イベントライブ顛末記


歌酔倶楽部ありがとう・MJ "冬のおわり"/2011.2.27



 なじみのライブ居酒屋「ありがとう」での定例ライブに参加。ときどきプロ歌手のライブを聴きにいったりはしているが、毎月実施される定例ライブへの参加は年に数回程度。常連ではないが、自称「細くて長い客」である。
 この夜の参加者は12組。2004.12から始まり、今回で丸6年通算43回目のロングイベントだが、初回からの古いメンバーも数人いる。(私は2回目からの参加)たまにしか参加しないので、今回も私の全く知らない方が3組もいた。

 私の出番は3番目。いつもは中間あたりなので、やや早め。しかし、腰にまだ不安を抱えているので、早く歌い終えるのが無難だ。ひょっとすると、お店側の配慮だったかもしれない。

 この夜の私のテーマは、「冬のおわり」。除雪による数年ぶりの腰痛再発も含め、今年は実に長く厳しい冬だったわけで、2月の末にあたってそれを省みよう、というわけだ。
 歌ったのは、「少しは私に愛を下さい」と「サボテンの花」。「サボテンの花」は明確に冬の終わりを告げる歌詞だが、「少しは私に愛を下さい」は愛の冬のさなかに、春を待ちわびる女心を描く歌で、多少のこじつけはある。しかし、この夜は小椋佳をぜひ歌いたかった。


「少しは私に愛を下さい」
「サボテンの花」


 2曲とも近所のライブ居酒屋で最近歌ったばかりだが、出来としてはいまひとつ。喉の調子が回復せず、パフォーマンスのうちのボーカル比率が90%を占める身としては辛い。それと関連があるかどうかは分からないが、「少しは私に愛を下さい」のラストの歌詞の「みぞれ」の部分が少しもつれた。(いわゆる「噛んだ」)
 嵐のようだった2月の仕事量と、腰と喉の不調のなかでは、よくやったほうではないかと、自分を慰めたい。

 この夜はフォーク以外のエントリーがいくつかあり、Fさんが往年のGSの名曲「ガール・フレンド」を、Sさんが演歌の「舟歌」をそれぞれ歌い、いずれも好評だった。
「あらゆるジャンルの歌をこなす」を自負するので、私もGSや演歌のレパートリーはかなり多い。しかし、このイベントではかなり前に「釜山港に帰れ」を一度歌ったきりで、GSは一度も歌っていない。当時の場の反応がいまひとつだったこともあり、演歌は自ら封印してきた。しかし、通算43回目ともなると、イベントとしての潮目の移り変りをつくづく感じる。
「毎度毎度おなじみの定番フォーク」では、場が冗漫に陥っても仕方がない。そこに別ジャンルの曲がふっと入ると、場がきゅっと閉まるのだ。

 よく考えると、前回2010.11の同じイベントで、私もビートルズとオールディズを歌い、評判はけっこう良かった。今回はあえてフォークを2曲そろえたが、次回以降、演歌も含めて、別ジャンルの曲に再挑戦してみようかな、という気分にちょっとなった。


 

ライブ酒場Life・おんはつvol.1/2011.4.17



 近所のライブ酒場「Life」でのイベント、「おんはつ」に参加。「音楽発表会」の略称で、弾き語り限定である。開店してまもないので、今回が初めての試み。いろいろな意味で手探りの企画だが、見学も含めて参加者は20名を軽く越す盛況だった。

 いつもは歩いて行く店だが、この日はあいにくミゾレ混じりの強い風が吹き荒れる悪天候。直前まで迷ったが、マイギターを持参することもあって、結局車で出かけた。
 酒は飲めなくなるが、普段でも1杯目はノンアルビールで、酒を飲むのは予定曲を歌い終えた後、と決めている。歌自体にあまり余裕がないので、「飲んだ勢いで歌う」ことが元来苦手だ。幸いにこの夜の料金はワンドリンク付1,000円で、後は飲んだ分だけを実費という、酒が苦手な身にはありがたいシステムだった。

 ほぼ時間ぴったりの午後7時に開始。オープニングアクトとしてママをリーダーとする3人の琴演奏、マスターのギターソロ弾き語りがまずあり、合計8組の演奏が順に繰り広げられた。
 内訳は琴演奏1組、フォーク系カバー3組、オリジナル2組、ギターインスト1組、演歌1組、といったところ。最初ということもあって、バラエティに富んでいた反面、全体としてやや統一感に欠ける感じもした。

 私の出番は6番目だったが、場内の大半が見知らぬ顔だったこともあり、場をつかむのに腐心した。この店では初めて立って歌ったので、モニターの音がいまひとつ聞き取りにくいのもマイナス要因だった。

 歌ったのは六文銭の「面影橋から」と、森山直太朗の「さくら」。「フォーク好きなライブ酒場」が店のうたい文句なので、最近好んで歌っている洋楽系の曲はあえて封印し、「あまりマニアックではないフォーク系の曲」という切り口にこだわってみたが、そんなに意識することもなかったのかな、というのが正直な印象。
 もし次回があるなら、オリジナルも含め、自分の好きなスタイルで自由に歌ってみるのもアリかもしれない。

「春」と「フォーク系」でイメージを統一し、過去に実績のある曲を選択したつもりが、「面影橋から」の間奏でピッキングを少し飛ばしてしまう、というミスをやらかした。いろいろ理由はあるが、要は集中力の欠如。まだまだ修行が足りない。
 テンポはキープしたので、曲の流れは止まっていない。しかし、ミスはミス。合計の点数をつけるなら、65点くらいか。初めての企画イベントに懸ける気負いからか、他の演奏者にもややミスが目立った。今後定例化する話も出たので、2回目以降に期待しよう。


 

叙情歌暦 〜春の陽微笑む/2011.5.22



「叙情歌暦」がメインタイトルのソロライブを、ご近所のライブ酒場「Life」にて実施した。同じ切り口では過去に2度ほど試みているが、今回はサブタイトルを「春の陽微笑む」とし、春にふさわしい内外の叙情歌を集めてライブの中心軸とした。
 今回の企画、
今年1月に実施した有料老人ホームでの訪問ライブが発想のヒントである。「演歌はやらない」「クラシック等の洋楽を中心に」という、これまで例のない難しい先方の要望で、構成には頭を悩ませたが、結果としてこれが非常に評判がよかった。
 その後、(似たような構成で本格的なソロライブも可能なのでは…?)と、大胆にも思ってしまったのだ。

 さまざまな事情から、今回は会場を自宅でも公的施設でもなく、最近ご近所に開店し、たまに歌いに行くライブ酒場ということに落ち着いた。歌はクラシックやシャンソンなどの洋楽が中心。つまりは、曲と場の二つを普段とはガラリ変えた構成としたわけである。

 集客はこの種のマニアックな内容に興味を示してくれそうな方を中心にリストアップ。会場の定員がおよそ20名なので、少しだけ多めに案内状を送ったが、初めての有料ライブにも関わらず、およそ8割の方々にご賛同をいただいた。聴き手の9割が女性で、1年半前のシャンソンライブもそうだったが、私のソロライブの場合、いつもこうした傾向になる。女性がこの種の音楽に強い関心を持っているせいだろうか。
 ネット関連での集客は全くしなかったが、有料入場19名、お店のマスター、ママさんを加えて21名の参加数。ほぼ満席での開催にこぎつけた。

 開場が16:30なので、40分前に会場入り。マイクスタンドと譜面台は普段から使い慣れている一体型を持参し、マイクやPAはお店のものをお借りした。
 軽く1曲だけ歌ってリハ終了。録音と照明のチェックも済ませ、きっちり定刻の17:00から始める予定が、5名の方が開始ぎりぎりに到着。さらには2名の方が時間になっても現れない。お店が飲物を出す時間も必要で、やむなく5分だけ開演を遅らせた。

 17:05からライブ開始。1曲目を終えたところで最後のお二人が到着し、全員がそろった。この日は前後半のスタートをMCからではなく、いきなり曲から入る、という趣向を初めて試みた。いつもライブに来てくれるNAOさんの発案だったが、なかなかいい感じに収まった。場によっては使える技だ。

 この夜歌った全20曲のセットリストは、以下の通り。構成は60%がシャンソン、クラシック系の洋楽で、残りがJ-POPや日本唱歌。初披露の曲も5-6曲あり、かなりリスクの高いライブとなった。


《前半》
「野の花や」(作詞:なんかい/オリジナル)
「花」
「野ばら」
「さくらんぼの実る頃」
「鱒」
「童神」
「北の旅人」(南こうせつ)
「ローレライ」
「真珠貝の歌」

《後半》
「太陽を背に受けて」(オリジナル訳詞)
「少しは私に愛を下さい」
「ドミノ」
「さくら貝の歌」)
「夜明けのメロディー」
「ベサメ・ムーチョ」
「夕凪ワルツ」(オリジナル作詞)
「オー・ソレ・ミオ」
「明日」

 〜アンコール
「雨ニモマケズ」(オリジナル作曲)
「埴生の宿」


 前半9曲はMCを極力省き、トントン進めた関係で、35分で終了。予定通り5:40から休憩となる。飲食の時間を配慮し、休憩は長めの15分。5:55から後半9曲の開始となった。
 入場料は1,000円だったが、この中でワンドリンクと軽食を出していただき、聴き手にも好評だった。聴き手の大半が女性という特殊事情もあり、お店に無理をお願いしてライブ中は完全禁煙にしていただいた。

 1週間前の過酷な路上ライブのダメージが残っていたのか、出だしは喉の調子がいまひとつだったが、前半5曲目あたりからじょじょに回復。大きなミスもなく進んだが、後半7曲目の「夕凪ワルツ」で、コードを押さえる左手がつってしまい、指が動かなくなった。
 だましだまし慎重に進め、どうにか歌い終える。MCを長めにとり、指をタオルでぬぐいながらさり気なくマッサージ。残る2曲を必死で歌いきった。

 終了は18:35で、ほぼ予定通りだったが、その後アンコールで2曲を歌う。短めの曲を用意しておいて正解だった。出だしの喉の不調、後半の指の硬直など、課題は残ったが、大冒険の企画だった割に、まずまずの出来だったと自己評価している。

 終了後、いつも歌わせていただく近所のグループホームから団体で聴きにきてくださった方々から、「素敵な歌でした」と、お祝いの花束をいただく。
 花を囲んで、お世話になったマスター、ママさんと記念撮影。不安だった集客面でお店に迷惑をかけることもなく、まずは安堵の顔である。

 後日、ただ一人お店のフライヤーを見ていらしてくださった見知らぬ女性からメールがあり、ライブに関するていねいな感想が記してあった。お店のHPからのリンクでアドレスを知ったらしい。

「花々の上にそよぐ風のような優しい歌声とすばらしいギターに、時間はあっという間に流れてしまいました」 と、身に余る言葉をいただく。感性豊かな瑞々しい表現である。ありがとうございます。
 妻にも一部指摘されたが、あまり出来がよくなかったと勝手に落ち込んでいただけに、パッと気持ちが明るくなった。この言葉を励みに、また新しい一歩が踏み出せそうな予感がする。


5曲目に歌った「鱒」

 今回ライブでは、最初の自宅ライブ以来、実に6年ぶりにプログラムを作った。歌う予定曲のタイトルを列記し、作詞作曲者、ジャンルなどを簡単に記したもので、ハガキ大に印刷して入場受付時にお客様に配った。
 聴き手には親切な手法だが、フォーク系のライブの場合、場の流れや歌い手の気分で直感的に曲の出し入れをすることが多々あるため、この技は使いにくい。叙情系のライブで聴き手の顔が見えている場合、事前に構成を固めてしまうケースが大半なので、やる気になればやれる。

 聴き手の大半は私の友人知人だった。この種の本格的な自主企画ライブは、多くても年に1回程度しか開催できないので、集まってくださる方は、同窓会に近い気分も多少はあると思う。
 しかし、我が年齢もやがて62歳。親しい方々、懐かしい方々とは「ライブ」という口実を作り、こうしてときどき顔を合わせておきたいと思う。その意味で、私の歌は添え物でも一向に構わない。

 とはいえ、いざ実施となると、聴き手に飽きられないよう、あれこれと工夫をこらす。「これって以前にもやったよね?」そう思われそうな構成は、自主企画ライブに限ってはたぶんないはず。
 たかがアマチュアといえ、そこには執着するし、新しいものが創造できなくなったら、自主企画ライブはおそらくやらない。

 ライブを思い立ったのが真冬のさなかで準備期間は長く、曲構成には充分な余裕があったが、途中で東日本大震災が起き、その時点でほぼ決まっていたラストの曲を直前になって差し替えた。
 当初はスコットランド民謡の「アニー・ローリー」を予定していたが、熟慮のすえ、アンドレ・ギャニオン作曲で平原綾香が歌う「明日」に変えた。個人ライブなので震災のチャリティなどは一切しなかったが、ラストのMCで震災にも少しだけふれた。

「もう泣かない もう負けない 明日があるから…」という歌詞は間違いなく時代を切っていて、聴き手の心にも届いていたと思う。

 およそ1年半ぶりの本格ソロライブということで、この間にストックしたさまざまなレパートリーを多く披露し、いわば「歌の貯金」をかなり引き出した。
 だが、お金は本来使うためにあり、歌も同じである。次なるステップにむけ、また新しく貯金、つまりレパートリーを増やせばよいのだ。それすなわち、日々の生きる喜びにつながっている。


 

北海道神宮フォークうたごえまつり /2011.6.15



 北海道神宮祭(札幌まつり)の中日である。この日を休みとする地元企業も少なくない。北海道民にとっては、かなりのオマツリ日なのである。
 例年は仕事に追われている時期だが、今年に限れば忙しさとは無縁。忙しい人もたぶんいるとは思うが、天秤座の我が身は今年最大の絶不調月である。運は天にゆだね、ジタバタせずに目の前にあるお祭りスケジュールに身をまかせることにした。

 あれこれ雑事を片づけつつ、自宅で軽くリハーサル。1曲だけなので、野球に例えるならワンポイントリリーフか。90分の先発完投型ライブに比べれば楽といえば楽だが、一発勝負の怖さがある。ライブ前に別の用事があるので、ギターをソフトケースに収めて背負い、早めの3時過ぎに自転車で家を出た。

 最寄りのJR駅から札幌駅に向かう。お祭りなので車内は混んでいる。それを見越し、スリムな背負い型ソフトケースを選択して正解。
 札幌駅から地下にもぐり、最近完成したばかりの大通り駅までの地下通路を初めて通る。札幌駅と大通り公園とを地下で結ぶという市民悲願の通路だったが、開通式が東日本大震災当日の3/11という因縁で、ほとんどニュースでは取り上げられず、開通イベントもすべて中止となってしまった。

 1キロほどの距離を10分かけてゆっくり歩いてみたが、たいそう立派である。広くて明るく、両側に商店街がないので、すっきりしている。調べてみたら、通路両側に10カ所ほどある「たまり」(写真下の左)を、イベントやライブに貸し出すそうだ。料金もそれほどではなく、身元がアブなくなければ、誰でも借りられる。
 実にそそられる場所だ。この一角を借りて、シャンソン&クラシック&カンツォーネ等のマニアックな路上ライブを通行人に仕掛けてみたい。誰も相手にしてくれないか?はたまた…。

 その後、地下道を延々と歩き、途中で地上に出て大通り公園をさらに西へと歩く。11丁目にあるコンチネンタルギャラリーで知人の作品展を見る。
 ライブの時間が迫ってきたので入口に置いたギターを背負い、ライブ会場に向かおうとしたら、突然のリクエストにより、今夜の予定曲をワンフレーズだけアカペラで歌わせていただいた。

 ギャラリーを出たあと、さらに西へ2駅進むと目的の北海道神宮がある。歩く元気はまだ残っていたが、歌う分の気力体力を温存するべく、素直に地下鉄に乗った。
 最寄りの円山公園駅から社務所までの緩い昇り坂をまたかなり歩き、会場に着いたのは17時半近く。大半の出演者はすでに楽屋に集合していた。
 たまに行くライブハウス「ありがとう」の常連二人とここで会う。今回のライブ「フォークうたごえまつり」に出演することは誰にも言わず、ブログ等でも具体的には一切ふれなかったので、「出るんですか?」と怪訝そうな顔をされた。

 このイベントに出演できるのは生楽器使用のソロかデュオ、歌えるのは日本のカバー曲限定である。しかも1組1曲5分以内という制限があり、まさに一発勝負の難しいイベントだ。ステージは境内にある土俵で、ここに照明やPAをセットして歌う。
 9回目となる今年の参加者は15名だった。私は3〜5回まで連続3度出たが、当初は少なかった参加者も口コミでじょじょに増え、いまでは毎年抽選で決めるほどだ。4回目までは1組2曲歌えたが、人数増加と共に5回目からは1曲になり、最大10組だった参加もこの回から15組に増えた。

 4年前の5回目を最後に出演してなかったのは、他のライブが忙しくなったことと、参加人数の増大がある。出演に若い方がじわじわと増え、イベントの色模様も次第に変わってきたことも理由のひとつだ。いまさら還暦シンガーの出番でもあるまい、と思った。

 4年ぶりにエントリーしてみる気になったのは、昨年末に届いた見知らぬ方からのメールがきっかけだ。このイベントに関する記載があり、私のステージも観ているような様子だった。
 それ以前から(60代でもう一度だけ出演しておきたい…)という考えが心の隅にあり、「もしかしたら来年出るかもしれません」と、返信してあった。

 あとで知ったが、今回の申込数は35組だったそうで、厳しい倍率である。楽屋入り直後に掲示されたリストを見ると、私の出演順は15組中のラスト。最初に出た際もラストだったが、正直あまり好きな順番ではない。しかし、記載された年齢をみると、私は突出した最高齢者。私の次が49歳で、50代は誰もいない。まさに孤高の人である。
 出演者も出演順もあくまで「抽選」ということなので、黙って受け入れるしかない。

 予定通り18時からライブは始まった。主催は地域FM局なので、時間にはシビアである。雨は降っていないが気温は低く、客は例年より少なめ。しかし、ざっと100名は集まっている。
 入れ換えを含め、30分で5組歌うので、私の出番は19時半近く。たまたま楽屋に居合わせたYUKIさんという顔見知りの女性や、先のライブハウス仲間の写真撮影をしつつ、他の見知らぬ出演者の歌に耳を傾ける。

 今回は若い方に素晴らしい歌い手がいた。中程で歌った児玉梨奈さんの「童神」には琴線が揺さぶられ、小林純平さんの「ひこうき雲」には心が洗われた。
 二人とも突出したギターテクニックがあるわけでなく、単純なストローク奏法なのだが、歌そのものに独自の世界観がある。それが何かを説明するのは難しいが、もしかすると歌には人生で目指すものが表れてしまうのかもしれない。それが自分の精神とシンクロすると、心が呼応するのかもしれない。

 あれこれあって、ようやく私の出番がやってきた。気温はますます下がって、司会者の女性も「寒いですねぇ」を連発。寒さを見越し、私の衣装は先月の青空ライブと同じ防寒スタイルで、これが正解だった。
 歌ったのは長渕剛の「しあわせになろうよ」。妻との真珠婚や還暦コンサートなど、節目のイベントだけで歌っている思い入れの強い曲である。今回がラストかも…、と覚悟していたので、魂をこめて歌った。

 あたりはすでにとっぷりと暮れ、聴き手は少し増えた感じだが、何せ寒い。歌い手も聴き手も凍りつくとはこのことだ。
 慣れた場なので上がることはなく、大きなミスもなく歌えた。高音部の聞かせどころもまずまず。ただ、歌詞やコードのミスが怖く、歌いながら会場に目をやる余裕があまりなかった。もっとも後半に視線を上げてみたが、暗いうえに照明がまぶしく、会場の様子は全く見えない。
 場の反応は感覚でつかむしかなかったが、終始シンと静まり返っていた。これが寒さによるものなのか、はたまた歌の力によるものなのかは不明。歌い手としては後者と信じたいが、ともかくやれることはやった。
「もしかすると最後」かもしれないこの場この時を、確かに記憶に刻んだ貴重な時間である。


 

ライブ酒場Life・おんはつvol.2/2011.6.18



 ご近所ライブ酒場「Life」での定例弾き語りイベント「おんはつvol.2」に参加。連日のハードスケジュールのため、当初はパスする気でいたイベントだったが、マスターの熱心なお誘いに、ついフラフラと心が動いた。
 先月、かなりの無理をお願いして自主企画ライブをやらせていただいたばかりの店である。参加費も安く、(ワンドリンク1,000円)近いので時間もかからない。人間、義理を欠くといい目に合わないと相場が決まっている。ここは万難を排して行くべきだ…。

 開始は19時の予定だったが、この日は集まりがやや悪く、15分遅れでライブ開始。オープニングは今回もママさんを始めとする3人の琴演奏からだった。

 その後、マスターのギター弾き語りが続き、途中でママの琴演奏が加わった。事前に「琴とギターのコラボ演奏をやる」とは聞いていたが、この異色コラボによる「岬めぐり」が秀逸。歌の後半でママが琴を弾きながら二重唱で加わるという趣向で、つまりは琴の弾き語りである。初めて見る演奏スタイルだが、実に斬新だった。
 練習段階ではあまりうまくいってない、と聞いていたが、新しいものに果敢に挑戦する精神に脱帽である。

 私の出番は全7組中の4番目。ハードスケジュールなので早めの出番をお願いしてあったが、正解だった。
 曲は高橋真梨子の「桃色吐息」とオリジナルの「Teimi/丁未」。前回、予想外にオリジナル演奏が多かったので、今回は定番フォークへのこだわりを捨て、自分の好きなスタイルで選曲した。

 あまり練習してなかったが、実績のある曲なので、出来はまずまずか。自分の手応えとしては、この場では初披露の「Teimi/丁未」の反応が非常に良く、終了後にもいろいろ声をかけていただいた。
「丁未」は財政再建中の夕張市にある地名で、作詞とプロデュースは別の方だが、どこで歌っても受ける得難いオリジナル曲だ。この種の場でオリジナルを歌うのは冒険だと思っていたが、他に4曲あったオリジナル曲も見事に場を「切って」いた。2曲中の1曲はオリジナルで問題ない気がする。今後の選曲の参考にしたい。

 この日は初回に比べ、全体的に統一感のあるライブであった気がする。琴演奏1組、ギター弾き語り5組、ギターインスト1組といった構成だが、楽曲や演奏スタイルに大きく外れたものがなかった。
 喫煙場所を出入り口付近に限定してくれたので、紫煙に悩まされることもなく、快適な空間が確保されていた。
 演奏予定者に遅れてくる方がいて、少し時間の合間ができたとき、すかさず2巡目の歌を飛び入りセッション形式で入れ、場を間延びさせなかった。ギターテクニック抜群の方がいて、アドリブで瞬時に伴奏が入る。弾き語りの楽しさ、音楽の楽しさを感じさせる時間だった。

 演奏中の私語など、今後にむけての課題は多少あるにしても、2回目にして明確な方向性が打ち出せたのではないだろうか。確かに進化している。お店側の細かい配慮と努力のたまものだろう。
 聴き手も含めた全参加者は20名弱。初回よりも減っているが、楽しさの一点では逆に勝っていた。終わったらすぐに帰るつもりが、つい10時過ぎまで長居してしまったのがその証である。


 

篠路コミセン・ロビーコンサート/2011.6.26



 震災復興支援ロビーコンサートが、近隣の篠路コミュニティセンター(篠路コミセン)で実施された。ロビーコンサートの企画者がそもそも私であり、出演と音響ボランティアもかねている。重責であり、大きな失敗は許されない状況だった。
 企画書を持ち込んで館長さんと直接交渉したのが昨年暮れのこと。それまである程度の実績を重ねてきたとはいえ、前例のないイベントを公的施設でやるのは、そう簡単なことではない。しかし、何事もアイデアと実行力である。これが残っている限り、まだまだ老けこまずに人生を歩いてゆける。

 音響担当の集合は11時だったが、行ってみるとすでにロビー内には50席の椅子が整然と並べられている。椅子の配置には関知してないが、もっと自由な置き方をイメージしていたので、少し戸惑った。なるべく多くの席を確保しようとすると、こうなるのだろう。

 2週間近く前に一度リハーサルはやっているので、あまり問題なく15分で設置は終了。その後、まずは私自身のリハーサルを始める。本番で歌う曲は避け、「雨が空から降れば」「夏の想い出」などを気ままに歌う。相変わらずナチュラルリバーブの効いた気持ちの良い空間である。

 やり過ぎは禁物なので、適当なところで切り上げ、他の出演者の音響チェックと司会者との打ち合わせ、入替え時の手順などを細かく詰める。
 司会進行はNHK札幌でキャスターを務める千葉真澄さんがボランティアで担当してくれる。いつもテレビで見かける方だが、地区センターでの司会などによく応じてくれたものと感心した。

 予定通り13時半からイベントは始まったが、最初に登場した被災地支援グループ、「むすびば」の報告会とドラムパフォーマンスが予定より長引き、開演が30分遅れとなった。
 この種の想定外はライブでは起こりがち。予定曲は省略せず、入替えを手早く進めて時間を詰めることになった。会場はほぼ満席。スタッフや出演者を加えると、全参加者は80名ほどか。

 オカリナワンワンの演奏がまずあり、次が私の出番。入替え時間を使ってオカリナのリーダーがインタビューを受けていたが、ここで司会者のマイクの音が突然出なくなった。あわてる施設側担当のYさん。
 司会者用のマイクは施設側の備品だったが、開始時に少しノイズが入るのが気になっていた。スタンバイはほぼ終わっていたが、急きょ私が持参した予備マイクを取りに、いったんステージを降りる。
 Yさんと共に素早くマイクを交換。ダメージは最小限で済んだが、ノイズに気づいた際に交換しておけばと、少し悔やむ。

 何事もなかったようにステージ開始。予期せぬことが起きるのがライブの宿命だが、そこがライブの醍醐味のひとつ。瞬時の判断で、それをいかにさばくかが、担当者の裁量である。
 MCなしでいきなり「カントリー・ロード」から始め、2曲目の前に簡単な自己紹介する。その後、「赤い花白い花」「浜千鳥」「北の旅人(南こうせつ)」「野ばら(シューベルト)」「いい日旅立ち」と歌う。

 冒険は避けたので無難にこなした。会場の音響のよさにも、かなり救われた印象だ。妻と職場の友人2人、ライブ酒場「Life」のマスターとママさんが多忙のなか応援に来ていただき、ありがたかった。
 Lifeのマスターは「ラストの曲がよかった」との感想。ラストは特に想いをこめて歌い、ステージ上でも手応えを感じた。聴き手には届いていたと思う。

 その後、リコーダーの笛部whoaboo、盛岡さんさ踊りの久住健二さん、女声コーラス藍と続く。その後、音響に関する問題は起きず、こちらもまずまずの出来だった。

 特筆すべきはリコーダーの演奏で、非常によくまとまっていた。聴き手をビジュアル面でも楽しませる工夫があり、見ていて楽しい。アレンジも巧みで、ほとんど自分たちでやっているそうだ。
 演奏後のインタビューで披露していたが、何と3年続けて全国大会出場。過去2年は全国金賞に輝いているそう。さすがだ。
 聴きながら思わず「レベル高いなあ…」とつぶやいていたら、そばにいた館長さんが、「いやいや、菊地さんも負けていませんでしたよ」と慰めてくれた。

 終了後、「ぜひ私たちの集まりでも歌って」と、2つの組織から声をかけていただいた。いずれも町内会系の組織で、地域の中高年者が対象。ありがたいことだ。
 さらには「"北の旅人"を聴いて自然に涙が流れた。感動した」と、見知らぬ同年代の男性から言われた。「北の旅人」はあちこちで歌っているが、この曲で泣かれたのはたぶん初めてだ。全体を通して「聴き手の心に寄り添う」という気持ちを徹底させた成果だと思う。

 そのほか、先の笛部さんのスタッフの方(これが施設担当のYさん)からは、「今度コラボ演奏をやりませんか」と声をかけていただいた。レパートリーに大きな隔たりがなく、ボランティア演奏も多数やっているらしい。
 絵本読み聞かせとのコラボなど、新しいものへの挑戦もしているようで、その一環としてご一緒できるなら、うれしい限りである。

 終了後、館長さんと担当のYさんから何度もお礼を言われる。トラブルもどうにか乗り切り、発案者として最低限の責任は果たせたと思う。
 雑談のなかで、はやくも次回の話が出た。「半年おきくらいに」と提案しておいたので、その通りだと次回はクリスマス前の12月ころか。開始時間を少し遅らせ、キャンドルかイルミネーションの中で歌えたら楽しそうだ。夢はつながってゆく。