街角100ライブ


031 札幌駅前通地区活性化実験 HANA CAFE /2012.9.27



「札幌駅前通地区を活性化しよう」という実証試験の一環で、「HANA CAFE」というイベントが実施された。北海道庁東側の1ブロックを完全に交通遮断し、そこをオープンカフェとして市民に開放しようというもの。
 空きスペースで音楽や大道芸を披露したいという意向があり、チカチカパフォーマーに出演の要請がきた。普段は地下歩行空間限定で歌っているが、ホコ天やオープンカフェで歌う絶好の機会なので、好奇心のおもむくまま、協力することにした。

 4日間に渡って10時から19時まで開催されるロングイベントの初日。私の割当ては14〜16時で、同じチカチカパフォーマーであるジャグリング弥勒さんとの共演である。
 20分前に会場に着くと、一足早く弥勒さんがパフォーマンス中。しかし、曇天で肌寒いせいか、係員の呼び込みにも関わらず、オープンカフェに座る客はまばら。ジャグリング演技の一部に協力してもらう市民を探すにも一苦労している様子だった。

 機材をセットして準備したが、風が強いせいで電子譜面台の収まりが安定せず、液晶もかなり見にくい。真っ白な曇天の空がモロに画面に入ってしまうせいだった。
 電子譜面を断念し、予備に持参した紙の譜面を使おうといったんはセットしたが、こちらも強い風でめくれてしまい、安定しない。迷ったが、液晶の明るさを最大に設定し、位置を下端にまで下げてみたら何とか歌えそうだった。

 出だしで手間取ったせいで、14時5分からライブ開始。この日は勤めが休みの妻が付き合ってくれ、広報誌の取材で来ていた顔見知りのAさんも同席。ほぼ関係者のみ、という厳しい条件のなかでライブは始まった。
 およそ30分で以下の11曲を歌う。第1ステージの切り口は「1960年以前の懐メロ限定」で、かなりの冒険を試みた。(※は初披露)


「東京ドドンパ娘」
「星影の小径」
「月がとっても青いから」
「有楽町で逢いましょう」
「黄昏のビギン」
「ここに幸あり」
「ブンガワン・ソロ」
「星の流れに」※
「東京ラプソディ」※
「蘇州夜曲」
「りんごの木の下で」


 2枚つなぎの譜面隠しは風であおられないよう、頑丈に2ヶ所をヒモで結んだが、歌い始めると風で全体がぐらぐら揺れた。やむなく、右足でスタンド脚の一部を押さえながら歌うことに。
 3曲歌ったあたりで突然突風が吹き、カフェのテーブル上に取付けたパラソルが大きな音と共にテーブルごと吹き飛んだ。慌てて始末に走る係員数名。とても歌どころではない雰囲気になったが、慌てず騒がず、「大変な事態になっていますが、めげずにライブは続けます」とMCで凌ぎ、淡々と歌い続けた。
 過去にはもっと悲惨な状況で歌ったことが何度もある。これしきで臆していては、ストリートシンガーは務まらぬ。

 歩道をゆく人は皆無ではないが、天候のせいもあって、とにかく誰も近寄ってこない。地下よりもさらに難しい状況である。それでも半分くらい歌ったあたりで、数人の中高年の方が椅子に座り、じっと聴いてくださった。
「東京ラプソディ」では期せずして手拍子まで飛び出したので、厳しい条件のなかではよしとすべきだろう。

 終了後、ただちに弥勒さんの第2ステージ開始。相変わらず人は集まってこない。業を煮やした弥勒さん、遠くで立ち止まった数人の客を呼び込みつつ進めていた。
 15時15分から再び私の出番。第2ステージの切り口は「1960年以降の昭和歌謡」で、街角のライブに相応しい選曲を意識した。およそ35分で以下の12曲を歌う。(※は初披露)


「草原の輝き」
「花の首飾り」
「ブルーライト・ヨコハマ」
「恋の季節」
「バス・ストップ」※
「ジョニィへの伝言」
「時の過ぎゆくままに」
「時の流れに身をまかせ」
「どうにもとまらない」※
「ウナセラディ東京」
「ラブ・イズ・オーヴァー」
「また逢う日まで」(アンコール)


 出だしは相変わらず閑散としていたが、第1ステージ同様、5曲を歌った頃から少しずつ人が集まりだす。ストリートライブの極意は、とにかくひたすら歌い続けることだ。
 すると、「時の流れに身をまかせ」から状況が激変した。中高年を中心に人が増え始め、みなさん椅子に座って熱心に聴いてくれる。恐る恐る歌ってみた「どうにもとまらない」ではさらに人が増えた。一部カットするつもりが、思わずフルコーラス歌ってしまう。

 ふと気づくと、周辺の椅子には関係者を除いても10名前後の人々。「これで終わりです」と最後の曲を歌い終えても、誰一人席を立とうとしない。つまりは、無言のアンコールなのだった。
 時計を見ると15時45分。地下では人が引き始める時間帯で、こんな経験は初めてだったが、用意してあった「また逢う日まで」をありがたく歌わせてもらう。
 去り際に二人の中年女性から、「ありがとうございます」とていねいなご挨拶をいただいた。これがあるときのライブは成功なのである。一時はどうなることかと思ったが、まずはよかった。

 電子譜面や支持ホルダーを初めて屋外ストリートで試したが、収納や組立て、風への対応などで予期せぬ事態がいくつか起こった。どうにか対応できたが、新しい機材に関しては再度見直す必要がある。

 聴き手の増減や過酷な環境は別にし、道庁と並木道を背景にレンガ道の上で歌うのは非常に気分がいいものだった。無味乾燥な灰色の壁を背に歌う地下空間とは、そこが決定的に違う。歌は気分の占める比重が大きいので、その点は大いに評価すべきと思う。
 反響が何もない通りの真ん中なので、自分の声が空に吸い込まれるような感じだったが、あれこそがごまかしの一切きかない、ストリートライブ本来の姿であろう。久しぶりに得難い体験をさせてもらった。




032 チカチカ☆パフォーマンス18th
   「初頒布CDが売れた」
/2012.10.13



 第3期としては最初のチカチカパフォーマンスを実施。しつこい残暑やライセンス更新オーディションなどの事情で、久しぶりの地下通りライブである。
 今回はいつもの手慣れたパターンをあえて外し、過去一度もやったことがない土曜日を選択した。しかも2枠を連続でエントリー。
 平日は1枠3時間、週末や祝日は1枠3.5時間が割当てられ、通常は前後半続けて2枠が実施されるが、これまで2枠を連続でやったことは一度もない。こんな冒険を試みたのは、この日初めてオリジナルCDをチカホのストリートで売ってみることにしたから。時間は長めにし、人のなるべく多そうな時間帯にターゲットを絞ってみようと考えた。

 前日までに各枠とも制限いっぱいの3組がエントリー。12時に会場の北4条広場に入ると、展示系パフォーマーの似顔絵ますみさんだけが準備中で、他に姿はない。拍子抜けした気分で、ひとまず真ん中のスペースにステージを設営した。
 いざ歌おうとしたら、フリーバスケ&フットボールのEZO STREETさん3人組が現れる。準備の関係で、すでにスタンバイの終えた私がトップで歌うことに。

 この日の第1〜2ステージは9月末のHANA CAFEでやった構成でやろうと思った。屋外と地下とでは違った反応があるかもしれず、それを確かめたかった。
 12時25分から第1ステージ開始。30分弱で以下の10曲を歌った。


「東京ドドンパ娘」
「星影の小径」
「月がとっても青いから」
「君恋し」(初披露)
「黄昏のビギン」
「ここに幸あり」
「ブンガワン・ソロ」
「星の流れに」
「東京ラプソディ」
「りんごの木の下で」


 土曜日とはいえ、昼休みまっただ中の時間帯である。人通りは少なく、反応も弱い。屋外でやったHANA CAFEとあまり変わらぬ手応えのなさである。1960年以前の懐メロに絞った選曲だが、地上でも地下でもこのジャンルに限定してストリートで歌うのは難しいと実感。

 マイクスタンドには「10曲入オリジナルCD頒布中〜500円」の看板を初めて掲げ、別のスタンドにはサンプルも展示した。しかし、誰一人関心を示さない。淡々と歌い継いだが、中盤過ぎから少しずつ立ち止まる人が増え、「東京ラプソディ」でようやく10人を超える。地上でもそうだったが、この曲だけは例外なく受けそうだ。
 これに勇気を得て、「聞き足りない方はオリジナルCDでぜひどうぞ」と、すかさず案内するが、興味を示す人はなかった。

 オリジナルCDに対する反応はある程度予想していたので、こんなものかとただちに撤収。その後、EZO STREETさんとジャグリングのはなえださんのパフォーマンスを昼食のオニギリをかじりつつ、床に座って見届ける。

 そうこうするうち、再び私の出番。14時くらいから第2ステージを始め、およそ20分強で7曲を歌った。曲数を急きょ減らしたのは、前半枠しか予約していないEZO STREETさんへの配慮で、互いの時間を少し減らし、もう1ステージやってもらおうと相談した。
 結果として後半枠の開始を少し遅らせてしまったが、そこは後半トップのLOVERSSOULさんに事情を説明して了解をいただいた。同じパフォーマー同士、譲り合い精神は大切だろう。


「草原の輝き」
「ブルーライト・ヨコハマ」
「バス・ストップ」
「ジョニィへの伝言」
「時の過ぎゆくままに」
「愛人」(初披露)
「どうにもとまらない」


 第2ステージ以降は他のパフォーマーの準備や撤収に干渉しないよう、誰も選択しない一番隅の消火栓横のスペースに陣取った。通りに対してやや斜に構える位置で、これまで一度もこの位置では歌っていない。しかし、広場と通りの両方が均等に見渡せ、場所としては決して悪くない。時間も制限ぎりぎりまで使える利点がある。
 歌い始めたとたん、若い女性2人が目の前に立ち、熱心に聴いてくれる。曲紹介にも反応がよく、思わず話しかけながら進めていたら、一人が突然「ずっとあなたのHPやブログを読んでいました」と、思いがけないことを言う。単なる偶然だが、10数年前の家作り日誌から知っていると言うので、間違いなかった。

 この女性2人組が呼び水のようになり、聴き手がじわじわ増え始めた。途中、一人の中年女性が「CD売ってください」と曲間に言う。これまた信じ難い言葉だったが、この機を逃してはならぬと弾いていたギターをいったん床に置き、壁際のカバンにCDとお釣りの500円を取りに戻った。
(販売用CDと釣り銭は足元に並べておくべき)

 以降、「最後まで聴きたいけど、用事があるから」という方など、バタバタとCDが売れ始める。あっという間に4枚が売れた。最後まで残っていた女性2人組も買ってくださった。
「若い方なのに、すみませんね」と声をかけたら、若くないです、こっちは娘です、と言われた。若い友人同士と思っていたが母娘とのことで、とんだ勘違いである。しかし、ともかくも売れた。バンザイだ。

 やがて14時半が過ぎ、後半枠の時間帯となる。EZO STREETさんが帰り、ギター弾き語りのLOVERSSOULさんが現れる。
 この時点ですでに2ステージをこなしたが、この日は長丁場に備え、自宅でのリハを控えめにした。昼食やバナナ、水も充分に用意した。3人交代なので休養も充分、喉にはまだ余裕があった。
 15時50分から第3ステージ開始。30分弱で10曲を歌った。


「恋心」
「Let it be」(オリジナル訳詞)
「バラが咲いた」
「庭の千草」
「風来坊」
「夢一夜」
「ウナセラディ東京」
「時の流れに身をまかせ」
「抱きしめて」(オリジナル)
「熱き心に」


 実はラストステージはかねてから構想にあった「多ジャンル混在型」の構成で臨んだ。第3期チカチカ・オーデションでミニ版を試したが、本格的なものはこれが初。
 最初の2曲までは順調で、聴き手はすぐに10人を越えた。特に「Let it be」は強かった。ビートルズの名曲は、もはやクラシック的位置づけと評価してよいのではないか。
 ところが続く唱歌系2曲で人が引き始め、「庭の千草」ではわずか一人になってしまった。続くフォーク系と昭和歌謡系では盛り返して20人を突破したので、唱歌系の弱さが際立っている。ストリートでの唱歌系は考え直すべき時期かもしれない。

 1週間前に完成したばかりの平成歌謡風オリジナル「抱きしめて」はこの日が初披露。「もしもテレサが生きていたなら、きっとこんな曲を歌っていたでしょう」と前置きし、テレサの歌の直後に歌ったが、反応は非常によく、人が増えることはあっても減ることはなかった。
 CDは5枚しかなかったので、この時点で残りはサンプル1枚のみ。途中MCでの案内は一切しなかったが、「抱きしめて」を歌った直後、「このCDは売り物ですか?」と尋ねる男性が現れ、とうとうサンプルまで売れてしまった。まさかの完売である。

 終了後も「私もCDが欲しかった。次はいつやりますか?」と尋ねる女性がいたので、多めに持参してマメに告知をしていれば、もっと売れたことは間違いない。
「初めての土曜」「初めての2枠連続3ステージ」「初めてのCD頒布」「初の多ジャンル混在型」など初めてづくしだったが、予想を超える成果をあげることができた。
 これまで「オリジナルはストリートではご法度」などと勝手に自分で決めつけていたが、楽曲次第では充分に勝負でき、しかもCDまで買ってくれることが分かった。この実績をふまえ、今後の活動の方向性を決めたい。




033 チカチカ☆パフォーマンス19th
   「最悪条件下で歌う」
/2012.10.18



 予定にはなかったが、チカチカパフォーマンスの北3条広場で急きょ歌ってきた。今月はイベント多数とのことで、チカチカパフォーマーへの割当てが少なく、今日が最終日。指定が相性の悪い広場だったので様子見していたが、2日前になっても枠が埋まらない。

 先週末のチカチカライブでオリジナルCDが予想外に売れ、その背景をずっと自分なりに分析していた。
「財布のヒモが緩む土曜日午後」「4組のパフォーマーによる場の賑やかさ」「昭和歌謡中心の構成が当たった」等々、いろいろ理由は考えられる。ひょっとして売れたのはフロックだった可能性だってある。
 仮に最悪の条件で歌ってみたらどうなるだろう?持ち前の好奇心の虫が(行って歌ってこい)と騒いだ。

 会場はこれまでいい思いをしたことがない北3条広場。音の反響がいまいちで、マルチビジョンによる案内アナウンスの音が途切れない。さらには平日の後半枠で、開始が人々が帰宅を急ぐ17時からという魔の時間帯である。
 会場に向かう途中で気づいたが、この日は18時からプロ野球のCSシリーズ第2戦が札幌ドームである。私もそうだが、早く帰宅してテレビで地元チームを応援したいのが普通の心理だろう。
 つまりは、難しい要素が4つもそろったということ。これ以上ない悪条件のなかで、どこまでやれるか試されるということだ。

 10分前に会場に入ったら、前半枠ラストのLOVERSSOULさんのステージが真っ最中。帰宅途中の学生らしき若者を中心に、40人前後の抜群の集客である。LOVERSSOULさんは札幌を基点としたプロ歌手で多くの実績があり、ファンも多い。
 しばしステージを見せてもらったが、曲間MCでの聴き手とのコミュニケーションのとり方や、カバーとオリジナル曲のバランスなど、とても参考になった。

 17時20分から私のステージ開始。LOVERSSOULさんが後半枠も続けてエントリーしていたので、早めにスタンバイして歌い始めたが、なぜか途中で帰ってしまった。(理由不明、何か用事ができたのか?)
 当初から苦戦を予想していたこともあり、第1ステージでは玉砕覚悟で、ほぼ全曲をオリジナルで臨むという暴挙をあえて試みた。


「オブラディ・オブラダ」
「誰も知らない夜」
「雨ニモマケズ抄」
「夕凪ワルツ」
「秋の日に」
「独り」
「サクラ咲く」
「夢の旅路」


 1曲目だけがオリジナル訳詞で、他はすべてCDに入っているオリジナルである。予想通り聴き手はごく少なく、椅子に座った3〜4人といったところで、拍手もまばら。
(北3条広場にはテーブルセットが5組ほど置かれている)
 プロの方が歌った直後の場は正直きつい。本来なら私が当然先に歌うべきだが、チカチカパフォーマンスの場合は、必ずしもそうはならない怖さがある。
 CDについてはMCでも時折ふれたが、手にとった方は中年男性一人だけ。しかし買ってはくれなかった。一般には馴染みの薄いオリジナル曲だけで通りすがりの場を引っ張るのは、さすがに厳しいものがあった。

 17時45分に第1ステージを終える。以前にも感じたが、17時半〜18時半あたりの時間帯は、歌に関心を示す人は皆無に近い。通りを行く人々はそれなりにいるが、普段歌ってる平日午後や週末に比べて、足取りが一様に早いのだ。
 こうした状況では歌ってもムダのように感じ、しばし放心状態でボ〜としていた。ふと思いつき、これまで歌ったことがない左手の壁際にステージを移してみることにした。柱の陰で通りからは見えにくくなるが、壁を背にするので音の返りはいいはずだ。

 気を取り直し、18時5分から第2ステージ開始。オリジナルでの苦戦は予想通りだったので、前回試みてまずまずの反応だった「多ジャンル混在型」に路線を変更して臨む。
 実は第2ステージは当初9曲ほどで終えるつもりでいた。ところが30分近く歌っても立ち止まる人は全く現れない。このまま帰るのも何だかしゃくなので、(聴いてくれる人が現れるまで歌ってやろう…)という奇妙な反骨心が芽生え、結果として丸1時間休憩なしで、以下の17曲を一気に歌った。
(共演がいない場合、時間は自由に使える)


「想い出のソレンツァラ」
「Let It Be」
「思い出のグリーングラス」
「カントリー・ロード」
「涙そうそう」
「桃色吐息」
「別れの予感」(初披露)
「時の流れに身をまかせ」
「抱きしめて」(オリジナル)
「グッドナイト・ベイビー」
「また逢う日まで」
「草原の輝き」
「ブルーライトヨコハマ」
「恋の季節」
「バス・ストップ」
「ジョニィへの伝言」
「どうにもとまらない」


「カントリー・ロード」で数人の女子高生が立ち止まり、拍手をくれたが、次の「涙そうそう」で、すぐに消えてしまう。この日ばかりはテレサ・テンの神通力もまるで通用しなかった。とにかく孤独で厳しい。相当ストイックでタフな精神を持ちあわせていないと、とても耐えられないだろう。

 じっくり聴いてくれる人が突然現れたのは、通用しないはずだったオリジナルの「抱きしめて」を歌っているときだった。すでにステージは終了間際。予定にはなかった「また逢う日まで」を歌っても、その場を動こうとしない。
「もっと聴きたいですか?」と尋ねると、「ハイ」とその中年女性は応える。今夜はこの方のために歌おうと腹を決め、さらに6曲を続けて歌うことに。
 帰宅を急いでいたらしいその女性は「ブルーライトヨコハマ」のあとで帰ったが、入れ替わるように若い男性と別の中年女性が現れ、熱心に聴いてくれる。
 開始から1時間を経て喉も限界。左手の指もつり始めている。事情を話して「どうにもとまらない」で終わらせていただいたが、終了後にその2人が近寄ってきて、「とてもよかったです。CDください」と、それぞれ買ってくれた。

 立ち止まってくれた方はごく少数だったが、それでもCDは売れた。最悪の条件下でも聴いてくれる人はちゃんといる。まさに「地獄で仏」とはこのこと。要は手を抜かずに真摯に歌い続けることだ。
 CDを売ることに限れば、今回でおよその手法は分かったので、以降のライブに活かしたい。道はまだまだ続く。