イベントライブ顛末記


ほのぼの豆ライブ vol.5 /2013.6.16



 毎月第3日曜日に定例開催されている近隣のカフェライブに、先月に引き続き参加。自宅から車で15分ほどで、参加費不要ワンオーダーのみのシステムがありがたい。
 開始15分前に着いたが、店にいる客は2人のみ。前回も似たようなものだったので、珈琲を飲みつつ、マスターと雑談して時間をつぶす。

 開始予定を1時間過ぎて、ようやくコズエさんがやってきたが、風邪で喉をつぶしてしまい、今日は歌えないとのこと。ほどなくして最初からいた2人が帰ってしまう。
 今日はライブなしで、音楽談義で終わりか?まあ、歌ナシでもそれなりに楽しいのでそれもいいか、と思い始めた矢先、常連のカッパさんが遅れて登場。

 16時30分になって、ようやく始めようかとなったが、体調が悪いというコズエさんがここで退出。残った3人で始めることになり、来た順で私が最初に歌い始めたら、1曲目の途中で2人の見知らぬ女性(母子)がやってくる。
 この方は近所の実家にやってきて、たまたま道端で知り合いのカッパさんを見かけたという。かなりの偶然だが、こんなこともあるのが人生だ。

 この日は以下の3曲を歌った。


「Let it be」(洋楽POPS・オリジナル訳詞)
「誰も知らない夜」(フォーク系オリジナル)
「男と女のお話」(昭和歌謡)


 いつものようにPAなしの生歌で、カウンターの席に座ったまま歌った。(3曲目のみ立って歌う)これといった冒険はしていないので、まあ普通の出来である。それでも人前で歌うことに変わりはなく、程よい緊張感が「歌う感覚」を維持するのには効果的。
 あえて収穫と言うなら、3曲目の「男と女のお話」を譜面を見ずに歌えたことか。実は「Let it be」も、ほぼ譜面なしで歌えている。先月、同じ場で話題になった暗譜、やる気になればそれなりにやれることが分かった。進歩といえば進歩と言える。

 その後、母子連れで突然やってきたナオミさんを含めた3人の歌が休みなく続き、18時30分で一段落。店は20時まで開けているということだったが、私はその時点で帰ってきた。
 入退出も自由なシステムだが、「開演前に入店し、歌い手が一巡するまで見届ける」が、この種のオープンマイク形式の場における暗黙の礼儀ではないかと、自分では思っている。

 来客の延べ人数は7人、歌い手はオーナーを含めて4人という結末で、発展途上のカフェ定例ライブ、定着するにはまだまだ時間が必要のようだが、「ゆるくて勝手気まま」という音楽本来の楽しみは、ちゃんと保たれているのだった。


 

スポカル2013 inつどーむ /2013.6.23



 自宅近くのスポーツ交流施設「つどーむ」で実施された
「スポカル2013 inつどーむ」というイベントのステージ部門に出演した。今年2月の雪まつりに、同じ会場で行われた東日本大震災復興支援系イベントに出演したが、それが縁で声をかけていただいた。

 今回は「スポーツやカルチャーを通して国際交流を」という体験型イベントで、被災地復興支援とは直接関係がない。しかし、声をかけていただくこと自体が歌い手としてはありがたいことなので、慎んでお受けした。

 前日までの肌寒い天気がウソのように晴れ上がり、絶好の日和。しかし、あくまで屋内イベントなので、人出は行楽地に流れて逆に少ないかもしれない…、との懸念が走った。

 ステージ開始は13時35分からだったが、事前に繰り広げられていた空手等のスポーツイベントではそれなりだった観客も、いざステージが始まると激減した。
 音楽はジャンルとしては「カルチャー」の部類に属するが、会場を圧倒的に席巻しているのはスポーツ系イベントに対する参加者で、カルチャー系イベントやブースは、おしなべて苦戦していた。

 出場全5組のうち、沖縄三線の弾き語りユニット、カホン&ピアノのユニットと続き、3番目が私の出番。事前に15分の調整時間が設けられていたが、全体の進行が遅れ、調整時間をすっ飛ばしてただちに歌うことが決まる。
 開始はさらに遅れて14時40分から。当初の予定では短い曲を6曲歌うつもりでいたが、直前の判断でラストのオリジナル曲を省略することにした。
(カバー曲は事前にジャスラックに届出を出していたので、カットしにくい状況)
 その見返りとして、オリジナル訳詞の「ヘイ・ジュード」をフルコーラス歌うことに。結果としておよそ16分で以下の5曲を歌った。


「恋する夏の日」(昭和歌謡)
「思い出のグリーングラス」(カントリー)
「サクラ咲く」(フォーク系オリジナル)
「時計台の鐘」(日本唱歌)
「ヘイ・ジュード」(洋楽POPS・オリジナル訳詞)


 進行では多少もたついたが、この日の音響は素晴らしく、客席でもステージでも非常にいい感じで音が響いていた。聴き手は20名足らずと寂しかったが、それを吹き飛ばすように気持ちよく歌えた。
 国際交流イベントのふれこみだったので、MCも英語版を用意していったが、ステージ前に外国人の姿は見えず、日本語だけで進行。構成にも腐心したが、こちらも空振りに終わった。
(他のスポーツコーナーでは外国人を目撃、とは同行した妻の証言)

 この種の準備や思惑が外れることはよくある。ただ、「時計台の鐘」の歌詞の一部を英訳して歌うという趣向は、特に説明なしでそのまま実行した。
「日本語のよく知られた曲を、あえて英訳して歌う」という新しい試み、いつかまた別の場でやってみたい。

 これといったミスもなく無難に終え、ただちに次のフォーク系ユニットに場を引き継ぐ。実はこの男女ユニット「エイプリル」は、数年前から介護施設その他でよく出会う音楽仲間である。
 リーダーのゆきさんが介護施設に勤務していて、ボランティア活動全般に理解が深い。叙情的な選曲が多いが、あくまで女性ボーカルが中心で、私の娘に世代が近く、「世界観は似ているが、ちょっと毛色が異なる」という存在だ。

 当初の出演者に欠員が出てしまい、いろいろな経緯から、私の推薦で出ていただくことになった。過去に各種大規模イベントへの出演実績もあり、ネットで歌唱も確認可能なので特に音源審査もなく、すんなり出演OKとなった。
 このあたりは昨年、近隣の地区センター夏祭りステージに出演していただいた経緯と酷似している。縁とはそういうものだろう。

 ステージを客席でゆっくり聴かせてもらったが、ユーミンや中島みゆき、ドリカムやスピッツのよく知られた曲を巧みにこなし、ギター伴奏のTackさんは完全暗譜で、抜群のテクニックを披露。責任者の方にも喜んでいただいた。縁がさらに広がりそうな気配。

 客席は少し寂しかったが、よい時間を過ごせたことは確か。「会場でのオリジナルCD販売OK」とのことで、あまり期待せずに並べておいたら、思いがけずどなたかが1枚買ってくださった。確かに届いていたらしい。ありがとうございます。

 一日経って責任者の方からお礼メールがさっそく届き、CDが売れたいきさつなどが明らかになった。
(もしや関係者のどなたかが買ってくれたのでは…?)とも思っていたが、(それはそれで有難いが)ステージ前で聴いていた見知らぬ方が「あの方の歌はよかった」と買ってくれたのだという。
 我がCDを無理に売りさばく気はまるでなく、ライブのMCで全くふれないこともある。目の前で歌を聴いてくださった方に、自然な流れで買っていただくのがベストだと思っているし、それは見知らぬどなたかでなくてはいけない。そんな思いにぴったり沿う流れで買っていただけたことを、素直に喜びたい。

 そのスポカル、早くも来年の出演依頼が舞い込んだ。すでに期日も決まっているそうで、何とも手回しがいい。実質的運営母体は札幌市なので、完全ノーギャラ手弁当なのだが、それでも出たい人は多数いて、紹介したエイプリルさんも大変喜んでいた。
 今年でおよその様子はつかんだので、来年はもう少し実体に合わせた構成としたい。国際交流は特に意識せず、普通のお祭り系イベントと考えてよさそうだ。


 

百合が原・青空コンサート /2013.7.13



 近隣の大規模公園で実施された「百合が原・青空コンサート」に出演した。依頼は東日本大震災被災地支援系の市民団体「ふるさとを歌う会in札幌」経由でやってきた。たまたま場所が自宅から徒歩20分、四季折々散策に訪れる地なので、一も二もなくお受けした。

 実はこの公園ではちょうど4年前に「百合が原 "森の七つの椅子"」と題したインスタレーション型企画ライブを仕掛けている。さらには、5月末に実施された今年最初の青空コンサートも見届けている。徒歩圏ということもあるが、なにかと縁があるのだ。

 数日前までは雨の予報だったが、抜けるような青空が広がって絶好の日和。13時ちょうどに公園に到着。駐車場から機材を積んだカートを引き、会場となる北東の東屋へと向かう。

 予定では東屋を背にし、芝生を客席とみなして歌うことになっていたが、近づくとステージは東屋裏の林間に設営されていた。30度に迫る暑さということで、急きょステージと客席を変更したのだという。
 さらには、打合せにはなかった立派なPAも設置されている。近隣のモエレ沼公園の設備が、前日ぎりぎりになって借りられたらしい。「PAなし、電源なし」の条件は事前に知らされていて、どうにか発電機だけは用意していただいたが、PAは各自が準備することになっていた。

 ともあれ、嬉しい誤算だった。挨拶もそこそこに、マイクスタンドと電子譜面台をセット。ギターのライン入力もOKで、15分ほどでリハーサルを終える。
 本番前には帰ってしまったが、公園内に集団できていた幼稚園児が、リハで歌った「チキ・チキ・バン・バン」に合わせ、一緒に踊ってくれた。他の人々もリハの段階で盛大な拍手。「まだ練習です。本番は14時からです」と、あわてて案内をしたほど。

 13時20分くらいに岩見沢からキーボード演奏の高柳佳代子さん、由仁から鼻笛&ノコギリ演奏の互久楽さんが到着。モニターやマイク本数の件でちょっと手間取ったが、開始10分前には全ての準備を終えた。

 14時ちょうどにコンサート開始。マイクテストの段階から公園のあちこちから人々が集まってきて、開始時にはすでに100名を超えていた。駐車場からの順路要所に「青空コンサート14〜15時」と、矢印つきの立看板が予め準備され、好天や大型PAの準備と相まって、人が集まりやすい条件が整っていた。
 高柳さんの演奏が予定より少し早く、14分で終わる。素早く転換し、予定より8分も早い14時15分から歌い始めた。

「老若男女むけの癒し系の曲を」と、事前に公園側から要請があり、告知ポスターにも「優しいひと時をお届けします」と明確に記されていた。その路線に沿いつつ、さらには「百合が原公園」「青空」を意識して、花やアウトドア系の曲を中心に構成。以下の6曲を歌った。


「おおブレネリ」
「さんぽ(となりのトトロ)」
「バラが咲いた」
「草原の輝き」
「エーデルワイス」
「チキ・チキ・バン・バン」


 1曲目はMCなしの無伴奏で「ヤッホ〜」からいきなり入るという趣向。いわば歌による挨拶だ。アウトドア系の明るいスイス民謡なので、場にも充分なじむ。終了後に自己紹介し、2曲目以降はMCで公園と曲とのからみを説明しつつ、歌い進んだ。

「さんぽ」では公園内のウォーキングコースについてふれ、「バラが咲いた」では同じく公園内で満開状態のバラ園についてふれ、さらには「介護施設系でも人気のある歌です」と年に10数回やっている介護施設系の活動についても話した。バラ園に関する案内はタイムリーだったらしく、私の出番後にメイン進行の方も取り上げてくれた。
 この日唯一の昭和歌謡「草原の輝き」では、チカチカパフォーマンスの活動についてふれ、「エーデルワイス」はバラに続く叙情的な花の歌であること、「チキ・チキ・バン・バン」では5月末に同じ公園で実施された今年1回目の青空コンサートで道警音楽隊の演奏を聞き、さっそく覚えたことなどを披露。短い時間のなかで、伝えるべきことは過不足なく伝えた。

 歌と共に聴き手はさらに数を増し、東屋内は座りきれずに立ち見状態となる。あふれた人々は左右の芝生に座って聴いていたが、自生する大木が程よい木陰を作ってくれて、時折吹く風が心地よい。
 あとで知らされたが、公園側の正式カウントによると、聴き手は200人を超えていたという。(集客数を市に報告するため、イベント毎に正確に数えると思われる)

 人数の割に聴き手は押しなべておとなしく、歌っていて不安になるほどだった。モニタースピーカーがなく、自分の声が確認できないことも不安に拍車をかけた。
 ただ、歌い終わると1曲毎に静かだが確かな拍手をいただけたので、届いてたのは間違いない。この地区では介護施設や地区センターなどでも数多く歌っているが、どの会場でも似たような反応である。それが地域の特徴なのだろう。

 予定ぴたりの17分で終了。写真を撮ろうと東屋の背面に回ったら、2家族いた外国人グループの中の子供が目ざとく見つけ、手を振ってくれた。偶然だが、構成の中に洋楽を3曲入れたのがよかったのかもしれない。特に「チキ・チキ・バン・バン」は効いていたようで、終了後に別の方からも「あれ、よかったですね」と声をかけられた。
 最近になって分かったが、この種の場では、ある程度洋楽系の曲を混ぜることも大事である。

 14時35分からラストの互久楽さんの演奏となる。ところがあまりに進行がスムーズに進みすぎ、14時55分に予定分が終わってしまった。
 早めに終わるのかと思いきや、互久楽さん咄嗟の判断で、予定にない2曲を追加演奏。ぴったり15時に終了した。さすがである。

 予想外の暑さで急きょ場所を移動し、「青空コンサート」というよりも「木漏れ日コンサート」といった感じになったが、途中で立ち去る市民がほとんどいなかったのが、演奏者としては何より嬉しい。
 私自身の喉は決して万全とは言えない状態だったが、公園側にも大変喜んでいただいた。東屋の中に設置されたアンケート箱に投入された市民の生の声も、高評価だったとか。少人数の演奏でも条件さえ整えば、それなりに演れるという自信になった。


(写真は百合が原公園公式サイトより)


 

トライアングル広場・なつかしき集い /2013.8.4



 隣区にある総合スーパー、イトーヨーカドー琴似店で催されたイベント「なつかしき集い」に出演した。依頼はボランティア仲間のTさんからで、区の街づくりイベントの一環として自身の紙芝居と私の弾き語りとを一緒にしたコラボ企画である。
 この1年で同様の企画イベントに2度参加しているが、今回はTさんの古希祝いも兼ねている。「70歳の節目に何か記憶に残るものを」との話に、喜んで協力することにした。

 場所は「トライアングル広場」と称する街づくり交流広場。区に事前申請をし、街づくり活動としての諸条件をクリアすると利用可能となる。

 この日は100Vポータブル電源を初めて実戦で試す予定だったが、広場の上は3階まで吹き抜けになっていて、かなりの大空間である。事前のマイクテストでの音の感じは悪くない。何とかやれそうだった。
 開演前からすでに10人くらいの人が集まっていた。広場前には店側で用意してくれたらしい立派なイーゼル式の告知看板が設置されていて、その効果もあったように思える。

 定刻13時から開始。最初はTさんの紙芝居「黄金バット」で、聴き手は25〜30人といったところ。特に事前告知をしなかった割には、まずまずの入りだった。

 いつものようにTさんはノーマイクで朗々と演じていたが、佳境にさしかかった頃、予期せぬことが起きた。効果音で使っていた手持ち太鼓を叩くバチが、真っ二つに折れてしまったのだ。
 このバチがなぜか枯れ枝。紙芝居に市販のバチは似合わないと、いつも枯れ枝を使っているそうだが、この日はそれが裏目に出た。
 最後尾で観ていた私は「あっ、折れた」とのTさんの言葉で異変に気づいたが、バチの予備はなく、もはや太鼓は使えない状態。あとで知ったが、このハプニングでTさんは動揺し、すっかりペースを乱してしまったという。

 打合せでは30分の持ち時間のはずが、半分の15分で終了。折れたバチが影響していたことは明らかで、急きょ私が舞台に上り、13時15分から歌い始める。
 スーパー店内の舞台で歌うのは全く初めての経験で、何をどう歌うべきか、まるで見当がつかない。ディサービス系やチカチカパフォーマンスの構成をベースに、聴き手の状況によっては地域祭り系の曲をいつでも歌えるよう、フレキシブルな体勢で臨んだ。
 結果として、およそ30分で以下の9曲を歌った。


「恋のバカンス」
「バラが咲いた」
「真赤な太陽」
「涙そうそう」
「北の旅人」
「カントリー・ロード」
「年下の男の子」
「アメイジング・グレイス」
「ブルーライトヨコハマ」


 心配していた音に関しては、大きな問題がなかった。ややギターの音が弱い感じがしたが、ボーカルの響きが抜群によい。ギターの音はあえていじらず、ボーカル中心で歌い進んだ。

 クセのない曲をそろえたこともあってか、歌い終えるたびに静かだが、確かで長い拍手をいただいた。あまりの拍手の長さに、「ありがとうございます」と2度繰り返すシーンが数回あったほど。子供や若い方の姿がなく、状況次第では歌うつもりでいた「ハナミズキ」「さんぽ」などは結局歌わずじまい。

 前回のチカチカパフォーマンスで初披露し、強い手応えのあった「アメイジング・グレイス」をこの日もラスト前に歌ったが、店のあちこちから音を聞きつけた人が集まってきて、座席の後部に数人の立ち見が出た。
 理由ははっきりしないが、この曲はとにかく強い。高音部の聞かせどころが、自分に合っているのかもしれない。しかし、その分非常に消耗する曲なので、扱いは難しい。

 ラストの「ブルーライトヨコハマ」では、期せずして会場から手拍子が飛び出す。この種の場で手拍子が自然に出れば、まずは成功と評価していい。

 第3ステージは再びTさんの紙芝居で、この日が初披露の民話「うづら」。人情系の紙芝居はTさんの得意ジャンルで、熱演に会場は静まり返る。あとで聞くと一部セリフを忘れたそうだが、すべて咄嗟のアドリブで乗り切ったという。ラストには自分で作ったというわらべ唄まで入っていた。

 少し早めの14時15分に終了。広場に常設のブロンズ前で並んで記念写真を撮る。詳しくは書けないが、いろいろと重いものを背負いつつも、こうして精力的に社会活動を続けるTさんである。
「人生、いつでも挑戦できます」と、第3ステージ冒頭でもふれていたが、よいお手本に今後もさせていただこうと思う。そして自分自身も、若い人の手本になるような人生を歩んでいくことだ。口幅ったいが、そんなことを感じた。

 ライブが終わって数日後、お礼と報告のハガキが、主催のTさんから届いた。それによると、座席後方の案内板横に置かれた募金箱には、4,286円のお金が入っていたという。
 募金の主旨は「区の福祉・文化振興」で、募金箱を置くことは事前に私も聞かされていたし、お店の担当者の了解も得ていた。今回の企画は街づくりイベントである一方で、実はささやかなチャリティイベントでもあったのだ。

《ボランティア募金》「集まったお金はまとめて区役所に届け、後日区役所内の掲示板にて金額を発表します。〜出演者一同」
 と明記してあった。

 募金箱にはTさんの住所氏名もあり、責任体制も明確。しかし、第1ステージ終了時点では、募金箱の中はカラ。募金箱は古いアイロン箱を転用したような手製の完全オープン式だったが、いわゆる「見せ金」も入れてなく、チャリティの難しさを予感させた。

 これまで介護施設訪問ライブを始め、被災地支援ライブへの出演など、ボランティア的なライブには多数参加してはいるが、会場の片隅に募金箱を置く「チャリティライブ」への参加は一度もない。
 30分の持ち時間でも特に募金についてはふれなかったが、自分がこれまでやってきた社会活動については、曲紹介にからめて少しだけ話した。

 自分のステージが終わり、再度募金箱を確かめに行ってみると、いつの間にかかなりのお金が投げ込まれている。お金が全く見えないタイプの募金箱もよく見かけるが、完全オープンの募金箱は逆に共感を呼びやすいのかもしれない。

 第3ステージ終了後にTさんから、「菊地さん、3千円は軽く超えてるよ」との報告はあったが、実際には4千円を超えていた。すべて硬貨で、会場を去り際に投げ入れていった方が多かったのかもしれない。
 多少の出入りはあったので、聴き手の総数は延べ40人といったところか。他に経験がないのでよく分からないが、出演者2人、出演時間1時間15分という小規模イベントの割には、随分集まったような気がする。

 募金なので自分のお金ではないが、予想外の手応えがあると、正直うれしい。自分の活動の励みにもなるというもの。
 箱の準備や集計、そして区への届出など、今回はすべて主催のTさんに甘えてしまったが、またこのような機会があれば、喜んで協力したいと思う。


 

たんぽぽ福祉の会・サロンde旬 /2013.8.29



 地域の社会福祉協議会が主催する「認知症勉強会」の余興に出演。依頼はかなり前に妻の職場の友人経由でやってきた。同じ社福協からは、敬老会余興のシングアウト伴奏としても毎年招かれている。
 場所は近隣の街づくりセンター。地区センターに似た地域住民のための公的施設である。先月末にスタッフとの顔合わせをかねた会場下見は済ませてあり、選曲や歌う順番まで、事前調整もほぼ完璧に終わっていた。

 介護施設系では歌う機会のない「ケ・セラ・セラ」「つぐない」「青春時代」、さらには私のオリジナルまで歌わせていただけることになり、対象は中高年だったが、ひと味違ったライブになる予感があった。
 唯一の不安はライブの開始時間。私の苦手な午前中ライブである。以前に別の午前中ライブで喉の不調から声を切らしてしまった苦い経験があり、早めに起きるのはもちろん、普段よりも入念に自宅リハを実施して備えた。

 固い内容の講義ばかりでは息苦しいので、毎回この種の余興を最後に入れて、場を和らげる工夫をしているらしい。地域ではこのようにして、さまざまな住民活動が実施されているのだ。
 10時半に先方に着いたが、講義の終了が少し遅れて11時20分からライブ開始。この日のセットリストは以下の12曲。


「憧れのハワイ航路」
「バラが咲いた」
「ソーラン節」
「サン・トワ・マミー」
「月の沙漠」
「幸せなら手をたたこう」
「サクラ咲く(オリジナル)」
「つぐない」
「瀬戸の花嫁」
「ケ・セラ・セラ」
「ここに幸あり」
「青春時代」


 介護施設系ライブの夏メニューをベースに、チカチカパフォーマンスで評判のいい曲を随所に入れた構成で、手応えは非常によかった。この地区では全般的に叙情的な歌が好まれる傾向があり、その基本線も崩していない。

 聴き手はおよそ30名。心配していた喉は調整が成功し、何ら問題なく歌えた。反応がとてもよいので、普段は一部を省略して歌う「月の沙漠」「つぐない」も珍しくフルコーラス歌った。そのせいで、いつもより時間がかかってしまい、最後の曲を歌い終えた時点で40分が経過。時計はちょうど12時を指している。

 ラストの「青春時代」を歌っている真っ最中、担当のKさんが目の前で白い紙をヒラヒラと振っている。一瞬(何だろう…)と歌いながら思ったが、指差す先をよく見ると、鉛筆で「アンコールやれますか?」との走り書きが。
 思わず歌いながらうなずいたが、さすがにライブ中に紙でアンコールを打診されたのは、初めての経験。あとで確かめると、残り少なくなった時点で(ぜひアンコールを)とのささやきがいくつかあり、いきなり出すとまずいかもしれないので、さり気なく確かめて…、との指示が責任者の方からあったとか。
 抜け落ちがないよう、事前にあれこれ詰めたつもりでいたが、アンコールまでは気が回らず、そもそも歌う側からは出しにくい話題である。

 何とも不思議な「事前空気調整型アンコール」ではあったが、いくつかある候補曲から何を歌うべきか、会場の方に直接尋ねてみた。「新しい曲、古い曲、どちらがよいでしょう?」と。
 すると一斉に「新しい曲〜♪」との声。ちょっと意外な反応だったが、準備してあった「少年時代」をありがたく歌わせてもらう。

 終了後に多くの方から労いの言葉をいただいたが、「南こうせつは歌わないのですか?」と、ある方に問われた。「こうせつ演りませんか?」「ふきのとうは歌います?」は、あちこちでよくかけられる声だが、次回もし機会があればと、リクエストとしていただく。
 妻の友人の紹介ということで、普段とは違う緊張感もあったが、喜んでもらえたと思う。


 

たんぽぽ福祉の会・秋旬の会 /2013.10.19



 地域の社福協支部が主催する中高年対象のアートサロンイベントに参加。実は同じ組織からは、8月末の認知症勉強会余興にも招かれて歌っている。そのわずか50日後となる出演依頼で、さすがに間隔が短すぎる。
 前回の手応えは決して悪いものではなかったが、同じ場で続けざまのライブは禁物であることは、過去の例から思い知っている。打診のあった当初は、丁重にお断りするつもりでいた。
 しかし、予定していた別の出演者に突然のキャンセルがあったとかで、ぜひにとの要望である。幸いに季節は夏から秋へと切り替わっていたので、全曲を差し替えることを前提に受諾した。

 悪条件がもうひとつあり、前回は11時20分開始だったが、今回は1時間以上も早い10時開始。3組の出演者の一番手で、苦手な午前中ライブ。あくまでピンチヒッターなので、順番は動かせない。

 私にしては早朝の7時に起きて備える。9時頃から簡単なリハーサルをしたが、声はまずまず出た。
 予定ぴったりにイベントは始まったが、代表者の挨拶がまずあって、歌が始まったのは10時8分あたりから。聴き手はおよそ30名。予め提出してあったプログラムに従い、42分で以下の12曲を歌った。

「ろくでなし(シャンソン)」
「サンタルチア(カンツォーネ)」
「風来坊(フォーク)」
「秋の童謡メドレー:夕焼け小焼け・紅葉・赤とんぼ」
「星影のワルツ(昭和歌謡)」
「Let it be(ビートルズ、オリジナル訳詞)」
「空港(昭和歌謡)」
「抱きしめて(オリジナル)」
「ラ・ノビア(ラテン)」
「かなりや(日本唱歌)」
「夢一夜(フォーク)」
「また逢う日まで(昭和歌謡)」


 担当のKさんからは「芸術の秋を多少意識した内容で」との注文があったので、普段この種の場では歌わない洋楽系の曲もかなり入れた。リスト提出時にはカッコ書きで曲のジャンルも付記したが、そのままプログラムにも反映されていた。

 喉の調子は決して悪くはなかったが、歌い進んでも前回に比べていまひとつ場の乗りが悪い印象がした。
 理由として、やはりライブの間隔が短すぎたこと、さらにはイベントを実質的に指揮し、進行も一手に引き受けていた担当のKさんが、やむを得ない事情で突然の欠席。「周りから場を上手に乗せる」という点では、多少物足りなさがあったように思える。
 さらには、昼食用の豚汁の準備等で、ライブ中にかなり人の出入りがあったこと。全体として落ち着かないざわついた気分はあった。洋楽系やフォーク系の曲が、特に年齢の高い層には馴染まない面もあったかもしれない。

 歌自体は大きなミスなく進んだが、「Let it be」をワンフレーズ歌っているとき、カポが前曲の「星影のワルツ」のままであることに気づく。「Let it be」にカポは不要で、このままではサビの部分がギリギリである。声が出にくい午前中ライブというリスクもあり、途中で歌を中断して「キーを間違えました」と、率直に詫びて歌い直した。
 以前に一度だけチカチカパフォーマンスで同じミスをやらかしたことがあるが、やはりどこかで集中力が欠落していたのだろう。
 聴き手も実に正直で、この日のアンコールはなかった。最低限の義理は果たせたが、いろいろと難しい条件が重なっていて、反省点の多いライブであった。