街角100ライブ


016 チカチカ☆パフォーマンス03rd
   「叙情的時間」
/2011.11.22



 札幌駅前通地下歩行空間での3度目のチカチカパフォーマンスを無事に終えた。都心でも最高気温がわずか0.5度という、ほとんど真冬なみの寒気が街を襲っていたが、幸いに小雪がちらつく程度で風はない。
 今回も妻には休暇をとってもらった。13時ちょうどに家を出て、車を会場真上の交差点に止めて機材を降ろす。寒いので妻とは事務局の入っているビル内のロビーで待ち合わせることにする。

 いつもの駐車場に車を停め、10分後に妻と合流。事務局に寄ってパフォーマンス用の看板を受け取り、同時に日報にも記入した。
 ツイッターでの事前告知など、何かと手続きが煩雑だが、1日の平均通行人が7万人を越えるという札幌屈指の繁華街で街づくりに間接的に参画しつつ、気兼ねなく歌えるのだから、多少のことは乗り越えられるというもの。

 前回と同じ14時10分から第1ステージ開始。寒い日が続き、地下通路の通行も普段よりは少ない感じがした。この日は知人が二人聴きにきてくれた。力まずに歌うよう気をつけたが、はたしてどうだったか。
 これまでと同じパターンで第1ステージでは世界の叙情歌を中心に、40分で以下の13曲を歌った。


「ろくでなし」(シャンソン)
「オー・ソレ・ミオ」(カンツォーネ)
「パダン・パダン」(シャンソン)
「詩人の魂」(シャンソン)
「恋人よ」(J-POPS)
「想い出のソレンツァラ」(シャンソン)
「ラ・メール」(シャンソン)
「帰れソレントへ」(カンツォーネ)
「さくらんぼの実る頃」(シャンソン)
「夢路より」(フォスター)
「オールドブラックジョー」(フォスター)
「庭の千草」(アイルランド民謡)
「奥様お手をどうぞ」(シャンソン)


 後半に指がつってしまった結果を反省し、前回よりも3曲減らしたが、構成はがらりと変えた。街にうっすら雪が積もったこともあり、晩秋から冬にかけての曲を集めた。
 前回との重複は「詩人の魂」「さくらんぼの実る頃」「庭の千草」の3曲のみ。「想い出のソレンツァラ」「恋人よ」「帰れソレントへ」「オールドブラックジョー」の4曲が初披露である。

 通行人が少なめだった割には、集客はまずまず。当初の予定では「シューベルトのセレナーデ」を初めて歌う予定でいたが、その場の雰囲気から難しいと咄嗟に判断し、飛ばした。
 この判断が正解だったか否かは分からない。しかし、流れる場では自分の直感に従うしかない。

 14時50分に第1ステージを終了したが、ずっと聴いてくれていた見知らぬ中年婦人が近寄ってきて声をかけてくれた。聞けば前回も通りすがりに私の歌う姿を見かけたが、急ぎの用事があって聴けなかったという。
 どこかのお店でライブはやらないのですか、もしやるならぜひ聴きにいきたいので教えて欲しいと彼女はいう。あいにくソロライブは2週間前に終えたばかりで、当分予定はないと伝えると、たいそう残念がっていた。

 前回も同じような話があり、同じように名刺を渡しておいたが、この場が一期一会で終わるべきなのか、はたまた何かしらの新しいつながりが生まれるものなのか、判断に苦しむところである。

 聴きにきてくださった知人のNさんと話が弾み、休憩がつい長くなって15時15分から第2ステージ開始。日本の叙情歌を中心に、40分で以下の14曲を歌った。


「千の風になって」
「切手のないおくりもの」
「てぃんさぐぬ花」
「夜汽車」(ドイツ民謡)
「砂山」
「雪の降る街を」
「ペチカ」
「白い想い出」
「冬の星座」
「冬景色」
「月の砂漠」
「浜千鳥」
「北の旅人」(南こうせつ)
「銀色の道」


 後半も前回とは構成をがらり変え、冬のイメージの曲をずらり並べた。純粋な唱歌といえる「ペチカ」あたりからじわじわと人が増えてきて、「冬の星座」あたりでは20人近い人が聴いてくれた。
 前回も感じたが、とにかく唱歌は受け入れられる。老若男女を問わず人が集まってくる。いまの日本人の心が強く求めているのかもしれない。終了後に知人のNさんも指摘していたが、シャンソンやクラシックを歌う人は結構いるが、唱歌を専門に歌う人は極めて少ない、とのこと。確かにそうかもしれない。

 ありがたいことに、来月は多くの場で歌わせていただけることになっている。今回の結果を大いに参考にしたい。




017 チカチカ☆パフォーマンス04th
   「最高集客を記録」
/2011.12.20



 札幌駅地下歩行空間での4回目となるチカチカパフォーマンスを無事に終えた。喉の調子は悪くなかったが、自宅でのリハは数曲にとどめ、パワーを温存して臨む。加齢と共に体力は確実に衰えているので、最近は当日になっての必要以上の練習は控えることにしている。
 1週間近くも続く真冬日だったが、渋滞もなく、順調に都心に着く。いつもの段取りで妻に荷物番を頼み、会場となる地下へと潜る。

 この日の会場はこれまでの北3条広場ではなく、やや北にあって駅出入口に近い北4条広場。広場全体のスケジュール調整でこうなったが、ここで歌うのは実は初めてだった。
 案内アナウンスがなく、音の環境としては恵まれているが、椅子が一切ないのが難点だった。地下鉄駅改札口に近く、雰囲気がやや落ち着かないのでは?という懸念もあった。しかし、いろいろな場で歌えばまた違った風景が見えてくる可能性もある。まずは一度歌ってみることだ。

 これまでになく早く着いたので、開始5分前には準備が整った。14時ジャストにパフォーマンス開始。第1ステージは世界の叙情歌を中心に、40分で以下の13曲を歌った。


「サン・トワ・マミー」(シャンソン)
「冬よ来い」(オリジナル)
「雪が降る」(シャンソン)
「雪の降る街を」
「菩提樹」(クラシック)
「ラ・ノビア」
「恋心」(シャンソン)
「きよしこの夜」
「独り」(オリジナル・作詞/まりりん)
「シューベルトの子守唄」(クラシック)
「シューベルトのセレナーデ」(クラシック)
「鱒」(クラシック)
「恋はやさし野辺の花よ」(クラシック)


 場所も初めてだったが、この日は他にもいくつか冒険を試みた。初披露の「ラ・ノビア」「恋はやさし野辺の花よ」、クラシック系を5曲、そしてシャンソン系オリジナルを2曲歌った。
 実際に歌ってみると、音の反響は非常によい。天井が低めで、2方向が壁に囲まれたコーナー部に立ったせいだろう。アナウンスが一切ないので、叙情的な歌も気兼ねなく歌える。少なくとも歌い手にとっては快適な空間だった。
(あとで妻からも音はよかったと聞かされた)

 1曲目からどんどん人が集まってきて、「雪が降る」では30人近い人であふれた。すぐ近くで古書市をやっていて、本を選んでいた人や買い終えた人が歌を聞きつけて集まってきたらしい。
「古書市にやってくる人」=「シャンソン系の曲を好む」という図式があったのかもしれない。ある意味でラッキーだったといえる。ともかく、路上系ライブでは過去最高の集客を記録したのは間違いない。

 思いがけない事態に多少当惑しつつ歌い進んだが、喉の調子は非常によかった。受けがよかったのはシャンソン系の曲だったが、あいにくこの日はクリスマス間近ということもあって、クラシック系を多めに構成した。
「菩提樹」そして「シューベルトの子守唄」からラストの「恋はやさし野辺の花よ」まで合計5曲がクラシック系で、プログラムが進むと共に人手がやや減っていったのは、曲調が難しすぎたせいかもしれない。

 前半を終えると初老の紳士が近寄ってきて、「心にしみる素晴らしい歌声をありがとうございます」という。チカチカパフォーマンス4度目にして初めて男性から声をかけられた。私の歌唱は圧倒的に女性に支持されるので、つまりは画期的な出来事である。
 この方とはかなり長く話したが、特にオリジナルの「独り」が非常によかったと言ってくれた。(この日はあまりの人の多さに、随所で簡単なMCを入れた)
 この「独り」は来てくれた別の知人からも「いい曲だ」と言われた。カバー曲だけでなく、時にはオリジナルもこうした場で充分通用することが今回分かった。大きな収穫である。

 10分休んで第2ステージ開始。日本の叙情歌を中心に、40分で以下の13曲を歌った。


「ここに幸あり」
「この道」
「ゆりかごの歌」
「待ちぼうけ」
「白い想い出」
「冬の星座」
「とうだいもり」
「ペチカ」
「冬景色」
「浜辺の歌」
「砂山」
「赤い花白い花」
「埴生の宿」


 理由ははっきりしないが、前半よりも人出は減った。日によっては洋楽系の歌にはまるで手応えがなく、逆に日本唱歌が受ける日もある。何がどうなるかは、いざ歌ってみるまで分からない。
 歌は気分の占める比重が高い。この日はシャンソン系が馴染む場であった、ということだろうか。

 途中、見知らぬ中年婦人から飲物の差し入れがあったりし、同じ地下空間でもこれまでとは異なる空気感に戸惑いつつも、早めの15時半に終了。8月のオーディション応募時の条件のひとつだった、期間中最低4度以上のパフォーマンスを今回で無事にやり遂げた。つまりはノルマ達成である。
 この日は前回に続いて知人のNさんのほか、地区センターライブで知り合ったKさんもわざわざ聴きにきてくださった。集客の激しい波はともかくも、歌自体の出来はよかったので、その部分での面目は保てたと思う。

 帰路、今回も快く休暇をとってつきあってくれた妻に感謝しつつ、イオンのドトールで軽食をふるまう。怒涛の年末ライブの大きな山をどうにか乗り越えた。




018 チカチカ☆パフォーマンス05th
   「3つの初めて」
/2012.1.11



 ブログやツイッターでは全く予告しなかったが、札幌駅地下歩行空間でのチカチカパフォーマンス夜の部に初めて参加した。
 平日だが、うまい具合に仕事も一段落し、取引先の多くが休みである水曜日。正月気分も抜け、街は平穏に戻っている。週末のスケジュールは勤めの合間にパフォーマンスをやり繰りしている他のパフォーマーに譲り、時間の融通が効く自由業の私は、こんな隙間の日にこそ歌うべきではないかと考えた。

 外は今年一番の寒気が襲い、強い地吹雪が吹き荒れている。瞬間的に前の車が見えなくなるほどの激しい嵐で、慎重に車を走らせた。
 夜の苦手な妻は、今日は家でお留守番。さすがに車の流れは悪く、16時40分に家を出て、都心のいつもの駐車場に着いたのが、17時30分だった。

 機材一式を背負い、凍結した道をトボトボ歩く。あとで知ったが、この時間に都心では今年最低の-10.8度を記録したという。まさに凍りつくような寒さで、通りには人影もまばら。とても歌いに行くような天候ではない。

 17時50分に事務局に到着。本来は17時開始だが、事務局には少し遅れて始めますと事前連絡してあった。手続きを済ませ、すぐに地下街へと潜る。
 この日の会場は3つあるうちで、一度も歌ったことがない北大通西広場だった。地下鉄大通駅出口近くで、ややざわついた雰囲気があるのは、前回歌った北4条広場に似ている。チカチカパフォーマンスも契約期間が残り少なくなり、今後のためにも普段とは異なる時間帯、異なる場所を知っておくべきと考えた。

 この日のもうひとつの新しい試みは、歌をすべてフォーク系の曲でそろえてみることだった。先月末の及川恒平さんのXmasフォークコンサートで、熱気あふれる会場の気分を肌身で感じ、これまで地下歩行空間では手応えが弱く、ずっと封印してたフォークをもう一度試してみる気になった。
 寒いということと夜の時間に歌うことから、この日はバンダナをやめ、ハンチングにマフラーというスタイルにした。この組み合わせはストリート系の衣装としては悪くない。場に応じて今後使い分けたい。

 事務局から北大通西広場へはかなり遠く、持参の簡易三脚で写真を撮ったりして準備にも手間取り、開始は18個10分から。この日は冬の歌を中心に、以下の14曲を休憩なしで一気に歌った。


「冬のロボット」(及川恒平)
「時代」(中島みゆき)
「北の旅人」(南こうせつ)
「Come to my bedside」(岡林信康)
「さりげない夜」(下田逸郎)
「独り」(オリジナル・作詞/まりりん)
「空に星があるように」(荒木一郎)
「めまい」(小椋佳)
「サボテンの花」(チューリップ)
「通りゃんせ」(佐藤公彦)
「河のほとりに」(谷山浩子)
「突然さよなら」(かぐや姫)
「あてもないけど」(かぐや姫)
「別れのうた」(坂庭省悟)


 通行人は多かったが、外が吹雪いていてちょうど帰宅時間。歌に関心を示す人は稀で、足早に通り過ぎるばかり。開始の3曲をそばで聴いてくれた若い女性が拍手と共に去ったあとは、ほとんど立ち止まる人のいないなか、孤独なストリートライブが延々と続いた。

 フォーク系とはいえ、選曲はかなりマニアックである。やはりフォークはこの空間では無理なのかと思いつつも、喉の調子はよく、自分の歌声が通りに響き、そして風のように流れてゆく感覚は得難いものだった。
 他の広場に比べて壁から通りまでの距離が近く、音の返りが非常によい。後部奥にあるマルチビジョンの案内音声は中央の北3条広場に比べてごく小さく、歌っていると全く気にならない。ライブの場としては恵まれていた。

 このまま風になりきって最後まで歌いきろうと覚悟を決めたとき、一人の中年男性が立ち止まって柱に寄り添い、ずっと聴いてくれている。それがきっかけとなり、一人また一人と立ち止まってくれる人が増え始めた。

 ラストの曲はそんな人たちに感謝の言葉を初めてMCとして入れた。終了は19時ちょうど。聴き手は最大6人で、洋楽や唱歌に比べると少なめだったが、尻上がりに聴き手が増えてきたのが救い。自分のなかでの満足度は高かった。

 終了後、一番長く聴いてくれた男性が近寄ってきた。歩いていて「河のほとりに」の歌声がすっと心の中に入ってきた。懐かしい曲が聴けてとてもよかったとねぎらってくれ、缶ビールを差し入れしてくれた。ありがたく、そしてうれしい。
 この男性、谷山浩子のファンだそうで、30年近く前のオールナイトニッポンを欠かさず聞いていて、札幌でのライブにも行ったことがあるとか。どちらも私と共通する。
 彼女はそうメジャーではなく、ライブハウスや路上で彼女の曲を歌う人など稀であろう。そんな隠れファンの二人が札幌の地下通りで偶然出会う。ストリートライブの限りない魅力をこんなところでも感じた。

 漠然とした感触だが、18時半を過ぎた頃からようやく通りをゆく人の足がゆっくりし始めた気がする。帰宅を急ぐ人の足を止めるほどの魅力は、我が歌にはないということなのだろう。夜のストリートライブは時間帯をよく考えるべきらしい。
 とはいえ、「初めて妻の引率なし」「初めて歌う広場」「初めての夜時間」「初めてのフォーク系リスト」「初めての悪天候」という初めてづくしのなかでは、まずまずの結果だったと自己評価したい。

 数日を経て感じたことだが、この空間では休憩をはさんで30〜40分を2ステージやるより、1時間近くで1ステージを一気にやってしまうほうが何かといいように思えてきた。
 下手に休憩をはさむとせっかく掴んだ聴き手が逃げてしまうシーンがこれまで何度かあった。最初は立ち止まってくれずとも、長時間歌い続けることで人はじょじょに集まってくる傾向にある。一気に歌うことで全体時間も短くなり、自分の集中力も増す。

 仮に1ステージとなると、場所や時間毎にセットを変える必要がある。現段階で使えるのは「洋楽系(シャンソン、クラシック中心)」「日本唱歌系」「フォーク系」の3つだ。まだはっきりしないが、3つある広場のうち、北端にある北4条広場では洋楽系が、南端にある北大通広場ではフォーク系が、中央の北3条広場では日本唱歌系が場に馴染むような気が何となくする。
 それぞれの場の広さ、通りや出入口からの距離、明るさ、椅子の有無、マルチビジョン音響の有無と大きさ、等々が歌の傾向に微妙に関わっている気がしてならない。この場所の要素に時間帯の条件を加味して今後ライブを構成したい。

 手探り状態はまだまだ続くが、おぼろげながら札幌駅地下歩行空間でのストリートライブの傾向がつかめてきた気がする。