
 それではと私と母が近所に代替地をいくつか探してみましたが、父はあれこれ難くせをつけるばかりで、こちらの方も進みません。業を煮やした私が、話そのものを白紙にし、単独でマンションを買ってしまったわけです。
 数カ月後、父母もそのマンションのすぐ隣の一室を買って越してきました。二世帯あわせて3000万円というもったいない出費です。土地はそのまま残りました。地下鉄近くの便利な場所ですが、いまでも空き地のまま残っています。

 それからいろいろあって、私たちは自分たちだけの一戸建て住宅を建て、引越しました。これが約1年半前の話です。ページにはあまり書けないことですが、理由はお察しください。世帯は別でしたが、ドアを開けて数秒で行き来出来るマンション住まいは、実質二世帯同居と変わりありません。(こうしたケースを正確には「隣居」と呼ぶらしいですが)
 二世帯同居にはいい部分と悪い部分とが背中合わせです。両世帯にとって、都合のよいことばかりではありません。20年近くも続けましたが、私はそのことを身に染みて感じました。
 私は長男ですが、片寄らない物の見方は持っているつもりです。幸い、両親は健康で、貯蓄も充分にあり、いまのところ暮らしに不安はありません。たまたま亡くなった妻の母の保険金がおり、まとまった金も少しはあったので、土地を買って家を建て、離れて暮らすことを決意したのです。現状ではそれが一番いいことだと判断しました。世間から、「親不孝息子」呼ばわりされるのは覚悟の上です。
 これ以降の話はページの連載にある通りです。車で30分ほどの距離に両親は住んでいます。何かあると私が見に行きます。私が自由業の身なので、介護などの問題が起これば、市内に住む姉たちと交代で対処しようと考えています。

●逃げ場の必要性
 長々とつまらない私事を書いたのは、海野さんの立場と私の立場に似通ったものを感じたからです。二世帯同居の場合、家族全員(4人分)の逃げ場が必要なのかもしれません。これは私の持論である「個室はいらない」に相反する部分かもしれません。二世帯住宅は、家としてはかなり特別なものだと思います。とにかく、この私自身がうまくいかなかった問題です。
 ということで、この「小さな逃げ場」の問題は、設計士さんにきちんと説明しておかなくてはなりません。車を縦列駐車にするにせよ、やはり独立した納戸は必要なのかな、とも思います。ホール北側の「階段」「トイレ」などをうまく整理すれば、設置可能と思われます。(ホールが多少狭くなるかも?)

●プランの進め方
 2階は欠点が少ないな…、と感じていましたら、やはり先にプランを進めていたのですね。私の場合はまず、玄関や駐車場などで大きく平面計画が左右される1階を先に進めます。これに2階を足してゆき、同時に立面計画(屋根形状など)を進めて微調整します。
 いま住んでいる私の家ですら、5度も描き直したのですから、プランはまだまだ変わるでしょう。しばらくは1階を重点的に見直してみてください。

●独立玄関
 いただいたプランをよく見直してみましたら、玄関ドアの正面には短い壁があるようですね。私はてっきりガラスの両引き戸かと思っていました。この場合は外部からの視線は切れますね。
 独立した玄関の概念は分かりますが、その場合はもう少し広がったイメージ、たとえば上に吹き抜けがあって光が落ちてくるとか、もう少しスペースが広いとか(3〜4畳は欲しい)があったほうが閉鎖的にならずに済むと思います。
 結局は好みの問題ですが、その家の顔とも言える玄関をどうするかは強いポリシーを持ったプロが多いので、いざ現実の依頼となると、その部分は大いに議論となる可能性があります。

●北側斜線制限
 いただいた図面ですと、北側の屋根の軒先の高さがぎりぎりです。もしも屋根の形状を切り妻にした場合、軒を南北にもってくるのが必須条件です。(つまり、三角の部分が東西にくる)入母屋の屋根の場合は何とか収まります。
 いずれの場合でも、軒の出は最小限(450以下)にする必要があるでしょう。いっそ軒をほとんどなくす考えもあります。北壁をすべてガルバ鋼板にし、雨樋をきちんとつければ問題ないはずです。
 北側の軒を低くするもうひとつの方法に、2階の北側天井の一部を傾斜天井にする方法があります。(子供部屋天井)つまり、北側の部分を通常の天井高さ、2400よりも少し低くしてやるわけです。
 ここはもともと傾斜天井でも構わないというお話ですから、この計画が妥当かもしれません。小屋裏部分を将来、ロフトスペースにも転用出来ますしね。

●石庭の床面積
 1階石庭ですが、外部に開放されており、床を張らなければ床面積には算入されず、従って容積率からも除外されます。ただし、札幌市の場合は奥行き2メートルを越えてしまうと、その越えた部分を床面積とみなされます。今回の図面では奥行き1800ですが、横浜市でも同様な規制があるかもしれません。ご心配なら、建築指導課に電話でお問い合わせください。

●壁面後退線
 大都市の住宅地域では、「壁面後退線」(外壁の後退距離)という規制がたいていあるはずです。この地区にもある可能性が高いです。1〜1.5メートルの数値で、道路や隣地境界線から外壁を離してやる必要があります。中心線ではなく、外壁面です。
 もし数値が1メートルなら、いまの図面でもほとんど問題ないですが、ご心配なら同じく建築指導課でお問い合わせください。これらの問題も含め、容積率がぎりぎりですので、平面計画のモジュールは910ではなく、900で進めたほうが無難かと思います。

 2階に関しては次回にコメントいたします。



 海野です。コメントその2、ありがとうございました。
 頂いたメールを妻に転送して読んでもらいました。二世帯同居の難しさ、真剣に読ませていただきました。また昨夜自宅のPCから、「僕の脱サラ日誌」も途中まで読ませていただきました。脱サラの話しもすごいです。私なんかとはパワーが違います。
 二世帯同居の話は、家内と再三にわたって話しあっています。昨夜も菊地さんのメールを読んだ後、じっくり話しました。家内と母が本音で話をしてくれてるようなので、今の所は順調に見えますが、今後多くの問題が出てくるのでしょう。
 菊地さんとのここ数日のやり取りで、「なるほど、設計士さんには家族のことを細かく話す必要があるのだな」と実感しました。生い立ちや、生まれ育った環境、場所、趣味、と…。

 菊地さんの推測どおり、父は今50代後半で、定年まであと数年です。父は今、仕事のため地方に単身赴任しております。現在の大きな仕事のメンバーになってからは、さらに仕事が面白くなったらしく、「土日も仕事で、大変だよ」と言ってますが、充実しているようです。
 この二世帯同居の話が持ち上がった時、「早期退職して、退職金の割増をもらう」と言ってましたが、家族全員で、「家に振り回される事だけはしないでくれ」と、早期退職の理由が「家」なら、そんなことはしないでくれと、伝えました。
 父よりひとつ歳下の母は友人が多く、パートで外へ行ったりと、家にはじっとしていられない性格です。パートの帰り、ほとんど毎日スポーツクラブに通ってます。母と家内の希望ですが、「平日は二家族一緒に食事を取らない」今のような付き合いで、「週末たまに、一緒に食事をとりたい」そうです。
 1階の間取りですが、「たまる」とおっしゃっていましたが、普段は親二人だけだしなーと、描いているときは思っていたと思います。それに両親の部屋ですから、なんともイメージが湧かないのも確かです。アドバイスのとおり、プランの確認をはじめました。

 家内の不安は、私の母との関係でなく、父とのようです。母は外に友人も多く、「孫一筋」にならない事を知っているからです。しかし、父は?「I Love 孫」「孫命」にならないか?
 父には地域のスポーツチームで作った友達が近所に大勢います。私たち夫婦が実家の近くを望むのも、父が定年後、ぶらりと遊びにいける友人が多い場所が良いと思ったからです。
 昨夜、家内と話したのですが、やはりゴルフの練習できるスペースを庭に設けたら、父も喜ぶと思います。ぜひ実現してあげたいと思います。ゴルフのパット練習で良いと思います。

 頂いたコメントをもとに間取りを1階から描こうと思いましたが、一度ついたイメージを壊すのって難しいですね。今一度、イメージ壊しのため、まったく考えてなかった場所に、階段を持ってきて描きはじめました。気がついたら夜遅かったです。
 今度、時間のあるとき私と家内の趣味についてお知らせします。



 菊地です。前回のメールで、どうも私が勘違いしていたらしいことが分かりました。すでにご両親と同居中かと思っていましたが、「これから同居」ということでしたね。だとすると、ご両親の暮らし方にいまひとつイメージが湧かないのもやむを得ないことです。プロに依頼すればその辺はしっかりチェックし、適切なプランをたててくれるはずです。

●「たまり」について
 今の1階プランでも、角の出っ張りをなくし、収納の位置を調整すれば南東のスペースがある程度のたまりにはなると思います。
 居間〜寝室の戸が4枚の全面引戸になっていますが、南側の900、あるいは1800を壁にしてやれば、さらに「たまり」は確保されます。この位置に壁をなくしたのは開放的なスペースを確保したい意図かと思われますが、構造的に考えても少し壁があったほうが安定した建物になると思います。

 ところで、角の出っ張りをなくすと以下の問題が出ます。
1)容積率オーバー
 900モジュールでやってもこの部分の床を増やすと、石庭部分を全く計算に入れない場合でも、容積率がわずかにオーバーするはずです。納戸を1畳減らすなど、何らかの対策が必要になります。
2)車のスペース確保
 縦列駐車に変更する大規模な変更を企てた場合ですと問題ありませんが、並列の場合は幅5.5メートルの中で車2台とアプローチを考えなくてはなりません。しかし、車のとめ方を東西に少しよせてやれば、1メートル以上は確保出来るはずです。
 5.5−(1.7+0.5)×2=1.1メートル
 この場合、アプローチをあいまいに見せ掛けるように、幅5.5メートル部分は全面インターロッキング敷きにするなどの配慮が必要です。
 居間収納は奥行きを450(半分)にし、上半分をオープンなものにするなど、あまりひんぱんに動線がいかないようにすればいいでしょう。その場合、残り半分の玄関側が下足入になります。

 以上は現状の1階プランをなるべくいじらないようにした修正案です。これをまず確保してから、大胆な案(縦列駐車など)に着手してはいかがでしょう。

●2階のプランについて
 前回にも書きましたが、2階はご夫婦が充分相談なさったこともあり、欠点はあまりないように思えます。強いて言うなら、以下の点があげられます。

1)シャワー、洗面、トイレをワンルームにしてしまう
 現状だとどれもが狭いですので、ビジネスホテルそのままというのではなく、1坪の防水パンを使い、ワンルームにしてはいかがでしょう。価格としてはワンユニットの物が最も安価です。

2)1と多少からみますが、階段〜居間に至る廊下がL字形に曲がっており、狭くて使いにくそうです。しかも、その一部にトイレの開きドアが食い込んでおり、階段を急いで上がってきたとき、いきなりトイレのドアが開いてびっくり、(最悪の場合、転落?)という事態にもなりかねません。
 床面積に余裕のない場合、廊下やホールのようなスペースはなるべく他のスペースと共有させ、なくしてしまったほうが効率的です。
 うまく収まるかどうかは別にして、今回の場合ならトイレ、シャワーなどを西の台所隣におさめてしまい、階段の上がった部分は何もない広いフリースペース。将来一部に壁をつけたり、壁際に長い机(カウンター)をつけるなどして、「親と子の兼用お勉強&趣味スペース」とする案はいかがでしょう?
 その場合、トイレ、シャワーなどへの入り口は台所奥からという案も考慮しておきます。トイレ、シャワーなどのスペースは合計3畳とれます。フリースペースは10.5畳になります。通路をなくすことにより、それぞれ今よりも広いスペースが確保出来ます。
 階段を上がってきてすぐにお勉強&趣味スペースがあるのは決して悪いことではなく、逆にそこで常に家族の接点がとれるという長所につながると思います。受験期の場合は、一番奥の西側に簡単な仕切を作るなどして対処すればいいでしょう。

3)2階南側にも壁が全くなく、開放的になっていますが、2階の場合は構造上の欠点はさほどありません。もしも上の案を取り入れる場合、台所棚は南にぴったりつけ、北側をあけて出入り口にしたほうが動線がすっきりします。(つまり、トイレ、シャワーなどへの入り口もここで兼ねることになる)居間の「たまり」もばっちり確保されるでしょう。
 あとは特に申し上げることはありません。1階の居間の出っ張りをなくすなら、ウッドデッキの幅が広くなることくらいですか。ウッドデッキは1、2階とも屋根をつけなければ床面積には入りませんが、ここは手すりの一部を高めにしてもらい(1800間隔くらいで)あとで可動式のテント地の屋根をかけるなり、強化ガラスの屋根をかけるなりの改築をする方法があります。内から外に広がる素晴らしい空間が出来るでしょう。

 以上、現状の海野さんの案を尊重する方向でのコメントでした。



 さきほどのメールで補足することがありました。

●まず容積率ですが、900モジュールでやると、居間のでっぱりをなくして広げてもぎりぎり足ります。(130.41平方メートル→78.9%)従って削る床はありません。

●次に並列車庫のスペースですが、北側の離れを1メートルとした場合、奥行きが5.4メートル前後となり、もしかすると玄関ドアの開け閉めに支障があるかもしれません。
 私の車は1300CCシビックで、奥行きが4.1メートル弱しかないのですが、アコードとフォレスターの奥行き寸法次第では、対策が必要になります。
 1メートルのドアでも、前後に80センチのスペースがあれば出入りに支障はありません。その場合の車の寸法を逆算すると、4.6メートル以内となります。ドアのある左側に小さいほうの車を駐車することになります。
 完全な対策はドアを内開きにするか、引戸にしてしまうことです。丸窓をつけるとなると、断熱仕様の木製ドアで、どのみち特注になりますから、引戸でもやれないことはありません。(ちなみに、価格は25万前後だと思います)
 また、玄関が狭くなる欠点がありますが、玄関部分だけを30センチほど奥に引っ込めてやる方法もあります。この案が一番現実的かもしれません。

●居間の北側に棚が半分だけありますが、居間東の収納を飾り棚的な使い方にする見返りに、この棚を台所まで広げ、収納を増やす案があります。キッチン北側に450の袖壁がつきます。この棚の前は通路的に使われますから、全面収納がむしろ望ましいと思います。
 この関連で石庭をもう45センチ東に広げ、脱衣室を1坪に縮めます。そしてトイレを階段下の北いっぱいにおさめ、脱衣所引戸経由で入るようにする。こうしてトイレからの出入りをホールや玄関からもろに見えないようにします。(→結構大切なことです)
 トイレドアの直前のスペースに洗面所を設けます。つまり、脱衣〜洗濯〜洗面がワンルームでこなすことになります。(厳密には、雨天の洗濯干場にもなる)
 石庭を広げた理由ですが、先ほどの全面収納の棚の一部(左端900)を切り取り、窓をつけます。石庭のキッチン側900にも窓をつけ、居間とキッチン、家事室、風呂の4箇所から庭を見られるようにします。居間とキッチン側の窓は押し出し窓にし、夏は開放して南北の風の通りをよくします。(→重要!)

●2階の修正案ですが、西にトイレとシャワーをもってきた場合、0.75坪でしたらユニットバスが入れられます。(20万くらい)窓をつけ、パイプをつければ雨天時の物干し場にもなります。トイレは残り0.75坪の左半分(低い腰壁をつけてやる)通路右に小さな洗面台となります。かっちり収まるでしょう。
 1、2階の食事がどのようなスタイルになるのか、できましたら教えてください。食卓のスペースが必要なのかどうかで、「たまり」の考えががらり変わります。特に1階の場合、もしも食卓が不要で、壁際にソファかベンチ、中央に大きな多機能テーブル(椅子付きでも座卓でもどちらでも可)ということになると、かなりつぶしがききます。これは発注前に完全に決めておく必要があります。
 いままでの話をうかがった範囲では、独立した食卓は無用のような感じがしますが…。

 何やかや言いながら、いろいろとアイディアを出してしまいましたが、設計家の本能みたいなものですので、どうぞお気になさらず。あくまで「なんちゃって間取り」の修正と考えて下さい。
 おおよその方向が決まりましたら、これまでのやりとりと最初の「なんちゃって間取り」そして「TOM工房修正案」を図面に直したものをホームページ版としてまとめ、発表させていただきたいと思います。タイトルは「ネットDE添削住宅間取り」(仮題)すごくいいものが出来ると思います。以前からやりたかったことでした。その意味で、海野さんには感謝しています。それでは。



 
大切な趣味の空間



 横浜の海野です。返信遅くなりすみません。仕事でゴタゴタがありオフィスを空けました。
 菊地さんの
「脱サラ日誌」全部読みました。面白かったですよー。文章から菊地さんの頭の良さも伝わってきます。ボキャブラリーが少ないので、何がどう面白かったのか伝えるのが下手ですみません。読書感想文はいつも苦手でした。読んで自分はまだまだ努力が足りんなーと感じました。もっとがんばらねばと、励みになります。

 私のバックグランドと趣味をお話ししたいと思います。
 趣味でトロンボーンを吹いております。吹奏楽、クラッシック、ジャズと幅広く活動しています。家内はクラリネットを吹いていますが、子供ができてから辞めてしまいました。実は、防音室を作り、視聴覚室と練習室がある部屋が作れたらなーと 希望しておりました。予算の関係、両親との同居ということもあり、この夢は断念しております。
 ピアノも二人でやっております。今のアパートは壁が薄いので、ヘッドフォンで練習できるクラビノーバという電気ピアノです。趣味が趣味なので、ヘッドフォンなしで大きな音で音楽を楽しみたいです。小さな音でこっそり聞かなければならい事、これは私達夫婦にとって大きなストレスです。最近は慣れましたが。
 スキューバダイビングも趣味でした。これも子供ができてから休止状態が続いています。子供ができる前は月に2回くらいのペースで冬も家内と潜りに行ってました。お金もかかるし、最近は子供の手もかかります。今は全然行けません。
 私は高校の時アメリカにホームステイで1年留学、大学では寮に入り3年間留学しました。現在の仕事の8割はアメリカの業者が相手です。

 頂いたアドバイスをもとに、最初にお渡ししたプランを描き直そうと思います。配管等の事を考えて、風呂やトイレの位置、キッチンの位置をなるべく上下で合わせようと思っています。お渡ししたプランもそのようになっていると思います。
 シャワーとトイレは一緒にする事を妻に提案した事もあります、彼女の経験から「独立したものが良い」と言われ独立プランになりました。シャワーを浴びたあとトイレの床が湯気で濡れる。トイレが湿っぽくなる等、トイレとバス一体の物だとそれはそれでデメリットがあるようです。普段は1階の共有の風呂を使って、たまに2階のシャワーを使えば良いとも思うので、独立型にそれ程こだわらなくても良いと思うのですが。
 900のモジュールでとの提案ですが、なるべくなら910より小さくはしたくなかったのです。本当はメーターモジュール(1000)でやりたかったのですが、910に変更して郵送したプランになりました。アドバイスにありましたが、縦駐車にすれば900にしなくても良いようなので、第一プランの修正が完了したら、新規のプランを考えてみます。プラン修正ができましたらまた見ていただきたいと思います。

「ネットDE添削住宅間取り」の件、菊地さんは文章が上手いので、大変楽しみです。私の乏しい文章を上手くまとめてください。草稿ができたら読ませてください。お願いします。



 お仕事でアクシデントがあったようで、お忙しいなかのご返信、ありがとうございます。
「脱サラ日誌」、お読みくださったそうで、重ねてありがとうございました。あの連載はとても好評でしたので、いずれはどこかの出版社に売り込みたいと考えています。いざそうなると、かなり手を加えなくてはなりませんが。
 いろいろな人から(プロも含めて)よく言われるのは、「文章に独特のリズムがありますね」という有り難いお言葉です。言われるとそうかな〜、と思ったりもしますが、長い割にはトントンと一気に読んでくださる方が多いのは、案外そのへんに秘密があるのかもしれません。
 いずれにしても、見ず知らずの方のそうした評価は、大変励みになります。

 ご夫婦の音楽の趣味ですが、それほどの方々だとすると、納戸兼音楽&視聴覚室の案は、ぜひとも実現させたいですね。最初に海野さんからいただいた「家に関する要望」の箇条書きをもう一度読み返してみましたら、一番項目が多かったのが、この納戸兼視聴覚室に関する記述でした。それだけこだわりがあるのが良く分かります。
 実は私も中学生時代に2年間だけ吹奏楽部にいたことがあり、(ちなみに、パーカッション担当でした)その後もフォーク系のバンドを組んだりと、音楽活動は積極的にやったほうなので、お気持ちはよく理解出来ます。いまでもフォークギターはしっかり持っていて、時に家族の迷惑もかえりみず、歌いまくったりします。
 音楽、楽器、スキューバとなると、かなり趣味関係の持ち物がありそうですね。納戸5畳の意味が納得出来ました。

 収納に関してですが、前回書きました1階水回りへの入口をひとつにまとめる案ですと、階段下が全面収納として使えますよ。2階を傾斜天井にした場合、ロフト部分を納戸や簡易ベットにすることも可能です。(建築基準法上、床面積に算入されないような工夫が必要です)
 容積率が厳しいので、平面だけでなく、立面をフルに使った収納計画をたてるべきでしょう。私の家の例ですが、床下には全面防湿コンクリートを打ち、床に何箇所か点検口を設けて、一部を収納に使っています。(当然ですが、床面積には算入されません)
 2階の水回りですが、現状の案でも台所には配管を必ず配置しなくてはいけないので、2階台所隣にトイレやシャワーをもってきても何ら問題はありません。その場合、2階への設備配管は1階台所と寝室の間仕切り壁を利用します。(もし入らなければ、寝室収納の一部に配管スペースを設ける)
 1階〜2階への配管スペースは1ケ所にまとめたほうがいいかもしれません。いずれにしても、「水回りはなるべく1ケ所にまとめる」「設備関係の部屋はなるべく上下階とも合わせる」という考え方は大事です。さすがによく勉強なさってます。

 おおよそのことが分かりましたので、あくまでネットでの発表用ですが、「TOM工房修正案」を作図したいと思います。さしつかえなければ、完成次第、領収書と一緒に送ります。
 まだお伝えしてない案も一部含まれていますが、それは見てのお楽しみということで。それでは。



 おはようございます。横浜の海野です。仕事前に書いてます。
 仕事のアクシデント、菊地さんも話聞いたら笑いますよ、絶対。泥棒が盗みに他人の家に入り、盗んだパン でお腹こわして家主を訴える。そんな感じです。正当な理由でミソつけられないから、ありとあらゆることを理由にミソをつけるんですね。
 私も今の仕事と関係なくなったら、菊地さんみたいに文章にしてみようかな?面白い話を、面白く文章に出来るかは別なんですけどね。その点、菊地さんは文章の才能があるので、うらやましいです。昨夜、自転車の放浪日記を読み始めました。菊地さんって、「人生無駄なく生きてる」って感じですね。こちらも読ませて頂きます。

 いろいろとコメントありがとうございました。何度も書きますが、1階の「たまり」が難しいです。これを考え始めるといつも手が止まってしまいます。
 5000円じゃ安かった気がいたしますが、今後の「間取り添削教室」開講するときの価格の参考にしてください。

「施工監理出来る場所に菊地さんが住んでいたら、もう絶対設計お願いしてたね」
 と家内と話しております。ネット上ですが、このように出会えたのも何かの縁かと思います。今後とも宜しくお願いいたします。暫くしたらまた連絡いたします。



 またまた海野です。何を今さらと言われそうですが、わかったつもりで、わかっていなかった部分を再確認させてください。

●以前に「今の1階プランでも、角の出っ張りをなくし、収納の位置を調整すれば南東のスペースがある程度のたまりにはなると思います」とあります。
「角の出っ張りを無くす」という部分ですが、私は1階の部屋が玄関より南に飛び出している事だと理解しております。その解釈で宜しかったでしょうか?(考えているうちに不安になってきました)
 そう考えて角の出っ張りを無くそうとすると、玄関と面合わせにするために北へ下げるか、玄関を南に出すかしなければなりません。
 玄関を南に出す事は容積率の関係から不可能なので、「モジュールを900に変更して、玄関と面合わせにする事で角の出っ張りを無くす」という考え方で宜しかったでしょうか?

●フォレスターの全長は4450で幅は1735。アコードは全長4680の幅1720とフォレスターより長さがありました。フォレスターの方が高さがある分大きく見えます。
 ご指摘どおり、やはり玄関を30センチ下げてプランします。しかし30センチっていうと、1/100図面でわずか3ミリですよ。私のようにフリーハンドが好きな人間には、苦しいです。(笑)
 それで質問ですが、「全面インターロッキング敷きにするなどの配慮が必要です」と以前のコメントにありますが、これは「東側の車をもう少し北側に、奥の方に駐車する」という考え方で宜しいでしょうか?

●壁面後退線をまだ調べていません。今週役所に問い合わせるつもりだったのに、例のゴタゴタで忘れていました。わかり次第連絡します。

●不動産屋と売却状況の件でお話ししました。先方から連絡はなく、また今週末チラシを配布と言ってました。早く売れて欲しいです。

 そう言えば菊地さん、吹奏楽もやってたん出すね。本当にオールマイティーな方ですね。驚きです。では。



 札幌の菊地です。ご質問の件ですが、

●居間の出っ張り
 居間全体ではなく、南東部分に畳1枚分のへこみがありますね?そのために居間の形状がいびつになり、動線にも大きな悪影響を与えています。これをどうにかしたいな〜、と思うわけです。
 私なら単純に長方形の居間(14畳)にし、駐車場をなんとかします。それ以上いじりだすと、この案そのものを大幅に変えなくてはならず、大変な作業です。

●駐車場ですが、現状のままで上の変更を加えても、幅5.5m、奥行き5.4mのスペースが確保出来ます。ここをすべてインターロッキング敷にすることをお勧めしているわけです。(人の歩く部分をあいまいに見せかけ、なおかつ駐車場全体の見栄えをよくする)
 昨夜詳細な平面プランをホームページ用に作成してみましたが、余裕で収まります。普通に停めても2台の間に、1.3mほどの通路が出来ますから、これで充分かと思われます。

●玄関ドアの件ですが、あれから画期的なアイディアを思いつきました。ひとりで胸にしまっておくにはもったいないので、やはり図面(HP用に描いたもの)を送ります。

●2階水回りもうまく収まる案を思いつきましたので、同じく図面を見てください。ぼ〜っと考えていると、庭の草むしりしている最中に、いきなりいい案が浮かんだりします。設計屋とはそんなものでしょう。

●壁面後退線を問い合わせるときに、その地域の防火規制についても聞いてください。それによって外壁の材料が大きく変わってきます。全面ガルバ鋼板なら問題ないですが、一部木材を使うとなれば、防火規制によっては使えない箇所が出てきます。

 図面は今日FAXで送れると思います。壁面後退線はとりあえず1Mということで描いてあります。もしも私の修正案が気に入ってしまい、どうしても自分の案に近い形で家を建てたくなった場合、方法がなくはないですから、そのときはご相談ください。海野さんと私とは、すごく相性がいい気がします。お近くでなかったのが残念です。それではまた。



 返信ありがとうございました。自分の勘違い等もあり、確認できて助かりました。
 駐車場のインターロッキング敷ですが、要するに歩道というかバージンロード的なアプローチではなく、車の駐車場所も人の歩く場所も、同じ床にするって考え方で良いのですよね。(まだ不安)
 修正図面は私の修正ができてから…とも思っていたのですが、やっぱり見せて頂きたいです。今夜は家に誰もいない可能性もあります。FAX楽しみにお待ちしています。



 
閃きの最終修正案



 いやー、すみません。海野です。今日は自宅からメールしてます。
「菊地さんからFAXが届くかもしれない」と家内に電話しておいたところ、夕方6時頃に家内がFAX着信音の電話を受けたらしいのですが、受信の仕方がどうもわからなかったらしく、ご迷惑をおかけしました。そのことをメールに書こうとしていたら、ちょうどいまFAXが届いたので驚きです。

…TOM工房/菊地による修正案…

 すばらしい間取りです。完璧ですね。ため息ついて眺めています。これを見てしまうと、私の修正案は進みませんね。私がぼんやりイメージしていたものがはっきり図面になっているので、なんだかとても嬉しくなります。

 すみません。自宅のPCは調子が悪く、1、2行書くとプログラムが強制シャットダウンするので、文章が進みません。(どうりで家でメールしないわけです)
 本当にありがとうございました。こうなると、HPでの「間取り添削」がますます楽しみになります。



 菊地です。ご自宅のパソコンの調子が悪いそうですが、読むだけなら平気ですよね?
 実はFAXがうまく送信出来ませんでしたので、昨夕、資料を手紙で送ってしましました。(なぜか夜にはうまく送信されてしまいましたが)
 月曜には着くと思いますので、鮮明な印刷でゆっくりご覧ください。解説なども走り書きで入れてあります。以前に書いたものと重複する部分もありますが、修正案の要旨を列記します。

《1階玄関回り》
●1階納戸を北いっぱいに寄せ、出来た1坪の空間に玄関ポーチを配置。このことで、ドアの開け閉めに余裕が出来、問題点が一気に解消します。家全体の形状も凹凸が少なくなり、すっきりします。ここには床がないので、床面積には入りません。建築面積には入りますが、建ぺい率には充分余裕があります。
●このポーチ北側に外ベンチを設けます。花や荷物置き場、休息場として生活に潤いを与え、ちょっとした接客スペースにもなります。ベンチ下には間接照明を入れ、夜には光がもれるしかけです。また、東側にはスリット状の開口部を設け、出入りのときに植栽が見えるようにします。
●玄関ドアを東むきに90度ふり、アプローチに変化をつけます。主たるアプローチとなる東からの見栄えもすっきりするはずです。道路から玄関へのアプローチは、2台の車の間に出来た約1.3Mのスペースを利用します。
●独立した空間として玄関を合計3畳分確保。収納も玄関から直接取りだせる位置にします。

《1階居間回り》
●くり返し書きましたように居間の出っ張りをなくし、14畳の長方形の形状にします。
●居間に「たまり」を作るため、大幅に動線を整理。具体的には、南東部にL字形に多機能ベンチを設け、テレビ台、椅子、収納を兼ねる。このベンチに添うように台形(ピアノ形)のテーブルを設け、多数の来客時にもつぶしが利くようにする。寝室との境に一部壁を設け、さらにたまりを完璧にする。この壁は2階の荷重を受ける構造上の理由からも必要です。
●居間北側に全面収納を設け、一部を台所まで延長。上部を台所〜居間から連続したカウンターにする。作業の自然な流れが出来ます。カウンター上部には石庭へと続く窓を設け、夏の通風に利用します。
●石庭を1坪に広げ、浴室、居間、台所、家事室の4室から庭を望めるようにする。
●台所を45センチだけ家事室側に広げ、冷蔵庫の開け閉めに支障のないスペースを確保。サービス用の外部ドアもつけました。
●家事室は0.75坪になりましたが、完全なたまりになっていますので、造り付けの机や棚を設ければ支障なく使えるはずです。引戸を閉じれば、お母様だけの完璧な「隠れ家」です。

《1階その他》
●1階ユーティリティーを3畳の空間におさめ、そこからトイレに入るようにします。結果的にユーティリティーが広々とし、トイレの出入りも玄関やホールから完全に遮断されます。
●納戸&視聴覚室には希望の設備をすべて確保。少し窮屈ですが、ピアノを置くことも可能です。トロンボーンもなんとか演奏出来そう。
●階段下とトイレ南側にも収納を確保。収納はこれくらいで充分かと思われます。
●1階寝室収納部にパイプスペースを確保。トイレ排水管が100ミリあるので、これくらいは必要です。
●階段幅と1階トイレ幅は1000を確保。900モジュールとはいえ、ここだけは余裕が欲しい箇所です。
●1階テラスには手すりを設けず、広がりをもたせます。南庭に一部芝を張り、お父様のゴルフパット練習場とします。
●予算にもよりますが、建物周囲には海野さんのイメージ通り、白い玉砂利か珊瑚石を敷けばいいでしょう。道路側のフェンスは多少高めにし、木製の目透かし(間をわずかに空ける)にするなど、プライバシーに配慮します。

《2階全体》
●2階階段あがり口にフリーゾーンを作り、家族のコミュニケーションの場とします。たまには皆様で音楽会はいかが?ご夫妻のパソコン机にも使える多目的机。東側の棚にステレオも置けます。階段との境壁は、高さ1000程度の腰壁とし、空間に広がりを持たせます。
●2階中央に構造上、どうしても省けない柱が出来ますので、それを利用して将来の子供ベット&ロフトのスペースを確保します。ここの計画はフレキシブルですが、下は簡単に仕切ることも可能な女の子のスペース、上ははしごを使った男の子のロフトベットあたりでしょうか。この計画のためには、天井を屋根の傾斜にあわせた傾斜天井にしてやる必要があります。
●2階ユーティリティーを西に配置。台所北側から入り、動線に無駄がありません。引戸で完全に遮断することも可能です。コンパクトですが、必要最低限のスペースがあります。
●2階居間のたまりの確保のため、2階台所への出入り口はユーティリティーと兼用の北側となりました。同じ理由で、テラスへの出入り口は、台所と居間東側のドアに限定しています。ただ、居間に関しては全面ガラスの引戸にしてしまい、外テラスと一体に空間を考えることも可能です。どちらを選択するかは、海野さんの暮し方によります。

 詳細な壁量計算、構造計画、窓の採光計算をしていませんので、より具体的な話になった場合、多少の修正が必要となる可能性があります。あくまで海野さんの「なんちゃって間取り」をベースにしてはいますが、私としては非常に手ごたえのある修正案となりました。



 約1カ月に及んだ「インターネット住宅間取り相談」は私の修正案呈示により、こうして一応の区切りを迎えた。札幌と横浜という距離的な隔たりを越える活発な話し合いが可能だったのも、インターネットの持つ特性をうまく活かしたからだろう。
 メールの交換は時には一日数度にも及んだ。「正確な意思疎通」という観点からすれば、面談による進め方と比べて、決して劣るものではなかったように思う。目による直感的なイメージの構築は望むべくもないが、面と向かわないその分、互いの心情を素直に吐露出来る利点がある。双方の文書情報を集積すると、原稿用紙換算120枚を軽く越えた。こうなると立派な本である。

 施主が間取りを考え、町の工務店が多少それを手直しして建てるというパターンは従来からあったが、真の意味で施主の側に立ったものだったろうか。今回の手法はあくまで施主側の案に沿う形で、多少プロとしての修正を加えたに過ぎないが、このまま計画を実現させても遜色ないリアリティはある。「基本設計は施主、実施設計はプロ」という住宅設計における新しいパターンの可能性になりはしないだろうか。

「この家の間取りはお父さんが原案を考えたんだよ」

 そう胸を張って子供たちに語れる、そんな生き方、暮し方があってもいい。家作りという人生における大切な事業に対するそうした家族の深い関わりこそが、これからの社会において大きな意味をもってくる気がする。
 有料、無料に関しては海野さんの強い希望もあり、早い段階で有料と決めた。たとえわずかであっても依頼された側は力の入れ方が違うし、依頼した側も義理や情にしばられずに済む。依頼主に長い海外生活の経験があり、現在も外国人相手の仕事をされていること、そして私自身も極めて合理的な考えを持っていたことが背景にあった気がする。こちらの手法も「アイディアはタダ」という考えに、一石を投ずることになるのではないか。

 今後海野さんの「船の家」がどんなふうな方向に進み、どんな港にたどり着くのか、少しばかりの関わりのあったこの私にも皆目見当がつかない。土地の確定、ご両親との意見の調整、予算のこと…、問題は山積みである。だが、家作りに対する海野さんのあくなき探究心と熱意がある限り、必ずや満足のいく結果が出るものと信じている。