Soccer Coaching/Ver.3  ターン編

 今回はいろいろなフェイントのための基本動作といえるターンについて書いてみます。



クライフターン



 1974年、西ドイツワールドカップでオランダのクライフがこのターンを使って大活躍し、母国を準優勝へと導いた有名な技です。
 と書くとものすごく難しいターンのように聞こえますが、そうでもありません。なにせ、私が40過ぎてから練習してすぐにマスター出来たのですから。(^_^;

●ボールをワンタッチして前に転がしてから、右足(左足)の裏のつま先で真後ろに引く。

●同時に左足(右足)を軸にし、すばやく体を左回り(右回り)に回転させる。

●体とボールの方向は180度変っているはず。以上の動作を左右の足交互に5回ずつ、計10回やる。


 平行してマークしてくる敵を振り切るときはもちろん、ゴールラインから出そうなボールを止めるとき、混雑している場所から空いているスペースへボールを持ち出して局面の打開をはかるときにも使えます。
 ポイントは使う足と逆方向に体を回転させること。同じ方向だとターンしたあとの第一歩が遅れてしまいます。ここのところが子供にはちょっと難しいらしく、何年やってもどうしても出来ない子が毎年チームに一人はいました。



インサイドフック(切り返し)



 足のインサイド(内側)を使って90度〜180度くらいの角度にカギ形にひっかけてボールを運びます。敵を一発で振り切るには、180度に近いほうが効果的です。

●ボールをワンタッチして前に転がしてから、体を半身にひねって右足(左足)でボールを大きくまたぎ、インサイド(内側)ですばやく引っかける。

●体は逆方向(ボールを持ち出す方向)に大きく傾き、足とボールだけが前方に残っている感じ。うまくボールの方向に変ったら、もう一度ボールにタッチして1)の体勢に戻る。

●以上の動作を左右の足交互に5回ずつ、計10回やる。


 Jリーグはもちろん、ドリブルのうまい選手なら子供でも必ず身につけている技です。フェイントの王様といってもいいでしょう。私自身も非常に好きな技で、半年くらいの反復練習で、ようやく試合でも使えるようになりました。小さな子でも練習さえ積めば必ず出来るようになると思います。

 側面だけでなく、正面からマークしてくる敵に対しても使えます。技をかけたあと、一発でシュートなりセンタリングにもってゆけるのがなんといっても魅力です。切り返すときに足のスイングを大きくし、いわゆる「キックフェイント」を入れるとさらに効果的です。
 コツは引っかけるときに、ボールを足でスパッと「切り下ろす」感じにすることです。「どろ〜ん」とした感じだとこの技は決まりません。



アウトサイドフック(ベッケンバウアーターン)



「皇帝」と呼ばれた西ドイツのベッケンバウアーがあみだしたターン。上に書いた「インサイドフック」を単にアウトサイド(足の甲の外側)でやるのですが、練習していないと試合ではなかなか使えません。


 サイドをえぐったボールに追い付いて中に入ろうとするとき、前がふさがっていて逆方向にボールを持ち出して展開しようとするときなどに使います。



ドラッグターン



 足の裏側を使って比較的長い距離ボールを逆方向(90度〜180度くらいの角度)に引き、ボールを運びます。引く足と回る体の方向が同じという点が「クライフターン」との違いです。

●前に転がっているボールを右足(左足)の裏の真ん中で真後ろに引く。

●足の裏→つま先→インサイドの順にボールを運び、同時に左足(右足)を軸にし、すばやく体を右回り(左回り)に回転させる。

●引いた足とは逆の足(つまり軸足)でボールを次のスペースに持ち出す。

●以上の動作を左右の足交互に5回ずつ、計10回やる。


「ドラッグ」はdrug、つまり「引きずる」という意味です。密集にあるボールを後ろに持ち出したいとき、背後にぴったりマークする敵を振り切るときなどに使います。
 1)で「クライフターン」のようにつま先でタッチしてしまうと、引く距離が短くなってしまってあまり効果がでません。
 普通にボールを引かせて自由にターンさせてみると、最初はだいたいこのターンになります。小さい子にはまずこのターンを教えてから「クライフターン」に移行したほうがいいかもしれません。

 このほか、ボールを大きくまたいで足のヒールにひっかけてターンしたり(ヒールターン)インサイドで引っかけたボールを軸足の裏側から持ち出したり(ラボーナターン)私のチームでは勝手にいろいろ名前をつけてやっていました。
 興に乗るといろいろなターンを混ぜた「ターンドリブル」を全員でやったり、二人一組でターンを使った「フェイントごっこ」をやったりしました。

 観察してみると、ターンの練習は効果の現われるまでに時間のかかる練習のようです。また、一度会得しても、練習を怠ると切れ味が落ちたり、ひどい場合は出来なくなったりします。
 反面、ある日突然、試合の中で練習したターンのひとつを見事に決め、コーチを喜ばせてくれるのもこの練習の不思議なところで、長い視野に立った反復練習が大切かと思われます。

 次回は主にインサイドパスのいろいろな練習方法について語る予定です。