サッカークラブでのいじめ
息子は小学5年生です。学校のサッカー同好会に所属しています。息子は小さな頃からサッカーが大好きで、同好会に入団できるのがとても楽しみだったようです。それというのも、亡くなった私の父がサッカーをやっていたので、私自身小さな頃からサッカー漬けであり、息子も洗脳されるがごとく、サッカーを身近に感じる環境だったからだと思います。
簡単な練習なら私が見ることも出来ますが、やはり素人であるのでコーチに任せた方が変な癖や偏った考えをしないと思い、同好会に入るまで一切教えていませんでした。体も小さく、運動神経も余りよくない子供でしたが、サッカーをやりたい一心で毎日練習に通っています。おかげさまで最近はレギュラーに定着し、本人も三度の飯よりサッカーが好きのようですが、最近になって、同好会の中で問題が起こってしまいました。
私の父がGKだったので、古い記録から息子もそのポジションにあこがれ、GKになりたいと思っていたようですが、体格や性格を考慮したコーチ達の考えから、チームでは現在MFをやっております。本人も納得していたので、私も安心していました。
ところが、現在GKをやっている子供が練習に余り熱心でなく、その子の親までもが、「うちの子供は下手だからGKになった」という考えで、その子もGKになる事によって、試合に出られるようになったと思っているらしいのです。
息子はそんな相手に対し、ある種の羨望もあったと思いますが、あるとき、「キーパーをやる資格がない」と言ってしまったらしいのです。そこで済めば子供同士の口げんかで終わったと思いますが、相手の親がでてきて、大勢の子供の前で我が子を罵倒し、怒鳴りつけたのです。息子の言葉も確かにすぎたとは思いますが、泣きじゃくりながらサッカーをやめたいと語る息子に、なんと言葉をかけてよいのか分かりません。
サッカーが好きであれば、続けた方がよいのは分かっていますが、このままチームに居ると、風当たりが強くなるというジレンマもあります。その子の母親は役員もしているため、気に入らない人は徹底的にいじめています。自分の子供のことしか考えないので、子供の話を鵜呑みにし、他の子供を呼び出し責め立てる。サッカーに限らず、学校生活でもよくある光景なだけに、子供は今後が怖いし、不安だといっています。
サッカーが大好きな息子のために、続ける道を模索していますが、田舎のために近隣には学校主体のクラブしかなく、他の学校に転校しない限り、このままで居続けなければならないでしょう。しかし、もう一緒には出来ないと言っている息子の気持ちも本当によく分かります。
くだらないことで悩んでいると思われるでしょうが、私たち親子には切実な悩みです。どうかよきアドバイスをお願いいたします。その後の練習では、周囲も巻き込み、我が子は孤立した状態です。
('03.7 /切実に悩む母)
お話をうかがうと、双方ともに子供の背後にぴったり寄り添う親の強い影が見えます。サッカーをやっているのは子供自身ですから、主役の子供より親の姿が目立ってはいけません。お便りを読んでまず第一に感じたのはそのことでした。
以前の相談でも書きましたが、子供は基本的に保守的で、親の意向に沿い、従おうとします。息子さんがサッカー、そしてゴールキーパーにあこがれを抱いたのも、おそらくは母親であるあなたの想いに沿うようにと考えたからでしょう。それはあなたのお父さんに対する想いにも間接的につながっています。
ただ、きっかけは何であれ、結果的に子供がサッカーというスポーツを心から愛するようになったのであれば、当分は子供の意向に沿うように、今度は大人の側が周囲の環境を整えてやるのが務めではないでしょうか。
現在の息子さんと母親であるあなたを取り巻く状況は、住んでいる地域が閉鎖的な田舎であるだけに、悲惨なものであることが容易に想像出来ます。ここではっきりしておきたいのは、事件の発端は、「キーパーをやる資格がない」と言った息子さんの一言にあるという事実です。これは指導者でさえめったに口にはしない、強い言葉です。
ここからはあくまで私の推測ですが、小5という年齢から考え、息子さんの言葉は自身の考えから出たものではなく、お母さんの強い影響を受けたものではないでしょうか。
もしあなたが軽い気持ちで、「あの子はキーパーにふさわしくない、やる資格がない」といった主旨の会話を家庭内や親しい友人間で口にし、それが子供の耳に入ったとします。子供はその考えが絶対的であり、正しいと信ずるでしょう。親に対する信頼感が強い子ほど、その傾向があるはずです。これは息子さんがサッカーやキーパーに強いあこがれを抱いたという事実からも裏づけられます。
息子さんの言葉は、おそらくはあなた自身の言葉でもあったはずです。同時に、息子さんの痛みはあなた自身の痛みです。相手の親が大勢の前で息子さんを罵倒したのは、息子さんへの憎しみばかりでなく、その背後にちらつくあなたの存在を本能的に悟ったからでしょう。役員まで務める親のとる態度としては、いささか大人気ない気もしますが、その親にとってみれば、「愛する我が子を愚ろうするふとどき者」というわけで、我が子=自分自身が非難されたと感じたはずです。
繰り返しますが、主役は子供です。事件はすでに起こってしまったのですから、大人としてまずあなたがしなくてはならないことは、息子さんのサッカーにかける本当の気持ちを理解してあげることです。チームを移るのは困難なように思われますので、多少のわだかまりが残っても、いまのチームでサッカーを続けたいのか?という意志を、息子さんに再確認してください。
ここではあまり親としての意見ははさまず、単純に「あなたはどうしたいのか?」を息子さんに問いただしてください。息子さん自身が本心ではやめたいと願っているのなら、ここは腹をくくってやめる選択もあろうかと思います。もしお母さん思いの息子さんが親の意向を汲んで、「お母さんが僕にやらせたいのなら、やってもいい」というふうに本心とは違った結論を出してしまうと、問題の本質がまたねじれてしまいます。サッカーは自分が楽しいからやるものであり、親のためにやるものではありません。
もし息子さんが万難を排してでもサッカーを続けたい、という強い意志を持っている場合、あなたと息子さんが先方の家に直接出向き、お二人で最初の非礼をまずわびるべきではないでしょうか。虫の好かない相手に頭を下げるのは屈辱的かもしれませんが、先に書いたように、きっかけはあくまで息子さんの側にあります。あなたの側がまず折れないと、問題はいつまでたっても解決しません。
先方にわびを入れる前に、まず息子さんになぜ謝りに行くのか、分かるようによく説明してあげてください。トラブルの発端が息子さんの口にした最初の言葉であっても、「お母さんにもあなたをそう仕向けた悪いところがあったかもしれない」と、息子さんと一緒に責任を背負ってあげるべきでしょう。
双方だけで和解出来ればベストですが、先方が図に乗ってさらに横暴な態度を見せる可能性もなくはありません。その怖れがある場合、あらかじめ信頼出来る第三者を間にたて、和解の場に同席してもらうことをお勧めします。この「第三者」は、どちらの側にも立っていないチーム内の役員(父母)がふさわしいと思います。指導者という選択も考えられますが、技術戦術面以外のトラブルの仲裁にまで巻き込むのは酷ですし、かえって問題がこじれてしまうかもしれません。
問題が子供たちの間にまで波及しているようですので、親の話合いが終わったあとは指導者に事情を話し、子供全員の前で「子供同士の仲直りの儀式」(握手など)をしてもらう必要もあります。ここでも謝るのは、あくまで息子さんの側です。
災いを通して親子が苦しみを分かち合い、「相手を尊重する」という情操面を再確認し、ときには頭を下げることも人生では必要であることを学ぶいい機会と、問題を少しでも前向きにとらえるべきではないでしょうか。

最近元気のない次男
小2になる次男についての相談です。現在チームには幼稚園に通っていた頃からの友達も含め、5人の2年生が在籍しています。兄も同じチームにいたので、次男は5歳の頃から練習に顔をだしており、コーチの方にも遊んでもらいながら練習していました。
そのため友達の中でも実力はあると思うのですが、他の4人が活発な性格でもあり、(次男も活発ですがそれ以上)他人のミスをなじる子もいたりで、練習、試合と最近元気がなくなってきました。
親としましては、たまに低学年のコーチも任されることもあり、ついつい次男に強くあたってしまいます。それがますます次男を消極的にしてしまうとは思うのですが、親の目から見ても、実力は低学年では1、2を争うくらいはあるほうだと思います。
以前のようにもう少し積極的な次男に戻すにはどのようにしたらいいのでしょうか?また最近では剣道もやりたいといって、掛け持ちでがんばってます。サッカーがそのような状態だから剣道を始めたのか、もともと運動が好きだからなのかは父親としてはわかりませんが、サッカーボールを楽しく蹴っていた頃のように頑張って欲しいと願っております。何か良いアドバイスがあればお願いします。
('03.8 /子育てパパさん)
息子さんの元気のない原因は厳しいお父さんと、チームメイトとの人間関係にあると思われます。私の子育てサッカー記録に、私がコーチを引き受ける際に息子にむかって、「これからグランドではお父さんと呼ぶな」と厳しく宣言する下りがありますが、あのとき息子はすでに6年生で、大人の入口に差し掛かっていました。同じ気持ち、同じ態度をまだ2年生である息子さんに当てはめるのは、少し酷である気がします。
2年生という時期は、まだ厳しさよりも楽しさを中心にしてサッカーを考えるべきで、チーム内でも「お父さんと息子」という関係のままでいいと思います。むしろ、ミスをなじる他の子に対し、「一生懸命やってるんだから、人の文句は言わないようにしようね」とたしなめるべきで、そうしたもろもろの父親のある種「不公平」な態度に対し、息子さんはいま、(お父さんは僕の味方ではなくなった)と、やり切れない気持ちになっているのではないでしょうか。
剣道を始めたのも、おそらくはお父さんに対するある種のポーズ、つまりは抗議の気持ちの表れで、本当は元のように楽しくサッカーをやりたい、という気持ちの裏返しの行動のように感じます。
私としては、しばらくは(おそらくは4年生くらいまで)平等で公平な態度で息子さんや他のチームメイトと接することをお勧めいたします。同学年の他の子があなたのことを「コーチ」と呼んでいるのかどうか分かりませんが、ここはひとまず「いっしょに遊んでくれる面白い○○君のお父さん」というキャラクターで指導にあたってみてはいかがでしょう。「コーチ」として親子のけじめをつけさせるのは、もっと先になってからでいいと思います。
プロでもない限り、サッカーの原点がまず楽しさにあることは明白で、子供を導く立場にある大人は、その視点を常に見失ってはならないと思います。

クラブでのいじめ〜その後
先日はアドバイスを頂き、ありがとうございました。私自身、胸に応えるお話でした。そこで、同好会の会長さんを間に、親を交えての話し合いを求めましたが、子供同士のことと相手は話に応じてくれませんでした。
息子は、「サッカーが好きでやってるから、あいつに会いたくてやってるわけではない」と言い始め、他の子供達に無視されても「サッカーが出来ればそれで良い」と言ってくれたので、私がその子に謝りました。
私の中にも亡くなった父に対する思いが強かったのを、子供が敏感に感じ取っていたのだと思います。けんかの発端の発言については、親御さんにはお手紙で謝りました。うちの子供も練習の後に、全員の前でその子供に謝っていました。しかし、相手の母親はことあるごとに、不要な発言を息子に繰り返し、又、子供同士でのいじめもなくなってはいません。
「僕がいけなかったから…」という息子が不憫ですが、それでもサッカーをやりたいという姿勢には、我が子ながら感動しています。私としては、やめた方がいいのではないかと思うこともありますが、子供自身の考えを尊重し、急がずに答えを出せるように見守るつもりです。
サッカーが好きなら、今のままで居るしかないことを子供も分かっているのでしょう。他の子供に練習後の片付けを押しつけられても、黙って言いなりにならない息子が、とても強いと感じています。
他の子供達の中にも、何人か息子の味方がでてきたようですが、相手の親が他の子供へ暴言を繰り返しているのがきっかけのようです。でも、このままではチームとしてバラバラになって行くようで、不安な気持ちもあります。
親が参加をしない同好会の存在はないのでしょうが、介入しすぎると子供達が分裂してしまう。今回の件で本当によく分かりました。純粋にサッカーが好きでやっている子供を、心から応援したいと思います。ただ、出来たら、向こうの親御さんにも少し反省してもらいたいと思っている。私はやっぱり、いけない人間です。(苦笑)
('03.9 /切実に悩む母)
その後の展開を気にかけていましたが、おおむね良き方向に進み始めたようで、安心しました。いただいたお便りは、強く胸を打つものでした。間に人をたてる案が不調に終わったのは残念でしたが、あなたは一人で立派に問題を処理されました。
純粋にサッカーが好きな息子さんの意志をまず確認し、親子で公の場で非をわび、相手の親にも手紙でわびたのですから、あなたに非はもう何もありません。それでも態度を改めない相手の親こそ人間として問題で、しばらくは粛々とお手伝いの当番などをこなし、出過ぎず、目立たずの態度で時を過ごせば、事態は自然に落ち着くべき場所に落ち着くと思います。
今回の事件の最大の収穫は、あなたが息子さんに人しての進むべきまっとうな道筋を人生の先輩として、そして親として明確に示したことです。文字に記すのは簡単ですが、それを実際に行動に移すのは、並み大抵のことではありません。
あなたの意志は、息子さんに確かに伝わったと思います。今回のことは親子の記憶に長く留まることでしょう。人生にもし勝ち負けがあるとするなら、金や名誉、力や名声などではなく、情緒とか倫理の部分にあると私は信じています。その意味ではあなた方親子は人生の勝者で、相手の親子は敗者ということになります。それでいいのではないですか。これからも息子さんの良きアドバイザーでいてあげてください。