イベントライブ顛末記


2012さっぽろ菊まつり 1日目/2012.11.3



「2012さっぽろ菊まつり」のイベントに出演。開始が11時で、苦手な午前中のライブである。緊張のせいか6時半には目覚めてしまった。5時間しか寝てないが、早く起きたほうが声は出る。
 未明から降り止まない雨だったが、準備して家を出たとたんに青空が広がり始める。傘やヤッケの重装備だったが、結局全く降られなかった。

 いつもチカチカパフォーマンスをやっている札幌駅地下歩行空間の全域を使って菊まつりは実施されている。1ヶ月ほど前に事務局から全パフォーマーに出演要請があったが、連休で皆多忙のためか、時間が経っても一向に枠が埋まらない。
 年に一度のソロライブを終えた直後で、心身が疲れている状況であるのは分かっていたが、日頃世話になっていることもあり、半ば義務感に押されてエントリーした。

 10時半くらいに到着。中央に位置する北3条広場に小さなステージが設定されており、60ほどの椅子が置かれている。PAも用意されていて、普段の広場とはちょっと気分が違っていた。

 舞台の状況を見ながら機材の準備。いつものチカチカパフォーマンスの装備で歌うつもりでいたら、係員が現れてマイクとスピーカーは備付けのものを使って欲しいという。
 シールドケーブルがつなげないというので、ギターの音はマイクで録ることになる。エレアコの音をマイクで録ることには違和感を感じたが、過去にもそうやってきたというので、従った。

 前のグループの歌が予定より5分ほど伸び、終了後ただちに舞台に上って音の調整を始める。足元にあるモニタの音が聞き取りにくかったが、客席側ではちゃんと聞こえており、これ以上モニタの音を上げるとハウリングを起こすという。グズグズしていると持ち時間は減るばかりなので、モニタに頼らず、勘で歌うことを決意した。
 11時7分から開始。終了は予定通り11時半少し前にという要望。持ち時間30分のつもりで準備してきたが、咄嗟の判断で曲間やMCを詰めて準備した7曲全部を歌うことにした。


「季節の中で」
「恋のバカンス」
「バス・ストップ」
「熱き心に」
「ブルーライト・ヨコハマ」
「愛燦々(初披露)」
「どうにもとまらない」


 一昨日のソロライブの疲れがまだ完全に癒えていず、慣れぬ早起きということで、用心して1曲目の「季節の中で」はキーを半音下げた。
 前のグループが終わると満席だった場は潮が引くように人が消え、完全にゼロの状態になった。特定のグループ目当ての聴き手が残っているよりむしろやりやすいと思い、構わず歌い始めたが、最初に真ん中に座った方に見覚えがあると思ったら、一昨日のライブにも来てくださったTさんである。
 プログラムの最後に記した「今後の予定」を見て応援に来てくださったらしく、ありがたいことだ。

 歌い進むうち、じわじわと人が増えてきた。いつものチカチカパフォーマンスに似た傾向だったが、困ったのは3曲目を過ぎても会場の特に入口付近がざわついていて、全く落ち着きがないことだった。
 余韻に浸る気持ちも分からないではないが、まあ、これはたぶん年寄りのヒガミであろう。

 あくまで自分のペースで歌い進むうち、さらに人が増え、熱心に聴いてくれる人も多数現れた。最終的には40名前後に達したので、集中が切れそうになる難しい条件の中では、充分健闘したと自己評価する。
 初披露の「愛燦々」では曲紹介の時点で大きな拍手が、ラストの「どうにもとまらない」では手拍子まで飛び出した。この日は主催者側の都合でCD販売は禁じられており、MCでの告知は一切せず、サンプルも並べなかったが、場の雰囲気からして、やればかなり売れた気がしないでもない。

 要望通り、ぴったり20分間で終了。Tさんから「ちょっと短くて物足りなかった」と言われた。間奏はすべて省き、MCは曲紹介のみという駆け足ライブだったから、やむを得ない。
 その反動で、「バス・ストップ」で「眼」を「手」と間違え、「熱き心に」の最後を飛ばした関係で間奏がちょっとおかしくなったが、聴き手に言い訳は一切せず、知らぬふりを通した。
 いわゆるごまかし技の類いだが、こうした修羅場ではこれまたやむを得ない判断だったろう。同じイベントが同じ場、同じ時間で明日も続く。明日はどんな修羅場が待ち受けているのか。


 

2012さっぽろ菊まつり 2日目/2012.11.4



 さっぽろ菊まつりの2日目のステージに出演。場所も開始時間も昨日と全く同じで、ぐずついた空模様まで同じだった。
 4日間で3回という、還暦シンガーにとってはハード過ぎるスケジュールがたたって眠気と疲れがとれず、8時半まで布団の中にいた。休暇で家にいた妻と共に、昨日と同じ時間に家を出る。
 これまた昨日同様、激しい雨に振られたが、都心の駐車場に止めたとたん小振りに。傘は用意していったが、差すほどでもなく、そのまま会場に入る。

 エレアコの音をマイクで録るのにどうしても抵抗があったので、今日は使い慣れた電池式のミキサーを持参した。会場に入ってすぐ、PA担当の方と打合せ。担当の方もエレアコ用のターミナルボックスを持ってきてくれていたが、マイクとギターのバランス面から、私のミキサーをメインPAにつないで使うことになった。
 ただ、ボーカルとギターとを混合した音全体にリバーブはかけたくない、と担当者は主張する。自分で音を作る際はけっこうやっている手法だったが、ここはプロの判断に任せ、リバーブは一切かけずにやることにした。

 この日は前の出演者が11時3分前に終了してくれ、余裕をもってスタンバイすることができた。ミキサーからの音も問題なく出たが、いい感じだと思っていた音に歪みがあると担当者はいう。
 ミキサーのメインボリュームをかなり落とし、全体の調整はメインPAでやることになったが、結果としてステージの音は聴き取りにくいものとなってしまった。

 11時ぴったりにライブ開始。昨日同様、スタート時の客席にはデジカメを握った妻しかいない。淡々と歌い継いだが、昨日とは明らかに空気感が違っていて、聴き手の集まりは悪かった。
 これは私だけではなく、前後の出演者でも同じ傾向だった。長雨や連休最終日という事情がそうさせたのだろう。通りを含めた場全体が沈んでいた。ともかくも、昭和歌謡を中心に以下の7曲を歌う。


「大空と大地の中で」
「恋のバカンス」
「時の流れに身をまかせ」
「聖母たちのララバイ」
「ブルーライトヨコハマ」
「愛燦燦」
「また逢う日まで」


 PAと会場の落ち着きに不安があったので、しっとりしたアルペジオの曲は後半の「愛燦燦」1曲に減らし、ストローク中心の構成で臨んだ。
 聴き手はラスト近くで30名弱ほどで、普段のチカチカパフォーマンスに比べて決して少ないほうではない。しかし歓声や手拍子もなく、反応がいかにも弱い。

 11時26分で終えたが、さすがに疲労感に襲われた。リバーブを全くかけずに歌うのは予想外に疲れることも知った。反響のよい小さなスペースならともかく、大スペースなので声に一切ごまかしが効かない。体力を消耗した一因だった。聴き届けた妻にも「声がちょっとかすれていた」と指摘された。
 まあ、こんな日もあるということ。人生と同じで、毎回が当たりというわけにはいかない。年に似合わぬ無理をしたが、大きなミスなくどうにか乗り切って、義理も果たせた。しばし心身を休めたい。


 

パトス・懐かしのひと時 /2012.12.11



 隣区にある公的空間「ことにパトス」で催される地域中高年むけのイベントに参加した。札幌地下鉄東西線琴似駅地下にあり、今年10月上旬に参加した「パトスカフェコンサート」と同じ会場である。
 市民の芸術・文化活動を支援するために様々な活動が実施されているが、今回は運営するNPO法人に関わっているTさんのお誘いだった。

 Tさんとは知人の紹介で知り合ったが、チカチカパフォーマンスを始め、私のライブに何度も来ていただいている。Tさん自身も長年紙芝居のボランティア活動をやっていて、「私が主催するイベントにぜひに」とのことで快諾した。

 開始は14時からで、全部で3組が出演。各自30分の持ち時間で、私の出番は最初のはずだったが、13時半過ぎに会場に着いてみると、セッティングの都合でトップは歌声サークルになったという。
 私は2番目に変わったが、さらに途中でTさんが「申し訳ないが、最後に歌って欲しい」とのこと。どこで歌ってもパフォーマンスに大きな違いはなく、すぐに了解した。

 14時ちょうどに開始。恵庭市の歌声サークル「ケンケンパー」による叙情歌が始まる。歌集を会場に配り、親しみのある唱歌系の曲を全員で歌いながら進行するという、歌声喫茶ふうの趣向だった。
 ステージには上らず、全員が会場と同じフロアーで演じていたが、客席との距離感を小さくする意図があるように感じた。伴奏はシンプルにガットギター1本で、ボーカルの邪魔にならず、いい感じに収まっている。

 予定より少し遅れて14時33分に終了。間髪をいれず、拍子木を叩いてTさんが舞台に登場。壇上にセッティングは済ませてあったので、引継ぎ時間ゼロである。
 Tさんの演目は紙芝居の常識を打ち破り、菊池寛の「恩讐の彼方に」。驚くべきことに、まるで講談のような長いセリフを台本も見ず、ノーマイクで堂々と演じていた。
 30分を超える熱演に、40名近く入った会場は水を打ったように静まり返る。関係者ではあったが、思わず見入ってしまった。

 ここで少しまた時間が伸び、私がスタンバイしたのが15時6分。転換の素早さから私も聴き手と同じフロアー上で歌うことを選択。備え付けのボーカルマイクを使い、ギターはシールドケーブルでPAにつないだ。
 そのバランス調整に少し時間がかかり、歌い始めたのが15時8分。終了時間は守りたかったので予定を変え、22分で以下の7曲を歌った。


「高校三年生」
「夜霧よ今夜もありがとう」
「ブルーライトヨコハマ」
「瀬戸の花嫁」
「月がとっても青いから」
「ここに幸あり」
「また逢う日まで」


 この日の構成は事前の調整で「昭和歌謡」に特化したが、1曲目に予定していた「東京ドドンパ娘」は咄嗟の判断でカット。うまく説明できないが、場の空気でそう決めた。
 直前まで悩んだが、歌う場所が前回と異なるホール内となる可能性があったので、ギターはつぶしの利く新しいヤマハのエレアコを持参した。結果として生歌に近い環境だったので、これは正解だった。

 モニタが全くない難しい条件だったが、聴き手の反応はよかった。「叙情歌」→「講談的紙芝居」→「昭和歌謡」という流れはメリハリがあって、これまた結果的に正解。
「夜霧よ今夜もありがとう」では間奏で拍手をいただき、「また逢う日まで」では自然発生的に手拍子が出る。終了後に複数の方から「もっと聴きたかった」、さらには「裕次郎がよかった」「『ここに幸あり』で思わず泣いてしまった」など、身に余る声をかけていただく。
「いいひと時だった」と、企画全体に対する声も多く、主催のTさんも満足気。

 Tさんの推挙で歌わせていただいたので失敗は許されず、そこが自己完結型のストリートライブとは異なるところ。冒険を避け、実績ある曲を並べた所以だが、Tさんの顔はつぶさずに済んだことを、まずは喜びたい。


 

パトス・カフェコンサート vol.10/2012.12.20



 入場無料のオープンなイベント「パトスカフェコンサート」に2度目の出演。
 場所は札幌地下鉄東西線琴似駅地下の公的空間、パトス。10日ほど前に同じ場所で実施された地域中高年対象のイベントでも歌っており、すっかりお馴染みの場となった。

 スタジオ前のロビーを使って1年ほど前から始まったコンサート、今回が10回目とかで、2日間連続で実施される最初の日だった。
 出演者や集客面など、運営はまだまだ手探りの状態とは主催者の弁。何事も定着するには、ある程度の時間が必要だ。肝心なのは細くとも粘り強く続けることである。

 今回の参加者は以下の通り。(敬称略)

19:00 菊地友則(ギター弾き語り)
19:20 伊藤賢一(クラッシックギター独奏)
19:40 =休憩&カフェタイム=
19:55 NoteOn Family(ピアノ&鍵盤ハーモニカ)
20:15 伊藤博一(クラッシックギター独奏)



 2日連続開催ということで、出演者のブッキングには腐心した印象がする。ラストの伊藤さんはパトスの運営スタッフでもあった。
 記録的な大雪ということで、かなり早めに家を出たが、写真係として誘った妻と話しながら進むうち、右折箇所を間違えた。迂回して遠回りしたこともあり、到着は開演10分前のギリギリ。
 トップを務めることは決まっていたので、挨拶もそこそこに準備。客席はまばらだったが、19時ちょうどに歌い始めた。

 この日のセットはクリスマスを多少意識した選曲にした。電子譜面には手製のリースを飾り、中心にはLEDイルミネーションを点滅させた。衣装もクリスマスらしく赤で決めた。


「ウィンターワンダーランド」(クリスマス系カバー)
「もっと」(シャンソン系オリジナル)
「抱きしめて」(歌謡曲系オリジナル)
「聖母たちのララバイ」(歌謡曲系カバー)
「夢咲く街 PATOS」(フォーク系オリジナル・初披露)


 リハもマイクテストもなしだったので、1曲目はテストと挨拶をかねて1分ほどに詰めて歌った。2曲目以降は前回の様子からオリジナル中心で構成したが、なぜか今回に限って、オリジナル披露は私のみだった。
 歌の終わり頃に数人の聴き手が入ってきて、終了後にも人が増えた。最終的に聴き手は10人ほど。前回は土曜夕方の開催だったが、今回は平日夕方の開催。人の流れがかなり違う。

 これといったミスもなく、持ち時間内の19分で終了。同じ場では3度目なのでMCもうまくはさみ、落ち着いて進められた。ラストの「夢咲く街」は、この空間とイベントそのものをテーマに作ったばかりの曲で、この日が初披露だったが、評判はなかなかよかった。

 その後、3組のパフォーマーの演奏や歌を客席で聴く。1番は場の気分を作る役で責任はやや重いが、その後はゆっくりできるという特権がある。
 この日が初めての妻も、久しぶりの生ギターと生ピアノの演奏に満足。「思ってたよりもずっと良かった」と喜んでくれた。

 終了後に他のパフォーマーの方々としばしの歓談。わずかな時間だが、前回とはメンバーも異なり、いろいろ有意義な情報交換をすることができた。


 

2013 さっぽろ雪まつり 「森の時間」/2013.2.8



 雪まつり・つどーむ会場で催された「ふるさとを歌う会・森の時間」のステージに出演。東日本大震災復興支援の市民団体が実施するもので、打診があったのはかなり前のこと。
 年に一度は復興支援系のイベントに参加したいという気持ちがあり、会場が自宅近く。一度も出たことがない雪まつりステージということで、好奇心にも押されてエントリーした。

 実は会場のつどーむは、自宅2階から屋根が見える。直線距離で3キロ前後。歩いて行けるほど近いが、これまで中に入ったことは一度もなかった。
 除雪と仕事の大波で持病の腰痛を再発させてしまい、一時は満足に声も出ない状態だったが、懸命の調整でどうにか7割程度まで回復させることができた。

 休暇だった妻が気遣って引率してくれるというので、9時過ぎには車で家を出る。会場周辺は厳しい交通規制が敷かれ、道路の渋滞はない。700Mほど離れた有料駐車場に停めて、ゆっくり時間をかけて歩く。

 会場は思っていたより広く、中央奥に立派なステージが設営されている。ステージ前にはざっと200席ほどの椅子が並べられ、周辺にも休憩用のテーブルセットが多数。
 つどーむ会場は大通り会場と異なり、参加型の雪像が並んでいる。目玉は雪で作られた長い滑り台で、幼稚園や小学校の子供たちが、教師に引率されて授業の一環としてやってくる。

 そんな条件下でのイベントは、ターゲットの絞り方が非常に難しい。子供か、あるいは引率してやってくる大人か、はたまたその両方に目配りするか?という選択判断だ。

 予定ぴったりの10時にイベント開始。事前に分単位の厳密なスケジュール表が渡されていて、私の出番は3番目の10時44分。平日午前ということもあってか観客は非常に少なく、座席の1割ほどといったところだ。

 10時40分に2番のクラシック・デュオが終わり、すぐにステージに入って機材をセット。2分後には歌える体勢になった。
 ところが、ここでトラブル発生。ギターの音が全く出ない。PAは専門スタッフが4人いたが、原因が分からない様子。そのうちスタッフが別のケーブルを持ってきた。私の持参したケーブルが疑わしいという。
 直前に自宅PAでテストし、ギター内の電池残量も確認済み。その旨説明したが、とにかく換えてみたいという。やむなく応じたが、交換してもやはり音は出ない。時間は刻々と過ぎ、進行のYさんは困った様子。紹介はすでに終わっていたので、別の話でうまく場をつないでくれた。

 ラインでの音録りは無理と判断し、「マイク録りでもいいですよ」と声をかけた。こんな事態も見越し、ギターは生音でもOKのヤマハを、ポケットにはマイクコードに直結可能なアダプターも忍ばせてある。
 そうするうち、突然音が出た。あとでスタッフから陳謝されたが、内部機器の問題だったそう。(スイッチの入れ忘れなど、単純な要因と思われる)この間約2分だったが、とてつもなく長く感じられた。

 結局は予定ぴったりにライブ開始。先のような事情から、この日は癖がなくて明るく、万人むけの無難な曲を並べた。


「ウィンター・ワンダーランド」
「天使のウインク」
「パフ」
「エーデルワイス」
「レット・イット・ビー」(オリジナル訳詞)
「Smile with you」(オリジナル)


 PAの不調で出鼻をくじかれた印象だったが、この種のトラブルは想定内。臆せず自分のペースで淡々と歌い進めたが、とにかく聴き手が少ない。
 その少ない聴き手も、なぜかステージはそっちのけで、仲間内の会話にふけっている人もいたりしたが、2曲目の「天使のウインク」あたりから、一気に集中してくる気配を感じた。
「エーデルワイス」以降は完全に自分のペース。少ない聴き手でも、充分に満足のゆく熱い手応えを感じ取れた。

 練習通り、割当てより2分短い18分で終了。聴き手の大半は子供の雪遊びに引率してきた中高年で、終わると期せずして「よかった〜」との歓声がステージまで届いた。
 客席にいた妻も、隣席の女性から「いい歌ですね」と話しかけられ、実は私の夫ですと応ずると、驚かれていろいろ尋ねられたという。

 イベントは16時半まで続いたが、腰の大事をとって午前中で退去。半分は腰痛との戦いだったが、穴を空けることもなく、義理も果たせた。しばし、休養につとめたい。

 実はこのイベントでは、事前にかなり詳細なエントリーシートの提出を求められた。
 団体名、代表者、人数、ジャンル、出演時間、会場入時間、交通手段、持込み機材、機材搬入手段、PA使用の有無、主催者準備品等など、A4のエクセルシートいっぱいに書き込む必要があり、かってないほどの煩雑さである。

 大元の主催が札幌市なので、こうも厳密になったのだろう。そして引き換えのように手渡されたのが、写真のような雪まつり公式通行証。関係者であることの「証し」のようなもので、これがあれば楽屋やステージ裏に自由に出入り可能となる。
「第64回さっぽろ雪まつり・つどーむ会場」の記載があり、ヒモ付の透明ケースに入った洒落たデザインである。今年のシンボルキャラクターもちゃんと印刷されている。

 この種の記念グッズには頓着しないタチだが、売店で買えるものではなく、簡単には手に入らないレア物かもしれない。よい記念になりそうなので、いただいて保存しておくことにした。
 ヒモ付の透明ケースは中身を差し替えれば、別の場面でも使えそうな気がする。今後そんな企画や機会が再びあるか否かは、神のみぞ知る世界だが。


 

ほのぼの豆ライブ vol.1 /2013.2.17



 以前にある方のライブで行ったことのある近隣のカフェで、アマチュア参加型のイベントライブが実施されることを知った。最近は足が遠のいていたが、問い合わせると、ぜひにという。マスターは私のことも覚えていてくれた。
 開始は15時で終了が20時。途中退出もOKで参加費は発生せず、ワンオーダーのみという、願ってもない条件である。

 店はやや小さく、キャパは15名といったところか。アルコール類は一切なく、食べ物の持込みも可。一人の持ち時間は15分で、3曲以内。住宅街に店がある関係でマイクやアンプ類は一切使わない、いわゆる完全なるアンプラグド・ライブである。

 店は自宅から9キロほどで、夏なら20分で着く距離だが、大雪による渋滞で30分かかった。店の前に4台分の無料駐車場があり、私の到着は2番目で、充分に余裕があった。
 15時近くになって、続々と人が集まってきた。知らない顔ばかりの完全アウェイかと思いきや、数年前から介護施設系ライブでよくご一緒する女性シンガー、ユキさんにばったり出くわす。
 その他、8年前に私が主催した及川恒平さんの時計台コンサートの折に来ていただいた方にも遭遇。世間は実に狭い。

 世話役のコズエさんの音頭で、まずマグネット式のプレートに名前を書いてエントリー。代表者によるじゃんけんで、歌う順を決める。接客に忙しいマスターだけがラストの指定枠である。プレートを金属ボードに順に貼って壁に掲示し、準備完了。
 実はこの手法、以前に別のカフェで30回続いた同名のイベントライブから受け継いでいるのだとか。そのカフェが閉店してしまい、引き継ぐ形で今回のライブが企画されたらしい。
(参加者の大半が当時のメンバー)

 客は全部で12名。内訳は男性が7名女性が5名で、うち男性5名女性4名が歌い手をかねている。昼時間のカフェという条件がそうさせるのだろうか、この種のライブとしては女性シンガーの比率が非常に高い。
 少し遅れて15時30分からライブ開始。エントリーは合計9組で、私は4番目という、早くも遅くもない絶好の順番を引き当てた。

 楽器は大半がギターで、一部にピアノ、鍵盤ハーモニカ、ウッドベースがアドリブ演奏で混じった。
 歌のジャンルはフォーク、昭和歌謡、ポップス、ジャズ、オリジナルなど、多種多彩。歌や楽器の技量を競うというより、音楽を楽しもう、という姿勢が随所に見られた。MCも各自長めで、客席とのやり取りも盛ん。暖かで家庭的な雰囲気である。「ほのぼのライブ」とは実にうまいネーミングだ。

 入れ替えを含めて、1組およそ20分で回る。休憩は一切なく、トントンとライブは進む。私の出番は16時30分からだったが、開始1時間を経過していたので、開始前に自主的に声をかけて5分の休憩タイムをとった。
 初めての場ということもあり、この日はジャンルの異なる曲を並べた。


「ろくでなし」
「もっと」(オリジナル)
「夜が明けたら」


 9組のなかで、立って歌ったのは私一人。店に備付けの譜面台を使った関係で、譜面はいつもの中華Padはなく、A4版の紙を持参した。サイズが大きいので、歌っている途中に譜面から目を離しても歌詞を見失うことが少ないという利点がある。
 通りに面した大きなガラス窓があるので、店内は非常に明るい。照明効果はなきに等しいが、あまり気にならずに普通に歌えた。歌唱中は非常に静ひつで、みなさん熱心に聴いてくれる。集中できる条件が整っていた。

 アンプ類が一切ないという条件は、最初は不安に感じたが、始まるとそう気にならなくなった。声や楽器そのものの音がストレートに響くので、PAを使った音とは別の何かが伝わる感じだ。
 店が小さく、ステージは客席の一部を利用したものだった。歌い手と聴き手の距離が非常に近い。ここが大きなポイント。弾き語りを始めた頃の、何か懐かしくて大切なものを思い出したような気がする。

 この日の写真を撮ってくれたのは、将来カフェを開業するために勉強中という、20代前半の男性。珈琲の入れ方や店の雰囲気作り、イベントの運営方法など、さまざまな角度から既存のカフェを回って学んでいるそうだ。
 開業資金は目下貯めている真っ最中だとか。人生に明確なビジョンがあり、それに向かって真っ直ぐ進んでいる感じで、思わず応援したくなる。写真の撮り方もさすがにいいセンスで、すでに努力の成果が表れている。

 18時30分に、9組すべての歌唱が予定通りに終了。やり残しの仕事があり、最後まではいられないことを事前に伝えてあったので、途中で退席した。それを潮に、それぞれ用事がある他の数名も席を立つ。
 時間のあるメンバーは、その後も自由なセッションを楽しんだ模様。このイベント、どうやら定例化するらしい。