Soccer Coaching/Ver.4 パス編
今回はインサイドパスを中心にした、パスのいろいろな練習方法について書いてみます。
インサイドパス
いわゆるパスの王様ですから、技術的な説明は省きます。私のチームでは以下のようなメニューで変化をつけながらやっていました。●ノーマル:二人一組で普通のインサイドパスを一人につき右足5本、左足5本。
●ダイレクト:同じくダイレクト(ノートラップ)で一人につき5本。右左は自由。
●タッチパス:パスを出した人は身体を真後ろに反転させ、蹴った足から後ろに3歩ダッシュ。地面に手をついてからもう一度身体を反転させ、相手からのパスを受ける。パスを受ける人は相手の態勢が整うまでボールをキープする。これを互いに5本ずつ繰り返す。
この練習は「蹴ったら走る」すなわち「パス&ゴー」や、ボールキープから相手の動きにあわせてパスを出す基本練習も兼ねていて、非常に実戦的で効果のある練習です。敏捷性を同時に養うことも出来ます。
●ターンパス:パスをもらった人は2つ以上のターン(ver3「ターン編」を参照)を入れてから相手に返す。ターンの種類は自由とする。これを互いに5本ずつ繰り返す。
この練習ではパスを受けたあと、相手のマークを振り切ってフリーな相手、またはスペースを見つける感覚を磨くことが出来ます。
●ドリブルスイッチ:パスをもらった人はドリブルで、出した人はダッシュで互いの場所を入れ替わる。場所が入れ替わったら、ボールを持っている人はターンで振り返る。これを互いに5本ずつ繰り返す。
この練習はパス→ドリブル→ターンという一連動作をポジションチェンジしながらやるという実戦的練習です。
これらのメニューは練習時間などによって適当に取捨選択しています。
すべてのパスに言えることですが、「相手を見てからパスする」「ボールに一歩近づいてトラップする」という癖を基本練習段階から徹底させないと試合ではなかなか使えないようです。
メニューを決めて数だけこなせばよしとせず、この基本が出来ているか指導者は常に目を光らせるべきでしょう。
インフロントパス
足の爪先(インフロント)を使ったパスです。技術的な説明は省きます。練習方法はすべて二人一組とします。●プレース:ボールを地面に置き、インフロントキックで相手にパス。もらった方は手でキャッチして地面にセット。(ここでキーパーのキャッチングの基本練習も兼ねる)これを互いに5本ずつ繰り返す。
●パストラップ:ボールをインサイドパスで相手に出し、もらった方はワントラップしてから、なるべく早くインフロントキックで相手に返す。これを互いに5本ずつ繰り返す。
●ダイレクト:ボールをインサイドパスで相手に出し、もらった方はダイレクトのインフロントキックで相手に返す。これを互いに5本ずつ繰り返す。
インフロントキックは初心者であればあるほど、ふわっと上にあげる感じがつかみにくいようです。(グランダーかライナー性の強いパスになってしまう)「足でボールを包むような感じで、親指の先にボールを乗せてやる」と説明すると分かりやすいようです。
パスゲーム
上のふたつのパスにさらにアウトサイドパスなども加えて、パスゲームをすると楽しみながらより実戦的な感覚を磨くことが出来ます。●15〜30mくらいのスペースを用意。(おおよそ体育館くらい)四隅にはコーンなどを置いて目印にする。
こうしたスペースを作るときに、私はいつも歩幅を使っています。成人男子の普通の歩幅は約80cmですから、普通に20歩歩けば16m、30歩で24mとなります。コーンを4つ持って数えながら歩いて四隅にコーンを置いてゆけば瞬時にスペースが出来ます。
ゴールを追加してやる場合も要領は同じです。一度10歩くらい歩いてみて、自分の歩幅を正確に測ってみると良いでしょう。●1チーム4〜5人のグループに分ける。じゃんけんの「勝ちチーム」「負けチーム」で分ける。コーチがチームを決めてもよい。じゃんけんの場合は技量やタイプ(攻めが好きか守りが好きか)が同じような子同志でやらせる。
「味方を見てパス」という感覚を養うため、最低1チームにはビブス(色つきゼッケン)を着せる。●コーチが勝ったチームの一人にパスを出したところからゲーム開始。いろいろなパスをつないで、一定本数(3〜5本)つないだチームを1点とする。途中にドリブルを入れてもよい。コーチは大きな声でパスの本数を数える。
●スペースからボールが出たらカウントはゼロとし、相手スローインからゲーム再開。このスローインもカウントに入れる。
ボールが相手にカット、ブロックされた瞬間にカウントはゼロ。ヘディングのパスもカウントに入れる。●得点した時点でゲームを止める。コーチが得点されたチームの一人にパスを出したところからゲーム再開。
●ゲーム時間は7〜10分とし、時間内でポイント数を競う。
この練習はともすればボカスカとボールを蹴るだけになりがちな初心者のサッカーから、きちんととつなぐサッカーへと転換させるうえで、とても有益で実戦的な練習です。私のチームでは紅白戦前に必ずやりました。
人数、パスをつなぐ本数、ゲーム時間などは子供の能力に応じて適宜変えてやります。
ドリブルは要所要所でうまく使わせるべきでしょう。インサイドパスばかりでなく、アウトサイド、ヒール、インフロントなどもどんどん使わせてみましょう。●回りをよく見る
●空いたスペースをうまく使う
●ボールに素早く寄る
●早くて正確なパス この練習を繰り返せば、こうしたサッカーの極意が自然に身につくと思います。そのためには指導者のこまめな声によるコーチングが欠かせません。場合によってはゲームをフリーズして(止めて)プレーの善し悪しを教えることも必要です。パスの練習には他に3:1(敵を一人、味方を3人決めて敵にとられないようパスを回す)三角パス(20m位の間隔にコーンを置き、子供を並ばせて右回り、左回りなどでパスを回す)なども効果的でしたが、練習の効率が悪いため、今はやっていません。短い時間でより良い効果を出そうとすると、やるメニューは限られてきます。子供に長い「順番待ち」の時間が出来てしまうような練習はメニューに入れるべきではないでしょう。
すべての練習に共通していますが、コーチは練習メニューを作って満足するのではなく、それが子供の中で徹底されているか、練習中は常に目を光らせている必要があると思います。他の指導者や後援会との雑談などは、あくまで休憩時間や練習後にするべきです。次回は主にインステップキックのいろいろな練習方法について語る予定です。