Soccer Coaching/Ver.1  アップ編



ブラジル体操



 今回は最初なので、まず体をあたためる「アップ」のことを書いてみます。

 親子で練習する場合は、練習場所の公園まで走ってゆけばそれが即、アップになってしまうので、あまり堅苦しく考える必要はありませんが、ある程度の人数を集めてやる場合は、いろいろな体の状態の子が集まってくるので、練習や試合を問わず、必ずアップをやらなくてはなりません。
 私のチームでは、単純に「走るだけ」というアップはやりませんでした。指導者は見ているだけなので楽ですが、意外に時間が食う割りに、選手はつまらないからです。

 そこで表題にある「ブラジル体操」です。この体操の詳しい説明は省略しますが、プロチームなどでもほとんどは取り入れている練習です。私はこの体操を子供むけに楽しくやれる「リズム体操」のようにアレンジしてやっていました。


1)2〜4人ずつのグループでスタート。グループ分けは子供にまかせる。「あの木の下まで行ったら戻っておいで」などとコーチが目標を決めてやる。(30〜50M程度)

2)グループは横に並び、最初は前向きに大股で4歩あるき、両手をいっぱいにのばして(肘が曲がっていないこと)頭の上で2度拍手をする。(つまり、2歩ごとに1回手をはたく)この時、全員に「いちにさんし…」と大きな声で号令をかけさせる。

3)4歩あるいたら体を半回転させ、横向きになり両手両足を蝶のように動かしながら4歩横歩きする。両手は体側面に、両足は内側でぶつけるようにする。両手両足は大きく広げる。この時の号令は「ごーろくしちはち」になる。

4)4歩あるいたら体を半回転させ、後ろ向きになって2)の動作をやる。この場合、「うしろ歩き」となる。号令は「にーにーさんし」。

5)4歩あるいたら体をさらに半回転させ、横向きになって3)の動作をやる。体の向きは3)と逆になっているはず。号令は「ごーろくしちはち」。

6)5)が終わると、体はちょうど一回転しているはず。さらに2)〜5)の動作を繰り返しながら目標まで向かう。

7)目標に達したら、縦一列になって「スキップランニング」して戻ってくる。これは普通のスキップと同じですが、ある程度のスピードをつけてやり、なおかつ、足は一直線に運ぶのではなく、ジグザグに運ぶようにします。



 大人のやっているブラジル体操は、子供には動作が難解すぎるのか、どうもしっくりきません。こうすれば、1年生の子でも喜んでやります。
 実際にやってみると分かりますが、この体操を2往復もすると、大人でもうっすらと汗ばみます。ポイントは子供たちに、そろえて大きな声を出させること。チームワークとか、試合で声を出す、という大事なことの基本トレーニングにもなります。
 また、この練習はサッカーでとても大切なリズム感を養うのにも、もってこいです。この練習がうまく出来る子は、不思議にサッカーの上達もはやいことが分かります。



ボール回し



 さて、次はボールを使ったアップです。これはブラジル体操にはない「体のひねりと伸び」の動作を補う体操です。ボール感覚を養う意味もあります。これも子供たちには人気の練習です。


●全員が2人1組に分かれる。グループ分けは子供にまかせる。奇数の場合、ひとり余るので、その子はコーチと組む。ボールは2人に1個用意する。

●2人が背中合わせに立つ。体をかがめ、ボールをまたの間を通して相手に渡し、受け取った方は後ろ向きのまま、素早く頭の上から相手にボールを渡す。これを10回ずつくりかえす。

●次に同じ姿勢で体をねじりながらボールを素早く右回りに連続10回まわす。

●同じく左回りに連続10回まわす。



(この項目のみ、西東社刊・「サッカー入門」を参考にさせていただきました)



コーンランニング〜タッチ



 コーンはいろいろな練習に使える便利な道具です。本格的なコーンは値段が高く、運搬も大変ですが、最近発売されたミニコーン(モルテン社製)は、値段も安く(1個300円くらい)持ち運びにも便利なので大変重宝します。コーンは8個用意してください。


●コーンを大人の歩幅で6歩(約5M)の間隔で4個並べる。6歩間隔をあけ、この列と平行にあと4個のコーンを3歩(2.5M)ずらして並べる。(つまり、ジグザグになる)

●コーンの端に子供をたて一列にならべる。コーチの合図で次のコーンめがけてダッシュ。コーンを逆側から素早く一回りする。体を反転させて次のコーンにむかう。この要領ですべてのコーンを素早く回る。

●もう一度整列し直す。コーチの合図で次のコーンめがけてダッシュ。ひとつのコーンにタッチするとすぐ、体を反転させて次のコーンにむかう。この要領ですべてのコーンに素早くタッチ。

●もう一度整列し直す。コーチの合図で次のコーンめがけてダッシュ。「逆回転」「タッチ」「ジャンプ(コーンを飛び越す)」の3つを交互に繰り返しながら走る。



 この練習はサッカーに大切なダッシュ、反転などの敏捷性を養う運動で、かって私のチームでは最も力を入れていました。
 あまり子供の間隔をつめすぎると、早い子は前に追い付いてしまい、ダッシュの効果があがりません。逆に間をあけすぎると、子供の競争する楽しみを奪ってしまいます。「前の人がコーンを回ったらスタートだよ」と初めに声をかけてやると、程よいバランスでうまくゆきます。

 ほかにもいろいろなアップがありますが、私がいつも頭にいれていたのは、「子供がいかに飽きずに、楽しく出来るか?」ということです。次回はドリブルとボールタッチについて語る予定です。