街角100ライブ


022 チカチカ☆パフォーマンス09th
   「熱い手応え」
/2012.3.8



 通算9回目のチカチカパフォーマンスが無事に終了。今回は事前にHPトップで予定を逐次告知したこともあって、「ぜひ聴きにうかがいます」という連絡が多数あった。通りすがり対象が基本とはいえ、ライブを重ねるごとに決まった方が聴きにきてくれるのは自然な流れかもしれない。
「自由なスタイルで歌う」という自分のスタンスは保ちつつ、同時にそうした貴重な聴き手の方々にも配慮して活動を続けていきたい。

 今回は他のパフォーマーの方(読み聞かせ)とエントリーが重なり、3時間枠を互いにどうやり繰りすべきなのか、初めてのことなのでよく分からない。
 普段よりも早めに事務局に行き、率直に相談すると、「いつも遅く始める方なので、開始すぐには現れないと思いますよ」とのこと。それなら早めに始めて早めに終えてしまうに限ると、手続きを済ませてただちに地下へと向かった。

 会場は過去に2度歌っている北端の北4条広場。真冬は最も寒い場だが、すでに冬の峠は越えている。到着は14時10分前で、素早く機材をセット。早めの14時5分から歌い始めた。
 この日のテーマは「フォークとJ-POP」。新しく追加した案内板にもその旨を表示してある。冬から春への移り変わりを意識した選曲で、以下の16曲をいつものように休憩なしで一気に歌った。(※は初披露)

「季節の中で」
「面影橋から」
「風」
「卒業写真※」
「僕の胸でおやすみ」
「雨ニモマケズ」(オリジナル作曲)
「不思議なピーチパイ※」
「サボテンの花」(リクエスト)
「青葉城恋唄※」
「異邦人※」
「どうぞこのまま※」
「時代」
「あてもないけど」
「少しは私に愛を下さい」(リクエスト)
「夜明けのスキャット※」
「さくら(直太朗)」



 1曲目を歌いだすと、いきなり人が集まってきた。見る間に数が増え、ざっと20人ほどに。35年前に友人の結婚式で歌って以来だが、さすがに千春は強いなと感心する。
 その後、曲によって人は減ったり増えたりを繰り返したが、告知を見て足を運んでくれた方がかなりいたので、常時10名を下ることはなかったように思う。

「卒業写真」は遠方から来てくださった馴染みの居酒屋ライブハウスマスター夫妻に敬意を表しての選曲。ママさんが大のユーミンファンである。
 この日は他にも2曲リクエストがあり、確実に聴いていただけるよう、後半に配置して備えた。「サボテンの花」と「少しは私に愛を下さい」がそれ。幸いにどちらもレパートリーに入っていた。
 実は終了後にも別のリクエストをいただいたが、歌えなくとも練習を重ねてなるべく応じるように最近は努めている。そうすることで、自分の歌の幅が広がる気がする。

「青葉城恋唄」は本来夏の歌で、時期的には早すぎる。しかし、この日はチカチカパフォーマンスの3月最終日。東日本大震災の3/11が間近ということもあり、被災地関連の歌をどうしても歌いたかった。
 事前のMCでもそのことに少しふれた。初披露だったが、うかつにも1フレーズ目で感極まって一瞬崩れそうになった。しかし、譜面に目を落とすことできわどく回避。ある種の「震災ソング」であることもあってか、通りを行く多くの人が足を止めてくれ、静かに集中して聴いてくださった。
 自分としては被災地に対する鎮魂歌のつもりで魂をこめて歌ったので、それがその場に居合わせた方々の心に確かに伝わったと思う。
 そのほか、「雨ニモマケズ」と「時代」も被災地に向けてメッセージとして歌い、こちらもMCで一部ふれた。ささやかだが、自分なりのやり方でその場に居合わせた人々と想いを共有できた。

「不思議なピーチパイ」と「さくら」では自然発生的に場内から手拍子が起きた。ストリートライブではかってなかったことで、この日の聴き手との一体感を端的に語っていたと思う。

 残り2曲になって「あと2曲で終わりです」と宣言する。急に終わると前回のように突然のアンコールが出るのを恐れてのこと。このときすでに別のパフォーマーの方が会場に入り、スタンバイ中なのが目に入っていた。長々と場を独占してはならない。
 この日は長めの曲が多く、ラストの「さくら」を歌い終えると丸1時間が経過していた。聴き手の数は進行と共にじわじわ増えた。寒暖の激しい気候のせいか喉の調子は決して万全ではなく、80%ほどの出来。しかし、集まってくださった多数の方々(30名は軽く越えていたらしい)の後押しもあって、気持ちでどうにか乗り切ることができた。

 初披露かそれに近い曲は「季節の中で」「卒業写真」「不思議なピーチパイ」など、半数近くを占める。他では怖くて歌えない曲でも、ここでは抵抗なく自由に歌える気がする。「用意された場」ではないからだろう。

 終了後、顔見知りの方々やこの日初めて出会った方々としばしの歓談。この風景も回を重ねるごとに定番スタイルになりつつある。
 30分過ぎあたりから正面の床に座って熱心に耳を傾けてくれた若い男性が近寄ってきて、「すごく良かったです。握手してください」と手を差し出され、非常にうれしかった。
 彼に限らず、この日は20〜30代と思われる若い男女も数多く聴いてくださった。現状の路線を大きく変えるつもりはないが、取り巻く環境はじょじょに変わってゆく予感もする。当面はその流れに身を任せたい。




023 チカチカ☆パフォーマンス10th
   「電子譜面初登場」
/2012.4.12



 新年度初めて、通算10度目となるチカチカパフォーマンスを実施。事務局からのスケジュール告知と小旅行が重なり、希望する平日昼間のエントリーに遅れをとった。どうにか確保した枠は遅めの16〜17時。しかも過去に例のない3組のパフォーマーによる共演である。
 第2期オーディションで登録メンバーが倍近くに増え、相対的に場所や時間帯の競争率が高くなった。あくまで場所を借りてやっている立場なので、与えられた条件に合わせなくてはならない。間隔がしばし空いたこともあり、漠然とした不安を抱えて会場へと向かった。

 会場到着は15時20分、いつもの北4条広場である。すでに顔見知りのジャグリング系パフォーマーがスタンバイしていて、それぞれ1回のパフォーマンスを終えたところだった。
 開始時間と演奏時間に関し、他のパフォーマーと簡単な打合せをする。調整の結果、私の開始時間は15時50分からとなり、演奏も普段より短い40分間ということになった。

 15時25分からジャグリング弥勒さんのステージ開始。キャリアのあるプロの方なので、場のさばきは巧み。あっという間に20人を越える人を集めた。横から眺めながら準備を進めつつ、予定していた16曲のうち、削る曲の検討をする。
 この日は初めて中華Padによる電子譜面を使うつもりで、直前まで充電して家を出たが、1時間以上経過していたにも関わらず、問題なく起動した。
 予定より早く弥勒さんのステージが終わりそうな気配をMCから察知。準備を早めて、いつでも始められる体勢を整えた。

 15時45分に弥勒さんのステージが終了。私のステージはいつものように通りに直角な横壁。通りに向かってステージを設定した弥勒さんとは完全に独立している。時間ロスを最小にするべく、ただちに歌い始めた。
 この日はシャンソン&クラシックを中心に、結果として以下の12曲を35分間で歌った。(※は初披露)


「想い出のソレンツァラ」
「パダン・パダン」
「サンタルチア」
「サン・トワ・マミー」
「ラ・メール」
「ベサメ・ムーチョ」
「野ばら」
「蘇州夜曲」
「河は呼んでいる」
「モルダウの流れ※」
「優しき光※」(オリジナル歌詞)
「ケ・セラ・セラ」



 場に少し残っていたジャグリング見物の客は、私が歌い始めても全く関心を示さず、全員が姿を消した。始めた直後はステージ準備をするトイシアターのお二人が場に居合わせるだけだった。

 2曲目あたりから少しずつ人が集まってきて、歌い進むうち、じわじわと10人ほどに達した。まずは順調な滑り出しである。これまでなら、そのまま人がどんどん増えてくるはずだった。ところが、その思惑は見事に外れた。
 5曲目の「ラ・メール」で人が逆に引き始めたのだ。喉の調子は悪くない。理由が分からないまま歌い続けたが、その後も人が増える気配はなく、最後の数曲を熱心に聴き届けてくださったのは、顔見知りのNさんとHさん、そして準備を終えたトイシアターのお二人だけ、といった寂しい状況である。

 予定より5分早く、16時20分にステージ終了。1曲に要した時間は曲間を含めても3分弱で、かなり効率よく進められた。
 心配していた電子譜面台の操作はスムーズで快適だった。曲間ロスを最小限にできた大きな要因である。ページめくりは瞬時。曲ごとのサイズ調整(拡大)に若干の時間を要するが、大きな問題ではない。リスクを避け、予定曲分の印刷譜面は念のため持参したが、登場する場面はなかった。

 今後、どのライブでも電子譜面が使える見通しがついたが、この日最大の収穫はもしかするとこれだったかもしれない。
 初披露の曲は「モルダウの流れ」と「優しき光」。少ない聴き手にも確かな反応があったと思う。聴き手が多かろうが少なかろうが、やるべきことはきちんとやった。

 ラストのトイシアターさんのステージをひとり見届ける。こちらも実績あるプロの方なので、場のさばきは巧みで技も確か。誰もいない場にじょじょに人を導く手法など、参考になった。
 終了後にしばし情報交換をしたが、16〜17時半は大道芸人にとって魔の時間帯なのだとトイシアターさんは言う。人々が帰宅を急ぎ始める時間帯だからで、いつも早い時間に終わらせてしまう私にとって、初めて聞く話。16時といえば、まさに「ラ・メール」を歌い始めた時間ではないか。なるほど確かに、と納得した。
 さらにこの日は、階段を降りて通りに立った瞬間、(人が集まらない…)という悪い空気感を感じたそう。私には多いと見えた客も、いつもの半分程度だったとか。理由は定かではないが、新年度の始まったばかりの週末で、人々の心にまだ娯楽を味わう余裕が生まれていないのかもしれない。

 パフォーマーの増加で、今後はこれまでのように自由なステージはやれない可能性が高く、1ステージ30分程度の以前のスタイルに戻さざるを得ないかもしれない。開始時間を厳密に告知することも難しくなりそうだ。
 固まったと思っていたチカチカパフォーマンス、大きな状況の変化に対応する必要に迫られている。




024 チカチカ☆パフォーマンス11th
   「手探り昭和歌謡」
/2012.5.10



 通算11度目のチカチカパフォーマンスを実施。新年度からパフォーマー数が倍増し、これまでのように1枠を一人で自由に使うことは難しくなった。前回は私を含めて3組、今回は2組のパフォーマーによる共演である。
 状況の変化に伴って弾き語りのスタイルも変えた。当初のように1回のパフォーマンス時間を30分弱とし、前後半の2部構成とする。試行錯誤のすえにたどり着いた「1時間近くを一気に歌う」というスタイルからは逆行するが、まずは現状に合わせることだ。

 13時40分に事務局に着いたら、この日共演のミスターきくちさんはすでに会場入りしていた。書類に必要事項を記載し、すぐに地下へと潜る。ジャグラーであるきくちさんは盛んに機材のセット中。14時からの開始は無理とのことで、準備の終わった私が最初にやることがその場で決まる。
 14時ちょうどに開始。会場は前回に引続き北4条広場だが、今回は通りに対して平行な位置にステージを設定してみた。この日のテーマは「昭和歌謡&POPS」で、第1部としてまず9曲を歌う。(※は初披露)


「青いリンゴ※」
「夕陽が泣いている※」
「赤いスイートピー※」
「つぐない」
「真夜中のギター」
「危険なふたり※ 」
「恋のしずく」
「釜山港へ帰れ」
「恋のバカンス」



 今回は普段あまり歌わない(歌えない?)曲を中心に構成。「昭和歌謡」と時流に乗ってはみたが、範囲が広く、絞り込みが難しかった。昭和30〜40年代を中心に歌謡曲的気分の曲を選んだが、結果として初披露の曲連発となった。
 第1部では「青いリンゴ」「夕陽が泣いている」「赤いスイートピー」「危険なふたり 」の4曲が初披露。どの曲も老人ホームや地域センター、あるいは被災地支援などの場では歌いにくい曲だが、チカチカパフォーマンスでなら気兼ねなく自由に歌えるのだった。

 とはいいつつ、手探り状態なので果たして立ち止まってくれるかどうか、正直不安もあった。しかし、歌い始めるとまずまずの集客。「赤いスイートピー」あたりからじわじわと人が増え、「つぐない」では一気に20人を越えた。
「つぐない」は演歌のジャンルで、歌うか否かかなり躊躇した曲である。しかし、ストリートで演歌にどういった反応があるのか試してみたくなり、捨て歌のつもりで歌った。全く何が受けるか分からない。以前に道庁赤レンガ前で歌った際も台湾観光客に囲まれたことがある。テレサ・テン強しである。

 9曲目の「恋のバカンス」にもかなりの人が集まった。人が集まる曲とそうでない曲とがハッキリしている。やはり売れた曲が単純に強い。

 14時27分に第1部終了。入替え時間を考慮すると、30分きっちりではまずい。ほぼ理想的な時間配分である。ミスターきくちさんに終了を告げてバトンタッチ。休憩しつつ、きくちさんのパフォーマンスを見物したが、失敗を上手にパフォーマンスに取り入れる技など、参考になった。

 こうして自分とは全く異なるジャンルの芸を間近で見られるのは、チカチカパフォーマンスならではである。パフォーマンス用のさまざまな備品など、どの方も大半が手作りだそうで、芸の第一歩はまず備品の手作りから、といった感じだ。とかく高価な市販品に頼りがちな弾き語り系パフォーマーとは、まるでスタンスが異なる。私も自分でかなり工夫して自作するほうだが、まだまだ改善の余地ありだ。見習いたい。

 14時55分にきくちさんのパフォーマンスが終了。第2部のステージは通りから直角な位置に変えた。いつも歌っている位置に戻したわけだが、やはり壁を背負ったほうが音の返りがよいことが分かったこと。そして場所を変えれば相互のステージが干渉せず、次のステージへの移行がスムーズだからだ。
 15時少し前から第2部開始。30分弱で11曲を一気に歌った。


「月がとっても青いから」
「空に星があるように」
「黒い花びら※」
「ジョニィへの伝言※」
「恋のハレルヤ※」
「喝采※」
「熱き心に※」
「おかあさん(森昌子)」
「ブルーライト・ヨコハマ※」
「花の首飾り」
「ラヴ・イズ・オーヴァー※」



「月がとっても青いから」「空に星があるように」「おかあさん」「花の首飾り」以外の7曲はすべて初披露である。前後半合わせると、20曲中11曲が初披露となった。大変な冒険をしたものだ。用意された場では怖くてとてもできない。

 第1部に比べると聴き手は激減したが、めげずに黙々と歌い継ぐ。ストリートライブの極意はとにかく歌い続けることだ。誰も聴き手がいなくとも風に向かって涼やかに歌えること、それがストリートシンガーの極意なのである。
 MCもなしで電子譜面を瞬時に切り替えつつ、ひたすら歌う。そうするうち、「ジョニィへの伝言」あたりからじわじわと人が増え始める。
 頃合いを見て「熱き心に」をここで歌う。この日どうしても試したかった曲で、実は前半に予定していたが、電子譜面の操作ミスでうっかり飛ばしてしまった。反応は全くの未知数だったが、手応えはあった。この曲は使える。

 ラスト4曲はその勢いで乗り切った印象。結果として集客は前半と大差なく、この種の切り口でもそれなりに聴いてくれる人はいることが判明。「シャンソン&クラシック」とは遥か離れた位置にあるが、今後定期的に同じ構成でやれそうだ。
 終了後に声をかけてくれた方が3名。「もっと聴きたかった」「普段歌っているお店があるのでしたら、ぜひ教えてください」など、身に余る言葉ばかり。変化する状況にも何とか対応できるメドがついて喜ばしい。

「歌謡曲のみをストリートで歌う」ということ以外に、「短時間でできるだけ多くの曲を歌う」というのも今回の試みのひとつだった。結果として第2部では、30分で11曲歌うという離れ業をこなした。記録更新である。
 共演の場合は「入替えを含めて1組の持ち時間が30分」という取決めがあるため、必要に迫られてやったが、1曲あたり3分弱で歌わねばならず、このあたりが限界値と思われる。

 3番まで歌うと冗漫になる曲は2番でやめるなどの工夫はしているが、「熱き心に」では歌だけに4分15秒を費やしており、全部歌わないと意味が伝わらない曲はきちんとフルコーラス歌っている。
 詰めているのは譜面のセット時間とカポの交換時間などで、そのために機材も工夫を重ねた。タブレットPCを使った電子譜面は、時間短縮のためにはもはや欠かせないアイテムだ。曲紹介やMCは基本的にないので、聴き手にはやや無愛想な印象を与えるかもしれない。しかし、勝負はやはり歌だろう。

 ヤル気になればやれるということだが、ストリートライブの聴き手に対し、これが本当に親切なのかどうか、まだ評価は難しい。しかし、休みなく歌うことで、いったん立ち止まった聴き手をその場に釘付けにし、終わるまで聴いてもらうという当初の目的は、ほぼ達成されているように思う。当分はこの手法で突き進む。
 ただ、これを月2回のペースで続けるには、かなりの気力体力が必要なのは間違いない。プロ歌手で日々ランニングをやっている人を何人か知っているが、すべて歌のパワーを維持するためと聞いた。
 走るのは元来苦手なので、せめて散歩や家事雑事をマメにすることで体力をつけたい。あとは日々の歌の練習、これが最も大事だ。道はまだまだ続く。