子育てサッカー相談室 ROOM1

 
親にしてやれること

 北海道のある市に住むものです。私には3人の子供がいます。1番上は女の子で、バスケットボールをしています。2番目は男の子で、サッカー大好き少年です。3番目は女の子で、まだ3歳です。
 体を動かし、外で遊ぶのが好きだった我が家の長男も小学校6年生、小学校時代のサッカーをもうすぐ終えるところです。息子は区選抜のセンターバック、チームでも同じです。フォワードからディフェンダーへは、息子が自分で指導者に申しでたそうです。姉のバスケットの試合を見て、攻撃はディフェンスから…と思ったからだ、と言っていたそうです。
 姉も選抜チームで、あまり年が離れていないせいか、お互いの試合をみてはもっとこうしては…と、兄弟で盛り上がってることもあります。違うスポーツながら、意外と共通することもあるようです。サッカーを始めたころ、よくバスケットを見にいっていたせいか、フットサルでの息子は、大変評価されました。

 選抜チームと少年団の遠征真っ盛りな北海道、今日も息子は我が家にいません。そんな我が息子が最近、市外のユースクラブのセレクションを受けたいと言いだしました。私たち夫婦もみなさんとおなじ親バカで、子供たちの試合にはかならず応援に行っています。重なるときは試合時間と場所で2人が分かれていくほどです。
 突然の息子の決意…。私はどうしたらいいのでしょうか。というよりも、母として何をしてあげられるのか…。TOM様の著書を読み、考えています。息子の人生だから、でも落ちたら…、また受かっても…と、いろいろ悩んでいます。アドバイスをお願いします。
('02.7 /悩み多き母)

 ページへのご訪問、そしてメールありがとうございました。本をお買い上げいただいたそうで、重ねてお礼もうしあげます。
 さて、ご相談の件ですが、息子さんがおそらく自分の意志で「クラブチームのセレクションを受けたい」と言い出したことを、まず尊重すべきだと思います。
 あくまでいただいたメールからだけの推測ですが、自ら進んでバックスという地味なポジションを選択したこと、そしてそれがチームのみならず、区選抜チームでもおそらくレギュラーとして機能していることから考え、息子さんは年の割にはかなり地に足のついた人生を歩みつつあるような気がします。

 ちょっと気がかりなのは、クラブチームに行きたい動機です。(区選抜という経歴から考え、セレクション受験=合格と考えていいと思います)これは親子、できればお父さんも交えてはっきりさせておくべきです。なぜなら、「プロにより近いから」という単純な動機で選ぶと、私の息子のようにいろいろな壁にぶつかる可能性があるからです。
 最近私のHPにアップした他の方のメールへの返信でも書きましたが、クラブチーム=プロに最短では決してありません。クラブチーム出身でも大半の選手はプロになれず、一方、普通の部活動からでも立派にプロになっている選手が北海道でもたくさんいるという事実は無視出来ないと思います。

 私の息子の場合は、クラブチーム=プロへの最短距離と私自身が錯覚してしまい、ここが大きな錯誤であったと反省しています。
 ではもしも時が後戻り出来たなら、どんな道がよかったか?息子さんが将来プロを目指していると仮定して、今後息子さんが選択可能な道を具体的に説明したいと思います。

1)校区内の部活動サッカー
 練習も近く、お金もかからず、仲のよい友達もいるしで、その点では安心です。ただ、サッカーの技術的戦術的な向上、特に将来プロをも視野に入れるとした場合、指導者によって大きな差が出ます。特に指導者の影響を受けやすいようなタイプの選手の場合、大事なこの時期の3年間が致命傷になる可能性もあります。
 部活動だからすべてダメ、というわけではないですが、どんな指導者なのかの事前調査は、十二分にしておきべきでしょう。

2)クラブチームでのサッカー
 練習場所は部活動よりも遠い場合がほとんどです。お金もかかります。初年度であれやこれやで年間30万くらいはかかると思っていたほうがいいです。学年が進むと道外遠征、場合によっては外国遠征(韓国など)も大半のクラブでやっています。出費はさらにかさみ、相対的に勉強の時間も減っていきます。要領のいい子なら両立も可能でしょうが、私の息子のように不器用な子は、勉強のほうをある程度犠牲にする覚悟も必要です。
 ただし、技術的戦術的にはかなり期待出来ます。チームメートも含め、上をめざすサッカー環境は格段に整っています。

3)部活動有力中学校への転入
 これは1)をもう少し進めた考えです。市内のサッカーの強い中学校を調べ、その校区に転入してしまうのです。データを集めるのは当然親の役目です。この方法は息子が中3になったあたりで聞かされ、そんな手段もあったのかとホゾをかみました。
 具体的には、その中学校の校区の知人の住所に一時的に子供を住民移動させます。(下宿のような形にする)親戚の家などが最適ですが、場合によっては一時的に親の名でアパートなどを借りる必要があるかもしれません。選ぶ中学校はなるべく近く、バスか地下鉄で通える場所が望ましいです。
 なお、このやり方は近所の友人が部活動でも学校生活でもいなくなるという弊害がありますが、本気でプロを目指すなら、これくらいは我慢しなくてはいけないでしょう。もしも仲のいい選手と一緒に行動出来れば、それが最高です。
 金銭的には校区内の部活動よりもやや高いですが、クラブチームよりは格段に安いです。強い部活動にはそれなりの監督が必ずいますから、技術面戦術面でもひとまず安心出来ます。

 どの方法も一長一短があり、「これにすべきだ」とはとても私からは言えません。金銭的にあまり負担がかかる場合、上のお嬢さんとの心情的なバランスをとる必要もあるかもしれません。(つまり、親として一人の子だけに金を注ぐわけにはいかない、というような意味です。我が家の場合はこれがありました)

 参考までに、息子と同学年の東京ヴェルディ、川口選手(札幌出身)コンサドーレ札幌、曽田選手(札幌出身)の場合、二人とも校区内の部活動です。川口選手はたまたま強い中学校でしたが、曽田選手の場合はごく普通のチームでした。
 彼らが伸びたのは高校と大学で、それぞれその時代に全日本に選ばれています。選ばれたきっかけは、全道(全県)レベルの大会での活躍が目にとまったからです。部活動出身の選手が脚光を浴びるきっかけの多くはこれで、その点では、ピーク時に全道(全県)レベルの大会でレギュラーとして活躍出来るか否か?が大きなポイントです。
 中学校〜大学のどれかで、ある程度強いチームに入ること、そしてそこでレギュラーをとることがプロとなる最低必須条件であると私は思います。
 長々と書きましたが、何かの参考になれば幸いです。



 
苦しんでいる我が子

 こんにちわ。初めてお便りします。某サッカー先進地(?)に住むものです。私の息子もサッカー大好きで、私も主人と親ばかをしています。私の場合、4級審判を経て3級まで取得してしまいました。母親で審判は珍しいようで、市内で有名人になってます。
 実はいま小学生の息子は、市内選抜チームの選考に入るかはいらないかの瀬戸際で苦しんでいます。入りたい子供ですが、どうしていいの分からず、ルールは詳しい私ですが、戦術等の指導法はからっきしだめで、力になれない自分がもどかしく悲しいです。
 やさしくおとなしい子なので、目立つこともできず、なかなか難しいです。またこうやって悩むのも子供もおかげかなと思っていますが…。本もぜひ購入したいと思ってます。
('02.8 /母さん審判)

 お母さんで3級審判とは恐れ入りました。私は2度受けて、2度とも落ちてしまった情けない男です。サッカーが盛んな地域はさすがに違います。
 息子さんの市内選抜は、サッカー先進地であればこそ、より一層の厳しさがある気がします。細かい戦術よりも、「ドリブルが非常にうまい」「相手のマークが巧み」「スペースを見つけるのが上手」「ボールタッチが柔らかい」「パスの受け方が上手」など、その子に合った特質をひとつ見つけてやり、そこを磨くのがいいのではないでしょうか?
 苦手なものを無理に克服するより、得意なものをまず磨いてやるのがいいのではないかと思いますが、いかがでしょう。「地味な子」とありましたので、ポジションは別にして、デフェンスから入ってパス〜攻撃につなげるような役割、サッカースタイルがあっているようにも思えます。

 お返事、ありがとうございました。確かにすべてを要求するのは無理ですよね。目からうろこです…。何とかしてあげたい気持ちが先走り、息子の気持ちを無視していたような気がします。
 ご推察のとおり、息子はディフェンダーで、センターバックをしております。もう少し攻撃に絡めれば…とコーチから言われていますので、そこを誉めて伸ばしてあげたいと思います。
 息子ともどもプロのビデオを見ながら、日々勉強です。菊地さんのような後で足跡を残せるようなサッカーの道を子供と主人と歩めたらと思います。こんなに熱くなれるサッカーってすごいですね。
 また息子の足跡、お知らせさせてください。私も負けずに審判がんばります。審判の件もお知らせしますね。本はぜひ買います。楽しみです。



 
中高体育授業でのサッカー指導

 突然のメールで失礼いたします。私は現在、近畿地区にある中高一貫学校で体育授業を受け持ち、そこでサッカーを教えています。対象は中学3年生から高校3年生までで、全員を一つのクラスで教えています。
 ですからレベルもバラバラ、体の大きさもバラバラで、どのように指導すれば、また、どのような練習をすれば全てのレベルの生徒が楽しく授業に参加できるのか?ということに悩んでいます。クラブではないので、もちろんサッカーが嫌いな生徒、それほどしたくない生徒もいます。
 練習方法やゲームなどアイデアがあれば、是非、お教えいただきたく存じます。
('02.9 /戸惑う教師)

 お問い合わせの件ですが、レベルがバラバラで、サッカーをそれほどしたくない生徒を含めた生徒のサッカー指導には、いろいろお悩み多き事とご推測いたします。
 メールでははっきりしませんが、ご自身にサッカー経験があるかないか、あるいは対象生徒の人数が何人いるのかで、かなり考え方や対応が変わってくるように思えます。
 もし私が同じ立場なら、ずばり、チームを能力別、やる気別にふたつに分けます。この際、年齢は一切加味しません。(生徒がかなり少ないと思われますので)あくまで小学生のチームですが、私が指導した9年間では、すべてこの方式で対応してうまくいきました。

 能力の高い子、あるいはやる気に燃えた子を仮にAチームとします。技術の落ちる子、やる気のない子をBチームとします。ABの分けは教師の独断で発表します。それぞれキャプテンを決めます。

 まずアップは教師の指導下で全員でやります。
 基本技術の指導は、私のページにある方法でとりあえずいいはずです。Aチームはある程度教えれば、あとは自分たちで自主的にやれるはずです。Bチームはパスだしなど、教師がついてやる必要があるでしょう。 (Aチームはキャプテンに、この教師の役をやらせる)

 アップと基本練習が終わったら、人数に応じてチームを分け、ミニゲームをやります。基本練習とゲームの時間比は、3:7くらいにすべきです。あまり基本練習に多くの時間をさくべきではないでしょう。(基本練習ゼロでもダメですが)
 この際、チームの人数はにはこだわらず、3〜11人の間で適当に調整します。何もせずに時間待ちの子がいてはいけません。仮にAチームが15人、Bチームが10人としたら、Aチームは8と7、Bチームは5と5でゲームをします。
 コートの大きさはグランドの大きさに応じます。AB同時に隣り合って試合ができることが望ましい。ゴールがなければ、コーンをふたつにならべます。キーパーの有無も状況に応じて決めましょう。Bチームの孤立感や技術不足に配慮し、教師は基本的にBチームの審判をします。
 チーム分けは片寄りのないよう、教師が目を光らせます。子供たちに片寄りのないチーム作りを自主的にさせるのも、教師としてのひとつの役目だと思います。
 以上の練習は雨の日は同じメニューを体育館でやりますが、ゲームはAB交代でやることになります。

 定期的に、AB対抗試合などでアクセントをつけます。このままではBが不利なので、Bには教師が入ったり、Aの人数を少なくしたり、Aにはゴールキーパーなしにするなどのハンデをつけます。(あるいはゴールキーパーだけABを入れ替える)
 どうすればABが拮抗した試合になり、双方が楽しめるか、子供たちと教師が話合う必要があるかもしれません。年齢的にもかなり大人なので、教師の一方的な押しつけは、反発を招く可能性が大きいと思います。

 生徒の人数、グランドや体育館の多きさ、設備、指導者のサッカー経験など、もう少し詳しいな情報をお知らせ下されば、より具体的なお話ができるかと思います。

 親切なご指導、心より感謝します。大変、参考になりました。
 ご指摘のありました生徒の人数などですが、現在、中学1年生から高校3年生まで合わせて約35名の生徒を同じクラスで教えております。また、私自身のサッカー歴としましては、小学校4年生から中学校3年生までの6年間と、あとは趣味程度で16年(年に数回する程度)というようなものです。
 グランドは公共のものを、そのつどお借りしている状態です。一応、ミニゲームを2面できるくらいのものです。ボールは10個(5号球)あります。一番小さいタイプのコーンも8個あります。これらを踏まえて、またご指導いただけましたら幸に存じます。

 より詳しい情報をお知らせいただき、かなり輪郭がはっきりしました。35名の生徒というのは、予想よりも少し多かったですが、基本的には前回メールの内容で対応可能かと思われます。ですが、ゲームに関しては多少の工夫が必要かもしれません。

 ABを半数に分けるとすると、ABそれぞれに9人くらいのチームができる計算ですが、この人数ですと普通のゲームなら可能ですが、コートの狭いミニゲームの場合は人数が多過ぎます。ミニゲームの場合、ABそれぞれに6人チームを3つ作り、(欠席などを考えると、ちょうどいい数)1チームは常に休憩状態にしたほうがいいかと思います。
 まず2チームを5〜7分戦わせ、買ったチームが勝ち残り、2つ続けて勝った場合に限り、勝ったチームが休憩する。こうルールを決めると、すべての生徒が均等に戦えます。試合時間の笛は、教師がAB同時に行います。(あるいはAだけはキャプテンにまかせる?)

 ABのチーム分けは教師がやるとして、AB内部でのチーム分けは固定するより、その都度3人の「仮キャプテン」を教師が決め、「とりけん」で好きな生徒を順にとっていくやり方がうまくいきます。(チームメンバーがその都度変わって飽きない)
 月1回、あるいは学期毎にABの入れ替えをやるという手法もありますが、生徒の気持ちへの十分な配慮(特にAからBに落ちる子)が必要だと思います。

 もし生徒たちの気持ちが盛り上がれば、他校との練習試合などにも発展するかもしれません。書いているうちに、なんだか私までわくわくしてきました。よりよきご指導ができるよう、お祈りしております。



 
小2にポジションは必要か

 はじめまして、楽しく拝見しました。私は地元のクラブで小学校2年生のコーチを担当しているものですが、ご意見伺いたく、メールいたしました。
 ポジションについてですが、この学年ではポジション決めたほうが良いのでしょうか?公式試合などがあると、やはりどうしても親、監督等から結果を求められ、それにはポジションを決めて、効率的に攻守をしたほうが良いと思うのです。
 ボールがこないときはただ待つだけでボーとしているような、運動能力が低く、消極的な子が多いチームです。それならポジション与え、「ここにきたら君のボールだよ」と教えて、触らせるようにしたほうが良い気もしますが、迷っています。
('02.11 /迷えるコーチ)

 結論から先に申しますと、7〜8歳の子に、ポジションを完全に固定する必要はまだないと思います。私はこの年代の男女を4年ほど指導しましたが、こんなやり方をしました。

 アップや基本練習などのあと、仕上げとしてゲームをしますが、多くは3〜5人でのミニゲームでした。この人数ならいやでも多くの子がボールにさわれますし、コートも狭く、必然的にポジションも固定されません。消極的な子でも、ボーとしている暇はありません。まずは自由にボールにさわらせ、その中で自分に最適な役割を集団の中でじょじょに見つけていく、またはコーチが見つけてやる。そんな考えで通しました。
 ルールがシンプルで制約が少なく、メンタル面でもフィジカル面でも自由であることがサッカーの大きな魅力であると私は思います。その楽しさや可能性を摘み取るのではなく、見つけてやるのが周囲の大人の役目ではないでしょうか。

 ただ、試合のときはある程度ポジションを決めてやったほうがいいと思います。残念ながら1〜2年生の指導は練習のみで、3年生以上での試合指導経験しか私にはありませんが、他チームとの試合では、ミニゲームなどでの動きを参考に、私自身が独断でポジションを決め、試合直前に発表しました。
 結果はほぼ思惑通りにいきましたが、ときには「ボクはフォワードでなきゃいやだ」とか、「バックスがいい」などとコーチの決めたポジションに不満をもらす子もいました。そんなときは、心ではそうではない、と思いつつも、次の試合で一回だけ希望のポジションをやらせました。結果はだいたい私が決めたポジションのほうが動きいいということになり、こうして子供も親も少しずつ納得していきます。
 子供がポジションをあれこれ言うときは、大半は周囲の大人の影響を受けているものです。「〜が格好いい」とか、「地味だけど大切な場所だよ」などと大人の価値観を押しつけるより、まず子供自身が納得し、それがチームの中でも有効に機能するのが理想で、本当にどのポジションがその子に向いているかを見抜くのは、やはりコーチであるべきです。

 どうにもチームの状態が悪いとき、カンフル剤的によくやったのが、バックス→トップ、トップ→キーパーなどの大胆コンバートです。これらも予告なしに、いきなり試合でやりました。もちろん思いつきでなく、普段の練習での動きや本人の性格、仲間の中での位置関係などを注意深く観察したうえでのコンバートで、結果的に失敗したことはありません。
 こうして数年かけていろいろなポジションをやらせ、固定されるのは5年生ぐらいだったように思います。子供自身も気づかないその子の才覚を見つけてやり、さらにチームとしての結果がついてくれば本人も親も指導者も満足できますが、指導に信念を持ち、常に子供たちの様子を観察し、資質を見抜く修練を怠らなければ、それは充分可能だと思います。

 早速のご回答有難うございました。今私が体験している環境に的確にアドバイス頂き、大変参考になりました。
 確かにミニゲーム有効かと思います。又、親の意見に子供が動かされているというご指摘、はっと気づかされました。結果は余り求めず、先を見て信念を持って指導したいと思います。有難うございました。HP応援しています!



 
チームを代わるべきでしょうか

 KPを拝見いたしました。壮絶な息子さんのサッカー子育て記に感動しました。それに比べると今の我が家の悩みは小さいのですが、何かアドバイスいただきたく、図々しくメールいたしました。
 息子は小2で、幼稚園から約3年間隣町のサッカークラブに入っています。そこは結構強豪チームで、親も子供もサッカー漬けの人が多く、それなりに親の負担や子供のレギュラー争い、親同士の確執などがあり、最近窮屈さを感じはじめてます。
 先週気まぐれで地元のチームを観に行きました。そこは弱小チームだけれどもアットホームなチームで、そのとき子供も体験をしましたが、今まで見たこともない程とても伸び伸びとプレーしていました。今のクラブはコーチも厳しく、子供たちもみんな上手いので息子は萎縮していたようです。それに今のチームならレギュラーも微妙で、そのせいかそのラインにいる子供同士親同士もギクシャクしています。
 それに比べてこのチームなら人数もあまりいないので試合にも出れそうですし、何よりも楽しくサッカーができそうな気がします。悪くいえば向上心がなさそうなのですが、低学年の間は楽しくする方がいいのでは?と思いはじめています。強豪チームで勝つ喜びを知るためにがむしゃらに頑張るのか、弱いけれども伸び伸びとその中で中心になれるようにやっていくのか、子供にとってどちらがいいのか非常に悩んでいます。
 今のチームに情などもあり、なかなか決断ができません。よきアドバイスをいただければと思います。よろしくお願いします。
('02.12 /りりーママ)

 このお便りを読んで私は、我が家の二男の事を思い出してしまいました。長男に引っ張られるように小4で同じサッカー少年団に入った二男は、やはりレギュラーと控えの当落上の選手でした。最初の半年はレギュラーでそれなりの力を発揮していましたが、秋ころからどうも動きが鈍くなりました。運動神経はいいほうなので、これはメンタル面の問題かなと考え、ある試合から先発を外していわゆるBチームに変えてみました。
 すると動きが格段に良くなり、(Bチームですから当然かもしれませんが)練習に行く姿や普段の行動までもが生き生きとし始めました。二男はそのまま二度とレギュラーには上がれませんでしたが、卒業まで一日も休まずに練習を続けました。
 あとで本人に聞いてみたところ、レギュラーチームでは小さなミスでもうるさくとがめられ、それが二男にとって辛いものだったようです。それに比べてBチーム内では二男はエースであり、なごやかな雰囲気に包まれて大変居心地がよかったとのこと。

 ご相談の息子さんの場合も同じような状況ではないかと推測いたします。子供にぎりぎりのところでがんばってもらい、困難を乗り越える力を身につけて欲しい、と願うのが普通の親の姿だと思います。私たち夫婦もそうでした。でも、そのことがときには子供にとって重荷になる場合があるようです。

「自分がそうやって人生の困難を乗り越えてきたのだから、息子だって出来るはずだ」
 私などは身勝手にそう考えるタイプの父親ですが、たとえ我が子でも、それが出来る子と出来ない子がいるのだと、いまは身に染みて思います。
 我が子がどのあたりまでやれる子なのかを見極めるのは、実の親でも大変難しいことだと思いますが、ぎりぎりのところを乗り越えるのもひとつの人生なら、ささやかな努力を長く続けていくのもまたひとつの大切な人生なのだということを、まず親自身が認めるべきではないかと思います。
 今回のケースでは息子さんはもちろん、お母さんのほうもすでにチーム内の窮屈さを感じ始めているのですから、結論はすでに出ているような気がします。新しいチームでエースをめざし、親子で再スタートを切るべきではないでしょうか。

 気がかりなのは「今のチームに情などもあり…」の記述です。現チームに息子さんかお母さんの親しい友人がいるとか、あるいは親身になって教えてくれるコーチがいる、などの問題でしょうか。サッカーという共通点があり、そう離れた地域ではないようですので、チームを離れても良好な関係だけを続けていくことは可能でしょう。新しいチームで新たな人間関係も出来るでしょうし、交友関係がそれだけ広がると、前向きに考えてはいかがですか。

 もうひとつ気になるのは、けじめのことです。年度代わりの3月を目前に控えたこの時期に、いきなりチームを代わるのは、けじめの面ではマイナスかもしれません。3年間お世話になったチームへの感謝の気持ちも含め、残りわずかである2年生の間は、現チームで活動を続けられてはいかがでしょう。
「3年生になったら近くのチームに代わろうね」と言ったほうが、息子さんにも説明しやすく、なにより(3年間がんばった)という息子さん自身の達成感が違うと思います。近くのチームには3年生から正式に加入する旨を伝え、それまでは「練習生」のような形で時間のあるときだけ参加させてもらうように頼めば、きっと受け入れてくれるはずです。そうすれば新チームへの移行もスムーズに運ぶでしょう。
 たとえどんな状況でも、楽しくないサッカー、やっていて辛いサッカーはするべきではないと私は思っています。年代は違いますが、この私自身も同じ理由で40代サッカーチームをやめた経験があります。サッカーが息子さんとご家族にとって、よき人生のオアシスになることを願っています。

 早々のお返事ありがとうございました。ご丁寧にお答えいただきましてとても感謝しています。一つ一つのお言葉を、主人と二人納得しながら読ませていただきました。言われることは全て私たちの心に響くもので、とても参考になりました。
 今までは親のエゴでつらい気持ちを引きずりながらも続けて参りましたが、今回は子供の決意も固く、チームを代わる方向で決心いたしました。これからは親子共々伸び伸びとサッカーを楽しめるようになりたいと思います。やめると決めてからは子供も少なからず明るくなったようです。本当にありがとうございました。



 
クラブチームに移るべきか…

 初めまして、北海道某市に住むものです。うちの息子は現在小学3年と1年の二人。上の子は2年になったときから地域のサッカー少年団に入団しました。「久々に上手い子が入ってきた」と歓迎され、すべてがその気になってます。下の子は2年になって入団するのを楽しみにしてます。こんな親はそう珍しくないでしょうが、毎日がサッカーで一喜一憂です。

 ところが、弱いんですチームが。2年前の息子の初めての試合が、20:0、17:1、18:0という有様。今でこそダブルスコアーにはならないまでも、殆ど地区予選で敗退です。負けることに悔しさもなく、勝てる訳がない!と思っているメンバー達…。
 母は日増しにサッカーが好きになり、そんなチームを腹立たしく思うばかりです。しかし、その反面夢はドンドン膨らんできます。このチームにいても上手くならない、勝てない…。息子はとにかくサッカーが好きで好きで大好きで、何とか上手くさせたい、勝たせたい。勝つ喜びを思いっきり感じさせたい。涙が出るほどの感動を教えてあげたい。
 いつか弾けるかも知れない、萎んでしまうかもしれない。知らぬ間に何処かへ飛んで行っちゃうかもしれない。けれど、思いっきり風船の様に膨らませたい。真剣にクラブチームに移ったほうがいいのか悩みます。

 今期限りで息子の学年担当のコーチが退きます。来期はだれがコーチになってくれるのでしょう?現コーチは昨年移動で他校に移り、1年だけの約束で続投してくれました。在任中は、この母の熱き思いに久々に揺り動かされたと言って頂きました。でも、今年で退任しちゃいます。どうしよう…。
 そんなこんなでこの先、息子たちも母も、こんな思いやあんな思いやそんな思いを抱くんですね。
('03.1 /熱血母さん)

 ううむ、私に負けず劣らずの熱き血潮に満ちたお母さんのようですね。
 プロになれる素材かそうでないかは、実は少年団時代からはっきり分かる差があるのではないか?と最近になって息子とよく話します。ずばり言いますと、技術ではなく、自立した精神です。
 息子は技術面ではいまのプロの選手と比べても、決してひけをとらなかったと思っています。ただ、精神の自立という面が決定的に不足していた。私は早くからそのことに気づいていましたが、修正してやることは出来ませんでした。「三つ子の魂百まで」とは、よくいったものです。このことは連載にも書いてありますし、いまでは息子自身がその事を認めています。
 結局のところ私の記録は、夢と現実に親子でなんとか折り合いをつけてゆく過程を詳細に記した、「敗者の記録」ということになります。それはそれで意義のあることでした。

 ただ単に「自立した精神」とだけ書くと、漠然とし過ぎていて分かりにくいかもしれませんが、かみくだくと「他に依存しない精神」「おごりたかぶらない心」「何事にも臆さない心」といったところでしょうか。サッカーだけではなく、普段の生活面から入っていかなくてはダメだと思います。ひとつだけ具体例をあげます。
 実は私の知り合いから、また一人プロのサッカー選手が誕生します。現筑波大学のキャプテンで、大学選手権優勝にも大きく貢献した小林選手で、今春からの浦和レッズ入りが決まっています。
 彼の在籍した少年団がすぐ近くで、監督と懇意だったこともあり、練習試合もよくやっていたので、小4の頃から知っていました。この小林選手が実に自立した精神の持ち主でした。大きな大会でも私のことを目ざとくみつけ、「こんにちは」と何のてらいもなく挨拶してくる。本当にけれんみのない、いい選手でした。(他チームで私に挨拶してくる子は皆無でした)
 チームは創部まもないこともあってとても弱かったのですが、彼の資質だけは図抜けて見えました。監督とふたりで「小林君は将来絶対プロになれる素材だ」とよく話したものです。
 5年のときに弱小チームからただ独り札幌選抜入り。チームは相変わらず弱かったですが、彼の普段の努力(技術的な個人練習)は、並み大抵ではなかったそうです。サッカーにかける姿勢が違っていたのでしょう。

 この小林選手がプロになれたことから考え、少年団時代のチームとしての輝かしい成績は、プロとなる必須条件ではないことが分かります。本当にプロになれる逸材なら、必ずどこかで見い出され、推薦されます。もしそうならなかった場合、決して「運が悪かった」のではなく、ただ単に資質がなかっただけです。
 私が教えた女子チームは、結成初年度は18:0や15:0などのひどいスコアで負け続けていましたが、その中から2年目にU12の日本代表選手を二人出しました。(さすがに補欠でしたが)つまり、「弱いチームだから上手くなれない」「弱いチームにいるとプロになれない」ということでは決してないことが、これらの事例から分かります。
 ただ、監督がいないとチームは成り立たないですから、もしもいまのチームを存続させたいのなら、たとえば父母が交代でコーチをつとめるような体制を、まずあなたが中心になって早急にとるべきでしょう。指導者は熱意ある父母がつとめるのが最適だと私は思います。

 現チームを捨てて、すっぱりクラブチームに移る選択もありますが、時間やお金がかかりますから、慎重に検討すべきでしょう。子供や大人の人間関係も、地域チームよりは格段に難しくなります。北海道にもプロを輩出したクラブがたくさんありますが、こういった強いチームで力を出せれば、本当の資質があると思っていいでしょう。
 反対に、ここで壁にぶつかってつぶされてしまう可能性も否定出来ません。弱くとも、親子で力をあわせて作り上げた地域チームのほうが、長い目でみてその子の将来のためになるのかもしれません。
「現時点で何が子供にとってベストなのか?」を、周囲の大人がよく見極め、導いてやる必要があります。どちらにしても、大きな選択になると思います。



 
サッカー以前の基本的な部分

 はじめまして。去年の11月から、創部8年目になるサッカー少年団の保護者代表になりました。サッカーについては申しわけないほどの素人です。子供たちが一生懸命ボールを追う姿を応援するのが大好きで、何とかしてあげたいと思い、引き受けました。
 コーチ陣も考え方の近い、いい方がやっときてくださり、子供たちはまず挨拶から教えられている少年団です。ここ何ヵ月で子供達もサッカーの技術的なところが身につき、見るからに上達しているのがわかるようになってきているところです。

 ただ、ずっと言い続けている技術の前にできてほしい部分が、何度言ってもできないのです。たとえば、サッカーをする上での準備や片付け、具体的には、ゴールを出す、ネットを引く、消火器を保護するために卓球台を出す等々です。
 ほとんどが高学年のしかも6年生で、低学年の子どもたちがやっていても、手伝おうとか、率先してやろうとか言う姿勢が見えず、しまいには言われないようにと、機具室に隠れる始末です。もちろん試合のときでも試合に必要な荷物を運ぶ気もなく、すべていつも同じ子がやる状態です。本当にあきれるばかりです。

 繰り返し言い続けてもだめなので、しばらくは学年で当番制にしようという話も出ているのですが、その方法にも果たして効果がどれほどあるのか、疑問を感じながらいるのです。
 こんなことをご相談するのもどうかと思いつつ、技術的なことは無理でも、人として基本的なところだけは子供たちに伝えたいと思いつつつまずき、ご相談させていただきました。
 もしもお時間ができましたら、なにかいいアドバイスをお願いいただけないでしょうか…。本当にお恥ずかしい限りのご相談で申しわけありません。よろしくお願い致します。
('03.2 /新米代表)

 私自身もコーチを引き受ける以前に2度の保護者代表の経験がありますが、親をまとめ、子供たちを保護監視しつつ、なおかつコーチとの関係もうまく保っていかなくてはならない調停役のようなもので、なかなか好きなだけではやっていけない難しい立場だと痛感しました。
 保護者代表に就任してまもないこの方は、おそらくそれらのやり繰りに、まだ手慣れていない段階なのだと思いますが、代表に推されたということは、特に保護者の間での信望が厚いという証しですから、まずそのことに自信を持ってください。

 お悩みのサッカー以外の基本的な部分ですが、仮にサッカーはダメでも、スポーツ活動を通して、まず人としてまっとうに育って欲しいと願うのは、親として代表として当然の事だと思います。
 特に上級生がサッカー以外の作業を率先してやろうとしないのは、私がコーチをやっていた時期にもよくありました。ちょうど大人に対して心理的に反抗し始める時期で、大人の手伝いを喜んでやるのは、およそ10歳くらいまでではないでしょうか。
 これらの上級生たちも、中学生になって部活に入れば、たちまち上級生の用具運びや、グランド整備をやらされる羽目になります。もしもそういう立場になれば、彼らは陰で文句をいいつつも、仕方なくやるでしょう。相手によって都合良く態度を変える大人社会の悪い縮図が、こんな面にも出ているのだと思います。

 これらの事柄に対し、コーチの方がどう考えているのかが、とても気になります。少年団のコーチを引き受けた以上、「私の仕事は技術戦術面だけ」のはずはなく、サッカー以外の情操面の教育も、小学生対象のスポーツチームの指導者にとっての大切な仕事であると私は思います。まず、この件に関して、新しいコーチの方と腹を割って話されてはいかがですか。そして、コーチの方からも子供たちに注意をうながしてもらうのです。
 もちろんそれ以前に、保護者間で考え方の統一を図っておく必要があります。あまり考えにくいですが、「情操面はどうでもいいから、サッカーさえ強ければいいんだ」という考えが保護者の一部にもしあるとすれば、それらの意見を黙殺してしまっては、代表として今後の運営がやりにくいでしょう。
 保護者会議を開くのも一考ですが、ご自分やその他の信頼出来る方などを介して、保護者の動向をそれとなく探る方法もあります。事前に根回しさえすれば、あなたの考えが正論なのですから、指導者にも堂々と親の考えを代表して言うことが出来るでしょう。
 この問題は、怖い保護者のお母さんかお父さんに、なまける子供たちの尻をはたいてもらいつつ、サッカーに関して子供たちが最も恐れと尊敬をいだく指導者に、「用具の準備をしない選手は上手くなれないよ」「後片付けをしない選手は、次の試合で途中交代させるかもれないぞ」などと諭してもらうのが一番利き目があります。

 蛇足ですが、
「あちこちに気配りしつつ、言うべきときにはズバッと言う」
 これが代表を円滑に進めるポイントのような気がします。それと、チーム運営が難しいのはチームが弱いときで、強いとき、勝っているときは不思議に何事もうまく運ぶものです。活動対象が勝負事ですから、これは仕方がないことかもしれません。
 うまくいかないときは茶話会や試合以外のレク(親子サッカーなど)を保護者主催で開催するのが、いいカンフル剤になります。ご参考までに。

 ご丁寧なお答えを頂き、ありがとうございます。まさにこの数ヶ月で感じていた「調停役」という言葉にうなずき、間違ってはいなかったのだと、うれしく思いました。信望が厚いかどうかは別として、ちょっと自信がつきました。
 説明不足で申しわけありません。先日、コーチ会議のなかでは意思統一ができました。あとはおっしゃる通り、保護者のなかで、そういうことで子供に注意することもなく、試合に勝つことが優先みたいな考えの方がいるようです。子供たちにいくら注意しても、小学生のうちは親の考えが正しいところがあるようで、とても難しいと感じています。気を配るように心がけてはいるつもりなのですが、何せ新米、まだまだ自分の思いとは逆にとられてしまうことも多く、情けなくなることがたびたびあります。
 ただ、正しいことをやり通していれば、いつかは解かってもらえると思っていますので、めげずに頑張るつもりです。

 まだまだ弱小チームですので、全てにおいていい試合だったと感じられるような少年団になるよう努力します。お忙しい中、経験者ならではのとても分りやすいアドバイスと、暖かい言葉をいただいた事に感謝しております。本当にありがとうございました。



 
左右の足を自在に使うには

 先日はじめてHPを拝見させていただき、まだ全部見終わらないうちに、この春に4年生になる息子のことでぜひTOMさんに聞きたいことがでてきたので、メールさせていただきました。
 息子は幼稚園年長からサッカーを始め、現在、首都圏にある強くも弱くもない地元スポーツ少年団に在籍しています。足が速いということからか、左利きということからか、ポジションなるものを与えられてからは、ずっと左のFWをやらせてもらっています。息子のいる3年チームは人数が揃っているために1チームとしてまとまり、コーチも2年生からですが、丸一年間大学生コーチが専属でみてくれていました。
 ところが先日少年団からチームの変更の話があり、「新4年生(息子)のチームは新5〜6年と一緒に練習し、その中からさらにトップチームを作る」とのこと。理由は、新5〜6年の人数不足…らしいのです。ここからが本題なのですが…。
 今までみてくれていたコーチの話によると、新5〜6年には幸か不幸かそこそこできる左のFWが2人いて、このままだと息子の試合出場が危ういので、それを打開するには右足も使いこなせるようにするしかないし、自分もこれからそのように指導していきます、とのこと。主人共々ついに恐れていたことがやってきた…(*_*;という感じです。
 もともと主人も左しか使えないので、これからは左も右も関係なく使えるようにならなきゃ駄目なんだ!と頭ではわかっていて、常々息子にも話してはいたのですが、なにぶんサッカーは少年団にお任せ状態で、直接教えるということはできていませんでした。息子もここにきて少々危機感を感じているようです。
 そこでやっと質問です。(^_^;
「今からやって右足は左と同じように使えるようになるものなのでしょうか?」
「また、そうなれるようにするにはどのような練習をしたらいいのでしょうか?」
 私もできる限り協力したいと思っていますので、ほかに「自宅でもできる方法」などもありましたらぜひ教えてください。
('03.2 /サッカーを愛す母)

「試合出場が危ういので、それを打開するには右足も使いこなせるようにするしかない」と断言してしまっているコーチの方の見解が少々気にはなりますが、今回のご相談の主旨からは外れてしまいますから、「利き足以外の足を使えるように」という一点に絞ってお答えします。
 まず、「今からやって右足は左と同じように使えるようになるものか?」についてですが、私自身が40歳くらいから左足のキックの練習を始めて、(私の利き足は右です)約1年でそこそこ試合で使えるようになったことから考え、10歳前後の年齢は、遅過ぎるどころか、むしろ「早過ぎる」と言ってもいいくらいです。人生、何事も「思い立ったときが出発」で、ほとんどのことに「遅過ぎる」などということはありません。

 次にその具体的な練習方法ですが、私の場合は子供たちと一緒の30分の基本練習の中で習得しました。練習は週に3回です。当時、私が作った基本練習メニューには、「ドリブル」「ターン」「キック(インサイド、アウトサイド、インステップ)」などの足を使ったものが多く含まれていました。そのときに、利き足以外の足で同じメニューを同じ回数やらせました。「右足でクライフターンを5回連続でやったら、続けて左足でも5回やる」といった感じです。もちろん、私も一緒に練習します。
 個人差はありますが、この練習で早い子は数カ月で右左が試合の中で自然に使えるようになります。ただ、頑固な子とか不器用な子は、1年過ぎても基本練習でしか出来ない子がいます。だからといってその子が試合で機能しないかと言えば、そんなことはなく、片方の足だけでがっちりレギュラーをつかむ子もいます。そういう子は、アウトキックの使い方が大変うまく、左右の足が使えない弱点を上手に補っています。
 つまり、左右の足が均等に使えるようになるのは理想ですが、それがレギュラーポジションの決定打には必ずしもならない、というのが私の考えです。
「左手でごはんを食べると左足も使えるようになる」という話を聞き、右利きである息子で試してみましたが、ほとんど効果はありませんでした。チーム練習で上記のような左右の足の練習をしてくれるのが理想ですが、無理なら公園などで自分でやるしかありません。息子さんの目的意識と、思考の柔軟性とがポイントになりそうですが、あまり無理強いせず、得意な左足のスペシャリストを目指すのもひとつの考えかと思います。



 
目に余る『がき大将』選手

 はじめてメールさせていただきます。私は小学生の少年団をコーチをしている者です。
 少年団は学年別で指導をしているのですが、上手い子と下手な子が一緒に練習メニューをこなしています。その中で上手い子がひとりだけ居るのですが、『がき大将』の性分で下手な子に罵声をあびせ、下手な子はおじけづいてしまって、益々プレーが出来なくなってしまいます。
 結果、「○○君が居るから練習したくない!」とチームから離れていってしまい、その学年は完璧定数割れ(11人集まれない)状態に…。
 父母懇親会で、本人の親御さんに相談してみたのですが、(父親がサッカー経験者)「じゃあうちの子が辞めたら良いのかぁ!」と怒鳴られる始末。練習中は、その子が罵声を浴びせたり、茶化す行動をとった時は注意して直す事は出来るのですが、普段の学校生活や、練習後の遊びの時間等にネチネチと批判攻撃をしている模様…。
 その学年は、入団式の時に15名位居たのですが、今は6名まで減ってしまいました。何か良いカンフル剤があれば教えていただきたいです。特に人数が足りなくなれば、下の学年をメンバーに補強しなくてはならないのですが、悪影響にならないか心配です。
('03.2 /苦しむ指導者)

 担当学年の明記がありませんが、もしもその子が原因でチーム人数が半分以下に減ってしまったのだとしたら、これは由々しき非常事態です。その間、他の指導者、父母会はいったい何をしていたのでしょうか?あくまで推測ですが、直接の指導者であり、そのチームをまとめるのに最も責任のあるあなたが、問題を一人で抱え込み、事態を抜き差しならない状態に追い込んでしまったような気がします。
 教師として学校所属のサッカー少年団の面倒を見ているのか、あるいはボランティアの地域コーチなのか、はたまたどこかのクラブに雇われているプロのコーチなのかで具体的な対策は微妙に異なると思いますが、どちらにしても事態は急を要します。一刻も早く手を打つべきです。「学級崩壊」という言葉がありますが、このまま事態を放置すれば、たった一人の子のせいで「チーム崩壊」につながりかねないでしょう。

 まず、信頼出来る他の指導者なり、監督なり、父母の代表なりに、事態を率直に説明し、助けを借りるべきでしょう。当人の親はほとんど期待出来そうにないですから、学校の直接の担任の力も借りる必要があると思います。とにかく、この子は日常生活が壊れているようですから、まずサッカー以前に、その日常生活から改善すべきです。
 私に相談なさった経緯から考え、あなた自身が「サッカーが強ければ何をやってもいい」とは当然考えていないはずです。その信念に確固たるものがあるなら、その子は試合では使わない(あるいはスタメンを外す)という強い方針を早くから打ち出すべきでした。いきなり使わないのではなく、まず日々の練習後のミーティングなどで、子供たち全員の前で毅然とした態度で言うのです。

「一生懸命やっている他の人の文句を言う選手は、試合に出さないよ。サッカーは一人じゃ出来ないんだから。人間は一人じや生きられないのと同じだよ」と…。

 個別にその子やその子の親に言うより、集団の場で対象を特定せずに言うほうが効果が高いと思いますし、指導者が真摯な姿勢で語りかければ、たとえ相手が子供でも、必ず真意は伝わるはずです。私は過去に何度もそのことを経験しています。
 Jリーグの得点王にもなったことのあるウィルという優秀な選手が昨年横浜マリノスにいましたが、この子と全く同じように試合中にチームメイトのプレーに執拗に文句をいい、ついには暴力まで奮ってシーズン途中で解雇されてしまった事件をご存じでしょうか。実力第一であるはずのプロでさえ、チームメイトを尊重しない選手は、使ってもらえないのです。これは大変重い事実です。

 いまからでも遅くありませんので、全指導者や父母を集めた場で、「チームメイトを尊重しないとコーチが判断した選手は、今後試合には出さない(あるいは、スタメンを外す)」という決議を、チームとしてもすべきです。もちろんその前には、先に書いた信頼出来る他の指導者や父母への、充分な根回しが不可欠です。先に書いた子供たちだけへの働きかけがもしまだ有効と判断されるなら、まずそこから入る手段もあります。
 理想はこれでその子が考え改めてくれることですが、これでも事態が改善されないケースも充分考えられます。まずその子の親が怒ってやめさせる(あるいはその子自身がやめると言い出す)場合は、そのままやめていただくのがよいでしょう。チームは一時的に弱くなるでしょうが、長い目でみれば、より健全な方向に進むでしょう。
 次に何らかの理由でチーム決議が不調に終わったりする場合です。「やっぱり○○ちゃんがいないと勝てないわ」などと、他の父母などから不満が出る可能性もなくはありません。その場合、もしも私なら、自分の信念と刺し違えてコーチをやめます。プロでもボランティアでも、自分の信念にそぐわないチームにはいるべきではないと私は思います。
 もしもあなたが教師のお立場なら、すんなりとはやめにくいでしょうが、あたりさわりのない理由を作って、なんとしてもやめるべきです。また、それくらいの覚悟で臨まないと、この問題は解決しません。

 勝利第一主義のチームが確かに存在するのと同時に、人間教育を第一に考えているチームもまた数多く存在するはずです。チームをどういう方向にもっていきたいのか、指導者にはその指針を周囲に明確に示すと同時に、それを速やかに遂行する大切な義務もまたあるはずです。