街角100ライブ


076 チカチカ☆パフォーマンス60th
   「全曲洋楽のチカチカ」
/2014.6.19



 6月3度目のチカチカパフォーマンスに参加。中旬以降はライブ予定が立て込んでいるので、エントリーをためらっていたが、単身で札幌勤務中の長男のお嫁さんが、この日たまたま休暇。
「チカホでお義父さんの歌声を、ぜひ聴きたい」との要望がまずあり、試したいこともいくつかあって、急きょ歌うことにした。

 妻とお嫁さんは都心のイノダコーヒーで待ち合わせてカフェタイム。私だけが地下鉄東豊線さっぽろ駅からの長い道をてくてく歩いて北4条広場へと向かい、まず第1ステージをこなして、その後広場で合流する手はずになった。

 この日の共演も小樽のギタリスト、浜田隆史さん。私の出番は14時30分過ぎからで、前半は「英語圏の洋楽」と特化した切り口で、25分で8曲を歌う。(※はオリジナル訳詞)


「Without You※」
「イエスタディ※」
「小さな竹の橋の下で」
「夢路より」
「Top of the World※」
「End Of The World※」
「悲しき願い」
「ヘイ・ジュード※」


 8曲中実に5曲がオリジナル訳詞という、極めて特異な構成となり、一般受けはしにくいものと覚悟して臨んだが、予想通り反応は薄かった。しかし、一度はこんなライブをストリートで仕掛けてみたかった。最近の第1ステージはハズレが多いので、試すにはよい機会である。
 さらにこの日は、人通りが普段よりも一段と少なく感じられた。連続14日間という記録的な長雨で、人々の外出の足が鈍っていたのかもしれない。

 とはいいつつ、「小さな竹の橋の下で」「悲しき願い」「ヘイ・ジュード」では、立ち止まって聴いてくれる人が数人いた。理由は定かではないが、「たまたまその曲が好きだった」ということだけかもしれない。

 終了後、ただちに浜田隆史さんのステージが始まったが、私のラストのMCで、その旨案内したこともあり、「ヘイ・ジュード」で立ち止まった方数人が、浜田さんのステージにそのまま移動した。
 浜田さんも心得て、冒頭で同じビートルズを数曲弾く。聴き手を曲でつないだ形となり、非常にうまく場に収まった。共演も数を重ねると、こんなバトンタッチも自然にこなせるようになる。

 その後、15時30分過ぎから第2ステージ開始。「世界の歌」を切り口に、30分で9曲を歌った。(※はオリジナル訳詞、◎は初披露)


「ボラーレ※◎」
「カントリー・ロード」
「オー・ソレ・ミオ」
「セ・シ・ボン◎」
「愛の讃歌」
「恋はやさし野辺の花よ」
「夕凪ワルツ(オリジナル作詞)」
「ラ・ノビア」
「ブンガワン・ソロ」


 国の内訳は順に、伊、米、伊、仏、仏、オーストリア、ルーマニア、チリ、インドネシアである。

 歌い始めたとたん、6人の小学生らしき男女に囲まれた。臆せずマイクそばまで近寄ってきて、興味深そうに聴いている。構成は完全に大人向けだったが、「ボラーレ」は麒麟淡麗のCMで長く使われている曲なので、子供でも耳障りはよかったかもしれない。
 歌い終わると盛大な拍手をくれたので、思わず声をかけたら、道北の小学校の修学旅行だという。横には引率の先生も確かにいる。(6年生が6人だけの小さな学校のようだった)

 路上ライブは初めて見るらしく、何もかもが珍しげだ。これも社会学習のひとつに違いないと思い、急きょ路線を変更して、予定にはなかった「カントリー・ロード」を歌った。
 歌の間ずっと手拍子で応援してくれ、途中でデジカメで撮影する子もいて、さらに盛り上がる。何事かと集まってくる人が増え始め、その中に妻と長男のお嫁さんの顔も見えた。引率の先生がすかさず私の背後に回り、そんな子供たちの楽しげな様子を撮影する気配。

 終わると、ていねいに挨拶をくれて去っていった。一生に一度しかない修学旅行での、偶然の出会いとふれあい。互いに記憶に残る貴重なひとときとなった。

 その後、路線を元に戻して続行する。家族が聴き手としてずっと見守っているので、ある種の「サクラ役」となったのは間違いなく、第1ステージとは打って変わって、最後まで人の集まりはよかった。
「ストリートライブでは2人が立ち止まると、それにつられて人が増え始める」と、どこかに書いてあったが、当たっているかもしれない。

 17曲全てを洋楽で通すという、チカチカパフォーマンスでは初めてとなる大冒険を試みたが、それでも場の反応自体に大きな変化はなかった。日本の歌をやめたわけではないが、時に好きなスタイルで自由気ままにやるのも、方向としては間違っていないことを学んだ。




077 チカチカ☆パフォーマンス61th
   「曲に応じて人は集まる」
/2014.7.7



 7月最初、そして第6期本当のラストとなるチカチカパフォーマンスに参加した。チカホが7〜9月の期間「札幌国際芸術祭」の会場となるため、先月末が最後のはずだったが、月始めのわずかな期間限定で、広場の割当て枠が追加になった。
 月に2回は参加したいと常々思ってはいるが、あいにく先月末から時期外れの腰痛に見舞われ、なかなか完治しない。割当て枠は明日までだったが、ぎりぎりになってようやく回復の兆しがあり、前日午後になって急きょ参加を決めた。

 この日は慣れない北3条広場だったが共演はなく、その分自由に演れる。夕方に待合せ予定が別にあったので、それに合わせて開始はいつもより30分遅らせた。
 すでに準備が始まっているのか、広場の南側は壁が取り払われ、シートで覆われている。中では工事が進んでいる気配。あちこちで物音がし、どことなく落ち着かない雰囲気なので、この日はシートに背を向ける形で、正面から30度ほど北に向かって歌うことにした。

 さて歌いだそうかと準備していたら、目の前に手を振って現れる女性。よく見ると、チカチカパフォーマンスを管理しているNPOの代表、Tさんではないか。まさか視察?と一瞬いぶかったが、ちょうど電話が入ってしまい、会話が進まない。構わず14時30分から歌い始めた。(◎=初披露、※=リクエスト)


「ブルージーンと皮ジャンパー◎」
「ラストダンスは私に◎」
「ドミノ」
「セ・シ・ボン」
「オー・シャンゼリゼ」
「知りたくないの※」
「雪が降る※」
「End Of The World※」
「バラ色の人生」


 第1ステージはシャンソンで臨むこと、そしてなるべく早い時間に初披露の曲を歌うことは事前に決めていた。2曲目の「ラストダンスは私に」で人が一気に集まり、その中に電話を終えたTさんの姿も見える。
(3曲目あたりでふっと消えたので、視察であったか否かは不明のまま)
 聴き手の出入りは激しかったが、ずっと熱心に聴いていた中年女性が途中で声をかけてきて、「菅原洋一さんみたいな歌唱ですね」という。菅原さんの歌、歌えますよと応ずると、ぜひにとの要望。歌詞がすぐに見つけられる「知りたくないの」を歌った。

 その後、その女性と歓談しつつ進めたが、この春から昭和歌謡系のカルチャー教室に通っているそうで、歌は下手だが、聴くのは大好きとのこと。昭和歌謡も演りますが、と再び応ずると、いやいや洋楽のアダモをお願いします、できれば「雪が降る」をぜひに、と思いがけないリクエスト。
 夏に雪が降るのも涼しくていいですねと、こちらもただちに歌った。
(電子譜面にはシャンソンのファイルを設定してあったので、検索は瞬時)

 中年女性は去ったが、始めの頃からずっと熱心に聴いていた別の若い女性がいて、動こうとしない。声をかけると、どうも洋楽系の歌が好きらしい。もしや弾き語りをやっているのでは?と思って確かめると、実は母が長くギターの弾き語りを演っているのです、と応える。
 好きな歌手はカーペンターズだが、曲名は分からないという。こちらの判断で「End Of The World」のオリジナル訳を歌うと、まさにそれが母のレパートリーだと喜んでくれた。私のは日本語訳だが、いつも聴くのは当然ながら英語版。そこで続けて英語版もさわりだけ歌ってあげた。

 30分歌って、15分ほど休憩。体調は万全ではないが、声はまずまず出る。15時15分から昭和歌謡系の曲を中心に、第2ステージを始める。


「勝手にしやがれ ◎」
「ジョニィへの伝言」
「グッド・バイ・マイ・ラブ」
「どうにもとまらない」
「カサブランカ・ダンディ」
「花〜すべての人の心に花を※」
「涙そうそう※」
「青葉城恋唄」


 第1ステージに比べて人の集まりは悪かったが、「どうにもとまらない」で一人の男性が近寄ってきて、熱心に聴いてくれる。そのうち、「沖縄の曲を何か歌ってくれませんか?」とリクエストが出た。
 珍しいパターンのリクエストだったので、もしかして沖縄の方ですか?と問うと、沖縄県人ではないが、沖縄の歌がとても好きなのだという。「叙情歌」のファイルに入っている「花」と「涙そうそう」を歌うと、ずっと一緒に口ずさんでくれた。

 2ステージ終えて時計は15時45分。打ち切ってもいい頃合いだったが、待合せは16時半。まだ余力は充分にあったので、15分休んで16時から第3ステージをやることにした。


「ボラーレ」
「夕凪ワルツ(オリジナル)※」
「神田川※」
「ブンガワン・ソロ※」
「砂に消えた涙」
「死ぬほど愛して(オリジナル訳詞)◎」
「傘がない※」
「夢一夜」


 第3ステージは「世界の音楽」を切り口に歌おうかと漠然と考えていたが、決めていたのは1曲目の「ボラーレ」のみ。この日は他に共演者がいないということもあり、普段のように歌う曲を事前に選ばずに、ステージの大枠と1曲目だけを決めておいて、あとは場の流れに任せるという自由なスタイルを初めて採ってみた。

 その1曲目の「ボラーレ」で、いきなり初老の男性が近寄ってきて、間近で熱心に聴いてくれる。終わると話しかけてきて、オリジナルをぜひ聴きたいという。中高年に人気の高い「夕凪ワルツ」を歌うと、気に入ってCDを買ってくださった。
 その後、雑談の中で「こうせつに声似てるよね、何か歌って」となり、「神田川」を歌う。洋楽路線からは外れたが、これも場の流れ。「最後にもう1曲」となり、3年前にこれ歌ってオーディション合格した曲です、と「ブンガワン・ソロ」を歌う。

 これで男性は去り、さてどうしたものかと、ひとまず洋楽譜面に戻って目についた「砂に消えた涙」を歌い始めると、今度は別の若い女性が現れ、熱心に聴いてくれる。この日は入れ替わり立ち代わり熱心な聴き手が次々と登場するという、実に不思議な一日だった。
 この女性とも雑談を交わしながら歌い進めたが、「砂に消えた涙」が好きだというので、てっきりカンツォーネファンかと思いきや、実はフォークも好きだという。30代に見えたが、拓郎か陽水を何か、というので、得意の「傘がない」を歌うと、別の人も集まってきて、けっこう盛り上がった。相変わらず強い曲である。

 途中、あちこち脱線しつつも、2時間ちょうどで3ステージを無事に歌い終える。「行き当たりばったり」という初めてともいえる形式で演ってみたが、自ら積極的に働きかけたこともあって、聴き手との交流という一点では非常にうまく運んだ。

 リクエストを受けて思ったのは、人の好みは実に千差万別であるという単純な事実。「私はこのスタイル」というこだわりも理解できるが、少なくともチカチカパフォーマンスのような開かれた場では、どのようなニーズにも対応できる、柔軟な態勢が必要のようだ。
 そして、曲に応じて人は集まってくるという、単純な事実も再確認した。演歌を歌えば演歌好きが、洋楽を歌えば洋楽好きが、フォークを歌えばそれに応じた人々が呼応し、自然に寄り添ってくれるもの。要は楽曲のスタイルではなく、歌の世界をすくいとって聴き手に伝える歌唱力が勝負、ということになろうか。

 応じたリクエストは過去最大の9曲。全体の1/3強にも達し、特に準備せずとも、レパートリーにある曲ならそれなりにこなせるという自信もついた。
 共演者がいる場合、そう気ままには演れないが、自由度の高いソロステージなら、たぶん次回以降もこのスタイルはある。新境地を開拓した気分。




078 アカプラパフォーマンス実証試験/1
   「小雨の中で手探り」
/2014.8.6



 先月末に事務局から突然打診があった「アカプラパフォーマンス(仮称)」の初日に参加。普段チカチカパフォーマンスをやっているチカホが、7月下旬から札幌国際芸術祭の会場として使われていて、10月まで演れない。
 代替会場として、7月下旬に新規完成した「アカプラ」(旧北海道庁と札幌駅前通をつなぐ道をレンガ敷にした歩行者専用広場)が以前から候補に上がっていたが、まずは手始めに5組の特別枠活動者で実証試験を試み、集客等の様子と問題点を探るという。

 打診が急だったこともあり、参加可能のパフォーマーは3組のみ。互いに都合のいい時間をやり繰りし、天気の様子もみながら、まさに「手探り」でパフォーマンスを実行する運びとなった。

「アカプラ」には、完成2日目に下見に訪れている。そのとき西側にあったサントリーの仮設店舗はなくなっていて、通りは広く、そしてまっすぐに赤レンガ旧道庁へと向かっている。
 本当は前日が初日のはずだったが、あいにくの雨で中止。チカホと違って雨風の影響がモロにくるので、大半のパフォーマンスは雨天中止となるだろう。ここが地下会場と比べて、最も辛い部分か。

 昼枠は12〜13時、夜枠は17〜20時と時間制限があり、騒音等の扱いは、チカチカパフォーマンスと全く同じである。
 この日はジャグラー・コーヘイさんとの共演だったが、都合で2人とも昼枠のみの参加。つまりは、互いに30分ワンステージのみということになる。

 先着のコーヘイさんからパフォーマンス開始。雨は落ちてこないが、曇天で暗く、いまにも降り出しそうな空模様。休日だった下見のときとは雰囲気がかなり違っていて、通りを往く人や備えつけのベンチに座る人は少ない。
 それでもMCで告知しつつ進めるうち、小さい子供を中心に、少しずつ人が集まってきた。子供が来れば、引率の親もやってくる。終了時には、およそ30人ほどの集客となった。

 ステージは広場やや東よりの南側ベンチ前、1階店舗が工事中のビル街を背にして設営したが、私が歌い始めようとすると、雨がポツポツ落ちてきた。予報では夕方から雨だったが、外れたらしい。

 この日はもうひとつ不測の事態が起こっていて、電子譜面の調子が悪かった。直前の自宅リハでは問題なかったが、スリープから復帰させると画面がチラついて、勝手に別のファイルやソフトが起動したりする。
 再起動を数回かけても回復せず、電子譜面はあきらめて、持参した予備の紙譜面を電子譜面ホルダにクリップではさんで歌うことにした。

 いざ歌い始めると、声が全く聴き手に届かない感覚に襲われた。この場所では2年前の実証試験でも一度歌っているが、そのときは旧道庁を背にし、ステージ前には臨時に並べられた椅子とテーブルがあった。イベントライブだったので、駅前通りを往く人に声をかけるスタッフもいた。
 しかし、今回は完全な路上パフォーマンスの位置づけである。「客席」に想定した北側ベンチに座る人との距離が遠すぎ、音で勝負する私のようなパフォーマーには、かなり条件が悪かった。音量制限があるので、むやみに音を大きくするのは厳禁である。

 昭和歌謡を中心に歌ったので、小さな子供とその親はそそくさと立ち去り、その場に残った人はごくわずか。
 それでも間近に近寄ってきて、熱心に聴いてくれる方もいた。椅子がないので、地面の上に直接座っている。いつものように適当に会話しつつ進めていたが、そうするうちに雨脚がだんだん強くなってきた。
 少しばかり聴いていた人たちも、この雨でじわじわと姿を消した。たとえ小雨でも、雨が降ると路上ライブはやれない。予定より1曲減らし、およそ25分でステージを終える。結果として以下の7曲を歌った。


「時の過ぎゆくままに」
「ジョニィへの伝言」
「少年時代」
「ブルーライト・ヨコハマ」
「時の流れに身をまかせ」
「涙そうそう」
「青春時代」


 何とも厳しい初日となったが、反省点としては、ステージの位置を東端の巨石(国際芸術祭の参加作品)を背にした、通りの中央にするべきだったかもしれない。
 音が左右のベンチに均等に届き、聴き手との距離は半分になる。人通りが比較的多い駅前通りにも、ある程度音は聞こえるはずで、そこからの集客が期待できる。

 実証試験の日程は明後日までだが、あいにくの愚図つく空模様で、次回いつやれるかはっきりしない。チャンスがあれば洋楽の構成もぜひ試してみたい。




079 アカプラパフォーマンス実証試験/2
   「修正して手応え」
/2014.8.7



「アカプラパフォーマンス(仮称)」の2日目に参加。この日も前日に続いてはっきりしない空模様で、演れるか否かは、当日の朝に判断することになっていた。
 起きると路面は濡れているが、なぜか雨は降っていない。事務局とメールで打合せ、出発ギリギリの10時45分に再度判断することになる。
(事務局はアカプラの近傍にあり、窓から状況が確認可能)

 予報では終日雨だったが、天気のことは分からないので、前日夜までに演ることを前提に準備していた。連絡待ちの間も軽めのリハーサルで備える。
 予定時刻に連絡がきて、都心も特に雨はなく、通行人もまずまずなので、結局決行することになった。ただちに機材を積み込んで出発。

 この日も共演はジャグラー・コーヘイさん。すでに会場入りしていたが、話し合いで今日は私が先に演ることになる。
 前日からの修正点は以下の通り。

ステージは広場東端の巨石前(札幌国際芸術祭参加作品「一石を投じる」)に設定。
 〜客席に想定した南北のベンチへ均等に音を届けるためと、駅前通りからの集客期待。

PAは地面直置きをやめて、カメラ三脚の上に固定。リバーブ値をやや上げた。
 〜音量を上げずにモニタしやすくし、聴き手にも届きやすく。

CDの販売スタンド一式を置かない。
 〜降雨時の迅速な撤収対策と、聴き手への心理的圧迫感の排除。

曲の構成を全面的に洋楽へ変更。
 〜気分転換。

バンダナをやめて、ハンチングに。
 〜雨対策と気分転換。

 時間ぴったりの12時から歌い始める。いまにも雨が落ちてきそうだったので、無用なMCは極力省き、およそ19分で7曲を歌う。


「ボラーレ」
「サンタ・ルチア」
「ラストダンスは私に」
「カントリー・ロード」
「ブンガワン・ソロ」
「エーデルワイス」
「オー・シャンゼリゼ」


 カンツォーネやシャンソンを始めとする洋楽に徹したが、レンガを主体とした広場のバタ臭い雰囲気には、うまくマッチしていた。平日の昼休みで、はっきりしない空模様という条件は同じだったが、前日よりは聴いてくれる人が多く、歌い終えたあとの拍手も曲を重ねる毎に増えた。
 左右のベンチへの距離が等しいので、前日と違って音が通りにくいという感覚はなかった。拍手も両側のベンチからいただいた。PAの位置を高くし、リバーブ数値を上げたことも効果的に働いたと思う。

 最後の曲を歌う前に、次のパフォーマーの紹介と、明日のパフォーマンス予定を告知。数えてないが、その段階で聴き手は15名ほどか。

 終了後、ただちにコーヘイさんのステージが始まる。ステージは前日と同じ南側ベンチ前だったが、1ブロック東寄り(駅前通り寄り)に移動していた。意図は私と同じであったかもしれない。
 互いのステージが直角に配置されていたので、移行に伴うロスタイムはゼロに近い。

 チカホ会場でもそうだが、全般的に音楽系パフォーマンスより、ジャグリング系パフォーマンスのほうが集客は多い傾向にある。やはり大道芸の華はジャグリングなのである。
 この日も同じ傾向で、コーヘイさんが始めると、客は一気に倍増した。小雨のぱらつきもあって、多少の出入りはあったが、終了までの20分間の集客数に大きな変動はない。

 雨が気がかりで、途中打ち切りも充分に考えられたが、この日の予報はいい方に外れて、雨が本降りになる気配はなく、奇跡的に全ステージをやり終えることができた。
 40分間通してパフォーマンスを見届け、ずっと拍手をくれた方も多くいた。

 17〜20時の夜枠がどうなるか未知数でもあり、まだまだ手探り状態であることに変わりはないが、地下会場に比べて抜群の借景の美しさと、横と縦(高さ)に大きく広がる空間の伸びやかさがアカプラにはある。
 地下と地上、相互の利点をうまく活かせば、新たな街づくりの場に発展する確かな予感がする。




080 アカプラパフォーマンス実証試験/3
   「雨と薄暮のレンガ道」
/2014.8.8



「アカプラパフォーマンス(仮称)」の3日目に参加。この日が最後の実証試験日で、初めて17〜20時の夜枠を試す予定になっていた。

 予報では午後から次第に晴れるはずで、そのつもりで準備していたが、15時ころに事務局から突然の連絡がある。
 都心は土砂降りで、このままだと夕方のパフォーマンスは難しいかもしれない、とのこと。北へ10キロ離れた我が家周辺に雨の気配は全くなく、どうやら雨雲が局所的に都心を襲っているらしい。

 ひとまず自宅待機していたら、ほどなくして再度のメール。雨が上がったので、やる方向でお願いしたいとのこと。ただちに機材を積み込んで、16時に家を出た。
 この4日間、雨には振り回され続けているが、最初の日のように、ずっと降り続く雨なら予定も立てやすいが、猫の目のように変わる空模様だと、気持ちの持ちようが非常に難しい。

 ともかくも会場に入って、機材のセットを始めた。この日はパントマイムのトイシアターさんとの共演で、準備の都合で私が先に演ることになる。

 東端の巨石の横に地元テレビ局のお天気生中継が準備中で、時間が重なるので、できれば少し離れて設営して欲しいとの要望。今日の昼枠パフォーマンスは中央付近でやったとの情報も得たので、同じ場所で準備していたら、突然大粒の雨が落ちてきた。
 雨はまたたく間に本降りとなり、とても歌どころではない。急きょ機材をたたんで、チカホに降りるビル出入口に避難した。雨は一向に止む気配がなく、いったん事務局のあるビルに移動して様子を見ることに。

 共演のトイシアターさんは、機材が濡れると損害が大きいとのことで、この日のパフォーマンスは断念。私も雨の中では演れないが、電子譜面とPAの簡易雨よけは持参していた。小雨程度ならどうにか演れる。

 そのまま待つうち、17時50分ころにパタリと雨が止む。ベンチは濡れていて座れないが、レンガ通りは水はけがよく、大きな支障はない。演奏中に再び雨が降り出すリスクはあったが、自己責任で18時から歌い始めることにした。

 共演者のいないソロライブとなったので、雨が再び降りだしたときが打ち切りと決め、そのむねMCで告知しつつ、歌い進める。
 断続的な豪雨の直後とあって、通りを往く人の姿はごく少ない。ベンチに座る人は皆無。あたりは次第に暮れてくる。そんな悪条件のなか、前日に手応えのあった洋楽を中心に、延々と18曲をノンストップで歌い続けた。
(※はオリジナル訳詞)


「ボラーレ※」「サンタ・ルチア」「ラ・メール」「詩人の魂」「ブンガワン・ソロ」「エーデルワイス」「サン・トワ・マミー」「さくらんぼの実る頃」「レット・イット・ビー※」「End Of The World※」「ケ・セラ・セラ」「夕凪ワルツ(オリジナル作詞)」「想い出のソレンツァラ」「悲しき願い」「Godfather 愛のテーマ」「ろくでなし」「帰れソレントへ」「オー・シャンゼリゼ」

 歌い進むうち、周囲はどんどん暗くなってきたが、雨が再び降り出す気配はない。事務局の担当者が記録写真を撮りにやってくる。機材を片づけ、ひと休みしたトイシアターのお二人も途中から現れ、照明や人の流れなどを観察している様子。とにかく初めての夜枠なので、多方面から問題点を探る必要がある。

 通行人は断続的に現れるが、立ち止まる人は少数。昼間のように休憩をかねてベンチに座るという状況がないと、集客的にはかなり厳しい感じだ。それでも何人かの方から、暖かいお気遣いをいただいた。ありがとうございます。

 ふと気づくと、時計は19時を回っている。ずっと立ち会ってくれたトイシアターさんから、「暗くて表情が見えにくい。街灯に向かって歌ってみて」との要望がでる。
 この日は通りの完全な中央に立ち、旧北海道庁を背にして東を向いて歌っていた。つまり、昨日とは180逆転した位置だ。街灯は南北のベンチに沿って立っているので、光は顔に当たりにくい。
 そこで90度北側に転回し、照明の正面に立つ。試験的にさらに4曲歌った。


「カサブランカ・ダンディ」「ジョニィへの伝言」「ブルーライト・ヨコハマ」「そっとおやすみ」

 やはり街灯を正面に見て歌うほうが、パフォーマンスとしては向上するとの判断だった。日が暮れると人は激減するので、北側南側いずれかの街灯近くに向かい、背面は捨ててパフォーマンスするのが正解かもしれない。
 現時点では工事中だが、南側にあるオープンカフェが開店すれば、おそらく夜営業もやるはず。そうなればまた人の動きが変わる。まだまだ試行錯誤は続く。

 19時30分で全実証試験が終了。結局雨は最後まで降らなかった。休憩なしで22曲を歌い続けたが、喉や左手に異常はなく、まだ余力があった。

 半分は責任感のような気持ちで参加したが、新しい試みに参画するのは大変である反面、なかなか楽しいことでもある。うまく運ばない状況下での修正力にも、自信を持てた。刺激的で収穫の多いイベントだった。