街角100ライブ


043 チカチカ☆パフォーマンス29th
   「せめて春模様」
/2013.3.18



 雨模様で風も強く、腰の調子もイマイチ。そんな悪条件だったが、午後から3月2度目のチカチカパフォーマンスに参加。10日程前に参加した際の思わぬ反響に勇気を得てのことである。果たして別の条件下でも同じことが起こるのか?と、ちょっと試してみたい好奇心にもかられた。

 雪解けが進んだので、雪のない時期と同じ時間に家を出たが、結果としてこの判断が誤り。月曜ということもあってか、都心に進むにつれ、かなりの渋滞に巻き込まれる。
 運良く100円駐車場は空いていたが、雨がひどく、持参の傘をさして会場まで歩く。企画イベントやオーデションも含め、過去33回のチカチカパフォーマンス系イベントに参加しているが、傘をさして歩くのは今回が初めてだった。

 事務局に着いたのが14時で、本来なら準備を終えて歌い出している時間である。台帳に記入し、大型看板2つをキャリーカートに積んで会場へと向かう。この日は3組の共演だったが、遅く着いたはずの私が一番乗りだった。

 会場は前回と同じ北4条広場。誰も来ていないので、珍しく通りにまっすぐ向かってステージを設営する。
 腰の調子もいまひとつなので、前回同様小型の椅子を持参した。これに傘と看板2つが加わり、過去最大の機材運搬となったが、キャリーカートの威力は絶大。地下への昇降も最寄りのエレベーターを使ったので、大きな障害とはならなかった。

 かなり遅れて、14時30分ころから歌い始める。第1ステージの切り口は「せめて春模様」と称し、気分だけでも春を感じさせる8曲を歌った。


「なごり雪」
「仰げば尊し」
「青葉城恋唄」
「亜麻色の髪の乙女」
「花の首飾り」
「宗谷岬」
「バラが咲いた」
「サクラ咲く」(オリジナル)


 先週のディサービス訪問ライブで会場の涙を誘った「なごり雪」を1曲めにもってきたが、これといった反応がなく、拍子抜け。続けて歌ったいにしえの卒業ソング「仰げば尊し」で一気に人が集まり、あっという間に20人を越える。予定では2番で終えるつもりが、急きょ3番まで歌うことに。
 この歌は長年作者不詳とされてきたが、2011年になってアメリカの曲であることが突き止められたとか。叙情性に富んだ歌詞と旋律には、日本人の魂をゆさぶる何かがある。私も好んで歌うが、どこで歌っても反応はよい。曲調が自分に向いているのだろう。歌い継ぎたい名曲である。

 実はこのあと歌った「青葉城恋唄」までが、この日の集客のピークであった。「亜麻色の髪の乙女」でかなりの人が消え、「花の首飾り」で再び大きく戻した。聴き手はまるで寄せる波のようだ。
 介護施設系の場では抜群に強い「宗谷岬」で、なぜか人が次々と消え始める。ラスト2曲は聴き手ゼロという寂しさ。歌い始めて25分が経過したが、次なるパフォーマーは誰も会場に現れない。喉の調子はよく、椅子に座っているので腰の不安もない。予定にはなかったが、このまま休憩なしで第2ステージに突入しようと腹を決めた。

 第2ステージは手慣れたマニアック昭和歌謡路線である。過去3回に準じた内容で、以下の7曲を歌った。


「ダンシング・オールナイト」(初披露)
「圭子の夢は夜ひらく」
「人形の家」
「抱きしめて(オリジナル)」
「男と女のお話」
「柳ヶ瀬ブルース」
「寂しくなんかない」(オリジナル・初披露)


 第2ステージに移行しても、相変わらず立ち止まる人はいない。途中でようやく共演のジャグラーと読み聞かせの方が現れたが、了解を得て最後まで歌ってしまうことにした。
 人がようやく立ち止まり始めたのは「男と女のお話」から。この日に限っては、いつもは強い「人形の家」「抱きしめて」の2曲も、まるで手応えなしだった。「雨模様の肌寒い月曜日」という条件がそうさせたのか、本当にストリートライブは歌ってみるまで分からない混沌の世界だ。


 人がある程度いたので、初披露のオリジナル「寂しくなんかない」は予定通りに歌ったが、この日のような悪条件でラストで歌うには、ちょっと厳しい感じがした。もう少し歌い込んで、別の条件下で歌ってみたい。
 結果としておよそ50分で15曲を一気に歌ったが、売れたCDは前半での1枚のみ。まあ、こんな日もある。人生と同じで、浮いたり沈んだりがストリートライブの摂理であろう。




044 チカチカ☆パフォーマンス30th
   「第3期ラストライブ」
/2013.3.20



 第3期最後の公開となるチカチカパフォーマンスに参加。2日前にも出たばかりだが、終了後にスケジュール表を見ると、なぜか1枠だけポッカリと空いている。一昨日は悪天候で、翌日は春うららかな陽気。ではさぞかし彼岸の中日も穏やかな日和であろうと、甘い期待でフラフラとエントリーした。
 当日の天候や気温が集客に大きく影響するのは、ほぼ間違いのない事実であり、寒すぎても暑すぎてもダメで、雨や大雪も論外。これといった用事はないが、つい外出したくなる。そんな日が絶好の条件なのだが、ぴったり合わせてエントリーするのは至難の業。会場の空き枠の都合もあり、あくまで「あなた任せ」の世界である。


 この日は祝日なので、土日と同じ特別なタイムテーブルが組まれている。1部が11〜14時半、そして2部が14時半〜18時だ。私は2部にエントリーしたが、用心して早めに家を出たら、排雪の進んだ道はガラガラ状態。40分も早く会場に着いてしまった。
 ゆっくり準備して、順番を待つ。2部は3組の共演だったが、私以外のジャグラーの方は1部からの連続エントリー。2部の一番は私が演らせてもらうことになった。

 時間の都合で構成は一昨日とあまり変えていない。14時半から始め、25分で以下の8曲を歌う。


「なごり雪」
「仰げば尊し」
「花(滝廉太郎)」
「赤いスイートピー」
「サクラ咲く」(オリジナル)
「花の首飾り」
「荒城の月」
「かなりや」


 変えてないといいつつも、一昨日の反省をふまえて4曲を入れ替えたが、「叙情的」という切り口は不動。オリジナルをラストに歌う構成には無理があると悟ったので、従来通り中程の無難な位置に配置した。

 春休みのまっただ中の休日とあって、通りを行き交う人々は子供連れか若いカップルが大半。私の主たる聴き手である中高年の姿は、極めて少ない。そのせいか、一昨日に抜群の手応えだった「仰げば尊し」でも立ち止まる人皆無、という寂しい状況だった。
「赤いスイートピー」でようやく人が集まり始め、「花の首飾り」で10人を超す。その後もラストの「かなりや」まで、数は少ないが、熱心に聴いてくれる方は確かにいた。

 ジャグラーのアッキーさん(写真上)ミスターきくちさんの2ステージの間、しばしの休憩。この日の年齢層にジャグリングはぴったりハマっていたようで、二人とも抜群の集客だった。
 直前に演ったアッキーさんのステージでは、100名に迫る大集客。私の知る限り、チカチカパフォーマンスでは初めて見る群集だった。

 16時10分から第2ステージ開始。この日の北4条広場は予想外に寒く、長い待ち時間の間にすっかり身体が冷え、いざ始めようとすると両手の指先が凍え、ギターがおぼつかない危険な状態に陥っていた。
 気を奮い立たせ、23分で以下の7曲を歌う。


「ダンシング・オールナイト」
「バス・ストップ」
「時の流れに身をまかせ」
「抱きしめて」(オリジナル)
「寂しくなんかない」(オリジナル)
「夜が明けたら」
「男と女のお話」


 通行人の姿がめっきり減り、最初の3曲まで立ち止まる人は皆無。一昨日と同じ状況で、寒いこともあり、早めに打ち切ろうと考えていた矢先、「抱きしめて」で20代前半と思しき若い男性が目の前まで近寄ってきて、熱心に聴いてくれる。それがきっかけで、数人の若い人が集まってきた。
 やめるきっかけを失い、やむなく歌い続けることに。だが、歌っても歌っても身体は一向に温まらない。アルペジオ系の曲を急きょ中止して進めたが、ラストの「男と女のお話」で左手をセーハして押さえるコードBmの感覚がなくなり、音がビビってしまった。
 まるで経験のない非常事態だったが、寒さを言い訳にはできない。後半は必死で修正し、どうにか乗り切った。腰の状態が改善されつつあるので、この日はカイロを持参しなかったが、バックに忍ばせておくべきだったと反省。

 最後まで残って聴いてくれた若き男性、200円のCDを1枚買ってくれた。本当は500円のCDが欲しかったようだが、予算がなかったらしい。過去にも同じことがあり、それが廉価版の紙ジャケCDを追加作成した所以でもある。
 人前で歌うのは2度目だった出来立てオリジナル「寂しくなんかない」は、何となくつかんだような気がする。臆せずに元歌の「抱きしめて」とセットで歌うほうが効果的かもしれない。次回以降に期待したい。

 今回、椅子は持参せずに全て立って歌ったが、集客に大きな影響はないように思えた。座ろうが立とうが届くときは届くし、届かないときは届かない。衣装を含めたスタイルは、あくまで歌い手の気分の問題なのだろう。

 この日で第3期(2012.10〜2013.3)都合13度目のパフォーマンスを終了。事務局の依頼で出演した企画イベントやオーディションまで含めると、半年間で17回のパフォーマンスをこなしたことになる。
 金銭的な見返りや、約束された反応はほとんど期待できない厳しい条件下でここまでやれたのは、自身のちょっとした好奇心と向上心、そして見知らぬ方々からの束の間だが、熱くて確かな反応である。そうしたものが失われない限り、ずっと続けられそうな予感はする。命ある限り。




045 チカチカ☆パフォーマンス31th
   「CD売上げ記録更新」
/2013.4.10



 新年度最初、そして第4期最初となるチカチカパフォーマンスを実施した。新ステージ名での初めての活動でもある。予報では午後から雨だったが、そんな気配はない穏やかな日和。
 早めに事務局に着くと、この日4組がエントリーしていた共演のパフォーマーは、まだ誰も来ていない。看板2枚をキャリーカートに積み込み、会場の北4条広場へと向かう。

 準備中に似顔絵系のパフォーマー2人が相次いで会場入り。もう1人のジャグリングの方の姿が見えないので、少し遅れて14時10分から歌い始めることにした。
 この日の第1ステージは、「春の香漂うシャンソン」として、久しぶりにシャンソン系の曲を歌ってみた。(※は初披露)(◎はオリジナル)

「パダン・パダン」
「オー・ソレ・ミオ」
「バラ色の桜と白い林檎の花」※
「独り◎」
「ドミノ」
「野ばら」
「月の沙漠」
「Godfather 愛のテーマ」
「ケ・セラ・セラ」


 最初に通りに立ったときから気づいていたが、この日は通りを行く人の数が随分少ない感じがした。人が少なければ、相対的に立ち止まってくれる人も少ない。(今日は苦戦する…)そんな予感が走った。
 悪い予感は的中し、歌っても歌っても聴いてくれる人は現れない。初披露の「バラ色の桜と…」で、ようやく離れた場所で立ち止まり、聴いてくれる人がいたが、拍手をくれたあとにすぐに消えてしまう。
 喉の調子は悪くなく、めげずに粛々と歌い紡ぐ。気分を変えてみようかと、予定にはなかった「月の沙漠」を歌ってみたが、変化はない。結局予備曲を含めた9曲を30分で歌いきってしまう。

 本来ならここで共演のジャグラーの方にバトンタッチするはずだった。ところが、一向に姿が見えない。少し離れた場所に似顔絵の方が2人店を広げていたが、いつものような賑わいはなく、手持ち無沙汰の様子だった。
 ちょっと考え、久しぶりに1時間通して歌ってみようと思った。練習はしてなかったが、予備として春系の昭和歌謡を1ステージ分準備している。急きょ第2ステージとして、それを歌うことにした。


「赤いスイートピー」
「花の首飾り」
「花」(滝廉太郎)
「ハナミズキ」
「サクラ咲く」◎
「あなたならどうする」※
「空港」


 いつもは受けの良い昭和歌謡に切り替えても、通りの動きに変化はない。唱歌の「花」を除く最初の3曲は、普段なら集客抜群の曲だが、この日に限ってはノレンに腕押しの反応である。
 それでも手を抜くことなく、淡々と歌い続けるうち、オリジナルの「サクラ咲く」で何人かの人が近寄ってきた。そのうちの1人の中年女性が、歌い終わるとただちに500円のCDを買ってくれた。「地獄で仏」とは、まさにこのことか。
 勇気を得て「あなたならどうする」を続けて歌うと、さらに人が集まってきた。この歌は初披露だったが、自分に合っているかもしれない。気分が乗ったこともあって、これまで歌った中で最高の出来。聴き手にもそれが伝わったのか、バタバタとCDが売れ始める。

「今日は1時間も歌ってダメかと思ってましたが、CDを買ってくださった皆様が、神様のように思えます」と、率直にお礼を言う。
 さすがに左手が少し固くなってきたので、「空港」を歌って終わりとさせていただいた。

 15分ほど休んだが、共演のジャグラーの方はまだ現れない。思いがけずCDが5枚も売れたので、切り上げてしまおうかと一時は考えたが、少し休んだら残り1ステージ分のセットを試してみたくなった。
 気を取り直し、15時25分から第3ステージとして以下の6曲を歌う。


「夜空の笛」※
「悲しき願い」※
「ダンシング・オールナイト」
「バス・ストップ」
「寂しくなんかない」◎
「抱きしめて」◎


 初披露の2曲は場に馴染む感覚はあったが、相変わらず通りは閑散としていて、人が立ち止まる気配はない。動きがあったのは「ダンシング…」を歌い始めてから。
 何人かが立ち止まって聴いてくれる。続けて歌った「バス・ストップ」でさらに人は増えた。女性目線のバラードだが、この曲も自分に合っている気がする。そこが人の足を止める所以。結局のところ、自分に合った曲をいかに見つけ出して歌うか、である。

「バス・ストップ」を歌い始めるとピタリと立ち止まり、熱心に聴いてくれる中年男性がいた。最近は聴いてくれる人がいてもいなくても、歌唱そのものに大きな差はなくなりつつあるが、やはり聴き手が一人でもいると、張り合いがあるというもの。
 不思議なもので、一人が立ち止まると、別の人も集まってくる傾向にある。よく言われる「サクラ」という意図的なやらせ行為は、実際にかなりの効果があると感じる。(私は意図的に使ったことはないが)

 歌い終わるとかの男性、さらに近寄ってきて「いくつ?」と尋ねてくる。この種の問いに対する最近の答えは決めてある。
「還暦シンガーです」
 相手は勝手に60歳前後と解釈したようだが、それでいいのだ。以下、相互のやり取り。

「いや、実はオレもこの歌が大好きでさ、いわゆる「十八番」なんだ。昨日もカラオケで歌ったばかりよ。まさかこんな場所で聴けるとはね」
「それは失礼しました。同年代ですよね?」
「58」

 私よりも5つ下だが、黙っていた。

「ところで、メロディを微妙に変えて歌ってない?」
「え〜、カラオケでは10年以上も歌ってないんで、よく分からんのです…」

 自分では原曲通りに歌っている気でいたが、どこか変えてしまっているのかもしれない。
(あとでYouTubeで確かめたら、Bメロの「どうぞ口を…」の「を」の箇所を下げずに歌っていた。完全に自己解釈で、指摘は正しかった)
 それじゃ、と男性は去ってゆく。ありがとうございます、と頭を下げて見送る私。CDは買ってくれなかったが、こうした通りすがりの方との一期一会のふれあいは、路上ライブならでは。他のライブにはない魅力である。最近はこうしたやり取りを、積極的に楽しめる心境になってきた。

 二人のやり取りを遠くで見ていた別の男性がいて、会話が終わるのを見計らったように姿を消したが、次にオリジナルの「寂しくなんかない」を歌い始めると、通りの向こうからまた戻ってきた。
 今度はその男性が熱心に目の前で聴いてくれる。歌い終わると、「いまの歌、どのCDに入ってる?」と尋ねる。出来たばかりで、どのCDにも入ってません。では、入っているのを歌いますと、「抱きしめて」を続けて歌った。
 実はその男性、市内で芸能関連プロダクションを経営しているという。その場でいろいろな話をし、身に余るような評価をいただいたが、勘違いしないよう我が身を戒めつつ、ありがたく受け止めておきたい。

 ラストのオリジナル2曲で、CDがかなり売れた。あとでまとめてみたら、13枚持参したうち、10枚が売れていた。(500円×4、200円×6)終了間際に来てくれた知人のKさんも含め、2枚まとめて買ってくださった方が複数いた。
 当初は過去最低の記録更新も覚悟していたが、終わってみれば逆に記録更新である。ストリートでは何が起こるか、やってみるまで分からない。
「流れる風になった気で淡々と歌う」
 ストリートの極意ともいえるそんなことを改めて感じた。