街角100ライブ


098 チカチカ☆パフォーマンス79th
   「ダブル路上ライブ再び」
/2015.6.29



 1週間前に初めて試み、喉の絶不調というアクシデントに見舞われつつも、何とか乗り切った「同一日に地上と地下のダブル路上ライブ」を、再び実施した。
 地上と地下の会場は前回と同じで、時間帯も同じのアカプラパフォーマンスとチカチカパフォーマンスである。違っているのは天候で、前回よりもかなり肌寒い。いまにも雨が降り出しそうな曇天で陽射しは全くなく、風がほとんどないのが唯一の救いだった。

 まずは地上会場となるアカプラに着く。前回と同じ東端のベンチが植栽の保守点検で作業中。トラックや機材で埋まっていて、全く使えない。やむなく中央やや東寄りのベンチに陣取る。

 前回の失敗をふまえ、リクエストスタンドは風に弱い組立て椅子の転用をやめて、事務局貸与の看板のうち、アカプラでは使わない方を利用して、ヒモでしばりつける方式に変えた。
 看板自体が倒れる可能性もあるので、2つの看板を持参のゴムベルトで一体にして止めた。

 準備中に中年女性からいきなり声がかかる。

「お兄さん、これから歌うの?何時から?」
 歌う前からお客さんとはありがたい。いますぐ始めますと、写真を撮って直ちにスタンバイする。

「私、島倉千代子が大好きなの。何か歌える?」
「人生いろいろ」「襟裳岬」「愛のさざなみ」…など、思いつくままにレパートリーを挙げると、「襟裳岬」をお願い!あの曲が一番好きよ、と女性。
 最初はフォーク系を歌うつもりでいたが、急きょリクエストにお応えすることに。

 12時10分から歌い始め、フォークや昭和歌謡を中心に45分間で13曲を一気に歌った。


「襟裳岬(島倉千代子)」
「大空と大地の中で」
「青葉城恋唄」
「わかって下さい」(初披露)
「雨が空から降れば」
「ワインレッドの心」
「少年時代」
「アビーロードの街」
「北の旅人(南こうせつ)」
「恋の季節」
「アカシアの雨がやむとき」
「恋のバカンス」
「どうにもとまらない」


 突発リクエストの1曲目は別にして、構成としては「北の旅人」までがフォーク系、「恋の季節」以降が昭和歌謡系である。

 スタートから幸先のよいステージを予感させたが、2曲目以降になると周囲の反応は激変し、関心を示す人は皆無に近かった。最高気温が17.9度という寒さのせいか、通行人がめっきり少なく、ベンチに座る人もまばら。
 それでも通りの風になって淡々と歌い続けたが、遠くから視線を送ったり、通りすがりに歩調を緩めて関心を示す人はいても、立ち止まったり、リクエストをくれるまでには至らない。

 まるでガマン比べのような寒い時間が通りすぎてゆく。唯一拍手が起こったのが、「アビーロードの街」。過去に数回しか歌ってないが、曲調が路上ライブ向きかもしれない。
 ともかくもノルマだけは果たして、次なる会場である地下広場に向かうべく、機材を畳んだ。前回から修正した風対策面は問題なく機能したのが、数少ない収穫だったかもしれない。(後半に続く)




099 チカチカ☆パフォーマンス80th
   「チカチカ百花繚乱」
/2015.6.29



(前回からの続き)
 旧道庁前赤レンガ広場でのアカプラパフォーマンスを終え、まずは腹ごしらえをする。前回は地下広場へただちに移動したが、今回は立派なベンチのある赤レンガ広場に残って食べた。
 食後に北4条広場へと移動してみると、地上に比べて明らかに人通りが多い。雨や雪のほかに、風や気温も「地上か地下か?」の重要な選択肢になっているようだ。

 この日は3組の共演だったが、開始時間が迫っても他パフォーマーの姿が見えないので、前回同様にトップで歌うことにする。
 14時から歌い始め、結果として40分で11曲を歌った。(※はリクエスト)


「ラブユー東京」
「港町ブルース(初披露)」
「愛人」
「夜霧よ今夜も有難う」
「男と女のお話」
「青葉城恋唄」
「恋の町札幌」
「アカシアの雨がやむとき」
「池上線※」
「抱きしめて(オリジナル)」
「熱き心に」


 地上とは打って変わって、1曲目から熱い反応。一人また一人と立ち止まる人が増え続ける好循環で、最後まで聴き手が途切れることはなかった。
 ピークは「アカシアの雨がやむとき」あたり。最近は集客的に苦戦する状態が続いていたが、感触としては20人を超え、今年の最高集客数を記録したかもしれない。

 歌の途中から(もしや…)と気になっていたが、終了後に笑顔で近づいてきた女性が、過去に4度も聴いてくれているSさんだった。偶然通りかかったそうで、この日が実に5度目の遭遇。よくよく縁のある方だ。
 Sさんには個人的に企画してくださった2つのライブにも招かれていて、チカチカパフォーマンスから生まれた音楽の絆である。この日はこれまで聴いたことのない曲もあったそうで、大変喜んでくださった。

 さらに驚いたのは、若い女性(20代前半?)がついと近寄ってきて、「先日の北海道神宮例祭のステージを観ました。《傘がない》が強く印象に残って、MCでチカホで歌っていることを知り、来てみました」という。
 ネット検索で知ったのですね、と確かめると、いいえ、今日が休みなので、たまたま広場に来てみただけです、とのこと。これまた単なる偶然のなせる業。それにしても、ステージでの歌唱が印象に残って、別のステージも聴きたくなったとは、歌い手にとっての殺し文句ではないか。
 相手が孫のような世代となると、なおさらだ。正直うれしい。

 14時半ころに同時にやってきたパフォーマー2組に場を引き継ぐ。1時間20分休憩し、16時から第2ステージ開始。
 他のパフォーマーが1ステージのみで帰るというので、会場は独り占め状態。フォーク系を中心に、延々17時近くまで歌い続ける。(※はリクエスト)


「季節の中で」
「時代」
「ワインレッドの心」
「やさしさとして思い出として」
「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」
「アビーロードの街」
「万里の河※」
「落陽※」
「巡恋歌(初披露)」
「君恋し※」
「桃色吐息」


 16時を過ぎると集客は激減するのが常なので、あまり期待せずに、流れ次第では5曲くらいで打ち切るつもりでいた。ところが予想外に人が集まってくる。やめるきっかけをなくしつつ、目についた曲を歌い続けることに。

「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」を熱心に聴いていた中年男性、終わると近づいてきて、原曲と違ってる箇所があるという。一瞬歌詞かメロディでも間違ったのか…?と思ったが、指摘されたのはサビの部分のギター奏法だった。
 単純にストロークで弾いているが、そこは三連符で弾くべき、とのこと。原曲はあまり聴いてなく、ずっとこれまで自己流でしたが、未熟な部分はどうぞご容赦を、と陳謝。実はアルペジオ奏法だと指摘通りに演れるが、その言い訳はしなかった。
 通りすがりとはいえ、わざわざ指摘してくれるのはありがたいこと。謙虚に受け止めて、次回に活かしたい。

 後半になると立ち止まった方からリクエストが次々と飛び出す。結果として、第1ステージと同じ11曲を歌うことに。
「万里の河」「落陽」は初めてリクエストを貰ったが、この2曲で驚くほどの人が集まってきた。「落陽」は過去にもほとんど歌ってなく、チカホでは初披露。自分には向いてないと決め込んでいたが、これほど強いのなら、今後は考えなおすべきか。

「君恋し」は第1ステージで声をかけてくれた若い女性からのリクエスト。16時くらいからまた歌うかも?と言っておいたので、念のため来てみたという。またまたうれしい言葉。  それにしても、その若さで90年前の懐メロをなにゆえ知っているのか、時間がなくて聞き漏らした。

 歌っても歌っても人は途切れない状態が延々続いたが、会場の終了時刻が迫ってきたこともあり、「桃色吐息」で打ち切りとさせてもらう。
 やれやれと機材を片づけていたら、通りから手を振る3人の若い女性の姿が。何と札幌駅近くに勤務する長男のお嫁さんと、その知人である。
 詳しい経緯は省くが、知人は九州から旅行に来ているお嫁さんの親戚とその友人。この日路上で歌うことは特に告げてなく、遭遇したのは全くの偶然である。何とも偶然の重なる日だ。

 はるか南からの旅人なので、歌でも披露すべきかと時計をみると、まだ15分の余裕がある。幸いにマイクスタンドは組んだままの状態。急ぎPAにケーブルをつなぎ直し、北への歓迎の意味もこめて、北海道にちなんだ名曲「大空と大地の中で」「北の旅人(南こうせつ)」を続けて歌う。
 すると、それを聴きつけて通りすがりの人がまた5〜6人集まってきた。単なる身内のお接待のつもりでいたが、事情を説明して、一緒に聴いていただくことに。
 この日は喉が絶好調で、合計で37曲を歌ったが、まだまだ余力があった。もしかして、喉の調子が集客に好影響を与えていたかもしれない。だとすると、通りすがりの聴き手とは、実に敏感で正直な存在ではないか。

 終わると、南からの旅人2人が涙を流している。「すごくよかったです。泣けました」と、これ以上ない感謝感激の言葉。
 実はこの日は早朝7時に、以前にチカホでCDを買ってくれた若い男性から突然の電話もあった。まるで狙いすましたように、次々と偶然が重なる日。長い人生、こんな日も確かにあるのだ。




100 チカチカ☆パフォーマンス81th
   「出会い重ねて100回目」
/2015.7.3



 ちょうど10年前の2005年5月、
モエレ沼公園を舞台に最初の路上ライブを仕掛けてから、ついに通算100回目を迎えた。ひとつの目標にはしてきたが、実現する日がくるとは正直思ってなかった。
 当時はまだブログを始めてなく、記録はホームページでしかうかがい知れないが、改めて読み返してみると、我が路上ライブの原点は、まさにここにあったのだと感慨深い。

 100回目は同じモエレ沼公園でやろうかと画策していたが、天候その他の事情により、断念。以前からエントリーしていたアカプラパフォーマンスが結果として100回目の舞台となった。1回目と同じ青空の下で演れたので、これも何かの巡りあわせかもしれない。

 異常低温とそれに伴う長雨がようやく終わり、まずまずの天候。しかし、風がかなり強い。
 前回のアカプラでの手応えがいまひとつだったこともあり、この日はベンチ(花壇)に座ってマイペースでじっくり歌おうと、前日から決めていた。マイクスタンドが低くなるので、風にも強いスタイルだ。

 前回はフォーク中心に歌ってみたが、何を歌っても受けるときは受けるし、受けないときは受けないと悟った。ならば歌いたい曲を好きに歌うべきだと以前の路線に戻し、洋楽を中心に50分で13曲を歌う。


「ボラーレ」
「サンタ・ルチア」
「レット・イット・ビー」(オリジナル訳)
「End Of The World」(オリジナル訳)
「ろくでなし」
「ドミノ」
「ミスター・サマータイム」
「カントリー・ロード」
「オー・シャンゼリゼ」
「イエスタデイ」(オリジナル訳)
「夕凪ワルツ」(オリジナル歌詞)
「ケ・セラ・セラ」
「愛の讃歌」


 朝方は見えていた太陽が雲に隠れてしまい、風も強いせいか、人通りは多くない。10年前のように自己紹介も曲紹介も一切せず、淡々とひたすら歌い続ける。
 節目の100回目とはいえ、初回にはあった妻の「引率」もなく、事前の告知も一切しなかったので、用意された聴き手は全くいない。

 5曲目の「ろくでなし」を歌っていると同年代と思しき夫婦連れが立ち止まり、じっと聴いてくれた。
 終わると「いまの曲のタイトルは何ですか?」と男性が訪ねてくる。この世代なら知っているはずと思いつつも、「ろくでなし」というシャンソンで、越路吹雪が歌って大変ヒットしました、と応ずる。
 すると、フランス語のタイトルは分かりますか?と重ねて問うてきた。「モヴェ・ギャルソン」と応えると、誰の曲でしょうか?と再び問う。実はずっとフランスに暮らしていて、以前に聴いたことのあるメロディだと添える。
 アダモの作詞作曲ですと譜面を見ながら応えると、ようやく納得してくれた。電子譜面にはMC用に各種データを付記してあるが、思わぬところでそれが役立った。

「ミスター・サマータイム」を歌っていると、小さな男の子が目の前に現れ、好奇心に満ちた目でじっと見ている。PAに耳をあてたり、料金箱をのぞいたり、忙しい。
「このコードを伝わって音が出るのさ。箱には電池が入ってる」と教えてあげた。

 そばを離れないので、「カントリー・ロード」を歌ってあげると、大喜びで拍手しながら回りを飛び回っている。「小学生?」と尋ねると、幼稚園だとの応え。
 小さなファンにすっかりなつかれてしまい、「小学校できっと習うよ」と、「オー・シャンゼリゼ」を続けて歌う。真横の花壇上に立ち、電子譜面の操作を背後から興味深く覗きこむ。
「こうやって歌を探しているんだよ」と、ていねいに教えてあげた。

 遠くのベンチにいた若いお母さんから呼ばれ、「バイバ〜イ!」と、ようやく去っていた。曲の途中だったが、間奏で「ありがとう、またね!」と手を振って応ずる。
 ささやかな出会いがきっかけで、しばしば人生は変わる。今回のことが記憶の片隅に残り、将来彼が弾き語りでも始めてくれたらうれしい。そんなことを考える。

 陽射しが戻ってきたラスト2曲でも家族連れの子供2人に囲まれたが、終了時刻が迫っていたこともあり、ここでの交流はなし。
 13時ぎりぎりまで歌って機材をゆっくり片づけていると、看板を見つけた若い男性が近寄ってきて、フォークや昭和歌謡を演るんですか、ライブは何時から始まりますか?と問うてくる。
 フォークや昭和歌謡が大好きとのことだったが、時間外のパフォーマンスは厳禁でその旨を告げると、大変残念がっていた。

 持参のサンドイッチを食べ、次なる会場の地下広場に向かおうとすると、同世代の女性が近寄ってきて、「愛の讃歌」久しぶりに聴けてよかったです、と声をかけてきた。どこかのベンチでずっと聴いていてくれたらしい。
 今回歌ったアカプラの北側花壇は、前後左右を多数のベンチに囲まれているので、いわば「全方位型ステージ」ともいえる。視野に入らない場所でも、誰かが密かに聴いていることがよくある。聴き手が前方に限定される地下広場とは異なる面白さだ。

 老若男女、いろいろな出会いがあって、100回目の路上ライブをつつがなく終えた。通りすがりの人々との一期一会的出会いとふれあいは、不思議なことに初回から全く変わっていない。

 100回演ってみて思ったが、路上ライブの真髄はこの「歌を介した、人との出会いの面白さ」にあり、CDの売上げだとか、メジャーな場への踏み台だとかは、そのずっとあとに付いてくるものではないか。
 出会いとふれあいを楽しむ気持ちを保ち続ける限り、路上ライブはまだまだ続けられる。




101チカチカ☆パフォーマンス82th
   「曲に関わる深い思い」
/2015.7.3



(前回からの続き)
 100回目の記念すべき路上ライブを無事に終え、いつものように地下に降りて北4条広場へと向かう。平日のアカプラパフォーマンスは音の関係から昼休み限定で、天候次第では会場に着いてから演れなくなる可能性もある。
 そこで時間や経費のロスをなくすべく、14時からの地下広場とセットでエントリーするようにしている。

 14時から第1ステージ開始。前回反応のよかった演歌系昭和歌謡から歌い始めたが、2曲目の途中で2人組の中年女性が近寄ってきて、リクエスト一覧を手に話し合っている。
「何かリクエストございますか?」と問いかけると、一覧にはないようだが、「愛の奴隷」は歌えないか?と尋ねてくる。聞き慣れないタイトルなので、奥村チヨの「恋の奴隷」の間違いでは?と返すと、外国の曲だという。いずれにしても歌えない。
 その後やりとりがあって、トム・ジョーンズの「思い出のグリーングラス」を結局歌うことになった。

 どうやら歌唱を気に入って貰えたらしく、次は何を…、と相談し始めた。まとまるまでのツナギで「つぐない」を歌い始めたら、別の中年女性が近寄ってきて一覧を手にとり、終わるとただちに「青葉城恋唄」をぜひに、とのリクエスト。
 大好きな曲だが、このところ聴く機会がなく、生の弾き語りで聴けるとはうれしい、と言い添える。以降、この3人の女性による交互のリクエストで、35分で10曲を歌う。(※はリクエスト)


「二輪草」(初披露)
「長崎は今日も雨だった」
「思い出のグリーングラス」※
「つぐない」
「青葉城恋唄※」※
「ワインレッドの心」※
「アメイジング・グレイス」※
「吾亦紅」※
「越冬つばめ」※
「古城」※


 歌の好きな方々がそろったとみえて、演歌から洋楽、ポップスとリクエストの幅が広い。ジャズ以外の多ジャンルが一通りリストには入っているので、まさに私にぴったりのお客さんである。
 他にも立ち止まる人がけっこういたが、場が3人の独占状態となってしまい、リクエストを受ける余裕がなかった。申し訳ないことをした。

 共演のジャグラーが広場に現れたのを機に、14時35分で打ち切りとさせていただく。「久しぶりに楽しい思いをさせてもらった」と、3人は満足した様子。
 この日は地上と同じく、地下通りも人が少なく感じられたが、ステージ自体は濃密だった。

 40分休んで、15時15分から第2ステージ開始。フォーク系の曲を中心に30分で7曲を歌う。


「落陽」
「アビーロードの街」
「北の旅人」
「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」※(2度歌う)
「大空と大地の中で」
「空に星があるように」※


 人通りに比例してか人の集まりはよくなく、前回強かった曲を前半に並べても、第1ステージのように熱心な方は現れない。
 前回通りすがりの方から指摘され、ギター奏法に修正を加えた「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」を練習のつもりで歌い始めたら、はるか遠くからじっと見つめる視線を感じる。早足で近づいてきた中年女性、間近に近寄ってきて、熱心に聴き始めた。

 終わると盛大な拍手。「まさかこの歌を生演奏で聴けるとは思わなかった」と、歌にまつわる思い出やら身の上話など、とつとつと語り始めた。他に聴き手がいなかったので、あれこれと応じているうちに、「いまの歌、もう一回歌って欲しい」と請われる。最近よくあるパターンだが、よほどの思い入れがあるとみえて、目に涙を浮かべて聴いてくれた。
 ギター奏法に関しては、ストロークでの3連符奏法がうまくやれた。確かにこちらのほうが盛り上がる。

 女性が去って、また誰もいなくなった。持ち時間が少なくなったので、終わりのつもりで「大空と大地の中で」を歌い始めると、第1ステージ終了後に現れて「次は何時から演りますか?」と熱心に尋ねてきた若い女性が、手を振りながら笑顔で近づいてきた。
 リクエスト一覧はすでに渡してあったが、あいにく残り時間がない。皮肉なことに「大空と大地の中で」の歌で10人近い人がバタバタと集まってきて、それぞれ一覧を手にとり、いまにもリクエストが出そうな気配。
 いかにも間が悪かったが、ここは優先権のある若い女性のリクエストを尊重することにした。それにしても「大空と大地の中で」は強い。もっと早い時間に歌うべきだった。

 終了後に話したが、50年も前の曲である「空に星があるように」は、BEGINのカバーを聴いて知り、自分の思い出とリンクしているようで、以来大好きになったという。
 実はこの歌は妻も非常に好きで、そのために覚えたもの。妻にも曲に対する深い思いがある。奇しくもこの日は、そんなリクエスト曲に2つも遭遇した。