イベントライブ顛末記


チカチカパフォーマンス 第4期オーディション/2013.3.24



 第4期チカチカパフォーマー・オーディションに参加。この半年間で13回のパフォーマンスを実施し、最低ノルマの4回は大きく超えた。無条件で更新となる権利をすでに得ているが、一般パフォーマンス終了後にゲストとして出演することになった。
 早めに出て母の暮らす施設にちょっと顔を出し、その後会場へと向かう。16時半に妻と合流。すでに14時から始まっていて、今回は15組のパフォーマーがエントリーしていた。

 私の出番は15組が終わった17時以降で、審査中の場をつなぐ役だ。私以外にジャグリングの弥勒さん、ミスターきくちさんも参加したが、私は2番目。持ち時間は10分なので、少し前にPAや司会進行の方と簡単な打合せ。入れ換えのロスタイムを最小にするべく、機材を完全に組み立ててスタンバイする。

 少し遅れて、17時27分から開始。半年間の活動を総括するべく、短いが親しみのある3曲を選び、曲調のメリハリにも充分配慮した。


「ろくでなし」(シャンソンをリズミカルなストロークで)
「かなりや」(叙情歌をしっとりとアルペジオで)
「ブルーライト・ヨコハマ」(昭和歌謡を楽しいアップテンポ調で)


 持ち時間が少ないのでMCはごく短めにしたが、最低限のメッセージは伝えた。聴き手は100名ほどだったが、幸いに途中で席を立つ動きはなく、みなさんじっと聴いてくださった。

 モニターがないので、いつものようにおよその勘で歌ったが、客席にいた妻によると、声はよく通っていたそうだ。ラストの曲では自然発生的な手拍子も飛び出し、場の反応はまずまずだったと思う。熱心に聴いてくれる方には、歌いながら目で挨拶を交わすことも忘れなかった。
(以前は歌うのが精一杯だったが、最近はたいての場でこれが出来るようになった)
 ラストの曲では、リズムに合わせてギターのネックを小さく振る。これまた最近ときどきやる技で、場を乗せる効果がある。少しずつだが、確かに進歩している。

 自宅での練習通り、9分で終了。この日が初披露の新ステージネーム「菊地トムノ」も司会者や進行表、自分の看板などで公開されたが、普通に場に馴染んでいて、ちょっと安心した。
 しばらくして審査の結果が委員長から発表されたが、合格者は15組中9組、合格率60%という、過去最低の厳しさだった。別の場で知り合った音楽仲間も今回受けていたが、残念ながら落ちていた。歌唱力や独創性は抜群の方で、合格は固いと思っていたので、びっくりした。
 音楽系パフォーマーは5組受けたが、合格は継続の2組のみ。新規受験者は全員不合格という、相変わらずのハードルの高さである。

 講評によると、一定レベル以上のパフォーマンス・スキルは当然必要だが、それだけではダメで、通りを往く人々を立ち止まらせて近寄らせ、さらには投げ銭のひとつも置いてゆこうか…、(音楽系ならCDの1枚も買おうか…)という気にさせるような芸、これが審査の基準だったそう。
 過去3回のオーディションには全て立ち会っているが、審査基準が次第に厳しくなりつつある印象がする。私は第1回に受けて合格し、その後の実績を積み重ねて更新を続けている立場だが、早めに受けておいてよかった…、と正直思った。

 審査基準を噛み砕くと、ある種のサービス精神が芸には必要、ということではないか。
「たとえば人を引き付ける話術とか、客を芸に巻き込む進行とか…」と、審査委員長は具体例を挙げていた。
 サービス精神に関しては、過去にも何度かブログでふれている。ジャグラーの方はそのあたりのさばきが非常に巧みで、アドリブもうまい。音楽系パフォーマーは歌や楽器にこだわりがちで、聴き手とのコミュニケーションはおしなべて不得手。登録パフォーマーに音楽系が極端に少ない所以か。
 私もその例外ではなく、MCはあまりやらずに、もっぱら曲の構成や衣装で不足分を補っているのが現状だ。聴き手を引きつけるMCを、もう少し考えなくてはいけない。

 歌以外の要素に必要以上に気配りするのは邪道、という考えもあろう。しかし、そこにこそ通りすがりの人々を対象としたストリートで歌う意味があると私は思う。結局のところ、歌は聴いてもらってナンボの世界である。


 

パトス・カフェコンサート vol.13/2013.4.23



 都合3度目となる隣区の地域カフェコンサートに参加。昨秋に拡大版が実施された際、ツイッター経由でエントリーしたのがきっかけだが、毎月実施されている平日コンサートのうち、だいたい季節ごとに出演依頼が舞い込んでくる。
 出たいと思っても自由に出られる仕組みではなく、声をかけていただくことを有り難く思う。

 今回は2日間続くイベントの初日。打診はかなり前からあり、飽きられないよう過去2回とは違う切り口で臨もうと準備した。
 持ち時間は入れ換えを含めて20分なので、正味は19分以内、できれば18分くらいが望ましい。普通なら4曲歌うのが妥当だが、偶数の曲で全体を構成するのは、実は歌い手としては難しい。
 持ち時間内でひとつの世界を造ろうとした場合、中間部にヤマを持ってきたり、場面転換したりすることが難しいからで、3、5、7の奇数だとこれが無理なくやれるのだ。曲数制限ではなく、時間制限の場合なら自分で工夫し、あえて奇数にまとめるのが私流のやり方。

 開始は19時で、前回に引き続きトップを任された。私以外の出演者のジャンルがクラシックギター(2組)、ピアノ弾き語り、声楽(ソプラノ)、コントと多種多様。聴き手の好みもそれに応じて幅広いことが予想された。
 そんな場を1番手として作る必要があったが、熟慮のすえ、構成も場に応じて得意の多ジャンル方式でやろうと思った。

 少し遅れて19時2分から開始。およそ17分で以下の5曲を歌った。


「夜が明けたら」(和製ブルース)
「黒い森の青いネコ」(ロック系オリジナル)
「野ばら(メドレー)」(クラシック)
「あなたならどうする」(昭和歌謡)
「寂しくなんかない」(歌謡曲系オリジナル)


 実はこの日の朝起きると、急に鼻水が止まらなくなった。前日の夕方に外仕事の疲れで毛布もかけずにうたた寝したのが良くなかったらしく、すぐに薬を飲んで対処。衣類も暖かいものに着替えた。
 夕方までにかなり回復したが、薬のせいかまたウトウトしてしまい、声の調子はいまひとつ。それでも鼻水は止まったので、何とかステージはやれた。喉を含めた体調の維持は、本当に難しい。

 セットリストのポイントは3曲目の「野ばら」。時間の都合で2つあるメロディ(ウェルナーとシューベルト)の1番だけを続けて歌ったが、1〜2曲目が暗めの強い曲調だったので、ここで一気に場面転換できるスローな明るめの曲が欲しかった。
 4〜5曲目はやや似た曲調だが、4曲目の問いかけに対し、5曲目でひとつの答えを出す、という趣向。昭和から平成にかけての女性の意識変貌を歌で描いたものだが、ここはMCでうまく補った。

 聴き手はおよそ15名。決して多くはないが、集中度は非常に高く、耳は肥えている。用意された場ではあるが、ストリートライブとは違った意味で怖い場である。
 好調とは言いがたい体調としては、まずまずの出来だったと思う。2曲目ラストにいつも入れる「ニャ〜ゴ」の鳴き声、なかなか好評だった。

 終了後、他の出演者の方々としばしの歓談。今回はギター弾き語りが私一人だけで、ジャンルの異なる方々との交流は新鮮で楽しく、とても刺激になる。雑談のなかで、スタッフの一人がこんなことをそっと教えてくれた。

「実は今日は菊地さんの出演ということで、長い付き合いのある方に事前に声をかけたんですが、みなさん大変喜んでくださいました」

 どうりでいつもより客席に中年女性の姿が多いな…、と歌いながら感じていた。この日は妻の都合が悪く、いわゆる歌い手としての集客はゼロだった。集客は一切強制されてはいないが、まさか運営側で声をかけてくれるとは。

 札幌市が管理する公的空間を利用して始まった地域カフェイベント。運営はNPOだが、まだまだ手探り状態が続く。歌う側としても、毎回手探り状態だが、未知の分野を切り開く面白さとしては抜群。ある程度自分の位置も確保した感があるので、声がかかれば、またぜひ工夫をこらして参加したい。


 

tone音楽祭 vol.2/2013.5.4



 車で30分ほどのところにある音楽系カフェで実施のイベントに参加。古民家を再生させたカフェで、広い窓から望む農場の借景がよく、自宅から都心に至る道の途中にあるので、8年前からときどき訪れていた。
 今回はオープンな場として幅広いジャンルのミュージシャンに開放するというので、初めて歌い手として訪れた。

 まずネットやポスターで参加者を募り、集まってから人数に応じて開始時間や出演時間を順に決めてゆくという、アバウトな進行。エントリーはかなり前から経歴書をFAXで送って済ませてあったが、前日に電話で確認すると、開始は13時からになったという。

 13時を数分過ぎて店に着いたが、まだライブは始まっていない。13時7分からオーナーの挨拶で開始。トップは4人のバンドで、常設のグランドピアノ、ウッドベース、ドラム、コンガ、ボーカルといったボサノバが中心の構成である。
 2番手は楽器はそのままにボーカルのみ交代し、ジャズを中心に30分ほど。遅く到着した私は14時30分から始めることになる。聴き手は当初12人ほどいたが、出入り自由のシステムなので、私が始める頃には9人に減っていた。

 プロ・アマ含めて洋楽が中心の場であることは事前に知っていたので、それに合わせてセットを構成。以下の7曲を歌った。


「恋心(シャンソン)」
「ドミノ(シャンソン)」
「鱒(クラシック)」
「独り(オリジナル)」
「少しは私に愛を下さい(フォーク)」
「かなりや(日本唱歌)」
「Godfather 愛のテーマ(サントラ系洋楽)」


 PAは常備されていたが、ラインジャックの様子が分からないので、生音でも対応可能なヤマハのエレアコを持参。さらにはマイク端子から変換してギターにつなげるアダプターも準備した。
 開始前にPAを調べると、ラインは普通につなげそうだった。店の方に尋ねてもよく分からないというので、(前のグループはアンプ持参)自己判断で用意してきたラインケーブルを空いているチャンネルに接続。ツマミをあれこれ調整してみたら、普通に音が出た。

 知っている顔は皆無で、歌うのは初めての場。いわゆる完全アウェイ状態で、客席はステージに近く、モニターやリハーサルの類いは一切ない。条件としてはかなり厳しい。
 ステージの上が2階まで吹抜けになっていて、ボーカルの音はよく響いたが、ギターの音がまるで聞き取れず、かなりの苦労を強いられた。

 モニターなしの場はよくあるので、いつものように勘で進めたが、場の反応はよかった。後になって気づいたが、自宅での直前練習でエレアコがハウリング気味だったので、予めサウンドホールカバーを装着して向かったが、外して音を確かめるのを忘れていた。
(サウンドホールカバーはないほうが音は聞き取りやすい)
 自分では冷静なつもりでいたが、やはり少し上がっていたのかもしれない。

 MCはあまりやらないつもりでいたが、聴き手に尋ねられるまま、あれこれと返答しつつ進行。

「いつも一人でやってるの?」
「臨時的なユニットは過去にありますが、基本は一人です」
「昔のPPMみたいなサウンドだなぁ…」
「原点はフォークですからね。PPMもたまにやりますよ。《パフ》とか」

 そう言いいつつ、《パフ》のさわりだけを軽く歌う。「いいね〜」と、場は必然的に盛り上がるが、いっそリクエストとしてPPMを丸ごと1曲やればよかったかな…、と後で思った。
 どちらにせよ、アドリブでのMCをこれほど続けたのは稀。チカチカパフォーマンスで揉まれているせいか、最近はこの「アドリブ的MC」が、かなり自在に使えるようになった。あとは流れの中でいかにリクエストに応えるかが課題だ。

 持ち時間の30分より5分短く、25分で終了。参加費や集客ノルマ等は一切なく、ワンオーダーのみ、しかも完全禁煙という願ってもない条件だったが、珈琲一杯で30分も歌わせてもらっては、いかにも申し訳ない。出番が終わって急に空腹を感じたこともあり、ケーキセットを追加で注文。美味しくいただいた。
 反省点はいろいろあるが、完全アウェイの状況でもそれなりに場を作れるという自信がまたひとつ増えた。何より、一度はここで歌ってみたいという8年前からの願いが実現したことに、まずは満足しよう。


 

ソクラテス・懐かしの時間/2013.5.14



 午後から隣区のカフェで地域中高年対象の集いがある。歌い手として参加することが以前から決まっていたので、午前中から準備していたら、しばし沙汰のなかったデザイン系の取引先から突然の電話。あれこれと対応に時間をとられ、リハを兼ねた発声練習を忙しく始める。
 体力が衰えているせいか、最近は事前の練習をやり過ぎると本番での失敗につながりかねず、適当なところで切り上げた。

 12時40分に家を出て、会場到着が13時半。地下鉄駅近くの繁華街なので、少し離れた安い駐車場に停めたが、そこから機材を転がして歩くのに20分近くも要した。

 主催のTさんと簡単な打ち合わせ。Tさんとは知人の紹介でチカチカパフォーマンスで知り合った。私よりも少し世代は上だが、紙芝居や朗読の各種ボランティアをあちこちで精力的に続けている。
 昨年12月にも地域カフェでの同様の集いに協力したが、今回は会場を古書と画廊を兼ねたカフェに移してやることになった。

 予定より2分早く、13時58分にイベント開始。Tさんの挨拶と出演者の紹介があり、ただちに最初の出し物である紙芝居「恩讐の彼方に」(菊池寛原作)が始まる。
 古書と絵とカフェが同居する不思議な雰囲気の店で、昨年12月と同じ出し物だが、場が変わると気分も変わる。

 予定ぴったりの14時35分に終了。ここで休憩&カフェタイムをとり、その間に私の機材をセット。面倒な部分は事前に組んであったので、5分後の14時40分から始めることができた。
 前回は22分で7曲を歌ったが、この日は持ち時間が35〜40分に増えた。聴き手が前回と重なる可能性があるというので、曲目はすべて入れ替えた。
 およそ38分で以下の12曲を歌う。


「サン・トワ・マミー」
「花の首飾り」
「空に星があるように」
「エーデルワイス」
「北の旅人」
「男と女のお話」
「時の過ぎゆくままに」
「バス・ストップ」
「ウナ・セラ・ディ東京」
「圭子の夢は夜ひらく」
「かなりや」
「グッドナイト・ベイビー」


 前半5曲目の「北の旅人」までは比較的叙情的な曲でつなぎ、「男と女のお話」から気分をガラリ変えて、ややマニアックな昭和歌謡系の曲を並べた。
 ラスト前の「かなりや」で再び叙情歌に戻す。アクの強い曲を連発した後なので、いわば「口直しデザート」の位置づけである。そしてラストになだれこむ。

「グッドナイト・ベイビー」を歌い終えたあと、ラストのストロークを繰り返しつつ、お礼の挨拶と次の出し物の紹介をかぶせた。昨秋に実施した自主企画ライブでラストの「ヘイ・ジュード」でやった手法と全く同じだが、今回も盛大な拍手をいただき、うまく収まった。
 この種のMCにギター伴奏をかぶせつつ曲を始めたり終わったりする手法は、最近になっていろいろな場で試みているが、いずれも成功していて、場を引きつける武器のひとつになりつつある。

 いろいろ細かい計算して曲を構成したが、だいたい思惑通りに運んだ。MCはいつものように短めにしたが、要所にチカチカパフォーマンスでのエピソードを披露し、単調にならないよう工夫をこらした。
 聴き手は17人ほどだったが、イベント専用の部屋が思っていたよりも狭く、持参した小型の電池式PAでも大きすぎるほど。途中でボリュームを絞りつつ進行したが、もしかするとPAそのものが不要な空間であったかもしれない。
 いわゆる「用意された場」だったので、みなさん大変熱心に聴いてくださった。ライブ中は水を打ったような静けさだったが、1曲終わるたびに熱い拍手をいただき、その点では非常に歌いやすかった。

 15時18分に私の歌が終わり、20分から再びTさんの紙芝居「黄金バット」が始まる。こちらは20分ほどで終わり、予定より少し早めの15時40分でお開き。いつも感じるが、Tさんの時間進行は非常に厳格である。
 ライブ中にも会場に現れ、数曲を聴いてくださったお店の女性に写真撮影をお願いする。写真のようにステージの背が全面ガラス窓で、通路から中の様子がうかがえるという、珍しい場である。

 受付の方を含めた3人で珈琲をいただきつつ、あれこれ反省をかねた雑談。「よかったです」「楽しかったです」と、参加された方にも喜んでいただけた。自分なりの反省として、予想外に男性の聴き手が多かったので、もう少し男性受けする曲を用意すべきだったかもしれない。
 帰路に再び取引先から電話があり、慌ただしく応対。仕事の間隙を縫うような活動となって少し疲れたが、こんな日もあるということだ。


 

ほのぼの豆ライブ vol.4 /2013.5.19



 2月に参加したカフェライブが、その後毎月ペースで定例化されたというので、3ヶ月ぶりに参加した。事前にメールでエントリーしておいたが、あとで確かめたら特に事前予約は必要なく、最近流行りの「オープンマイク形式」らしい。
 前回の参加者が12名で、ほぼ満席状態だったが、4回目の今回は6名と半減した。内訳は男性4名、女性2名。男性4名は歌い手もかねている。

 この種のイベントは2回目以降が勝負で、定着するまでには時間がかかるもの。それまで客とオーナーが辛抱できるか否かが分かれ目だ。

 参加者が少ないので、15時開始の予定を30分ほど遅らせる。最初は4名しかいなかったが、2名増えて15時40分から開始。前回はジャンケンで決めた歌う順番も、今回は到着順に歌い始めることになる。
 システムは初回と同じで参加費は特に必要なく、ワンオーダーのみ。オーナーいわく「ゆるくて気ままなライブ」といった感だ。

 音楽ジャンルも初回同様、ジャズ、ポップス、オリジナル、フォークと雑多。PAは一切ない生歌形式も不動。

 16時20分くらいから私の出番となる。初回は壁際のベンチ前をステージにしつらえて歌ったが、今回は自ら提案し、入口付近のカウンター横に立って歌わせてもらった。PAがないので、こんな気ままも許される。
 譜面台もあえて使わず、譜面はカウンターの上に並べて時折チラリと眺めつつ歌うスタイルにした。

 実はライブの途中、歌い手が譜面から目を離さず、聴き手に全く目配りしないと興をそがれる、との意見がオーディエンスからあり、ちょっとした話題になった。
 もっともな考えだが、誰もが知っているギター弾き語りのプロでも、足元に大型の電子譜面台を置き、歌詞とコードを見て歌っている例を多く知っている。無理に譜面を見ずに歌い、歌詞やコードを見失って狼狽えるよりはマシではないか、と私は考えている。

 持ち時間の15分で以下の3曲を歌う。


「Without You」(洋楽POPS・オリジナル訳詞)
「サクラ咲く」(フォーク系オリジナル)
「聖母たちのララバイ」(昭和歌謡)


 前回も感じたが、ノーマイクの生歌には独特の雰囲気がある。歌もギターも一切ごまかしが効かない感じで、非常に厳しい反面、ある種の清々しさもある。PAなしで歌う青空ライブにもどこか通じる。
 3曲ともボーカルに部分的な強弱をつける必要があり、マイクがあれば簡単にやれるが、生歌ではそれが出来ない。「サクラ咲く」と「聖母たち…」では、ギターをほとんど弾かないフレーズがあり、こちらもPAなしだとメリハリがつけにくい。
 いろいろ苦心させられたが、まずまずうまくいった。これぞ弾き語りの原点である。

 普段よりも神経を集中させて歌ったので、歌い終えると少し疲れは感じたが、オーディエンスの評判は悪くなかった。厳しい条件下で音程や声量をブレなく歌うのは、いい鍛錬になる。たまにはこんなライブもやってみるものだ。


 

パトス・オープンステージ /2013.5.24



 地域カフェで実施されたオープンマイク形式のイベントに参加した。過去3回参加しているカフェコンサートと同じ場、同じスタッフによるもので、「オープンステージ」と称し、スケジュールのない時期にカフェロビーを広く開放し、自由に歌ったり演奏したり、はたまた演じたりするという新企画。
 先週に第1回が実施されたが、別のライブを終えた直後ということもあって、参加は断念。ツイッターやブログ情報で盛況だったことを知り、2回目の今回のぞいてみる気になった。

 開催時間は17〜21時だが、途中参加や退出は自由。観るだけなら無料で、何らかのパフォーマンスをする場合、ワンドリンク(100〜150円)プラス参加料100円という安価なシステムだ。

 予約、プログラム、出演順もなく、食べ物持込み自由という文字通りフリーな場だが、完全禁煙でPAの類いは一切ない。今月参加した2つのカフェ・フリーライブによく似ている。オープン形式の場は、最近のトレンドになりつつあるのかもしれない。

 17時50分頃に会場に着くと、すでに7〜8人の方が座って談笑している。過去のコンサートで顔見知りのスタッフやパフォーマーが大半で、自然に話に花が咲く。
 1組の持ち時間は10分2曲以内で、無用なMCはせずに曲紹介程度で簡潔に進める、という取り決めだった。すでにクラシックギターの方が演奏したそうで、他に始める気配がなく、どんな場でも早く始めるのが好きなので、「では私が演ります」と宣言。ギターを取り出して18時20分くらいから歌い始めた。

 この日の課題は、先日から取り組んでいる「譜面ナシで歩きながら歌う」という難しいもの。PAがなく、会場が比較的広いので、試すにはもってこいの機会だった。
 歌ったのは、暗譜に自信のある「さらば青春」「僕の胸でおやすみ」の2曲。席の間をゆっくりと歩きながら歌い、時には聴き手に直接語りかけるように歌ったが、目でそっと応えてくれる方もいて、初の試みとしてはうまくいったと思う。

 その後、次々と歌ったり演ずる方が登場し、場は切れ目なく続いた。演じている間に小声で会話が続くこともあったが、大きく場の気分を損ねるものではなく、「どうぞご歓談を続けながらお楽しみください」と、宣言するパフォーマーもいたりして、「ゆるくて自由な場」という芯は通っていたように思う。

 用事があって途中で帰る方、遅れて到着する方などいて、場の人数はたえず動いたが、ピーク時には10人を超えた。
 クラシックギター、ギター弾き語り2組、アカペラ、寸劇、三線弾き語りなど、パフォーマーは合計で6組。実にバラエティに富んだ構成である。

 一巡したあと、19時50分くらいから2回目を歌う。ロビー奥に椅子と譜面台を置いた場所は用意されていたが、この日は自分のスタイルを貫くつもりでいたので、1回目同様ゆっくり歩きながら、ロビーの中程をステージ代りにして歌った。
 ギターネックに装着する譜面クリップも準備していたが、結局使わずにオリジナルの「野の花や」「サクラ咲く」を歌う。どちらも譜面ナシで歌うのは初めてで、かなりの緊張を強いられたが、心配していた歌詞のミスはなかった。
 ただ、「サクラ咲く」でG7で弾くべきコードを、E7で弾いてしまった。オリジナルなので、聴き手にはミスと気づかれにくいが、ミスはミス。暗譜での歌い込み不足を露呈した。

 歌い手として多少の課題は残ったが、歌い手(演じ手)と聴き手がほぼ一致していて、通常のステージ形式とは異なる井戸端的な面白さを感じた。異ジャンル間雑談も思いのほか楽しい。これぞオープンステージの真骨頂なり。