街角100ライブ
028 チカチカ☆パフォーマンス15th
「集客50名を突破」 /2012.6.27
通算15度目となるチカチカパフォーマンスを実施。これだけ回数を重ねると、もはや記憶だけでセルフレポを書き綴るのは不可能で、信頼できる確かな記録が重要になってくる。
場所はチカホの北大通広場。過去の集客はよかったが、今月上旬に地下鉄乗り場との境界扉が通風のために常時開放されてしまい、音の条件が以前より悪くなった。この日のテーマは「昭和歌謡」で、同じ切り口で歌うのは先月上旬に続いて2度目。しかし、この広場では初めてである。当初は3組の共演となるはずが、前日に1組がキャンセル。結果として顔なじみのジャグラーとの共演となった。
25度を超す夏日のなか、早めに事務局に手続きに行ったら、ジャグラーの方はまだ来ていない。いつものように一人で重い看板2枚を抱えて長い通路を歩いたが、抱え方に慣れたせいか、今日はあまり苦痛を感じることもなく到着。
素早く機材を組み立てていたら、前回ライブを聴きにきて後日メールをくれたSさんが現れた。言葉を交わすのは初めてだが、メール交換で互いの素性は知れているので、歓談しつつ準備。14時5分前に準備が整ったが、もう一人聴きに来るはずのNさんが現れない。チェッカーズファンのNさんのために第1ステージの1曲目は早くから決めてあったが、遅れるのならば曲順を変えようか…、と逡巡するうち、ぎりぎりにNさんが到着する。以前に介護施設で歌った際に知り合った職員の方だが、以来ツイッターを中心に交流が続いている。
懸念が消えたので、予定通りに14時ちょうどからライブ開始。およそ25分で以下の8曲を歌った。(※は初披露)
「涙のリクエスト」※(リクエスト)
「亜麻色の髪の乙女」※
「東京ドドンパ娘」
「ウナ・セラ・ディ東京」※
「時の流れに身をまかせ」※
「恋する夏の日」※
「夜霧よ今夜もありがとう」
「また逢う日まで」※
2曲目あたりからどんどん人が集まり始め、あっという間に50名を突破。感覚的には60名に迫る勢いで、過去の最高集客数をあっさり更新した。間近の床に座って熱心に耳を傾けてくれる方も複数いた。
あまりに人が増えすぎ、背後の視覚障害者誘導ブロックにも人が立ち止まり始める。過去に何度かクレームが出た危ない状況である。危険を察知し、歌をいったんやめ、前に出ていただくようお願いする。この場所でこれ以上の集客は通行に支障が出かねず、数字的には限界のように思える。1ステージ8曲に減らしてからは時間的に余裕があるので、随所にMCを入れて進めたが、これがなかなか効果的だった。「時の流れに身をまかせ」では1ヶ月前に恐る恐るテレサ・テンを歌い、意外に受けたいきさつを話すと、会場から「いいぞ!」との声。
「きょうは『つぐない』でなく、別のを歌います」と応じると、「ぜひやってくれ」との声も続いてあがり、普通のライブと変わらぬコミュニケーションをとりつつ進められた。
「恋する夏の日」では期せずして手拍子が起き、「夜霧よ今夜もありがとう」では間奏で拍手が湧いた。企画ライブでもめったにない反応の良さである。最後まで聴き手が減ることはなかった。
ストリートでも工夫次第では企画ライブと変わらぬスタイルでやれるということで、大きな自信になった。ステージ終了後、前日のラジオ生放送でお世話になったYさんが友人2人を伴って挨拶にきてくれた。全く気づかなかったが、開始直後からいらしたという。「明日は聴きに行きます」と放送で締めくくってはいたが、まさか本当にいらしてくれるとは驚きである。
さらには、フォーク歌手の及川恒平さんが知人のNさんと共に突然目の前に現れ、「しばらく。じっくり聴かせてもらいました」と声をかけていただく。やはり冒頭からずっと聴いていらしたという。
8年前に時計台ホールでのソロコンサートを企画・主催した間柄だが、ここ数年は時折札幌でのライブを聴きに行くくらいで、親しくお話しする機会からは遠ざかっていた。何でも最近、活動拠点を札幌に移したとのこと。恒平さんご自身も最近は昭和歌謡を時折ライブに取り入れていて、正直に書けば、そうした動きに少なからず私も影響されている。「平成時代に書く新しい昭和歌謡」という構想が恒平さんにはあるそうで、ストリートで歌われる昭和歌謡が、どのように一般に受け入れるのか、興味があったのかもしれない。
この日は第2ステージでもエッセイを連載させていただいている出版社のAさんが顔を見せてくれ、さほどの告知はしていないのに、実に8人もの知人が聴きにきてくださったことになる。積み重ねの力は大きな…、と感慨深く思う。めくるめくような一日だった。第1ステージ後半に共演のジャグラーの方が現れ、相談の結果、私の第2ステージは14時50分開始と決まる。以下の8曲を歌ったが、聴き手はさすがに半分ほどに減った。このあたりの人の流れはまるで読めない。(※は初披露)
「恋の季節」※
「時の過ぎゆくままに」※
「有楽町で逢いましょう」
「ラブユー東京」※
「セーラー服と機関銃」※
「草原の輝き」※
「聖母たちのララバイ」
「青春時代」※
減ったといっても、終わり頃には30名近くに達していたので、集客としては充分過ぎるほどだ。第1ステージの集客がいかに尋常ではなかったかがうかがえる。
写真は第2ステージ中盤どの曲もおおむね反応はよかったが、唯一の計算違いは「恋の季節」。立ち止まる人は皆無だった。発売当時の売上が200万枚で、受けると確信していたが、まるで手応えがなく、歌った直後には訳が分からなかった。
1曲目だったことが理由にならないことは、過去に1曲目に歌った「サントワマミー」「季節の中で」の圧倒的集客ですでに証明済みだ。唯一確かなことは、売れた曲=受ける曲ではない、ということだ。
しかし、その日のライブをすべて見届けてくれたSさんが終了後にメールをくれ、「あの歌を甘く歌うのはいかがなものでしょう?」との指摘。私の歌唱の魅力は声の甘さであり、「恋の季節」は甘く歌っても聴き手には届かない曲なのでは?と。なるほどと納得した。要するに自分のものになっていなかったのだ。対して「草原の輝き」では、小さな女の子を連れたお母さんが間近に寄ってきて、女の子が曲に合わせて上手に踊ってくれた。曲の持つ楽しさが理屈抜きで子供にも伝わるのだろう。
第1ステージでの「恋する夏の日」も予想外に受けた。昭和アイドル歌謡は、甘さと軽さが売りの私には向いている気がする。今後はこの路線をもっと掘り下げるべきだろう。「青春時代」では、1番終了後の間奏からストロークのピッチを倍に変え、強く激しく歌った。余力がないとできない技だが、受けた。第2ステージにも来てくれたYさんから「『青春時代』よかったです。新しい菊地さんを見られました」と帰宅後にメールがあったほど。喉の調子は80%ほどだったが、この日は何をやってもうまくいった。
そのほか、演歌系の曲が安定して受けたのも収穫で、以前に「つぐない」の反応がよかったのは、決してフロックではなかったことを知った。
今回でおよその昭和歌謡路線の傾向が判明したので、今後は微修正を加えつつ進めたい。「演歌はダメ」「アイドルはダメ」と勝手に決め込まず、何でもトライしてみるもの。アイドル歌謡と演歌を混ぜることにより、構成にメリハリをつけやすくなるのだ。
今回16曲中12曲が初披露という、かってない大冒険に挑戦したが、苦労は報われた。先のYさんのメールに、「生涯青春」という言葉がライブを見届けて浮かんできました、とあった。うまい表現である。「生涯現役」よりもはるかに響きがいい。いろいろ幅広く活動を続けている方の発想はさすがに鋭いと感心させられた。キャッチコピーとして、ありがたく使わせていただこう。
少し迷ったが、やはりこのことも付記しておく。私が2ステージ終えた直後のジャグラーの方のステージが、実は大変な苦戦だった。
ジャグラーの方と共演するときは、間違いなくジャグリングの集客が勝る。その比率ざっと2倍ほどか。ところが今回に限れば、時間帯はそう変わらないのにそれが逆転した。理由はよく分からないが、客が少ないと気持ちも乗らないのか、芸も珍しくミスが続いた。そばで観ていてハラハラするほどで、いつものような「失敗をうまく芸に取り入れる」という余裕すらもないように思えた。
ミスが続くと途中で場を去る客も多くなる。パフォーマーはさらに気持ちが萎え、それは芸にも反映してしまう。完全なる悪循環である。そんな姿は初めて見たので、驚いたり妙な親近感を覚えたり、実に複雑な心境だった。誰も聴き手がいないストリートライブを過去に何度も経験しているので、とても人事ではないが、ジャグリングの芸は○か×(成功か失敗)しかないので、ある意味では歌よりも厳しいと感じた。
よく考えると、私も第2ステージ冒頭で「誰も立ち止まらない」という恐怖を瞬間的に体験している。客は実に正直で、義理だとかお金などでしばられていないストリートでは、一瞬で芸に見切りをつけられてしまう。
その正直な反応が怖くもあり、また面白くもありで、ちょっと聴き手が増えたくらいで勘違いし、増長していては、すぐに足元をすくわれてしまうだろう。他の声に耳を傾け、冷静に自己分析し、問題点はすぐに修正し、日々の修練を怠らない。月並みだが、それにつきる。ストリートには天使と魔物の両方が棲息している。
029 チカチカ☆パフォーマンス16th
「歌は水物」 /2012.7.8
割当てが少なく、時には争奪戦となるチカチカパフォーマンスの週末枠が、前日になってもなぜか埋まらない。時間の融通が効く身なので、週末のパフォーマンスはこれまで控えてきたが、夕方になっても日曜後半の枠は空欄のまま。夏のイベント系ライブに備えて試したい曲があり、急きょエントリーする気になった。
他のパフォーマーの近況をブログ等で調べてみると、夏祭り系のイベントに備えてみなさんご多忙の様子。どうりで枠が埋まらないはずだ。休日にエントリーするのは初めてだったが、以前にジャグリング系パフォーマーの方から、人の流れが平日とはかなり異なる、との情報は得ていた。
降って湧いたようなエントリーなので、明確な構成は決まっていず、急きょ練習中の昭和歌謡をかき集め、足りない分は実績のある曲で補うことにする。
休暇で家にいた妻が7ヶ月ぶりにつきあってくれることになり、普段とは異なる休日時間帯に合わせ、13時半に家を出る。この日からハンチングも夏物の白に替え、一気に夏模様の衣装で臨んだ。会場は前回と同じ北大通広場。前の時間帯にエントリーしていたダンス系パフォーマーの方がちょうど終わるところで、うまい具合に看板2つをその場で引き継ぐ。
14時30分から開始。この日は他にパフォーマーのエントリーがなく、久しぶりに休憩なしの1時間で一気に以下の16曲を歌った。準備不足だった事情もあって、初披露は6曲しかない。(※は初披露)
《前半》
「恋する夏の日」
「そっとおやすみ」※
「ペッパー警部」※
「SWEET・MEMOPIES」※
「グッドナイト・ベイビー」※
「空港」※
「恋のバカンス」《後半》
「ハナミズキ」※
「いい日旅立ち」
「涙そうそう」
「さくら(直太朗)」
「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」(リクエスト)
「花は咲く」
「青葉城恋唄」
「帰りたくなったよ」
「時代」
前回と同じ場所、同じ時間帯だったが、いざ歌い始めると平日とは空気感がまるで異なるのに戸惑った。全般的に集まりが悪く、4曲目までは立ち止まる人はわずか数人という、ノレンに腕押しの反応。これが休日の怖さなのか。
5曲目の「グッドナイト・ベイビー」でようやく人が増え始め、「いい声だね!」のかけ声もとびだす。この曲は初披露だが、かなり自信を持って歌ったので、当たってうれしかった。これに気を良くし、「演歌ですが、いつも受けの良いテレサ・テンを歌います」と前置きして「空港」を歌い始めたが、それを聞きつけてどこからともなく人が集まってきて、一気に10人を超える。
テレサ・テンを歌うのはこれで3度目で全て違う曲だが、どの曲をどんな状況で歌っても受ける。テレサ・テン恐るべし。この事実はよく頭に入れておきたい。その勢いで休憩なしに後半をやることを即断する。幸いに喉の調子は前回よりもよく、水をあまり飲まずとも声はよく伸びた。
後半の最初に歌った「ハナミズキ」は、正味5日間しか練習してなく、メロディを完全に覚えたのもごく最近。合計で20回ほどしか歌ってなく、状況いかんでは飛ばすつもりでいたが、増えてきた集客に勇気を得て思い切って歌った。
歌詞が難解で世界観のつかみにくい曲だが、あえて強いギターストロークで歌ってみたら、じわじわほぐれてきた。今日でほぼ自分のものになった感じだ。家での練習を聴いていた妻からも「今日の出来が一番良かった」との高評価。
5分近い長い曲だが、人は増えても減ることはなかった。テレサ・テンに続き、この曲がこうも支持されると分かったのは、大きな収穫である。ただ、結果としてこの日の集客ピークは、初めて歌ったこの曲という皮肉。場の状況が悪いと判断し、用意していた演歌、アニメソング、オリジナルは飛ばして、実績ある曲にその場で差し替えたが、その後の手慣れたはずの曲でも人は集まらず、逆に減るばかり。ラスト近くでは関係者を含めても4名という寂しい結果となってしまったが、その理由をあれこれ分析はすまい。
はっきりしているのは、受ける受けないはその場の流れで、誰にも把握できない水物であるということ。歌い手はただひたすらに与えられた場で歌い続けていればよいのではないか?というありふれた結論である。今回も迷ったが、やはりざっとふれておくことにする。実はラスト3曲あたりで、とても元気のいい中年女性が現れた。「青葉城恋唄」を歌い終えると、「いいよ!さだまさし!」などと声をかけてくる。さだまさしの曲だと思い込んだらしいが、そもそも女性がライブ中に声をかけてくることが稀。
その後2曲を歌ったが、どうもその女性の様子がおかしい。近くにいた別の女性に、強引にダンスを申し込み、断られると次の女性、といった具合にからみ始めたのだ。夜のカラオケバーであれば、歌に合わせて居合わせた客同士が踊る場面も時にある。しかしここは公共の広場であり、時間は真昼間だ。
歌いながらただならぬ気配を察知した私、終了を待たずに聴き手が次々と消える理由はこれかもしれないと、予定していた歌詞を短く切り詰め、早々にライブを切り上げることにした。するとかの女性、最後まで場に残っていた妻の手を握って離そうとしない。妻は当然拒んでいる。私が「これで終わりです」と撤収に取り掛かると、「私がいまからこの人と踊ろうってのに、あなた歌をやめるっていうの?」としつこく食い下がる。まるでヤクザかゴロツキである。
その通りです。もう時間ですから。そもそもその女性、私の女房なんです。一緒に連れて帰りますから、悪しからず。きっぱりそう告げると、ようやく諦めて渋々妻の手を離した。
あとで妻に確かめると、酔っていたのでは?とのことだったが、休日ともなると、そんな不逞の輩が通りを闊歩していることもある、ということだ。公共の通りなので白昼酔って歩くのも自由かもしれないが、他のいやがる行為を無理強いしてはならない。こんな具合に誰かにからまれて立ち尽くす状況があるかもしれない…、地下通りで歌い始めた当初から漠然と抱いていた不安が、ついに現実のものとなった。用意されてはいない場で歌う怖さがここにある。
今回はどうにか自力で対処したが、気の弱い方ならどうだったか。いよいよ難しい局面になった場合、すぐに事務局に連絡して応援をあおぐ手はずにはなっているが、やはりストリートには魔物が潜んでいるらしい。