歌酔倶楽部ありがとう・MLS "誰も知らない夜"/2009.5.10
「ミニライブSunday」(略称:MLS)という、馴染みのフォーク居酒屋のイベントに参加した。毎月の定例ライブの参加人数が増え続け、ついに月の中旬にも別の形での定例ライブをやることになり、その第1回目である。
これまでとの違いは、一人2曲10分以内だったのが、一人30分前後に時間が拡大されたこと。ただ、時間や料金は同じなので、参加は7組限定である。
一人30分前後のステージをやるということは、実はそう簡単なことではない。普通に歌うと軽く6〜7曲にはなるから、歌の力はもちろん、聴き手を飽きさせない構成力も必要になってくる。
やると決まったのは先月で、参加すべきか否か、ちょっと躊躇していた。ずっと保留にしていたら、お店の掲示板でママさんから誘われ、「それでは補欠で…」という半端な受け答えをした。
実は参加人数が5組以下なら、ライブは不成立という、厳しい「掟」がある。初回から何もせずに企画を流してはマズイ。そう思って「補欠」としてエントリーしたわけである。

いざ蓋を開けてみると、参加人数はちょうど上限の7組。店にはスタッフを含めて17名が集まり、なかなかの盛況である。1週間前に自宅コンサートをやったばかりだが、気持ちを切り換えて以下の7曲を準備した。
「誰も知らない夜」(オリジナル)
「さりげない夜」
「さよなら大好きな人」
「待っているうた」(作詞:山下たづ子/オリジナル)
「帰郷」
「Teimi/丁未」(作詞:ふじりん/オリジナル)
「あたらしき世界」(オリジナル作詞)
〜アンコール
「雨が空から降れば」
まるで意地を張るみたいだが、1週間前に自宅コンサートで歌った9曲とは、一切重複していない。この夜は全体をひとつのテーマで貫くことはせず、2曲ずつをワンセットで対比させて組み、歌い進むという手法を初めてやってみた。
準備期間が短かったことと、歌いたい曲に一貫性がなかったことがその理由で、最初の2曲はイベントのオープニングむきに作った「誰も知らない夜」がらみで「夜」、次が父の一回忌を意識して「別れ」、次が書き下ろし曲の「Teimi/丁未」がらみで「故郷」をそれぞれミニテーマにし、ラストは全体の熱をほどよく冷ます意味から、クラッシックの「新世界」に歌詞をつけた「あたらしき世界」とした。
1週間前の自宅コンサートに続き、この夜も全曲座って歌った。座って歌うと客席があまり見通せず、聴き手の反応から情に流されて崩れる、という危険性が少ないので、この夜のように「アブナイ泣ける曲」を連発するときは、好都合である。
案の定、3曲目あたりから聴き手の様子が何となくウルウルとおかしいのが分かったが、見て見ぬふりで歌い通した。

短めに30分でサクサクと歌い終え、撤収しようとしたら、マスターからいきなり「もう1曲やってよ」。期せずして、会場からも「アンコール!」。
曲はマスターからのリクエストで、先日歌ったばかりだが、「菊地さんの『雨が空から降れば』は、何度聴いてもいい」といつも言われているせいか。それでもやっぱりうれしかった。

今回の目玉は、6曲目に歌った「Teimi/丁未」で、先月中旬に同じ店で歌った際、常連客のT子さんから依頼されて作ったオリジナルである。店の常連客には他にもオリジナル曲を手がける方は複数いる。いろいろな経緯があって、叙情系の曲作りを得手とする私に、最終的に白羽の矢が立った、ということらしい。
彼女の故郷である財政再建中の夕張市への熱い思いを綴ったもので、作詞は同じく常連客のFさん。少女からオトナへと変貌してゆく女性を、季節の移り変わりと故郷への思いとに重ね合わせていて、切なくて泣ける詩だ。
打ち明けると、そのT子さんから、「実はお願いしたことが…」と、店の暗がりで黄色いノートに書かれた歌詞を差し出され、核となるフレーズを読んだ瞬間に、サビのメロディが頭に中に流れていた。曲ができるときは、だいたいこんなものだろう。
歌詞の譜割りが一部難解で、微調整にちょっと苦労したが、ほぼ当初のイメージ通りに曲は完成した。
そのT子さんもFさんも、この歌を聴きにわざわざ来てくれた。曲はかなり前に完成していたが、初めて歌う場は、この2人の前でなくてはならない。
初披露なのでかなりの不安があったが、非常に喜んでいただいた。別の方々からも終わったあとでいろいろ声をかけていただいたので、出来は良かったらしい。タマシイをこめて歌ったせいか、ステージを降りると、ちょっとガクッときた。

この夜はさすがにツワモノがそろっていた。ラストで歌ったTさんに至っては、大半がオリジナルで、しかも迫力のある美声。聞けば、デビュー前の松山千春と一時ユニットを組んでいたそうだ。ヤマハのポプコンで作詞賞をとったこともあるとか。その歌も聞けた。ライブの最後のほうでは、数名の女性が感極まって涙を流していた。
うまい人はまだあちこちに眠っているということで、少しくらいの賛美で奢っていてはイケナイぞと、改めて自分を戒めた。道はまだまだ続く。
