街角100ライブ
127 小樽運河フロート03rd
「路上ライブで英語」 /2016.7.6
不順な天気が続いてしばらく遠ざかっていたが、2ヶ月ぶりに小樽運河で歌ってきた。
中旬以降に多くの介護施設系ライブを控えているが、今週に限ってライブ予定が全くない。天候や風の様子をうかがっていたが、まずまずの条件がそろったので出かけることにする。今回は昼食後の午後から出発と決め、妻は同行しなかった。往復80キロある道の途中には、以前に重大死亡事故が起きた峠があり、(もし事故に巻き込まれて、一人取り残されるのはイヤだから…)と、半分真顔で妻はこれまで2回のライブについてきた。
しかし、事故の起きた道は中央分離帯にも強固なガードレールが設置され、重大事故の可能性は減った。運転にも充分慣れたので、そろそろ「独り立ち」の時期である。13時15分に家を出て、14時20分に小樽運河到着。いつも小樽運河で演っているギタリストの浜田さんに挨拶に行ったら、これまでの運河側でなく、反対の擁壁側で弾いている。
不思議に思って聞いてみると、通路の運河側には一切店を出してはいけない、との指導が当局からあったとか。おそらくは観光地としての景観上の問題からだろう。音楽系パフォーマーには特に指導がなかったが、移動は浜田さんの自主的な判断らしい。ならば自分も同様に擁壁側で演るべきか…、と当惑した。実は展示に絶好な擁壁側には、ほとんど空きスペースがない。通路側にも店が広がった背景は、おそらくそのあたりにある。
ちょっと困って、トイレ南側の擁壁部にわずかにあった空きスペースを使おうかと、近くにいたアクセサリー販売の方にお伺いを立てた。
「あの空いた場所で1時間ほど歌っていいでしょうか?」と。すると首をひねって、「歌はちょっとどうも…」と、柔らかい拒否の姿勢。こうなれば前回と同じトイレ北の運河側に設営するしかない。前回挨拶を交わした絵葉書販売の方に断りを入れると、「私はもうすぐ撤収しますが、くれぐれもアンプの音量にはご注意を」と、これまたやんわり諭された。
もしかして、旅のストリートシンガーが騒音のトラブルでも起こしたのかもしれない。出だしから気持ちが萎える出来事が続けて起こったが、歌わずに帰るのもシャクなので、普段よりさらにボリュームを絞り、生音に近い感じで演ることにした。いろいろ手間取って、15時からようやく開始。休憩なしの1時間20分で、22曲を一気に歌った。
「愛燦燦」
「愛の讃歌」
「青葉城恋唄」
「アカシアの雨がやむとき」
「アビーロードの街」
「北の旅人」
「君をのせて」
「ビリーヴ」
「さよならの夏」
「さくらんぼの実る頃」
「涙そうそう」「川の流れのように」
「花の首飾り」
「野ばら」
「ブンガワン・ソロ」
「かなりや」
「時をかける少女」
「大空と大地の中で」
「時代」
「時の流れに身をまかせ」
「糸」
「いちご白書をもう一度」
ボリュームが気になるのでストローク系の曲は極力避け、静かなバラード系の曲を連発した。急な撤収に備え、ここでは反応の薄いリクエスト用紙も設置しなかった。
最初はいまひとつ集中できなかったが、(何か指摘されたら、即座に打ち切ろう…)と腹を決めたら、少し落ち着いた。歌い手の気分は直ちに歌に表れてしまうせいか、前半の反応はパッとしなかった。1時間を過ぎたころに、思い立って絵葉書売りが去って場所が空いた擁壁側に移動して歌うことにする。
スピーカーは一段高い場所に置いて聴きやすくし、曲もいわゆる「カンフル曲」を連発したせいか、ここから俄然反応がよくなった。「時の流れに身をまかせ」を歌っていると、東南アジア系の男性がCD2枚と500円硬貨を握って、「ツー、ツー」と指を2本立てて私に差し出す。500円でCD2枚は売れない。しかし、明らかに日本語が通じない様子なので、
「This is five-hundred yen. You can get only one. Do you need two?」
(これは500円ですがな。1枚しか買えまへん。あんさん、2枚欲しいのでっか?)などと思いついた単語を並べる。するとかの男性、じっと硬貨をながめ、「オー、おっけー」と納得し、1枚だけ買って去って行った。
ここでは前回もCD2枚が外国人に売れたが、なかなか反応はいい。いずれもじっと歌を聴いたあとで買ってくれるのも嬉しい。路上ライブでも時に英語は必要になる。中学レベルだが、咄嗟に出るか否かが勝負どころ。この日は晴れていたが気温はそれほど高くなく、風もほどほどで過ごしやすかった。まだ余力は充分にあったが、それなりの収穫があったところで撤収。
新たな課題がいろいろ出たので、今後どう対応すべきか、ゆっくり考えたい。
128 チカチカ☆パフォーマンス106th
「平日午前に手応えナシ」 /2016.7.13
(「赤れんがアーティスト・オーディション」の続き)「赤れんがアーティスト」のオーディションを無事に終え、ただちにチカチカパフォーマンス事務局のあるビルへと向かう。この日は数少ない7月の活動日だった。
実はオーディションの希望日時も、このチカチカパフォーマンスの予定に合わせて出したもの。同じ日に両方のスケジュールを効率的にこなしてしまおう、という目論見からだった。手続き後に地下広場へ向かうと、似顔絵のますみさんが会場入りしていたが、他のパフォーマーはまだ来ていない。平日の午前中なので、さすがに出遅れているのか。オーディションの緊張感がまだ心身に残っていたが、ただちに設営して11時40分くらいから始める。
およそ30分弱で10曲を歌った。
「愛燦燦」
「青葉城恋唄」
「アカシアの雨がやむとき」
「亜麻色の髪の乙女」
「アメイジング・グレイス」
「雨が空から降れば」
「見上げてごらん夜の星を」
「イエスタディ」
「池上線」
「空も飛べるはず」
5月からの開催時間拡大措置に伴い、11時からのパフォーマンスが可能になったが、声の出にくい午前中ライブは極力避けたかったので、午前中に歌ったことはまだなかった。
しかし、広場の開放枠がこのところ減る傾向にあり、それに伴って枠毎の競争率も高くなっている。人気のある土日枠は、ときに抽選が実施されたりもする。前回は自分では早いつもりの12時40分に会場入りしたが、それでも到着は3組中のラストで、長い待ち時間があった。仮に午前中から歌い始めてそれなりの手応えがあれば、競争率の低いこの時間帯は狙い目だった。
そんな思いで試みたが、いざ歌い始めても手応えは非常に弱かった。最近になって事務局から騒音に関して以前より一段と厳しい通達が出され、この日は普段よりもさらにボリュームを下げ、バラード系の静かな曲を主として臨んだ影響もあったかもしれない。
音を下げて静かに歌えば騒音のクレームは出づらいが、相対的に音は届きにくくなるので、集客面ではマイナスになる。「パフォーマンスで賑わいを創る」という主旨からも遠ざかる。公共空間で歌うことの宿命で、出口のないジレンマだった。
小さな音でも人を引きつける手段が何かあるのかもしれないが、現時点では思いつかない。奇しくも上旬に歌った小樽運河でも同じ騒音の問題があったが、歌い手の気持ちが引いてしまうと、歌はいっそう聴き手には届きにくくなる。
お昼休み直前の時間で、通りを往く人々は昼食に向かうか、昼食前に用事を済ませたい人が多かった可能性もある。関心を示しても、1曲を聴き終えぬうちにそそくさと立ち去る、という負の連鎖が続き、やがて持ち時間が尽きてしまった。歌の途中で次のパフォーマーが会場入りしたので、場を譲る。オーディション終了の軽い脱力感と暑さ、そして空腹と手応えのなさとがないまぜになり、歌い続ける気力が減退している自分を感じた。
3人目のパフォーマーが続けて会場入りしたのを潮に、1ステージのみで撤収することに。場所や状況は異なるが、直前に歌ったわずか10分間の赤れんがオーディションのほうが、はるかに手応えがよかったという皮肉。自分の技量が落ちたわけではないと信じたい。
幸いに来年3月まで歌うためのライセンス延長権利はすでに確保している。8月以降も広場の開放枠は多くなく、例年後半期は介護施設系のライブで忙殺される。自分のあるべき姿を見つめ、考え直すには、絶好の冷却期間であろう。