イベントライブ顛末記


JUNON・リクエストサロン 06th /2018.7.20



 近郊都市のカフェで今年2度目のライブを実施。昨年5月に初めて歌わせていただき、通算では6度目となる。
 人口の少ない地域なので、年4度ペースでのライブは集客的に難しいと思ったが、歌い手の集客ノルマはなく、先方のたっての希望なので、ありがたくお受けしている。

 いつも通り13時に家を出て、13時半にお店に着く。ドアを開けるとカウンター席に小学校時代の恩師が座っていて驚く。昨年も一度来ていただいたが、久しぶりに案内状を送っておいたので、(もしや…)と思っていたが、こんなに早い時間に来てくださるとは。
 機材搬入、設営中に近況など話したが、なんと昨年初めてお店に来て以来、よく食事に来ているのだという。数年前にご主人をなくされ、以来どこか寂しげな様子だったが、年代も近いママさんとは話が合うらしい。

 この日は最高気温が28度という暑さ。そのせいか客は少なめだった。暑すぎず寒すぎず、しかも雨が降っていない。それが理想的な集客の条件だが、そう都合よくは運ばない。
 それでも定刻14時までに15名弱の客が集まった。大半がリピーターというのも最近の傾向。14時3分にママさんの開演挨拶があり、ただちに歌い始める。前半は私のセレクションで、およそ40分で11曲を歌った。(◎はオリジナル)


「野の花や◎」
「万里の河」
「北の旅人(南こうせつ)」
「八月の宵◎」
「くちなしの花」
「アニー・ローリー」
「空に星があるように」
「別れの朝」
「恋の片道切符」
「森の記憶◎」
「マイ・ウェイ」


 前回同様にオリジナルを3曲要所で歌う。内容が近いカバー曲を続けて配置し、曲の印象が大きく外れないように配慮した。
 他の介護予防系の場と同じく、後半のリクエストが出やすくなるよう、さまざまなジャンルの曲を選択。季節感にもある程度気を配った。マンネリを避けるために選曲がややマニアックになったが、反応は決して悪くない。

 10分の休憩中に、いつも後半冒頭でコラボ演奏する常連のS子さんと簡単なリハを実施する。S子さんとのコラボも4度目なので、前奏と間奏からの入りをチェックする程度で済ませた。
 当初2曲を予定していたが、「恋はやさし野辺の花よ」はメロディに自信がないというので、「さよならの夏」の1曲だけとなる。

 14時55分くらいから後半開始。コラボ演奏を含めて、およそ45分で12曲を歌う。(※はリクエスト)


「さよならの夏」(コラボ演奏)
「恋はやさし野辺の花よ」
「時の過ぎゆくままに※」
「シクラメンのかほり※」
「Too far away ※」
「涙そうそう※」
「宗右衛門町ブルース※」
「ブンガワン・ソロ」
「学生街の喫茶店※」
「恋のバカンス」
「恋の季節※」
「りんごの木の下で」


 前半はやや大人しかった場が「時の過ぎゆくままに」を機に一気に盛り上がる。この日は喉の調子が非常によく、歌い進むにつれて場を引っ張る勢いがあった。
「恋のバカンス」で自然発生の手拍子が湧き、そのまま終了時刻を迎えたが場の気分は収まらず、この場としては初めて延長に突入。その後自然な流れから2曲をアンコールの形で歌った。

「恋のバカンス」は前日に夏の歌であることに気づき、急きょ予備曲に入れたもの。ここから「恋の季節」〜「りんごの木の下で」へと続くエンディングは予想を超える盛り上がりで収まった。
 一昨日の介護施設ライブに続けて最後に歌った「りんごの木の下で」は歌詞が前向きで暖かく、テンポもよくて元気になれる。中高年対象のフィナーレには絶好の曲だ。

 終了後も常連客を中心に30分以上も歓談が続いた。初参加の女性から、「素晴らしい歌でした」と、お捻りまでちょうだいする。
 ただ歌い、聴くだけでなく、家族のような雰囲気の中であれこれ親交を深めるのも、こじんまりした場の大切な役目であろう。

「次回はみんなで歌うコーナーもぜひ作ってください」との要望が複数あり、「瀬戸の花嫁」「いつでも夢を」の2曲が仮決定した。開催時期は流動的だが、10〜11月の土曜日が候補に挙がっている。
 回を重ねる毎にライブの有り様も少しずつ変わってゆく。場の嗜好に耳を傾け、変わることを恐れないことだ。


 

もいわしたオレンジカフェ 46th /2018.8.9



 ネット経由で依頼された遠方の認知症カフェで歌った。ウィキペディアによると「認知症カフェ」はオランダで始まった運動で、認知症の本人や気になる人、家族や地域住民、医療やケアの専門職が集まって交流を楽しむ場所、とある。

 場所は町内会館などの公的施設のほか、一般介護施設やカフェなども対象。開催は月1〜2回程度で、内容は飲食のほか、介護ガイダンスやコンサートなど多岐にわたる。公的な補助金などもあって、最近はライブ依頼が増えつつある。
 今回はカフェの別称でもある「オレンジカフェ」としての依頼で、46回目という長い歴史を持つ。会場は一般のグループホームだった。

 大半が午前中開催という特質があり、今回もその例外ではなかった。開始が10時30分ということで、9時20分に家を出た。気温が20度くらいと肌寒く、直前に衣装を長袖シャツとベストへ変更する。
 約50分で先方に到着。機材のセットはすぐに終わったが、聴き手の集まりに時間がかかり、控室でかなり待った。

 10時40分に呼ばれてステージ前に立つ。進行の方の紹介のあと、10時43分からライブ開始。アンコールなどあって、約35分で12曲を歌った。

「憧れのハワイ航路」
「二輪草」
「瀬戸の花嫁」
「知床旅情」
「幸せなら手をたたこう」
「高校三年生」
「牧場の朝」
「夜霧よ今夜も有難う」
「喜びも悲しみも幾歳月」
「恋のバカンス」
「東京ラプソディ」
〜アンコール
「月がとっても青いから」


 やや狭い会場は40名近い人であふれ、立錐の余地もない。事前にマイクテストをし、ボリュームは普段よりやや絞って正解だった。週初めから風邪の症状があったが、懸命の対策でどうにか撃退。苦手な午前中ライブの割に、声はよく出た。
 みなさん熱心に聴いてくださるが、曲間の手拍子や歓声などは皆無。「元気の出る曲を」との要望があり、おおむねそれに沿った構成にしたが、いまひとつ手応えに欠けた。しかし、1曲ごとの拍手は熱い。

 5曲目に歌った参加型の「幸せなら手をたたこう」で場内がかなり湧いたが、盛り上がりは限定的。しかし、客席から届く手応えは決して悪くないという不思議な進行が続いた。
 他方面から人が集まる関係で、聴き手相互のつながりがやや薄いという認知症カフェの特質がある。利用者だけで統一された一般介護施設とは異なり、全体が静ひつでも個のレベルでは確かに届いているのだ。

 時間通りに歌い終えたが、終了後の拍手がそのまま一気に手拍子になって止まらないという、これまた不思議な現象が起きた。
 ライブハウスなどではよくある、お決まりの「お約束アンコール」に似ているが、責任者や進行の方は全く先導していない。つまり、介護施設系では稀な「真のアンコール」なのだった。

 実は責任者の方からは事前に「もしかしたらアンコールがあるかもしれませんが、分かりません。準備だけはお願いします」と言われていた。アンコールは常に数曲を準備しているが、その「あるかも…」が起きた。

 終了後、あちこちのテーブルから「いい歌だった」とささやきあう声が耳に届いた。機材を撤収して退去する際に、責任者の方から「あまりに素晴らしいので、本当に驚きました」と労われる。
 手拍子、かけ声、歓声ばかりが聴き手の反応ではない。ステージに届く聴き手からの無言の気配こそが、真のメッセージという場合もある。


 

放送大学・第10回文化祭 /2018.9.15



 放送大学北海道学習センターの第10回文化祭ステージで歌った。知人の紹介で昨年初めて歌ったステージの評判がまずまずで、再度の依頼につながった。
(放送大学は文部科学省が設置した通信制の大学で、各種単位や学位の取得も可能。テレビやラジオ、インターネットなどで講義を受けられる)

 文化祭実行委員会は毎年変わるらしく、今年の責任者はK子さん。節目となる10回目ということで、昨年とは趣向を変えて歌詞カードを事前に配布し、聴き手も共に歌う歌声スタイルにしたいという。
 70年代に一世を風靡した歌声喫茶がブーム再燃とかで、このところこの種の依頼が多い。歌をじっくり聴いて欲しい自分のスタイルには合わない気がするが、要望があれば沿うようにしている。
 持ち時間は25分で、事前にFAXで細部を煮詰め、歌声ふうな展開に相応しい6曲を選ぶ。歌詞をA4サイズ3枚にまとめ、早めにK子さんに送った。

 直前になって記録的な大地震と大停電に見舞われたが、予定通りに実施したいとの確認がある。地震直後に4本のライブが予定されていたが、いずれも責任者の方から「ぜひ演って欲しい」との連絡があった。私のライブに限れば、地震による自粛の動きはない。

 会場は昨年と同じ北大構内にある北海道学習センター。ステージ発表は最終日の13〜17時まで実施される。
 私の出番は16時30分からで、開始45分前に到着。進行が全体的に押していて、開始が遅れそうだという。転換時間のロスを少なくするべく、事前に機材をセットして準備する。数日前の介護施設敬老会と同じ動きだが、複数の演者が出演する場合、避けられない展開だった。

 直前の落語で進行がさらに遅れ、設営に入れたのは16時40分。すでに開始予定から10分遅れている。オニのように動いて、2分で設営完了。挨拶もそこそこに歌い始めた。
 およそ20分強で7曲を歌う。


「上を向いて歩こう」
「バラが咲いた」
「時の流れに身をまかせ」
「エーデルワイス」
「夜霧よ今夜も有難う」
「青春時代」
「見上げてごらん夜の星を(リクエスト)」


 終了予定は16時55分だったが、13分で歌い終えるのはとても無理。少なくとも歌詞カード配布の6曲は歌って欲しいとK子さんはいう。事務局にかけあって、多少の遅れは構わない、とも聞かされていた。

 聴き手は25名くらいで、昨年よりやや少なめ。7割以上が男性だった昨年と異なり、男女比はほぼ同数だった。
 1曲目から場の反応はまずまず。共に歌う声も耳に届いた。歌声ふうの展開は、この場に限ってはうまく運んでいたように思える。

 無駄なMCは省き、伴奏も極力省いたが、歌詞カードを配っているので、歌詞の省略だけはしなかった。
 正味18分で6曲を無事に歌いきり、時計はちょうど17時。ラストの「青春時代」で大いに盛り上がったので、これで終了と思いきや、進行の方が1曲だけでもリクエストに応じて欲しいという。

 実はプログラムの末尾にも「リクエストを2曲ほど予定」とあった。すかさず最前列の女性から「見上げてごらん夜の星を」のリクエストが出る。(どうやら予め準備していた感じ)
 この曲の出来がかなりよく、歌詞カードがないこともあって、場がしんと静まり返る。喉は決して本調子ではなかったが、結果として歌の内容が地震で沈みがちな人々の心境を励ますように働いたように思える。

 終了後、路上ライブで知り合い、この場へとつないでくれた受講生のR子さんが近寄ってきて、「菊地さんの今日の歌、泣けました」と声をかけてくれた。その目が赤く潤んでいる。歌を介して互いに通じ合うものが確かにあったのだ。


 

元気コミュニティプラザ 歌と紙芝居の集い /2018.11.23



 イトーヨーカドー琴似店1階にある市民イベント広場「元気コミュニティプラザ」で実施されたチャリティイベントで歌った。
 企画と主催は以前から何度かご一緒している紙芝居のTさん。歌と紙芝居によるコラボイベントで、私の他に同じ紙芝居のMさんも出演する。ここでは5年前にも歌っていて、当時とは広場の名前が変わったが、位置づけは同じである。

 あいにく前夜から激しい雪が降り出し、午前中に10センチを超えた。気温もマイナス3度まで下がり、イベントとしての条件は悪い。開始は13時だったが、交通渋滞の恐れがあるので、11時40分に家を出た。
 12時20分に会場到着。トップを務めるMさんはすでにスタンバイしている。手早く機材を組み立て、12時半には準備を終えた。私の出番は13時15分で、持参のオニギリをほおばって備える。

 予定ぴったりの13時にイベント開始。午後からは晴れ間がのぞいたが、午前中の悪天候のせいで観客は少なめ。ざっと15名ほどか。
 Mさんの紙芝居「黄金バット」が予定ぴったりに終わり、ステージ横に予め組んでおいた機材を素早く中央に移動させる。後半用のリクエストスタンドも客席前に置き、13時16分から開始。前半の20分で6曲を歌う。


「ボラーレ」
「赤い花白い花」
「つぐない」
「アメイジング・グレイス」
「冬のリヴィエラ」
「見上げてごらん夜の星を」


 選曲は5年前のイベントと放送大学文化祭を参考にし、幅広い聴き手を対象にした。歌い始めると音を聞きつけて集まってくる人もいて、場の反応は悪くなかった。
 5年前にも強い手応えのあった「アメイジング・グレイス」は今回も受けた。あとで「あの歌は泣けた」と声をかけてくれた方がいたほど。クリスマス目前の時期にもピタリはまっていた。

 前半終了後に70代くらいの女性がステージに近づいてきて、「お兄さん、いい歌をありがとう!受け取っておいて」と千円札を差し出す。チャリティイベントなので投げ銭は禁止だが、近くにいたTさんが代りに受け取ってしまった。
(終了後にチャリティ用の募金箱に寄付しました)

 9分休憩して、13時45分から後半開始。この広場でリクエストを募るのは初めてだったが、用紙を手にした人は1組のカップルだけで、動きはあまりよくない。
 リクエスト用紙を持って自分で客席を回ることも時にあるが、今回は持ち時間も少なく、このカップルから出た3曲だけで進めることにした。
 21分で7曲を歌う。(※はリクエスト)


「大空と大地の中で」
「埴生の宿※」
「ありがとう※」
「ダニーボーイ」
「恋の町札幌」
「竹田の子守唄※」
「上を向いて歩こう」


 1週間前に罹った咳喘息の治療中だったが、昨日までにかなり回復し、この日は車の運転があるので薬は一切飲まずに臨んだ。
 喉の調子は80%ほど。キーは普段と同じだったが、時折咳き込みそうになるので、部分的にさぐり気味の歌唱になったきらいはある。

「竹田の子守唄」を終えて時計は14時4分。持ち時間は1分残っていたが、リクエストには全て応えたので終わろうとしたら、Tさんが指を1本立てる。そこでシングアウトとして「上を向いて歩こう」を短く切り詰めて歌った。
 14時6分に終了し、ラストのTさんによる紙芝居「恩讐の彼方に」へと移行する。終了予定時刻は14時半だったが、思いのほか熱が入って5分押し、14時35分に全イベントを終えた。

 終了後、募金箱にはかなりの額が集まっていた。いつものように、募金は札幌市社会福祉協議会に寄付される。体調面の不安を抱えていたが、私の数少ないチャリティイベント参加を今年も無事に乗り切った。


 

日曜カフェ・ポピー 04th /2018.12.23



 市内の地域カフェ(日曜カフェ)で歌った。
 認知症予防等を主目的にサロン形式で月2回開催されていて、オープンして1年半が経過した。講師として招かれるのは今回が4回目で、今年に限ると2月、6月に続いて3回目となる。
 娯楽性の強い「弾き語り」ということもあってか、他講座に比べても動員数は悪くないという。1年に3度という依頼回数の多さの背景は、おそらくそのあたりにある。

 買っていただけるのはありがたいが、どのような場でも回数が増えるとマンネリ化のリスクがつきまとう。今回は時期がクリスマスと重なって構成を絞り込みやすく、その点では恵まれていた。
 ライブの概要は事前に地域で回覧されていて、「クリスマスと愛の唄」と題し、リクエスト一覧から選ばれた8曲がプログラムとして予告されていた。

 ライブ時間は1時間30分で、前半40分を予告プログラムで構成し、休憩をはさんだ後半40分をリクエスト中心で歌うという進行が恒例だった。
 開始は前回と同じ10時。声の出にくい午前中ライブで、珍しく7時に起きた。幸いに雪も降らず、寒さもほどほど。車の流れはスムーズで、夏と変わらぬ45分で会場の町内会館に着く。

 会場が広いので、PAはいつも2台準備する。不測の事態に備え、ギターも2台持参した。機材としてはフル装備だ。
 真冬に歌うのは初めてで、日常的に使われていない町内会館は寒いことが予想されたので、タイツと裏地つきの暖かいズボンで備えた。

 開始まで40分の余裕があり、ゆっくり準備して10時ちょうどにスタート。前半は40分で11曲を歌った。(事務局の選曲に過去リクエストを加味)


「ウィンター・ワンダーランド」
「恋心」
「骨まで愛して」
「恋の片道切符」
「愛の讃歌」
「氷雨」
「地上の星」
「バラ色の人生」
「聖母たちのララバイ」
「雪國」
「クリスマス・イブ」


 喉の不安はなかったが、睡眠時間が普段よりも短かいせいか、身体がまだ半分眠っているような状態。そのせいか、声量にいまひとつ迫力がないように感じた。練習時間の蓄積が足りず、アルペジオの曲で左手の押さえが時折甘くもなる。
 やや守りの進行となったが、50名近く集まった場の反応は決して悪くなく、「恋の片道切符」では自然発生の手拍子が湧いた。特に前半でMCを長めにしたのがよかったのかもしれない。

 11曲のうち洋楽系が5曲を占めたが、クリスマスが外国のお祭りなので、ある程度はやむを得ない。
「氷雨」「雪國」はプログラムになかったが、過去2回のライブでリクエストが出ていて、歌い残した曲。「冬にちなんだ愛の唄」ということで、テーマにも沿っている。演歌なので全体のバランスをとるにも絶好だった。

 10分の休憩をはさんで後半開始。シングアウトを含め、およそ43分で12曲を歌った。(全てリクエスト)


「ワインレッドの心」
「吾亦紅」
「恋人よ」
「酒よ」
「酒と泪と男と女」
「時代」
「人生一路」
「ダニーボーイ」
「涙そうそう」
「雪が降る」
「青春時代」
「この広い野原いっぱい」(シングアウト)


 暖房がじょじょに効いてきて身体が温まり、前半に歌いこんだこともあってか、声量の不安は消えた。それに応じて、場の反応はさらによくなる。聴き手は実に正直なものだと、いつも思う。

「吾亦紅」は3名の方のリクエストが重なった。他の場でも似た傾向にあるが、この曲の人気は根強い。個人的には苦手な歌だが、聴き手の反応はなぜかよく、今回も終了後に中年男性から「あの曲で涙が流れた」と声をかけられた。
 フォーク系のリクエストが6曲と多い。演歌系は3曲で、前半に連発した洋楽系は2曲に減った。昭和歌謡系は1曲と少ない。(「吾亦紅」は演歌系とした)
 介護施設系の場ではないので、フォーク系は好まれる傾向にある。このことは頭に入れておきたい。

 いい調子で歌い進んで、ラストの「青春時代」で大団円のはずだった。ところがここで、予想外のトラブルが発生した。前奏が終わってワンフレーズ過ぎたあたりで、右手に奇妙な違和感。そう、弦が切れたのだ。しかも旋律の中心となる4弦(上から3番目)ではないか。
 予備ギターは手元に置いてあったが、運悪く時間が押していて、やり直す余裕がない。ストローク系の曲なので、5〜6弦を強めに弾くことでなんとかごまかし、ラストのリフレインも省略してそのまま歌い切った。
 最後にカフェのテーマ曲を歌詞指導しつつ歌ったが、事情を説明してすばやくギターを交換。間の悪いタイミングで弦が切れたが、ダメージは最小限で済ませた。長時間の場では、やはり予備ギターの準備が必須である。

 リクエストで歌えなかった曲は、「終着駅」「つぐない」「神田川」「今日でお別れ」「希望(岸洋子)」など。
「希望」はレパートリーになく、他は一人からの複数リクエストによるもの。リストのトップ曲には応えたで、よしとしたい。

 この日は午後からも自宅近くのグループホームで歌うことになっていた。移動には50分をみておく必要があり、終了後ただちに撤収作業に励んでいたら、こんな日に限って何名もの方が近寄ってきて声をかけてくれた。
 内訳は女性1名男性4名で、普段と全く逆の傾向。聴き手全体としては圧倒的に女性優位だったが、こんなこともある。
 ある男性からは「とてもセクシーな歌でした」と、声をかけられた。実は「セクシーに歌う」ことは日頃から心密かな目標にしていたが、期せずして声をかけられたのは今回が初めて。私にとってはうれしい賛辞なのだった。

 あれやこれや応じているうちに時間がどんどん過ぎ去り、次なる場をめざして出発できたのは12時ちょうど。「午後のなるべく早い時間に」という要望に応えるべく、空腹を抱えつつも事故を起こさぬよう、慎重に車を走らせた。


 

あけぼの本町町内会・老人クラブ誕生会 /2019.3.28



 札幌南部にある町内会老人クラブの誕生会ゲストとして歌った。このところ多いネット経由での依頼で、以前に何度か歌った町内会に近く、よく知っている場所だった。
 開始は11時。苦手の午前中ライブで、早めに起きて備える。車で1時間弱はかかり、初めての場でもあるので、9時15分に家を出た。

 前回開拓した豊平川右岸の道が空いているはずだったが、平日午前中のせいか渋滞が激しい。10時10分に会場となる町内会館に着いたが、時間的には少し早すぎて、車の中で30分ほど時間をつぶす。
 10時45分くらいに呼ばれて、ゆっくり設営。事前に頼まれていた8曲分の歌詞カード原稿を渡し、必要分のコピーをとってもらう。

 会場には高さ15センチほどの立派なステージがあったが、客席との距離が遠くなるので、聴き手と同じレベルの床に立って歌うことにする。
 時間ちょうどの11時に始まり、およそ50分で17曲を歌った。
(※は歌詞カード配布曲)

「春一番」
「二輪草」※
「瀬戸の花嫁」※
「二人は若い」※
「宗谷岬」
「高校三年生」※
「君恋し」
「お座敷小唄」
「上を向いて歩こう」※
「リンゴの唄」※
「青い山脈」(伴奏のみ)※
「バラが咲いた」※
「真室川音頭」※
「つぐない」
「リンゴの唄」(伴奏のみ)※
「幸せなら手をたたこう」
「浪花節だよ人生は」


 聴き手は30名くらい。男女比は4:6ほどで、女性がやや多い。平日の午前だが、テーブルにはアルコールの瓶や缶が並び、つまりは苦手な宴会余興である。奇しくも苦手がふたつも重なった。
 特に宴会余興は苦戦した記憶しかなく、過去のライブ記録を入念に分析し、選曲と曲順は練りに練った。

 イベント開始から45分が経過し、場は飲食の真っ最中。この時間帯に手拍子や掛け声等で聴き手の参加をうながす曲は避けたほうが無難なので、前半は単純に聴いてもらうだけの調子のよい曲を並べた。
 それでも間奏や終了後の拍手は熱く、手応えそのものは決して悪くない。「高校三年生」では歌詞カードを見ながら歌う多くの声が耳に届いた。

 中盤の「お座敷小唄」からじょじょに聴き手の参加を促す趣向にしたが、この目論見はおおむね当たり、10曲目の「リンゴの唄」を歌い終えると、会場から「《青い山脈》をギター伴奏でぜひ歌いたい」という声が上がる。
 町内会イベントでよくあるパターンで、ただちにマイクを渡し、私はギター伴奏に徹する。後半にも「リンゴの唄」で同じ声が上がった。

 場は尻上がりに盛り上がり、前半は単純に聴いてもらい、後半に参加してもらう、という苦心の構成は成功だった。

「幸せなら手をたたこう」を歌い終えた時点で担当のFさんから「あと1曲で終わってください」との要望が出る。ラストは少し迷ったが、テンポが少し早すぎて手拍子が打ちにくかったきらいがある。「月がとっても青いから」あたりが正解だったか。
 選曲で唯一外したのは「つぐない」。酒が回った時間帯にしては、曲調が暗すぎた。ここは明るめの唱歌か民謡にするべきだった。

 終了後、多くの方がそばに来て労ってくれた。特に最前列で熱心に聴いていた高齢の女性は、実は目が不自由だそうで、「これまでの余興で最高でした。また呼んでくれるよう、役員会に頼んでおきます」と両手を固く握り、なかなか離そうとしない。
 陽気の変動が激しく、寒い中で車庫解体作業を繰り返したせいか、喉の調子はいまひとつだったが、苦手な酒席を上手にさばく、という課題の克服には、一筋の光を見た気がする。